東方妖精生活録 作:kokonoe
朝が来た。
冬も終わり、春の兆しがかすかに現れ始めた今日この頃。雪が降らなくなっても相変わらず幻想郷はゆったりした時の中を流れている。すでに俺の中では都会の喧騒など過去の遺物だ。
「…んん」
俺はベッドから起き上がって、そしてしばらくぼおっとする事数分。ようやくのそのそと起き上がって顔を洗う頃には太陽は完全に昇っていた。洗面所で顔を洗って服を着替えて、お手製のエプロンをその上から着て朝ご飯の準備だ。
「…?」
しかし、俺はとある違和感に首を傾げた。家の中は俺一人が住むのを想定しているため、かなり簡単な作りとなっている。玄関から入れば食事などを行うリビング、玄関と向かい合うようにドアがあって、そこから行くと洗面所とトイレと風呂、そして倉庫へとつながっている。リビングはキッチンやらとつながるように設置されており、隅の方にはロフトへとつながるはしごが降りている。
そのロフトは俺がいつも寝ている場所だ。ベッドと鏡、棚などがそろっている。さらにロフトは俺が夜空を見たいがために大きな窓がある。
まあありていに言うとリビングは吹き抜けになっている。ロフトがある分天井が高い訳だ。
だけど、なんだか今日は…。
「…?」
うーん、やっぱりちょっと暗い気がする。寝起きはちょっとぼおっとしていて気が付かなかったけど、顔を洗って目が覚めた今なら普通に気が付くレベルだ。
暗い?うーん、やっぱり暗いよな。いつもは窓からこぼれる朝日が部屋の中を明るくしてくれていたはずなのに。
「…ん?」
俺は窓のカーテンをおもむろに開けた。
「…!?」
その窓は森の方を向いているはずであり、開ければ森が見えるのが常のはず。
だというのに、今日は違った。
壁だった。
レンガの壁だ。真っ赤なレンガの壁が窓の数十センチに聳え立っていた。
「…!?」
俺は驚きに声にならない悲鳴を上げて、すぐに扉を開けて外に出て、そして愕然とした。
俺の家は湖のすぐ脇に建っている。当たり前の事だが昨日までは家の周りには森が広がっていた。森と湖に囲まれた家。この風景は俺のお気に入りに風景だったりする。
だというのに、だ。今、俺の目の前には、いつもの風景を塗りつぶすがごとく真っ赤な洋館が建っていたのだ。
い、今起こった事を話すぜ…!朝、起きたら家の真横に真っ赤な洋館が建っていた。何を言っているか分からねえとは思うが、俺も何が起こったのか分からない…!因幡の悪戯大好きロリうさ耳娘や這い寄るスキマの妖怪気まぐれBBAとは違う、もっと恐ろしいもののその片鱗を味わったぜ…!
「…」
ーーーーっていうか、これ紅魔館じゃね?
一気に冷めた頭で、俺は遅まきながらにそんな事に気が付いた訳だっ
紅魔館。吸血鬼、レミリア・スカーレットの住処であり、更に紅美鈴や十六夜咲夜、パチュリー・ノーレッジに小悪魔、そしてレミリアの妹であるフランドールがいる場所である。
ここが幻想郷だと分かって、なら湖の近くに紅魔館があるはずだと観光気分で探したことがあるのだが、見当たらなかったので首を傾げたことがある。やっぱり原作の幻想郷と俺がいるこの幻想郷は、違う場所なのかなぁと思っていたのだが…。
まさかこんな唐突にぽんと生えてくるなんて、不意打ちにもほどがあるだろう。びっくりだよ本当。
それにしても近所…っていうか壁と壁の隙間に子猫1匹入らない程の近所にまさかの引越しである。え?俺ここに住んでて良いの…?っていう気持ちがふつふつと湧き上がってくる。俺の小さな家の場違い感が半端じゃない。悲壮感すら漂って来ている。
「…(´・ω・`)」
俺はなんかショックを受けて、とりあえず家でご飯を食べることにした。難しいことは後で考えようそうしよう。
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朝ご飯を食べてお皿を洗っていると、扉をノックする音が。規則正しく、されど聞きやすいように絶妙な力加減のノックである。俺は首を傾げた。チルノはそもそもノックせず入ってくるし、大妖精は声をかけてくれる。アリスさんは事前に来るときに言ってくれるし、魔理沙はチルノと同上。
俺はとりあえず急いで扉を開けた。
「…おはようございます」
そして、俺は仰天した。
銀髪の美しいメイドさんがそこにはいた。凛と伸びる背筋、品のある立ち居振る舞い。
俺は彼女の名前を知っている。一方的にだが。
瀟洒で完璧なメイド、十六夜咲夜その人である。まるでガラス細工のように整った表情は、氷のような目で俺を見下ろしていた。
「朝早くにごめんなさい。今からちょっとよろしいかしら?」
そんな言葉に断ることなど出来るはずがなく…。
咲夜さんは俺の姿を頭のてっぺんからつま先までまるで何かを見定めるように眺めて、一つ満足したかのように小さく頷いてこう切り出した。
「貴女、メイドに興味はあるかしら」
…はい?
咲夜さんの自己紹介を皮切りに色々と話を聞いた。
咲夜さんは紅魔館の主人、レミリア・スカーレットが行う、妖怪達を束ねて幻想郷にケンカを売る超カリチュマ作戦の為に戦力として妖精達を集めており、プラスどうせ戦力にするならメイドにしてしまえば一石二鳥じゃないというれみりゃ様の言葉もあって妖精たちに声をかけているようだ。
俺は首を傾げた。メイドって、俺元とはいえ男ですしおすし。それに俺的には争いやらに巻き込まれたくはないという気持ちが強い。
そういう訳で断ろうとしたのだが、それを遮るように顔をずいっと近づけてきた。
「ちなみに、紅魔館の近くに住んでいる以上争いに巻き込まれる確率は非常に高いと言えるでしょう。あなた1人であなたのこの小さなお家、守れるかしら?」
「…!」
それ、脅しっていうんですよ。氷のような微笑みを浮かべて俺の頭を撫でてくる咲夜さんを見て、絶対にこの人は怒らせないようにしようと思った。
感想欄を見て気が付きました。ランキングに乗ってたらしいですね。俺の黒歴史が大公開されて大後悔ってか。やかましいわ。
この小説はただのうp主の趣味で構成されております。ご感想、ご指摘は何時でもお待ちしておりますが、それをこの拙作に反映させるかどうかは私が納得できるかできないかで決めさせていただきたいと思います。
うだうだ申し訳ないです。これからもよろしくお願いします。
ちなみにクロの家は自分の家を参考に作ってます。特にロフトの部分