東方妖精生活録   作:kokonoe

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幻想郷に行ってスローライフしたい人ー。


はーい(´・ω・`)ノ


3話目

年が明けてもまだまだ雪は降り続ける。幻想郷は今日も白化粧に身を包んで、寒空の下住民たちを見守っている。チルノも大ちゃんも絶えることの無い雪に大はしゃぎで遊んでいる。雪の精霊にとってはこの雪はまさしく最高の遊び場なのだろう。でも大ちゃん別に冬の精霊という訳でもないし、大丈夫なのかな。後日家に呼んで身体が温まるような料理でもふるまってあげよう。

 

そして俺はと言うと、アリスさんのお家で今日も今日とて魔法の練習である。俺が本を読んでる途中、寒くないようにと暖炉の前で膝に抱いて毛布で包んでくれるアリスさんはやっぱりとても優しいいい人だ。俺は何時かこの恩を返さないとなあと思いながらも、この抗い様も無い心地いい空間に身を沈めてしまうのである。ふっ、俺も罪深い男だぜ。今は女だけど。

 

「もふもふ…」

 

アリスさんは最近よく俺の髪の毛に顔を埋めてくる。どうしてそんなことをするのかは知らないが、アリスさんだし全然問題は無いな。むしろ何かこの行動にも意味があるんじゃないかと俺は睨んでいる。アリスさんは俺なんかじゃ理解できない境地にいるんだぜ。

 

「あーりすー!遊びに来たぜー!」

 

そんなほのぼの空間を過ごしていると、突然ドアがばんっと開いて何者かがアリスさんの家に侵入してきた。とんがり帽子に黒いワンピースを身に着けていて、勝気な瞳と八重歯の覗く口元、癖っ気のある金髪が腰まで伸びている。一目見て魔女かそこら辺の人物であるという事が良く分かる。

 

「ま、魔理沙!?」

「なんだアリス、暖炉の前陣取って何して…ん?誰だそいつ」

 

そう、彼女の名前は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだ。

 

アリスさんは心底驚いたような顔で俺の髪の毛から顔を話した。俺は本から視線を外して魔理沙の方へと向ける。

 

「そいつ、妖精か?おいおい、なんでアリスが妖精と一緒に本なんか読んでんだよ」

「そっ、それよりも、今日は用事があるから家には来ないでって言っておいたじゃない!」

「あれ?そうだったっけ?ごめん、忘れてたぜ!」

 

あははと無邪気に笑う魔理沙に、アリスさんはため息一つ、あきらめたようにアリスさんに向き直った。

 

「それで、そいつは誰だぜ?」

「はあ…この子はただの妖精よ。魔法が使いたいらしくて、色々と教えているの」

 

すると魔理沙は怪訝な表情で俺をのぞき込んできた。

 

「はあ?こいつ妖精なんだろ?魔法なんて使えるのか?」

「一応、簡単な魔法なら使える様にはなったわ」

「…!」

「お、何だ?こいつ意外と元気だな!」

 

俺は挨拶も含めて魔理沙に手を上げた。魔理沙はにっと笑って俺の顔を手で包んだ。ちゅべたい。

 

「私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ。にしても妖精が魔法をねえ…なんか面白そうだな!」

 

魔理沙の顔がきらんと光った。アリスさんはそれを見て、また大きなため息をついた。

 

「ああ…こうなるから黙っていたのに…」

「アリス!お前こんな面白そうなやつずっと隠してたのか!私だって魔法使いだぜ、なあお前!私もお前の魔法の勉強、手伝ってやろうか?」

「だめよ!魔理沙の魔法はほとんど独学じゃない。この子にはちゃんとした魔法を教えてあげるの!」

「魔法使いに独学も何もあるもんかよ。それに、私はアリスに聞いたんじゃないぜ。こいつに聞いたんだ」

「くっ…」

 

にひひと意地悪そうに笑う魔理沙。アリスさんは俺を抱きしめて距離を取った。おいおい、魔理沙め、アリスさんを困らせるんじゃないぞ。

 

「…!」

「え?駄目か?そっか、駄目かぁ…」

「ふふん、当たり前よね」

 

俺が首を振ると、魔理沙が残念そうに、アリスさんが勝ち誇った表情を浮かべた。なんだ、意外とあっさりと引くなぁ。

 

「じゃあ普通に友達になろうぜ!」

「…!」

 

魔理沙と友達だって!?是非も無し!俺は立ち上がって魔理沙と握手した。これでもう友達だ!

 

「ああっ!?なんて事…!」

「へへへ。なんかお前かわいいな!あれ?なんかよく見たらマジでかわいいなお前…うん、これはまた」

「駄目よ、こっちに戻ってらっしゃい!」

「おいおい、私たちはもう友達だぜ?」

 

魔理沙に抱きしめられる。ふんわりとしたいい香りがする。

 

「そういえばお前、名前はあるのか?」

「…(´・ω・`)」

「え?無いって?じゃあ私が決めてやろうか?」

「…?」

「んー…じゃあお前黒いし、クロでいいか」

「…!」

「お、気に入ったか?へへ、じゃあお前は今からクロだな!」

 

するとアリスさんが魔理沙から俺をもぎ取った。

 

「ちょっと、なに勝手に名前決めてるの?そんな大事なことを安直に決めないで」

「…?」

「ええ、そうよ。魔法使いにとって名前は大事なんだから。そうね…いい機会だから、私が付けてあげましょうか」

「えー…クロでいいだろ?こいつも気に入ってるし」

「…!」

「えっ…そ、そんなにその名前が良いというの…?」

 

クロ。全然いいと思う。というかあの魔理沙に貰った名前っていうのがもうプレミア感出てて嬉しい。というか正直もう人間じゃないんだし、名前にそこまでこだわりはない。色も合ってるし、普段「くーちゃん」って呼ばれてるし、いいんじゃないかな。

 

「そ、そんな…」

「…?」

「いえ、いいのよ…あなたがソレが良いって言うなら…」

 

優しく俺の頭を撫でてくれるアリスさん。よし、今日から俺はクロだ。

 

「よぉし、クロ!名づけと私の友達になったって事で、これから宴会だぞ!」

「魔理沙、あなた…実は私の家で夕ご飯食べたいだけでしょ?」

「友達になった祝いってのは本当だぜ?」

 

そういう訳でその後、俺はアリスさんと魔理沙と一緒にご飯を食べた。

 

アリスさんは料理もできる。流石はアリスさんだぜ。意外なのは魔理沙も結構上手だという事だった。まあ伊達に一人暮らししてないってことかな。

 

俺?俺も勿論一緒に手伝ったぜ。アリスさんと魔理沙に上手だって褒められて有頂天になって少しはしゃいでしまったのは内緒だ。

 

いやぁ、実に平和な日々である。このままずっとこんな生活が続けばいいのになぁ…。

 


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