ゼロの使い魔は芸術家   作:パッショーネ

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29/2/25
以前の10話を読まれていた方々、大変申し訳ありません。
ちょっと話の展開を勝手に変えさせていただきます。
詳しくは、活動報告のところに書いておきます。

本当に申し訳ありませんです。




10,トリステインの城下町にて

 

 

 

 

ハルケギニアの暦には『虚無の曜日』という日がある。その日の魔法学院は、基本的に休日となっており、生徒各々が自分の好きなことを行える日でもある。

そんな虚無の曜日での出来事である。

 

 

「デイダラ、町へ買い物に行くわよ!」

「町?……何を買いに行くんだ?」

「剣よ。えーと、こないだの決闘でのあんたの功績を讃えて、私から剣をプレゼントしてあげようってワケよ。ありがたく思いなさい」

 

 

ルイズはこう言っているが、おそらくは先日のキュルケとの一件の後で、ルイズがしでかしてしまった横暴の数々に、流石のルイズもバツが悪いと感じたのか、その免罪符を狙ってのことだろうとデイダラは判断した。

 

 

(こいつはやっぱり分かりやすい性格してるな、うん。しかし、町か…)

ルイズの性格を分析しつつ、デイダラは考える。

まだ字を完全に読めるワケではないが、先に町へ行ってみるのもいいだろう。別に剣はいらない気もするが。

 

「……そうだな、オイラは構わないぜ。今から出るのか?」

「そうね。ここからだと、町まで二、三時間はかかっちゃうからね。すぐに出発するわ!」

 

 

ルイズに急かされる形で部屋を出る。

「早く支度しなさい」と言ったルイズだったが、しかしデイダラには特に準備することもなかったので、支度はルイズ待ちとなっていた。

 

 

「遅いぞ、うん」

「……うっさい」

主人の面目もあったもんじゃないルイズであった。

 

 

 

 

 

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外へ出ると、ルイズは馬をひいて来る。

 

「なんだ?馬に乗って行くってのか、うん?」

「当たり前じゃない。まぁ安心なさい。私の腕なら二時間で町へ着けるから」

 

自慢気に胸を張って言うルイズ。だが、デイダラからの反応はない。

デイダラの方を見ると、自分を尻目に粘土を片手で握るデイダラに気づく。

 

「ちょっとー。何してんのー?」

「ただ町へ行くってだけに、チマチマと馬なんかに乗ってられるかよ。うん」

そう言うと、デイダラは粘土を握っていた手を開く。そこには赤土色の粘土で創られた鳥の造形品ができあがっていた。

 

(毎回思うけど、よくもまぁ片手で握るだけでこんな繊細なデザインの人形が創れるわよね…)

 

もしかしたら、こっちの方がよっぽどな異能なんじゃないだろうか。

デイダラの一瞬の創作過程を見て、頭の中で感想を呟いていると、デイダラが先ほど創った作品を、ポイっと地面へ投げる。

 

彼が印を結ぶと、鳥型の造形物は、一度煙に包まれた後、人二人は乗せられそうな巨大な姿へと変わっていた。

 

「町へは、空から行く」

「!!……うわぁ〜」

 

(ま、まずいわ…!せっかく得意の乗馬でご主人様の威厳を見せてあげようと思ってたのに……。私の使い魔、ちょっと多芸すぎない?)

ルイズとしては、自分の出番を潰され、ちょっと面白くないが、素直に使い魔の能力に驚く。

 

二人が大型の鳥の背中に乗ると、一気に空高くまで飛び上がった。

 

「わぁ〜〜!凄い!」

「ふふん。そうだろう、そうだろう」

飛行魔法のフライを使えないルイズには、空へと飛び上がるのは初めてのことなので、素直に感動してしまう。

 

「やっぱり空って良いわね〜!眺めもいいし、気持ちいいし、って……」

ふと、何かに気づくルイズ。おもむろに、自分の肩を抱く。

 

「………空ってやっぱり寒いのね。デイダラ、ゆっくり飛びなさい」

「…情けねぇな〜、うん」

呆れ顔を見せるデイダラ。

今は大目に見よう。とにかく、風をある程度抑える為に、ゆっくり飛んでもらうように指示をするルイズであった。

 

 

 

 

 

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同日同時刻。キュルケはその光景を目撃していた。

愛しのデイダラが、憎っくきルイズと一緒に町の方へ飛び立って行くのを。

 

「まさかダーリンにあんな能力があったなんて!ますます惚れ直したわ!……って、それどころじゃないわね」

 

キュルケは支度を済ませると、部屋を飛び出した。あんな風に空を飛ばれると、こちらも追いつくには空を飛ぶしかない。

キュルケは急いで、親友であるタバサの部屋に向かった。

 

 

 

 

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「タバサ〜〜!」

キュルケは、タバサの部屋に着くなり、ドンドンと扉をノックしたが、返事がないので魔法で無理矢理鍵を開けた。

 

部屋に入って、すぐに読書をしている彼女にまくし立てるが反応がない。どうやら魔法で音を消しているようだ。

キュルケは、タバサから本を取り上げると自分の方へ向き直らせる。どうやら気づいてくれたようである。

 

「虚無の曜日」

タバサは短く主張した。確かにタバサにとって、本の世界に浸れる虚無の曜日は重要だ。だが、キュルケも引くに引けないのである。

 

「貴女にとって虚無の曜日がどんな日だか、よーく分かってるわ。でも今は時間がないの。恋なのよ恋!」

キュルケの説得にタバサは首を傾げる。そうだ、この娘は説明しないと動かないのだ。

 

「あのね、あたし恋をしたの!それでその人があの憎っくきルイズと一緒に空を飛んで行っちゃったの!追いかけるには貴女の使い魔の力が必要なのよ!」

「それは、彼女の使い魔の?」

助けを求めるキュルケの説明を聞き、タバサは確認をするように尋ねる。

この娘もデイダラに関心があるのだろうかと、ふと疑問に思うキュルケであった。

 

「そうよ、ルイズの使い魔になったデイダラって人よ?」

「……待ってて」

キュルケに確認をとると、タバサは窓から顔を出し、口笛を吹いて自身の使い魔を呼んだ。彼女の使い魔はウィンドドラゴンの幼生、名を『シルフィード』という。

 

それを了承の意と判断すると、キュルケはタバサに抱きついてお礼を言う。

 

「ありがと〜タバサ!そんな貴女が大好きよ!」

「気にしないで良い。私も少し、興味があるから…」

タバサの発言に、キュルケはちょっと驚く。が、今は時間があまりない。詳しく聞くのは空の上でも良いかと考えて、タバサと共にシルフィードの背に乗る。

 

「どっち?」

「ん〜、多分だけど、城下町の方?あ、超特急でお願いね!」

タバサはコクリと頷くと、自身の使い魔にそのまま命じる。いざ、デイダラを追いかけに城下町へ。

 

 

 

「ところで、タバサもデイダラのこと気になるの?」

「……私の生徒」

へ??と、軽く素っ頓狂な声を上げてしまうキュルケ。

 

「えー!なになに!?すっごい気になるわ!ねぇどういうことタバサ〜?」

「……教えない」

え〜、教えてよ〜。とタバサの肩を揺するキュルケ。

 

結局、タバサは当分の間は読書を再開できなかったそうだ。

 

 

 

 

 

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「なんであんたが来てるのよツェルプストー!」

「ふん。あたしがいつ、どこに行こうが、貴女には関係ないでしょうヴァリエール」

 

「おい。なんでお前までここにいる、うん?」

「…頼まれたから」

 

 

ここはトリステインの城下町。

ルイズは、町の門を素通りして、検問をも無視しようとするデイダラを一喝し、町の門の側へと鳥を下ろさせたのだ。

 

そうして、門の側でルイズとデイダラが一悶着していると、なんとキュルケとタバサが立派なウィンドドラゴンに乗ってやって来て、今に至っている。

 

 

「貴女こそ、あたしが彼を狙ってると分かったら、なぁに?プレゼント攻撃でもするつもり〜?」

まったく図々しくも抜けがけして、というキュルケ。

 

「あんたには関係ないでしょ!もう、どっか行ってよ〜!」

「…あら、図星だったの?これだからトリステインの女はイヤね〜」

ルイズがデイダラに、何かをプレゼントすると気づいたキュルケは、もうどこまでもついて行きそうな雰囲気だ。

 

 

ルイズとキュルケが、二人で言い合いを始めたのを尻目に、デイダラの興味は自分の側に立っているタバサの使い魔に向いていた。

 

「おい、タバサ。こりゃお前の使い魔か?」

「そう」

デイダラの問いかけに、タバサはゆっくりと頷くと肯定の返事をした。

 

「ほう〜、そうかい。オイラは実物の竜を見るのは初めてだからな。こいつァ、よりオイラのインスピレーションが沸きそうだ。うん」

デイダラは、うんうんと満足げに何度も頷く。

 

それを眺めながら、タバサも自分の疑問をデイダラに問う。

 

「貴方達は、どうやって空を?」

「ん?そりゃあ当然、オイラの芸術でだ」

上を見てみろ、というデイダラに促されて、タバサは空を見上げる。

 

すると、赤土色の鳥が小さく見えた。地上から見ただけなので、あくまでタバサの考えだが、人二人乗せられる大きさとなると、先の決闘で見せた鳥とは比べ物にならないものだろう。

 

「あれも、貴方がつくったの?」

「ああ、もちろんだ。オイラは芸術家だからな、うん」

肯定するデイダラに、タバサは素直に「すごい」と零した。

決闘でも、様々なバリエーションを見せていたが、どうやらアレだけではないのだと知ると、もはや感嘆しかない。

 

 

デイダラが、タバサの感想に気分を良くしていると、ルイズとキュルケが近づいて来た。

キュルケはにっこり笑顔。ルイズは憮然とした表情だ。

 

「ゴメンね〜、ダーリンにタバサ〜!お待たせ〜」

「誰がダーリンだ、誰が」

ウンザリといった様子で反応するデイダラ。

タバサは無言のままキュルケの元へ移動する。

 

「さ、デイダラ。こんな色ボケ女は放っておいて、さっさと町へ行くわよ」

「ちょっと!誰が色ボケよ!」

再び口論を始めるルイズとキュルケは、そのまま言い合いを続けながら町へと入っていき、デイダラとタバサもそれに続いて行く。

 

口論する二人を眺めながら、こいつらホントは仲いいんじゃねぇか?と疑問に思うデイダラであった。

 

 

 

 

 

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トリステイン城下町。

ここは白い石造りの町となっており、魔法学院に比べると質素な身なりの人間が多かった。平民の割合が多いのであろう。

道端で声を張り上げ、果物や肉、籠などを売る商人達や、のんびり歩いたり、忙しなく歩いている人間がいたりと、老若男女取り混ぜている。

 

しかし、デイダラにはそんな光景などどうでもよくなる程に、ある不満があった。それはーー

 

「狭いな、この町……」

 

そう、道が狭いのだ。ここは城下町の中でも大通りに位置する道なのだが、それでも道幅は五メートルもない。

そこを大勢の人が行き来するのだから堪ったもんじゃない。

 

「文句言うんじゃないわよ」

「でも確かに狭いわよね。あたしもこの狭さは苦手よ…」

よく人とぶつかっちゃうし、と言うキュルケ。

 

「ふん。あんたが無駄にデカいからじゃないの〜?」

「あら?僻み?や〜ね〜、これだからトリステインの女は」

「……お前らおんなじやり取りしかできねーのか、うん」

バチバチと睨み合う二人を諌めながら、デイダラは、さっさと目的の店に行って済ましちまおうと主張した。

 

「あ、そ、そうね」

我を取り戻したルイズが同意する。

 

キュルケは、そんな二人の様子が面白くなかったのか、自分も何かをデイダラにプレゼントしようと考えた。

 

「ねぇダーリン!あたしも何かプレゼントするわ!ほら、先日のお詫びに…」

「誰がダーリンだっつの。……ん〜、何でもいいのか?」

デイダラの返事にキュルケは気分を良くして「もちろんよ」と言った。

 

「ちょ、ちょっとデイダラ!あんたさっきと言ってること違ってない⁉︎」

「まぁいいじゃねーかルイズ。くれるっていうもんは貰っといて損はないぜ?ちょうど今着てるものとは別の外套が欲しかったところだ。うん」

そう言ってデイダラとキュルケの二人は、近くの服屋へと入って行く。

 

ルイズは再び、憮然とした面持ちとなる。

そんな彼女にタバサが声をかける。

 

「ファイト」

「なにがよ…!」

 

 

 

 

 

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次に一同がやって来たのは、ルイズの本命である武器屋である。

 

「貴女、剣なんてプレゼントするの?やっぱりトリステインの女は野蛮ね…」

「ちょっと!それをゲルマニア人のあんたに言われたくないわ!」

「お前ら、今日何度目だよ…うん」

「………」

相も変わらずに言い合いを始めたルイズとキュルケを先頭に、一同は武器屋へと入っていく。

 

武器屋の中は昼間だというのに薄暗く、ランプの灯りが灯っていた。壁や棚に、所狭しと剣や槍が乱雑に並べられ、立派な甲冑が飾られている。

 

 

「こいつは驚いた!貴族のお客様がこんなに!へい、どんな剣をお求めで…」

武器屋の店主は、ルイズ達が貴族だと気づくと、氣分良さげに話しかけてきた。

 

「私の使い魔に持たせる剣よ!」

胸を張っていうルイズ。

「へいへい、その御仁にならこんな剣は……」

 

「この剣がいいんじゃない?」

一際豪華な装飾がされた剣をとるキュルケ。

「こっちの方がいい」

一際大きい剣を危な気に持つタバサ。

「あら、それ良いわね」

タバサに同意するルイズ。

「あ、あの〜、貴族のお客様方!店の物をあまり弄らないでください…!」

 

「……やっぱりオイラには剣なんざいらねーな。うん」

そんな光景を一人離れた位置で見ながら言うデイダラ。彼女らが選ぶ物に限らず、この店に置いてある剣はどれも、見てくればっかりという物が多かったのだ。

 

 

もう興味を失ったので、デイダラは先に店を出ようとした。その時ーーー

 

「おでれーた!あんた『使い手』だな!おい、俺を買ってってくれ!」

人がいない、安物の剣がまとめられた樽しかない店の隅で、声がした。

「なんだァこいつは?」

デイダラが手に取ったのは、世にも珍しい喋る剣であった。

「なあなあ、いいだろう?役に立つぜ!」

「んー、喋る剣とは珍しいが、オイラは剣なんざ使わねーんだ。それに、お前は芸術家であるオイラの琴線に触れねぇ…うん」

それに外見がみすぼらしいし、とデイダラは喋る剣を元の樽へと戻そうとする。

 

「ああ〜、待ってくれ!俺は魔法の目利きができる!あんたの役にもきっと立つぜ〜!」

再度、自分のアピールをする喋る剣。

その発言に、デイダラは食いついた。

 

「魔法のだと?本当だろうな、うん?」

「あたりめーだぜ、俺様を誰だと思ってやがる。ウン千年の時を生きるデルフリンガー様だぜ。魔法なんざウンザリする程見てきた!」

さっと顎に手を当てて一考するデイダラ。そして、ーーー

 

「おいルイズ、こいつにするぜ。うん」

「ええ〜??そんなの〜??」

 

かくして、デイダラの持つ剣が決まった。

喋る剣『インテリジェンスソード』のデルフリンガー、渾名をデル公。

 

 

 

 

 

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本日のメインの買い物も済み、このまますぐ帰るのも味気ないので、折角なので町で遅目の昼食を食べることになった。

 

「これ、私のオススメ料理」

「うおッ⁉︎何だ、この苦味⁉︎」

 

タバサのオススメ料理、ハシバミ草のスープを差し出されたデイダラだったが、匂いだけで拒絶する。タバサは不満そうだがデイダラには関係ない。

 

「なぜ、食べないの?」

「食えるか、そんなもん!てめータバサ!それをオイラの卓に寄越すんじゃねぇ。爆破させるぞ!うん!」

「ちょっとデイダラ!ここ店の中なんだから騒がないでよ!」

 

そんなやり取りを、キュルケは少し微笑ましそうに眺める。その焦点には、デイダラではなくタバサが映っていた。

 

「うふふ。なんだかタバサ、いつもより楽しそうだわ」

「え?あれで、なの?」

キュルケの呟きに、ルイズが反応する。

タバサとの付き合いの浅いルイズからは、いつもの無表情にしか見えなかったが、キュルケから見るとそうではないようだ。

キュルケは、普段よりも口数の多い親友を見て微笑む。

 

「まったく、食事中くらい静かにしなさいよね」

「あら、いいじゃない偶には。ホントにヴァリエールってば空気読めないのね」

なによそれ、とルイズはキュルケに食ってかかるが、今回はキュルケが言い争う気分でもなかったので、いがみ合いはそこで終わる。

 

 

 

 

食後。

飲食店を後にして、一同は学院へと戻るために、再び喧騒まみれる大通りへ戻って来た。

その道中、デイダラがこっそりルイズに話しかける。

 

「そういや、この世界にも犯罪者の指名手配ってあるんだな」

「……そりゃあるわよ。ていうか、あんた字が読めないのに何で分かったの?」

「オイラを舐めんなよ。路地にあれだけそれっぽく貼り紙されてりゃ、字が読めなくても分かるぜ。うん」

自信たっぷりに言うデイダラだったが、字が読めないのだから、ルイズの目には少し滑稽に映った。

 

「だが、指名手配犯の名前の欄なら少し読めたところもあってな。それで、二つ名を持った犯罪者がいるってことに気づいたんだが、どういうワケだ?うん?」

二つ名とはメイジ、つまり貴族が持つ通り名のことだろう?と問うデイダラ。

 

ルイズは「ああ、そのことね」と、デイダラの問いを受け取ると、簡単な解説を述べる。

 

「簡単なことよ。貴族は全員がメイジだけど、メイジの全員が貴族というわけじゃないのよ。いろんな理由で、例えば勘当されたり、家を捨てたりした貴族の次男や三男坊が傭兵になったり犯罪者になったりするってワケよ」

「ほう、なるほどな」

興味深そうに相槌をうつデイダラ。

 

「そういえば、さっきの武器屋の主人も言っていたわね。このトリステインで、最近メイジの泥棒が暴れてるんだって」

「へぇ。……そいつは強いのか?うん?」

「強いかどうかなんてのは分からないけど、そいつは、わざわざメイジである貴族をターゲットにして盗みを働いてるみたいだから、よっぽどの腕を持ってることは確かね」

恐らく、トライアングルクラスは堅いわ。とルイズは話を締め括る。

 

ルイズは、世間話のつもりで喋っていたのだ。だから、隣で不敵に笑う使い魔の姿に気づかずにいた。

 

 

「……犯罪者となったメイジか。そんな連中が目の前に現れてくれりゃあ、いろいろ楽しめそうなんだがな。うん」

物騒な独り言を言うデイダラ。

 

 

言霊という言葉がある様に、デイダラのその独り言は、声に出したことである種のフラグとなった。

彼の望みは、なんと僅か数時間後に訪れることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 


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