うちのサーヴァントは文学少女可愛い   作:Ni(相川みかげ)

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イベント予告を見て衝動的に書いた。本編で全然性格が違っても俺は知らん。


無印編
1.呼び出したのは色物サーヴァント


 3月 1日 晴れ

 

 なんか知らんけど死んでた。そして生き返った。

 ……いや、冗談じゃなく。信じられないだろうけど。ってか自分が一番信じてない。

 

 自分で言うのもなんだが俺はただの高校生だ。いつも通り、スマホ片手にFGOの宝物庫を周回しながら登校してたら急に視界がブラックアウト。

 目を開けたら「お前死んだから。fateの世界に転生しろ」(要約)と言われて、1LDKのマンションに強制転移。そして今に至る。必要最低限の家具だけがあるマンションの一室。窓からは慣れ親しんだ日本の家屋が並ぶ街並みが見える。多分ここは冬木市なのだろう。うん、自分で言ってて頭が痛い。我、片腹大激痛である。

 

 ……本当どうしよう。fate世界とか死亡フラグ満載すぎて俺みたいな一般人が転生しても人知れず死ぬ予感しかしないんですけど(名推理)。日記なんて書いてる場合じゃねえ!

 一応、姿見で確認した俺の外見は元のままだ。正義の味方を目指す衛宮某やフランシスコ・ザビなんとかや人類悪・『ガチャ』を司るビーストの姿じゃないから物語の本筋に関わる訳ではないのだろう。無いと信じたい。

 

 そもそもfate世界は平行世界が多すぎて今、自分がいる世界が何処か全くわからん。基本ギャグのカニファン時空だったらいいんだけどなあ……そんな訳ないんだろうなあ……Apocrypha時空でルーマニアが聖杯戦争の被害地になってくれればいいのに。

 

 まあ今いる世界がどの時空かはこの際どうでもいい(よくない)。問題は光る玉から与えられた能力である。どうやら俺は魔術師になったらしい。このまま30歳になったら魔法が使えるようになるのだろうか?

 魔術回路はちょうど30本。オンオフは最初から出来るみたいだ。無駄に気が利いているけど魔術の知識がないから宝の持ち腐れだ。むしろ魔術師というだけで死ぬ確率がグンと上がった。この世界は庇護を受けていない魔術師にとても厳しいのだ。我はつらい。とてもつらい。

 

 まあ、当然これだけで放っぽり出されても即死するだけなのでまだ特典はある。なんとサーヴァントと同じようなスキルが3つも身についているのだ。

 

 一つ目のスキルは『黄金律 C』!あのニーベルンゲンの歌に登場する英雄ジークフリート(すまないさん)を上回る効力だ。これで金銭には困らない人生を約束されるぞ!当然戦闘には役に立たないぜ!

 

 二つ目のスキルは『支援魔術 D』!魔術の知識がなくてもFGOのスキルが使えるぞ!ただしゲーム通り戦闘能力は皆無だぜ!

 

 三つ目のスキルは『直感 E-』だ!ピンチになるといい考えが浮かぶかもしれないぜ!ランクが低いから過信はせずに逝こう!

 

 ……根本的な解決になってないじゃねえか!

 

 回す方のノッブを見習って自分に強化魔術かけて起源パンチ☆でもすればいいのか?わからん。たすけて。

 

 まあいい。どうせこれらは全部オマケだ。最後の特典のコレがまだある。

 いつの間にか首から下げられていたペンダント、その先の小型の聖杯のアクセサリー。これは魔術礼装で原作の大聖杯やムーンセルと同じようにサーヴァント召喚の補助をしてくれるらしい。

 

 たった一度しか使えないし、令呪もないし、呼び出されるサーヴァントは大幅に弱体化しているがそれでも魔術師相手には戦力が有り余るレベルだ。

 

 まあ、問題は令呪も無いのに触媒なしで縁召喚しか出来ないって点なんですけどね……サーヴァント達の聖杯にかける願いに関しては知らない。使い方だけでそういう問題点は何にも教えてくれなかったからな。

 その点は無視するにしても果たして俺なんかに歴史に名を残す英雄(サーヴァント)が従ってくれるのだろうか?俺が支払えるものなんて何もないぞ。特に大義もない。ただ俺がこの世界で生きるための手助けをしてくれと頼まなければいけない。こんなの悪性のサーヴァントを呼び出したらその瞬間に首チョンパまであり得る。

 

 ……ステラさん程の人格者じゃなくていいから、せめて落ち着いて話を聞いてくれる善性のサーヴァントが呼び出されてくれないだろうか。

 

 ……何にせよ、サーヴァント召喚をするしか無いみたいだ。これが最初で最後の日記になるかもしれないな。いや日記じゃなくて遺書になるな。……上手くいったならこの続きを書こう。ちゃんと毎日書いてこの遺書を日記にしてやろう。

 

 どうかマトモなサーヴァントが召喚されますようにっ!

 

 

 

 

 遺書代わりに愚痴を書き込んだノートを閉じる。

 これから一世一代の賭けに出るとは思えないほど、心は落ち着いていた。状況確認のために色々書き込んでいる内に整理はついたらしい。転生したって物語の主要人物じゃないのだ。俺がここで失敗しても物語は成り立つ。そう考えれば気楽なものだ。

 元の世界に帰れるとは思えないし、このまま魔術師共の玩具になるくらいなら拾った命でもなんでも賭けてやるさ。

 

 原作のように長ったらしい詠唱はいらない。ただアクセサリーを握りしめて魔力を込める。ただそれだけだ。

 魔術回路を開き、慣れない感覚に戸惑いながら聖杯型アクセサリーに魔力を流し込む。

 密閉された室内に何処からか風が吹き荒れる。絨毯も敷かれていないフローリングの床に光で魔法陣が描かれる。

 体から何かが抜け落ちていく感覚に身を任せ、俺を手助けしてくれるサーヴァントの事を思う。

 果たしてどんなサーヴァントが呼び出されるのだろうか。出来ればちゃんと話を聞いてくれるサーヴァントだといいな。……いや、俺が呼び寄せるんだ。これから俺が生きる手助けをしてもらうサーヴァントだ。そんな受け身じゃなくて自分の意思で願うべきなんだ。

 大きく息を吸い込んで、気合を入れる。自分の未来を掴むために、より良いサーヴァントを引き寄せようと俺は大きく叫ぶ!

 

「―――誰でもいいから可愛い女の子来いっ!」

 

 ……正直、その掛け声は自分でもどうかと思った。

 

 だが、そんな煩悩まみれな思いにも聖杯は答えたらしい。風がより一層大きくなり、魔法陣が大きく光り輝く。

 

 光が止み、目を開けた先に人の身を超えた存在が顕現していた。

 

 髪の色は色素が抜けたようなくすんだ金、髪と同じ金色の目からは強い意志が感じられる。肌は病的なまでに白く、だけどそれが彼女の魅力を引き出している。そして……

 

 ……シンプルな飾らないデザインの眼鏡。首元を覆う赤のチェックのマフラー。藍色のセーラー服。その上に紺色のパーカー。黒のブーツ。

 

 そのサーヴァントは今風のファッションに身を包んでいた。

 

(…………色物サーヴァントだーーーーっ!?)

 

 気怠げな体を何とか支え、その姿を確認した俺は長い沈黙の後、心の中でそう叫んだ。

 

 いや!確かに美少女だけど!なんか違う!巌窟王さんがここにいればいい顔でツッコミを入れてくれたに違いない。

 

(アルトリア顏、眼鏡っ娘、学生服……いい加減にしろよ武内。ってそんな事言ってる場合じゃない!どう見ても色物だし、なんか変な格好してるけど間違いなく彼女はセイバーオルタ!俺の勝手な用事で呼び出したなんてバレたら速攻で殺されるぞ!?)

 

 畜生、賭けは失敗か!いや、まだだ!ギャグ時空ならジャンクフードを大量に貢げばもしかしたら命だけは勘弁してもらえるかもしれな……

 

「マスター?」

「ぴあっ!」

 

 俺の動揺を見透かしたのか彼女が声を掛けてくる。情けない声が出てしまうが、腰を抜かさなかっただけでも頑張ったと褒めて欲しい。

 しかし、そこから何を言えばいいのかなんて全く頭に浮かばなかった。俺が召喚の疲労感と緊張で口を閉ざしていると彼女の方から再び声を掛けてきた。

 

「サーヴァント狂戦士(バーサーカー)です。マスター、表情が優れないみたい、だよ?寝ていた方が良いんじゃないかな?あ、お粥でも作ろうか」

 

(……天使かっ!)

 

 俺は一度でも彼女を恐れた事を恥じた。可愛いは正義!ヤッター!

 

 

 

 

 3月 2日 晴れ

 

 1日空いてしまったけど日記の続きを書こうと思う。

 

 Xオルタちゃん可愛いヤッター!やっぱりセイバー狂いのアサシンと違って俺のバーサーカーは最強だな!

 

 召喚の後、彼女は甲斐甲斐しく召喚の影響でマトモに動けない俺の世話を焼いてくれた。元があの王様だとは思えないぜ。青はオワコンとか言ってスミマセンでした。

 

 属性盛りすぎかよと思ったけどあの謎のヒロインXのオルタ体ならそれも頷ける。むしろなんでアレからこんな天使が生まれたのか。

 

 今日1日はずっと家に居たのだが、こちらの世界の情報を備えてあったパソコンで調べていた俺の背中に寄りかかって彼女は部屋にあった本を読んでいた。時折彼女が鼻唄を口ずさんだりしていて、なんだか微笑ましいなって思った。

 

 言葉数は少ないけど、俺に友好的で、なんかいい匂いするし、一緒にいると安心するというか……うん。

 

 彼女がいれば、俺もこの世界でなんとか頑張っていけるかもしれないな。

 

 

 

 


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