東方妖精生活録   作:kokonoe

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この小説はうp主が、だれかこういう小説を書いてくれないかなぁという願望をもとに書いている趣味ましましの誰得小説です。


6話目ー紅魔館

春の兆しが見え始めたといっても、まだ朝は冬と同じくらい寒い。流石につららや水が氷ったりなんかはしないが、吐く息が雲みたいに白く染まって、空気に消えていくさまを見ると春の麗らかな日差しが待ち遠しく感じる今日この頃だ。

 

さて、俺は今日も今日とてメイド服に身を包み朝の業務の真っ最中である。洗濯物をしたり掃除をしたりで結構忙しい。

 

メイド長である咲夜さんに誘拐・・・もとい脅し・・・もといテイクアウトを食らった俺はその後、レミリアの前まで連れていかれて即採用が決定された。レミリアのあの意味深なカリスマ微笑がいまだに頭から離れないのはなぜだろうか。

 

その後はとんとん拍子だった。なぜかサイズのぴったりなメイド服を支給され、てきぱきと仕事を教え込まれて早数日。メイド業も様になってきた頃合いである。これ以上ここに慣れてしまったらなし崩し的に永久就職してしまいそうで非常に危機感を持っているが、まあ妖精生はとても長いと聞く。数か月くらいならここでこのまま働いてもまあ問題はなかろう。

 

さて、最近は紅魔館は妖精の就職に力を入れ始めているようで、俺と同じような格好をした妖精たちが増え始め、俺の仕事を代わりにやってくれるようになったので幾分か忙しさも薄まってきた・・・と喜んでいたのもつかの間、それを見越していたのだろうか、俺は咲夜さんから庭の手入れを任命されてしまうことになってしまった。仕事が減ったと思ったら増えていた。前世の記憶が思い返されてうっ頭が。

 

まあ手入れと言っても、先にここにいた庭師の手伝い程度らしい。今日初めて会うのだが、いったいどんな人なのだろうか。

 

いわれた通りの場所に行く。紅魔館本館の外、つまり庭の場所なのだが、その端のほうに小さな小屋のような場所がある。どうやらそこが集合場所のようだ。

 

「・・・?」

 

よく見てみると、小屋の壁に人が一人背を預けて立っていた。緑色のチャイナ服を着た、赤い髪の毛の美女である。あれ、もしかして庭師って美鈴さんのことだったり・・・?

 

と近づいてみるが、相手は無反応。俺が近づいて顔を覗き込んでみても一切反応しない。よく見てみると鼻から提灯が出ていた。寝息も聞こえる。どうやら立ったまま寝ているようだ。

 

「・・・」

「んー・・・咲夜さん、後5分だけれすからぁ・・・」

「・・・」

「・・・うぇ?」

 

起きた。目と目が合う。美鈴さんはそのまま少し固まって、照れたように顔を赤らめた。

 

「あれ、少し寝てましたか・・・えっと、あなたがクロさんでよろしいので?」

「・・・!」

「ふふ、朝から元気があってよろしい。私は紅美鈴。ここの門番兼庭師をやっています。今日はよろしくね」

「・・・!」

 

手を差し出されたので俺も手を握る。あったかくてまるで太陽の光のような手だった。パンがうまく焼けそうな感じだ。寒さも相まっていつまでも握っていたくなる手のひらだった。

 

「・・・ちっちゃい。かわいい」

「?」

「あ、いやなんでもないですよ!じゃ、早速仕事に取り掛かりましょうか!」

「・・・!」

「ん?なんです?」

 

俺はハンカチを差し出した。

 

「・・・そ、そういうのはもっと早く行ってほしかったです・・・」

 

美鈴は受け取ったハンカチでそっと口元をぬぐった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「そうそう、そのあたりはもう少し水をあげてやってくださいね」

「・・・!」

 

俺はジョウロで水をやりつつ、ふー、と一息汗をぬぐった。結構力作業があって妖精の身空では難しいところもあったが、すかさず美鈴さんがフォローしてくれるのでとてもやりやすい。

 

どうやら美鈴さんは人に何かを教えるのがとても上手なようだ。とても優しくてなんでも知ってるので、尊敬度はここ数時間でうなぎ上りである。

 

「・・・?」

「はい、今日のところはこれで終わりですね。明日は向こうの方にも手を付けますので、よろしくお願いしまね」

「・・・!」

 

ふー、一仕事終えた後の達成感と言ったら・・・俺は美鈴さんにうなずきながら、胸をどんとたたいた。美鈴さんと一緒なら何度でもお手伝いする所存である。

 

「ふふ、頼もしい限りです・・・さてと、それじゃ私はそろそろ門番の仕事に行かなければいけませんので」

「・・・?」

「え?ああ、朝ごはんですか?まあ私妖怪なので、1、2週間飲まず食わずでも全く問題ないですからねー」

 

なん・・・だと・・・!?俺は美鈴さんの言葉に衝撃を受けた。

 

朝ごはん。それは今日一日を大切に、そして大事に生きていく上での一番重要な要素の一つである。朝ごはんを食べなければ人はその日一日を数%ほどの力でしか生きることができず、また、成長にも多大な影響を与えることが・・・ましてや美鈴さんのような別嬪さんが朝ごはんを食べないとなると、美容にも影響を及ぼしてせっかくの綺麗な髪やつやつやな肌が衰えてしまう。それは何としても、そう、何としても阻止しなければいけない案件であり、俺はこの事について全力をもって対処させてもらわなければいけないのだ。これは義務ではない。一つの戦争、一つの戦いなのである。

 

・・・ということを美鈴さんに訴えると、美鈴さんは顔を真っ赤にして「え!?わ、わたしが綺麗とかそんな・・・」とか照れていた。

 

「でも、門番の仕事も大切ですし・・・」

「・・・!」

「え?そんな、いいんですか?」

「・・・?」

「ふふ・・・もちろんです。それじゃ一緒に食べましょう。先に門の方で待っているので、よろしくお願いしますね」

 

美鈴さんは俺の頭を撫でて、とてもうれしそうに笑顔を浮かべた。

 

ふっ、今日も一人の女性を救ってしまったぜ。俺は意気揚々と厨房へと向かい、せっかくだから俺自身が作ってやろうと腕をまくった。

 

美鈴さんと食べたご飯はとてもおいしかったです。

 

でもその後、様子を見に来た咲夜さんが少し不機嫌になってしまったのはなぜだったのだろう。もしかしてこうしてのんびり朝ごはんを食べる時間があったら仕事をしろよ、的な感じだったのだろうか。一応その後咲夜さんもどうですか的な感じで誘ってみると、なぜか機嫌が少し治ったのでまあめでたしめでたしである。

 

 




遅くなってしまって申し訳ございません。ちょっと忙しかったので書く気力が起きずにいました。これからは2,3週間に一回のペースで続けられそうです。



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