うちのサーヴァントは文学少女可愛い   作:Ni(相川みかげ)

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新宿クリアー!

バイトとFGOで忙しかったけど、これで小説に集中出来るぜ!
というわけでVS黒化アーチャー戦始まるヨ!


7.虚ろな背中

 4月 10日 晴れ

 

 体操服がブルマの学校なんて俺が生きていた元の時代じゃ希少を通り越して絶滅していたはずだ。

 とはいえ、この世界は年数だけで考えるなら元の世界の約15年前。つまりまだ、ギリギリの所でブルマは生存しているのかもしれない。

 何が言いたいかって?なんと!穂群原学園の体操服はブルマ着用を義務付けられているのです!ヒャッホウ!ここはエロゲの世界かよ!……エロゲの世界だったよ!

 

 そんな訳で今日は体育の授業があった。授業が始まる5分前にはグラウンドに続々と女生徒が集まってくる。もちろんブルマで。

 転生前なら眼福な光景なのだが、今では「そんな足剥き出しで寒くないのかな?」くらいの感想しか浮かばない。

 もう俺はえっちゃんじゃないと満足できない体になってしまったのだ。

 

「マスターさん、似合いますか?」

 

 えっちゃんがやってきた。顔を上げて我が愛しのマイサーヴァントのブルマ姿を目に焼き付ける……ってスパッツじゃねーか!

 

「時代はブルマよりスパッツ、です……!そんな些細なことより、どうです?あすのくん、可愛い、ですか?」

 

 えっちゃん宇宙一可愛いよ!

 もう学校の規定なんて気にするもんか。今日から俺、スパッツ教に鞍替えするんだ……!

 あぁ^〜汗で蒸れたスパッツと太腿の間に手を突っ込みたいんじゃぁ^〜

 

「ふふふ、いい欲望、です。あすのくんもオルタ道を理解してきたようですね。……ですが、タダで触らせてあげるほど、私は安い女ではないのです」

 

 ん?

 

「しょーぶ、です。私が勝ったら、和菓子を要求します」

 

 ―――その言葉をキッカケに、今日の体育の授業は戦場と化した。

 サーヴァントとしてのスペックを総動員するえっちゃん、強化の魔術と見様見真似で覚えたルーン魔術を重ね掛けしてそれに追いすがる俺。えっちゃんのシュートで吹き飛ぶゴールキーパーの士郎くん。

 ……うん、なんで遊びのサッカーでこんな事になったんだろうね!?

 

 結果は引き分け。終わった後でえっちゃんが「引き分け、です。これはお互いの勝ちという事でいいのでは?……いいのでは?」と言い出したので間違いなく点数を調整されたのだろう。くぅ、えっちゃんの思い通りになってる……悔しい、でも感じちゃう。

 次こそは実力で結果を勝ち取ろうと思いながら、欲望のままに体育後のポカポカした暖かさのえっちゃんを抱きしめたり嗅いだりしたのだった。

 

 

 

 

「明日望、仕事です」

「……いや、そんなキリッとした顔で言われても。学校に来るのはやめてください、師匠」

 

 放課後。図書室で本を読むえっちゃんの隣でのんびりしていると突然、お客様が来ていると放送で呼び出された。

 まあ、この世界の知り合いなどごく僅かしかいないので誰が来たのかは何となく察していたが。

 案の定、学校に来ていたのはバゼットさんだった。

 

「私は貴方の師匠ではありませんと何度言ったら……いえ、それは今はいいです。……冬木市に異常な魔力の歪みが観測されました。調査の結果、英霊のようなものが出現したようです」

「なるほど、ようやく俺達の出番って訳だ」

「……あくまでも、任務は私が担当する事になっています。しかし上は貴方達の参加を求めているようです。……私としては不本意ですが」

「いーのいーの。元々これは俺の仕事なんだし。それに戦うのは俺じゃなくてえっちゃんだ。負ける気がしないよ」

「はぁ。……では、今夜0時に冬木中央公園で落ち合いましょう。それでは」

 

 そこまで言って、バゼットさんは帰っていった。……あの、作戦会議とかは無いのでしょうか?ってかそれだけなら家で待っていて下さいよ、師匠……

 

 

「……来ましたね。準備は出来ていますか?」

「バッチリです。……でも、異変が起こっているにしてはやけに静かですね?」

「当然です。ここにはいませんから。鏡面界―――この世界の鏡面そのものの世界に英霊はいます」

 

 説明を求めておいてなんだが、その情報は知ってるから適当に聞き流す。まあ聞かないと怪しまれるし多少はね?

 えっちゃんもそんな事はどうでもいいとばかりに来る前に買ったあんまんを頬張っていた。

 その姿はいつもの制服姿ではなく、体にピッタリと密着したレオタードのような戦闘服に胸を覆うブレストプレート。フードのついた外套と全身黒づくめの戦闘服だった。かわいい。

 

「それでは―――飛びます」

 

 事前に用意していたのだろう。地面に反射炉が形成されて文字通り、世界が反転した。

 

 空は禍々しく歪み、均等な線が四方と空を覆っている。そして何より、その世界は雰囲気がまるで違った。

 ……ここが、鏡面界か。

 

「……広いな」

 

 四方が塞がれているとはいっても冬木中央公園の敷地を優に超え、周りの住宅街まで鏡面界の範囲に巻き込まれている。

最初の鏡面界はもっと広かったって遠坂さん家の凛ちゃんも言ってたけどまさかこれ程とは。英霊が何処にいるか探すのが大変そうだ。

 

「構えなさい、明日望!来ます!」

 

 そんな事を考えていると、目の前に次元の歪みが出現した。どうやら杞憂だったらしい。英霊の姿が現れたのは直ぐだった。

 

 褐色の肌に色が抜け落ちたような白髪の男。手には見慣れた白黒の夫婦剣。両腕に赤い布が巻かれ、顔も同様の布が巻かれていて目が隠れている。

 何より特徴的なのはその背中。いつもと違い、剥き出しになったその背中には×印のような痣が痛々しく浮かんでいた。

 

 初戦はアーチャー、か。……少しだけ、戦う事に不安はあったが、姿を見て、それは吹き飛んだ。

 

「……その背中じゃ、何も背負えそうにないな」

 

 まるで怖さを感じないのだ。原作の本物(エミヤ)を知っている身からすれば、こんな空っぽなモノを恐れる訳がない。これならばバゼットさんと戦う方がずっと怖い。

 

 黒化アーチャーが此方に振り返り、弓を構える。

 

「行くよ、えっちゃん!戦闘準備!」

「はい、マスターさん。5秒で終わらせましょう」

 

 こうして、俺達の初めての戦いが始まった。

 

 

「『全体強化』!」

 

 俺の支援魔術によって強化を受けたえっちゃんとバゼットさんの攻撃によってジリジリとダメージを受けていく黒化アーチャー。

 戦闘は常に俺達のペースで進んでいた。……当然といえば当然だろう。

 歴史に名を連ねる他の英霊達と違い、黒化アーチャー―――エミヤにはその歴史が無い。彼は未来の英霊。それ故に知名度補正によるスペックの強化は受けられず、全体的に高スペックの三騎士のクラスながらも彼のカタログスペックは酷いものだ。

 そこを能力と経験から導かれた戦略で補うのが彼の戦闘スタイルなのだが……今の彼は黒化していて理性が吹き飛んでいる。その為に彼は決められた動きをなぞるようにしか行動できない。

 剣を通して使い手の経験をトレースし、自身の力とするエミヤの戦い方をさらに模倣する―――これでは動きが酷くなるのも目に見えている。

 他の英霊ならば、黒化していてもある程度の強さを持つだろう。それでも、エミヤだけはダメだ。彼の強みは宝具の剣を投影できる能力だけでは成立せず、その卓越した戦闘経験を活かした戦術にあるのだから。

 

 頼みの綱の宝具。彼の心象風景を形にする固有結界―――『無限の(アンリミテッド)剣製(ブレイドワークス)』が発動出来ればまだわからないかもしれないが、悠長に詠唱をさせる暇など与えない。それ程までに戦力差は開いている。

 

「しまッ……!明日望!」

 

 しかし、ここで戦況に変化があった。黒化アーチャーがえっちゃんとバゼットさんを無視し、後方で魔術による支援に徹していた俺の方に向かって走り出したのだ。多少の被弾を覚悟で、だ。

 えっちゃんの放ったオルト・ライトニングがマトモに命中するが、そのダメージを無視して彼は大きく跳躍し、自身の背ほどある大剣を何本も投影して俺に放つ。

 

 支援役を先に潰す。それは確かに彼らしい合理的な判断だろう。

 

「だけどそれは、余りにも遅すぎる」

 

 この後に及んで俺に攻撃などしても結果は変わらない。本当に支援役を仕留める気ならば、初手もしくは戦闘が始まる前に戦闘不能にするべきだ。

 

 迫る剣をバックステップで避け、目の前を塞ぐように突き刺さる大剣を硬化のルーンをかけた拳で破壊する。

 砕ける剣の向こうには、黒弓を構えて矢を放つ寸前の黒化アーチャーの姿。

 

「避けなさいッ―――!」

 

 バゼットさんが声を荒げる。けれどえっちゃんは別に動じた様子はなかった。

 ちょっとくらい心配してくれても良いではないかと思ったけど、まあ信頼してくれているのだろう。このくらいじゃ何ともないでしょってな。

 それなら期待に応えるしかない。えっちゃんの信頼は裏切らない―――!

 

 矢が、放たれる。

 迫る矢がやけに鮮明に、スローモーションに映る。その動きの全てを見通すかのように。

 

「―――悪いな。その戦法はもう見てる」

 

 眼前で矢の篦を掴み、その勢いを殺す。

 

 ……図らずしもバゼットさんのクロ戦と同じような展開になってしまった。まあ、これはこれでいいだろう。ついでにこの後もそれに倣うべきだ。

 

「それじゃあ、返すよ!」

 

 宙で逃げ場のない死に体と成り果てた黒化アーチャーへと矢を投げ返す。矢はアーチャーの左肩へと突き刺さる。

 

「『ガンド』!」

 

 そこにダメ押しのガンドで行動を縛る。

 

「―――よくできました、マスターさん。後でよしよししてあげます」

「ヒヤヒヤさせないで下さい!後でお説教です!」

 

 迫る2人に抵抗する事も出来ず、黒化アーチャーはえっちゃんに首を刈り取られ、バゼットさんの拳で胸を抉られた。

 光を伴い黒化アーチャーが消滅した後に残ったのはArcherの文字と弓を構える女弓兵の絵が刻まれたカードのみだった。

 

 

 

 

 4月 19日 晴れ

 

 ついにクラスカードが出現した。時期的にもそろそろかなーと思ってたから準備はしてたけど……バゼットさんはやっぱり当日に連絡するタイプだったよ。心の準備とか全く気にしてませんねあのバサカ女。

 

 相手は黒化アーチャー。ランサーだったらどうしようとか思ってた。

 予想通り、黒化エミヤはクソザコナメクジでした。戦術眼が封じられた筋力Dの見せ筋とかバゼットさん単体でもそりゃ余裕で倒せるわ。

 えっちゃんもいたし、宝具展開もさせずに完勝。最後に俺に向かって攻撃してきたときはヒヤヒヤしたけど、原作じゃもっと凄い事してたし、プリヤであの攻撃見てたから、いやー、投影見てから迎撃余裕でしたって奴です。ハイ。ぶっちゃけバゼットさんの方が怖いっす。

 それにしても、やけに目が冴えたけど何だったんだろう。同じFGO役立たずスキルでも俺が持ってるのは『直感』で『千里眼』じゃなかった筈なんだけど……まあいっか。

 

 で、倒した後出てきたクラスカードを解析するからって次のクラスカード戦は結果が出てからって事になった。少しだけど休めるのはありがたい。次は今回ほど楽にはいかないだろうしな。プリヤの当たるゲイボルグの対策しないとなー。

 

 無事帰路についた後、ベッドにそのままダイブ。戦闘中はアドレナリン出まくってたから気にならなかったけど思ったより気を張っていたらしい。どっと疲れが出てくる。

 そんな俺の頭が少し持ち上げられて、戻される。何か柔らかい感触を感じる。目を開けると、えっちゃんの顔が間近にあった。

 

「マスターさん頑張ったね。ごほーび、です。よしよし」

 

 そういって、膝枕をした状態のまま俺の頭を撫でるえっちゃん。バブみってこういう事を言うんだなー……また、新たな発見をしてしまった。

 うん、今日はちょっと疲れた。そのまま30分ほどえっちゃんに甘えて膝枕を堪能した。いやー、女の子の膝枕って威力高いなー。

 

 その後お風呂に入ってから日記書いてるけど、とりあえず疲れてるし、えっちゃんが布団で待ってるのでもう寝る。おやすみー。

 

 

 

 

 


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