うちのサーヴァントは文学少女可愛い   作:Ni(相川みかげ)

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謝らないよ!(先制攻撃)

普通にスランプでした。なんとかプリヤイベ中に投稿しようと頑張った次第です。美遊当てました。

復帰できたのは、にじさんじの三下いちご大福こと椎名唯華さんのおかげです。みんなもしぃしぃをすこれ。

それでは久しぶりの初投稿を楽しんでください。流れを忘れたなら過去話も見てくれよな!(露骨なPV稼ぎ)




25.デート

 ──わたしと同じ顔のにっくきあんちくしょうが転校してきてから一週間が経ちました。

 

 最初は「絶対うまくなんていかない。直ぐに本性を現すだろう」などと思い、静観を決め込んでいたわたしでした。……はい。今は後悔しています。その選択は間違いで、多少強引にでもすぐさま排除すべきだったのです。

 

「……だあーっ! また負けたーー!!」

 

「タツキがやられたか……」

 

「だが、奴は所詮我ら穂群原四天王の中でも最弱……」

 

「もうあなた達、全員負けた後じゃない……にしても結構面白いわね、コレ。もう一度ヤる?」

 

 目の前ではクロが持ってきたボードゲームで遊ぶ友人達。

 

(なんでっ……! なんでそんなに馴染んでるのよーーっ!!)

 

 なんだかんだで日常に馴染んでいるクロの姿を見て歯噛みしながらも、わたしに成す術はなかったのでした。

 

「あら、イリヤはやらないの? ……もしかして、わたしに負けるのが怖い?」

 

「……やってやろうじゃないの!!」

 

 

 

「ぐぬう、また負けた……」

 

『イリヤさんのおつむじゃ何回やっても勝てそうにないですねー!』

 

「なにおう!」

 

 意気揚々と挑んだ戦いはルビーにバカにされてしまう程の惨敗っぷりだった。ぐぬぬ……同じイリヤなのに……

 

「大丈夫。イリヤの仇はわたしがとったから」

 

「あ、うん。ミユはこういうの得意そうだもんね」

 

 私の隣を並んで歩くミユは誇らしげにそう言った。だけど、今回は自分が勝たなきゃ納得できない。誰かに負けるのはいいけれど、自分にだけは負けられない!

 

「お兄ちゃんと、よくやったから」

 

「む……」

 

 ミユの言葉で思い出したのは数日前に起こったクロ色仕掛け事件だ。あの時は大変だった。もう色々とカオスだった。

 ミユにわたしのお兄ちゃんとそっくりなお兄ちゃんがいる事がわかったり、リンさん達がお兄ちゃんに変な反応してたり……明日望さんはそんな様子を見てケラケラ笑っていた。

 

 ……思い出したら、何だか腹が立ってきた。

 

「……明日望さんはどうしてアイツの味方をするんだろ……」

 

「わからない。……けれど、クロの気持ちはわかるような気がするから。イリヤが傷つけられないならわたしはこのままでもいいと思う」

 

「み、ミユまでアイツにほだされて……同じ顔したアイツがだれかれ構わずキスしてる時点で十分わたしの尊厳はボロボロだよーっ!」

 

『着実にイリヤさんの日常が侵食されてますね~。ルビーちゃん的には面白いのでオッケーです!』

 

「ルビーは黙ってて! うう、どうしてこんな事に……」

 

 そんな事を話している内に家についた。ミユと別れて家に入ったわたしにセラはこう言った。

 

「あら? イリヤさん。何か忘れ物でもありましたか?」

 

「え?」

 

「士郎とあの明日望とかいう魔術……いえ、それはともかく、学校が終わった後に一緒に遊園地に行くのでは?」

 

 「まったく、なぜ士郎はあんなのに関わってしまったのか……」などとぼやいてるセラの事など気にしていられなかった。

 

「あ、あんにゃろう……!」

 

『遊園地デートですか~。さすが明日望さん。まさかここまで場を面白くしてくれるとは。これじゃ本当に士郎さんがクロさんに取られちゃうかもですね~』

 

 ゆ、遊園地デートだなんてうらやま……じゃなくて! アイツと一緒にいたらお兄ちゃんが取られ……き、キケンだから!

 

「ぜ、絶対に止めないと……! いくよルビー!」

 

『はいは~い。それじゃあいっちゃいましょ~う!』

 

 わたしはクロを止めるために魔法少女へと変身した。

 

 

 

 

「……ねえ。わたし、貴方達のデートに付き合うつもりはないんだけど」

 

 近くに新しく遊園地ができたから、えっちゃんと放課後デートで行く事にした。

 家で一人で待たせるのもアレだなと思い連れてきたクロは俺達の後ろを不満そうな顔をしてついてきている。

 

「俺も付き合わせるつもりはないよ。ちゃんとクロの相手は呼んできたから」

 

「相手?」

 

「うん。待ち合わせしてたんだけど……あっ、居た。お待たせー」

 

「おっ、来たか」

 

「お兄ちゃん!?」

 

 待ち合わせ場所に呼んでいたのは衛宮家のお兄ちゃん、士郎氏だ。

 

「ずいぶん遅かったな。イリヤは俺が迎えにいっても良かったんだぞ?」

 

「いやー、わざわざ来てもらったのにそんな手間はかけられないよー」

 

「……ちょっと、一体どういうつもりよ!」

 

 俺の背に隠れて小声で詰問するクロ。

 

「だってクロも士郎氏とデートした方が楽しいでしょ?」

 

「そうだけど! ……って、そういう事じゃないー!」

 

「まあ、後は若いお二人でごゆっくりー! 士郎氏、任せた!」

 

「ああ、ちょっとー!?」

 

 説明するのも面倒くさいので、後の事は士郎氏に全部丸投げした。俺は俺でえっちゃんとのデートを楽しむのだ。きっと我らがエ〇ゲ主人公は上手くやってくれるでしょう……

 

 

 

 

「まったく、呼んでおいて放置はないだろ……」

 

「あ、あの。お兄ちゃん?」

 

「どうしたイリヤ(・・・)?」

 

 わたし達を放置して行ってしまったアスノとえっちゃんさんに呆れているお兄ちゃんに恐る恐る話しかけてみる。どうやらまだわたしの事をイリヤと誤認しているらしい。

 良かった。イリヤじゃなかったらきっと、お兄ちゃんは私に優しくしてくれないだろうし。

 

「どうして、今日はここに……?」

 

「それは、明日望達に誘われたからってのがきっかけだけど……そうだな。こういうの久しぶりだろ? イリヤと俺だけでどこかに遊びに行くのって。ちょうどいい機会だからお誘いに乗りました。イリヤは嫌だったか?」

 

 お兄ちゃんにとっては久しぶりでも、わたしにとっては初めてだ。だけど、そんな事は言わなくていい。

 たとえ、お兄ちゃんがわたしをイリヤだと思っていても、折角の機会を逃したくはない。どうせなら、楽しまないと!

 

「そ、そんな事ない! うん……わたしも、すっっっごく楽しみ!」

 

「それは良かった。じゃあ行こうか」

 

 わたしは差し出されたお兄ちゃんの手を取った。

 

 

 

 

 遊園地のデートと言えば観覧車だろう。

 

「もぐもぐ……遊園地いいですね。チュロスにポップコーンにホットドッグ。よりどりみどりです。もぐ」

 

 売店で買った軽食を食べながら窓の外を眺めているえっちゃん。

 無表情に見えるけれど、俺にはわかる。なんせもう少しで2か月の付き合いだ。僅かに口角が上がっている。えっちゃんは内心ウキウキだ。

 

「楽しそうだねー」

 

 そういえば、観覧車の中で飲食っていいんだっけ……? まあ、魔術でいくらでも誤魔化せるしいっか。バレなきゃオッケーみたいだし。

 

「美味しいものがあれば、それだけでいいのです。美味しいは楽しい、なのです。和菓子があればもっと良かったんですけど……」

 

「和菓子アイランド……企画としてはアリか?」

 

 えっちゃんを満足させるためだけの遊園地。この一件が終われば、そんなものをつくる機会もあるかもしれない。頭の片隅に置いておこう。

 バレンタインに被せて、洋菓子の象徴、チョコレートに対抗していくイベント……って言ってもえっちゃんはなんでも美味しそうに食べるし、どうせやるなら食関係のイベントがない時の方がいいな。うん。エネミーは前作ったあんこサーヴァントを流用して……

 

「マスターさん。下、ライオンさんがいる」

 

「うん? ああ、そういやこの遊園地マスコットがライオンなんだっけ」

 

 思考を打ち切る。

 

 下を見ると、ライオンを模したでっかい乗り物が施設内のコースを回っていた。夜の遊園地特有のパレードだ。もうすっかり夜なのにその周辺だけはやたら明るい。

 

 ここの遊園地はマスコットキャラがライオンだけというやたらと尖った個性を持っている。ターゲットが二ッチすぎやしないだろうか。セイバーライオン……うっ、頭が…… 

 

「いいですね、あれ。後で乗らせてもらえないでしょうか」

 

「パレードだから難しいだろうなー。でも小っちゃいのなら下にあったし後で乗ろっか」

 

「しょーがないですね」

 

 えっちゃんがホットドッグの一かけらを呑み込む。

 

「……あとどれくらいの間、マスターさんはこうしていられるんでしょうね」

 

「……いつまでもこうやって、えっちゃんと一緒にいられたら、いいんだけどな。」

 

「その時までは、お供しますよ。わたしはマスターさんのサーヴァント、だから」

 

 ……俺も、えっちゃんも目を合わさない。合わそうとしない。

 こういう話題は、なんかいやだ。物語の終わりに登場人物がどうなるかなんて、わかりきっていた事だから。俺も納得していた筈だけど、日に日にそれを惜しいと感じるようになった。……えっちゃんもそう思ってくれてたら、嬉しいんだけど。

 

 地表のパレードの光を無心で見つめる。

 

「……あっ、衛宮さんとクロさんがライオンの近くにいますよ」

 

「う~ん……おっ、本当だ、いるなあ。……うん、二人とも楽しそうで良かった」

 

 えっちゃんの声でそれに気づいた。陰鬱な感情はひとまず、心の端に追いやった。

 

 でっかいライオンの近くで士郎氏とクロが手を繋いでそれを見ている。クロはとても自然な笑みを浮かべていた。

 

 この調子でクロにはもっと楽しい出来事を体験させてやらなきゃな。クロはもうイリヤとして生きれないかもしれないけれど、クロとして生きていてもいいんだから。その事をちゃんと自覚させてやらなきゃ。

 

 ……そして、ちゃんともう一つの方も狙い通りだ。

 

「やっぱりいるな、イリヤちゃん。ルビーがこんなイベントを見逃すはずがないとは思ってたから心配してなかったけど。……美遊ちゃんもいるな。一人でくるのは気が引けたか、あるいは……まあ、大丈夫だろ」

 

 士郎氏とクロの少し後方。人混みで兄の姿を見失ったのだろう。涙目で辺りを見回しているイリヤちゃんと、冷静にイリヤちゃんを抱き支えてはぐれないようにしている美遊ちゃんがいた。

 

 最近、あの二人の距離感が近いなー。俺とえっちゃん以外は男の子同士、女の子同士で恋愛するべきだと思うの。

 

 と、そんな冗談は置いといて。俺はそれを確認すると電話をかける。

 

「……あっ、もしもし、こんばんはっす。アイリ(・・・)さん。どうです。二人の様子は? すっごく楽しそうでしょ……」

 

 

 

 

「いやー、今日は遊んだなー!」

 

「あのなぁ、明日望。別行動するなら先に言ってくれよな」

 

「士郎氏なら大丈夫かなーって」

 

「まったく……」

 

 パレードが一通り終わった後、俺達は合流した。明日は休日だが、衛宮家には怖いメイドさんがいる。士郎氏を一人で帰す以上、あんまり遅くなりすぎるとかわいそうだ。

 やっぱり放課後に遊園地に行っても楽しむ時間は少ないな。今度は休日にしよう。

 

 今はえっちゃんとクロがお土産で何かないか見ている所で男2人だ。

 

「この後、イリヤはそっちに泊まるんだよな。明日望だから心配はしていないけど、変な事すんなよ」

 

「心配性なお兄ちゃんだなー。俺はえっちゃん以外では興奮しませんよーだ」

 

「……まあ、そうだろうな」

 

 両目を閉じて納得したようにそう言う士郎氏。おかしいな(日頃の行い)。

 

 それはともかく、その件とは別で言いたい事があったのだろう。士郎氏が真剣な顔でこちらを見つめる。

 

「後さ、あの子(・・・)に伝えといてくれ。『今日は楽しかった。君がなんでイリヤって名乗ったのかはわからないけど、今度は本当の君と遊びたい』って」

 

「! ……了解でーすっと」

 

 ……やっぱり、お兄ちゃんって凄いなー。何にも言ってなかったのにちゃんと理解してるんだ。クロがイリヤちゃんと違うって。

 

 期待してなかったと言えば嘘になる。けど、前日に色仕掛け事件を起こした時には動揺してまったく気付いてなかったぽいから、今回も気づかないかなーと思っていたけど。やっぱりわかるもんなんだなー。

 

 とにかく、これでクロの居場所がまた増えた。

 

「……お土産選び終わったみたいだな。それじゃあ、俺は帰るよ。明日望もあんまりはしゃぎすぎんなよ?」

 

「はいはい、わかってまーす。それじゃあ、また来週!」

 

 士郎氏に手を振る。

 

 言葉に嘘はない。俺ははしゃがないだろう。しかし……

 

 未だ出ていくタイミングを掴めずに隠れているイリヤちゃんの方を見る。

 

 事情を知らない士郎氏はいなくなる。イリヤちゃんも言いたい事が言えるようになるだろう。だが、それはクロも今まで言わずにいた事をぶちまける良いきっかけにもなる。

 

 となれば、起こる事は一つだけ。……姉妹喧嘩だ。

 

 

 

 


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