悪役(?)†無双   作:いたかぜ

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くっころのお待ちの読者様。大変お待たせしました。
ついにくっころ展開が!?


第4話

~山~

 

 

どうも臧覇です。先の作戦が失敗に終わり、腹いせで闇雲に走っていたから場所がいまいちわからんとです。とりあえず山を見つけたのでそこを拠点にしようと思っていたら先客がいたとです。なので退治したとです。そしてその山賊の親玉っぽい2m近くある毛むくじゃらの大男の前にいるとです。

 

「こんなことして! タダですむと思うなよ!」

「………………」

「くっ……殺せ!!」

 

………………………………はぁ。

 

「男の……くっころなんて……」

「モガッ!?」

「見たかねぇーんだよチクショウ!!!」

「アガガガガッ!!」

 

大男の頭を鷲掴みにし、思いっきり握力をかけていく。

 

「出た! 兄貴の百の技が一つ! 鉄手(アイアンクロー)だぁ! さっすが鬼畜の兄貴だぜ!」

「自分の頭に指が入ってくるのがわかる恐ろしい技だ……。アレを躊躇なくやるあたり同じ人間とは思えない」

「アタシもアレで死に掛けたわ。お陰でソッチに目覚めたけど」

 

部下たちはいつのまにか観戦モードになっている。というより、みんな俺のこと馬鹿にしてない? 気のせいか? 気のせいなのか?

 

「ふぅ……そんで此処はどこだ?」

「今、姉御が周辺を探索してるみたいでっせ」

「ならそれまで待つか。他に情報は?」

「そういえばさっきコイツらが拉致ってた女子供がいましたが……」

「いつも通り逃しとけ」

 

本来なら女を誑かすのが悪役っぽいらしいが俺はやらない。俺の目標は高く、険しい道だ。そんじゃそこらの女じゃあ満足出来ないぜ。

 

「いやそれなんですが、どうしても感謝が言いたいと言って帰らない女がいるんすけど……」

「はぁ?」

 

んだと?また美花みたいなヤツがいんのかよ……。だが、此処でつっぱねたらそれでこそ美花の二の舞だ。なら悪役っぽく接してみるか。

 

「なら通してやれ」

「いいんですかい?」

「やることもないし、此処らで俺の怖さを見せておかねぇとな……ククク」

「わかりやした!」

 

さてさて……俺を舐めているお嬢さんをどういじめてやろうか。恥ずかしい服でも着させるか?

 

「兄貴! 連れて来やした!」

 

ご苦労。それではご対面と………………嘘だろ?

 

「さっきはありがとうなの! まさか隣の村で買い物した後の帰り道で賊に遭遇するとは思ってなかったの~。武器も持ってなかったから最悪だったの~」

 

なんでこんなところにいるんですか? 于禁(うきん)さん?

 

「あ、自己紹介がまだだったの! 沙和(さわ)の名前は于禁なの!」

 

知ってます。

 

「いや、うん……ヨカッタデスネ」

 

マズイ……向こうから鴨がやってきた。だが、突然の訪問で戸惑ってしまう俺。このまま于禁さんをくっころにしてしまおうか? いや、それは愚策だ。于禁さんがいるなら必ず楽進(がくしん)李典(りてん)が近くにいるはず。出来れば楽進さんから先にくっころしたい。

え? 何故かって? 楽進さん絶対にくっころ似合うと思うからです!

 

(なぎ)ちゃん……大丈夫かな……」

「ん? 他に連れがいるのか?」

「そうなの! 沙和の買い物に付き合ってくれたんだけど、途中ではぐれちゃって……」

「……その子1人かい?」

「なの!」

 

つまり李典さんはいない……か……。これはいけるか?

 

「なら俺が探してきてやろう」

「ホント!? なら沙和も……」

「いや、貴方はここにいたほうがいい。武器もなしにこの山を進むのは危険だ。部下には君の護衛を任せるので俺に任せてはくれないだろうか?」

「………………わかったの。凪ちゃんは傷が多い可愛い女の子なの!」

 

知ってます。

 

「わかった……では行ってくる」

「頑張ってなの~!!」

 

ククク……暢気なものだ。今から大切な友達が大変な目に合うとも知らずに……。そして俺は山の奥へと進んでいった。

 

 

~凪サイド~

 

 

「セェーーイ!!」

「「「ぐはぁ!!」」」

 

ハァ……ハァ……クソ! 油断してしまった! 最近は賊も少ないから沙和の買い物に付き合った結果、賊に襲撃され、沙和ともはぐれてしまった。早く見つけなければいけないというのに……

 

「相手はもう虫の息だ! どんどん攻め込め!」

 

クッ! こうも多いとどんなに弱くても脅威だな……。

 

「ええい! 邪魔だ!」

 

口ではこう言っているが正直私も限界がきてる。これ以上、気を使ってしまうと沙和を探す余力がなくなってしまう……どうすればいい?

 

「……やるしかないか」

 

選択肢など最初からない。此処で負けるくらいならば!

 

「ハァァァ………!」

 

今、力を持てるありったけの気を脚に溜める。すまない、沙和。出来れば無事でいてくれ。

そう思った瞬間である。突如、莫大な気の塊が私の背後に現れたのである。

 

「ッ!!?」

 

わずかながら反応出来た私は地面を思いっきふり蹴り飛ばして、真横に飛ぶ。その直後……

 

「「「ウボァーーー!!?」」」

 

気の塊は賊たちに命中し、爆発する。そして直後には全員が気絶していたのだ。

 

「一体何が……」

 

自分でもなにが起きたかわからない。そう思いながら後ろを振り向くと……

 

「………………」

 

顔を隠した謎の人物が立っていたのだ。身体的に男性というのはわかるが賊の格好にも見える。

 

「貴様! 一体何者だ!」

「………………」

 

私の言葉に返事はしない。しかし、ゆっくりと近付いてくる。やはり、コイツも賊の1人か! だが、私も先ほどの回避で力が残っておらず、動けない。どうすることも出来ずに男は私の目の前に来てしまった。

私は一体どうなってしまうのか……

 

 

~臧覇サイド~

 

 

フッフッフ……キタ……ついにキタ!

楽進さんは返事をしない俺を不気味がっているに違いない。そう、それでいい。そして俺は彼女の服を剥がせば……

 

 

~妄想~

 

 

「この下衆が! 私から離れろ!」

「そう言うな……お楽しみはこれからだろ? ゲッヘッへ……」

「くっ! 殺せ!!」

 

 

~終了~

 

 

そう! 必ずこの展開に持っていける!! 思えば長い道のりだった……。時には孫堅さんに追われ、時には医者になり、時には謀反を起こした。

だが!! 全てはこの時のため! その記念すべきくっころ第一号は君だ! 楽進ッ!!

 

「沙和………………真桜(まおう)………………ごめん」

 

おお! 汚れる前に親友の名前を言って謝る! これは高いポイントですね。やはり俺の目に狂いはなかった。

そして俺は楽進さんの服に手をかける。

 

「ッ!! 殺気!?」

 

その時である。突如として上空に謎の殺気が俺に向かってきた。瞬時に察した俺はその場からバックステップで回避し、何が降ってきたの確認する。

そこには……

 

「ようやく会えたな……オレの想い人よ!!」

 

そこには………………魔王(そんけん)がいました。

 

「げえ?! 孫堅!?」

「オイオイ……そんな怯えることはねぇじゃねーか。オレはお前を探してやったのに」

 

頼んでねーよ! つーかアンタは国のトップだろ! なんでこんなところにいるんだよ!?

 

「くにへかえるんだな。おまえにもかぞくがいるだろう」

「安心しな。オレは基本的に国にいることのほうが少ない」

 

孫呉ォ! こんな猛獣を放し飼いするのはやめなさい! ご近所さんが迷惑するでしょ!

 

「………………」

 

ほら見なさい! 楽進さんついてこれなくてフリーズしちゃってるじゃないですか!

 

「ん? なんだ嬢ちゃん、今は取り込み中だ。邪魔だから向こういってな」

「あ……はい……」

 

孫堅さんがシッシッと逃がす。楽進さんも辛うじて残った理性でそそくさと山奥に逃げていく。

待って! お願い! 俺は君が目的なの!

 

「さぁ……邪魔者は消えたぜ? 殺しあうか? それとも抱くか?」

 

唇をペロッと舐め、ゆっくりと近付いてくる孫堅さん。その時俺は理解した。この人にくっころは出来ない。寧ろ喜んで抱かれることを……

 

「………………フフ」

「………………フッ」

「「ハッハッハッハッ!」」

 

お互い高笑いして……

 

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「逃がすかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

こうして俺は魔王との壮絶な鬼ごっこを丸一日行った。

余談だが、楽進さんは無事に于禁さんと合流したそうです。

 

 

~美花サイド~

 

 

「……このくらいですかね」

 

私は今、御主人様のいる山から一番近い村に来ております。もちろん情報収集のため。しかし、これといった情報がなく少し苦戦を強いられました。ですが、目ぼしい情報は集まったのでこれから帰還するところです。

 

「それでは……あら?」

 

村を出ようと思いましたら、何処からか綺麗な歌声が聞こえてきました。普段はそういった類は気にもしないのですがこの歌声には妙に魅かれてしまいます。とりあえず歌声が聞こえる場所に足を運ぶと、そこには旅芸人さんであろう3人の女性が歌ってました。足を止める人もチラホラといます。

 

「………………少しくらいは大丈夫ですよね?」

 

そう心に言い聞かせ、旅芸人さんの演奏を聞きました。ですが、本当に不思議な歌声です。まるで人の心を掴もうとする声。きっと相当の努力をされたと思います。

しばらくして……

 

「「「本日はありがとうございました!!!」」」

 

演奏が終わり、旅芸人さんが頭を下げる。まばらながらも拍手がおき、おひねりを彼女たちに渡す人もいました。それでは私も……

 

「ああー! その服可愛いー!」

「……え?」

 

おひねりを渡そうとした瞬間、中央にいた桃色の髪が特徴の女性が私の服を見て、褒めていただきました。

 

「ちょっと、天和姉さん……」

「その服、何処で買ったんですか!?」

「それちぃも気になる!」

「地和姉さんまで……もう……」

 

ええっと……こういった場合はどうすればいいでしょうか?

 

「これはあるお方から頂いたものでして……申し訳ないのですが、私も存じ上げません」

「「ええ~……」」

 

真ん中と左にいた女性は答えが不服だったのか頬を膨らませ、いかにも不満ですよと伝えてくる。

 

「本当にすいません。2人のことは無視して貰っても構いませんので……」

 

そして右にいた眼鏡を掛けた女性が頭を下げ、私に謝罪をしてきました。

 

「いえ、そんなこと……あの、しばらくはこちらで演奏をされるのですか?」

「えっと……そうですね。しばらくは資金集めをしますのですぐにはいなくならないと思います」

「そうですか。それでしたらこの服をくださった方がいますので、もしよろしければ聞いて参りましょうか?」

「いいの!? じゃあお願いします!」

「やったやった! これで少しは可愛い服で演奏が出来る!」

「……ご迷惑を掛けてしまってすいません」

 

素敵な演奏をしてくださいましたのでこれくらいはしても問題ないでしょう。

 

「それではお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」

 

この歌声は是非とも御主人様にも聞いてもらいたいです。

 

「わたしは張角(ちょうかく)だよ~」

「ちぃは張宝(ちょうほう)!」

張梁(ちょうりょう)といいます」

 

 

これが彼女たちとの出会いです。

後に大きな戦に巻き込まれるとはこの時の私は考えてもおりませんでした……




というわけで初のくっころは大男でした。
大変申し訳ございませんでした。

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