うちのサーヴァントは文学少女可愛い   作:Ni(相川みかげ)

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日記形式の良いところは文書が多少適当でも許されるところ。気楽にどんどん書けるところ。
悪いところはちゃんとした文書が書きたくなるところ。

はい。そんな訳で始まります。



6.転入

 4月 5日 晴れ

 

 もう四月か。この世界にきてからは本当に時間が経つのが早いように感じる。

 ほとんどの日がえっちゃんとごろごろいちゃいちゃするか、バゼットさんと修行するかのどちらかだったが、存外、そんな日々を楽しんでいたような気がする。でもこんなスローライフもそろそろ終わりだろう。

 

 たしか原作の情報では、四月中にはクラスカードが出現していたはずだ。あんな大法螺吹いた以上、関わらないなんて選択肢は取れないだろう。……まあ、どっちにせよ巻き込まれていたとは思うが。

 

 一応、今のところは何の話も聞かないが、最近、バゼットさんは修行を急に休みにしたりして忙しそうにしている。

 もしかしたら裏で色々と事態が進行しているのかもしれない。流石にクラスカードを回収するときには呼ばれるだろうけど、出来ることなら早めに教えて欲しいものだ。 

 もう覚悟は決まっているが、心の準備はさせてほしい。

 

「マスターさん、遅れちゃう、よ?」

 

 ―――おっといけない。やっぱり朝から日記なんて書くものじゃないね。最近は同じことばっかりやってたから、横着して日記を書く癖がついてしまった。

 玄関で俺を呼んでいるえっちゃんは、いつも着ているセーラー服とは別の制服に身を包んでいる。それもそのはず今日は穂群原学園の始業式。すなわち俺たちが転入する日だからだ。

 ……日記は帰ってきてから続きを書くとしよう。

 

 

 

 

「此方だ。ついてきたまえ」

 

 そう言って俺たちを先導するのは、YAMA育ちで暗殺拳の達人の社会科教師、葛木 宗一郎先生。

 生で見ると眼力が違うね。ちょーこわいよーって感じ。何とこの人、俺たちの担任です。ついでに衛宮さんの担任でもあります。

 ……別に魔術なんて使ってないよー。暗示の魔術を使ってえっちゃんと同じクラスに入れるように仕組んだとか、そんな言いがかりはよしてもらおうか。

 

「あすのくん、あすのくん。この先生一体何者なのです?全く隙のない立ち振る舞いなのですが……」

 

 歩きながらコソコソ声で話しかけてくるえっちゃん。……平行世界のキミの剣を強化の魔術を使わずに白刃取りした逸般人だよ、とは言わないでおこう。

 

 そうそう。今は学校にいるので、誰に聞こえるかわからないからって理由で名前で呼んでもらっているのだが……うん。いいね。なんか新鮮な気持ちだ。

 学校では名前で呼ぶ友達みたいな間柄だけど、家ではご主人様(マスター)と呼ぶ仲。しかも同棲。しかもえっちゃん。もうこれは人生の勝利者といっても過言ではない(確信)。

 

 そんなことを考えているともう教室の扉の前だった。葛木先生は既に扉の向こうで挨拶などを済ませている。俺たちは彼が呼んだら中に入る手筈になっていた。

 

「新学期が始まって早々だが、イギリスからの留学という事でこのクラスに2人転入する事になった。……入ってきたまえ」

 

 おっ、出番みたいだ。

 緊張はあまりしていない。俺の容姿は整っている方だと思うし、えっちゃんと並んでも見劣りする事はないはずだ。……いや、えっちゃんの可愛さはサーヴァント界ナンバーワンで俺はえっちゃんという花を輝かせる為の引き立て役なんだけどね!

 

 2人で並んで、教室の中へと入っていく。突き刺さる好奇や歓喜の目線を無視して、できるだけ表情を変えぬようにする。

 ぺこりと頭を下げてから、えっちゃんが自己紹介を始めた。

 

「アルトリア・ペンドラゴンです。気持ち的にセイバーやってます。気軽にえっちゃんとお呼びください。よろしく、です」

 

 えっちゃんの自己紹介にせ、セイバー?と困惑する周囲の声が聞こえる。見た目は超絶美少女だけどたまにえっちゃんはこんな感じだ。まあえっちゃんの発言に慣れてる俺は別に困惑したりしないんですけどね!ああ、マイペースなえっちゃん可愛いよ!

 ちなみに原作セイバーさんの名前を借りているのは勝手に作られていた戸籍に登録されていたのがその名前だったからだ。特に名前に拘りのないえっちゃんはそのまま使用している。

 そんな事はともかく、ニヤニヤとしてしまいそうな頬を引き締め、努めて平静に、人当たりの良さそうな笑顔で俺もえっちゃんに倣って挨拶する。

 

「蒔本 明日望です。日本に戻ってきてまだ日も経っていないから、色々と不慣れなところもあるかもしれないけどよろしくね。……そうだね、気軽にまーくんとでも呼んでくれたまえ」

 

 

 

 

 ……むぅ。マスターさんと離れ離れになってしまいました。

 

 今は休み時間です。私はサーヴァントとはいえ、学生だった経験があります。授業に関しては聖杯の知識もあったので余裕をもって取り組めました。問題は、私に群がる同級生です。

 赤みがかったオレンジ色の髪の少年など少数の生徒と話をしているマスターさんと違って、私の周りには何故かクラスの多くの女子が集まって矢継ぎ早に色々な質問をしてきていました。

 あまり私はお喋りが得意なわけではありません。正直ダルいです。マスターさん、気づいてくれないかなー。助けてくれないかなー。

 

「ねえねえ、アルトリアさんは蒔本くんと知り合いなの?」

「あすのくん、ですか?」

 

 なんとか、つっかえないようにしどろもどろで質問に答えていると予想外の名前が出てきます。なんでマスターさんの名前が出てくるのでしょう?

 

「あー、やっぱり知り合いなんだ。まあ同じ時期に転入してくるんだからそうだと思ってたけどね」

「ほら、蒔本くんってなんだか、大人っぽいっていうか、妖しい感じだけど結構イケてるじゃん?」

「不思議な魅力だよねー。いや勿論、顔も美形なんだけどさ!」

 

 む、コレはアレですか。俗にいうモテているという奴ですか。確かにマスターさんは外見もそこそこ整っていますし、度胸もある格好いい人ですが、そんなに簡単に惚れてしまうのはいささかチョロ過ぎるのでは?少女漫画もビックリするほどですよ。

 でも、マスターさんが好ましく思われているというのはサーヴァントとしても鼻が高いというものです。……いえ、待ってください。

 この中の誰かがマスターさんに告白する→マスターさんあっさり陥落→私に構ってくれなくなる→捨てられる→わ が し が な く な る。

 ……ダメです。そんな事は許されません。ええ。マスターさんは誰にも渡してはいけない―――ッ!!マスターさんは私のモノだし、私はマスターさんのモノなのですから!

 でも、学校ではマスターさんの事をマスターだと言ってはいけません。マスターという単語の代わりに私達の関係をそれとなく指し示す言葉は……コレです!

 

「ダ、ダメです!あすのくんは、あすのくんは私のご主人様なんですから!!」

 

 私にしては大きい声だったと思う。それはどうやらクラス中に響き渡っていたようで。

 窓の方を向いて話をしていたマスターさんがギギギと音がなりそうなほど、ゆっくりと此方を恐る恐る振り向いたのが見えた。

 

 

 

 

 ……日記の続き。

 

 目的通り、衛宮くんと仲良くなる事に成功。

 しかしその後、えっちゃんの発言によって、なんかクラス中の空気が完全に変わった。「変態」だとか「近づいたら孕まされる」だとか好き放題に女子に言われた挙句、男子からの目線がね。衛宮くんは同情するように肩を叩いてくれたりしたけど……はあ、なんでさ。

 

 まあ、帰ってからえっちゃんがお詫びに色々シてくれたから別に良いんだけどね!独占欲をうっかり表に出しちゃうえっちゃん本当に可愛いよ!

 

 




葛木先生は多分もう出てきません

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