超超高校級の78期生   作:天星

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裁判は進む

 江ノ島盾子は唖然としていた。

 彼女の心情をありのままに説明するならこうだ。

 

 あ、ありのままに今起こった事を話すぜ!

 「いざ殺人事件の裁判を始めたと思ったら被害者が何食わぬ顔で出席していた!!」

 な、何を言ってるのかわからねーと思うが、私様も何をされたのか分からなかった……

 頭がどうにかなりそうだった。催眠術だとか超高校級だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。

 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……

 

 ……って感じだと思う。きっと。

 って言うか、これは裁判は無効になってしまうんじゃないだろうか……?

 

軍人「ちょっと待ちなさい!! って事はこの裁判自体が要らなくなっちゃったんじゃないの!?」

 

 江ノ島に扮した軍人が江ノ島の言いたい事を代弁してくれた。

 この時だけ、江ノ島は残姉ちゃんに少しだけ感謝した。

 いや、そんな事はどうでもいい。さてどうするべきか……

 

幸運「え? どうして?」

軍人「え? いや、だって……人が死んでなかったんだし……」

眼鏡「? それはそうだろう。この裁判はそもそも傷害事件の裁判じゃなかったのか?」

探偵「些細な犯罪でも裁判にかけられて犯人は死刑なんて、面倒なルールね」

 

 ……どうやら、そういう解釈をしてくれたようだ。

 本当は殺人事件限定だったのだが……そういう事なら乗っかってしまおう。

 

クマ『え~、それじゃあ裁判を続けてください』

 

幸運「それじゃあ舞園さん、犯人の名前を言ってほしいんだけど……

   ……どうせだったら犯人の人は自分から言ってほしいかな」

探偵「そうね、自白してくれた方が面倒が減るわ。

   ……目星は付いてるけど」

眼鏡「そうだな。時間の無駄だからさっさと出てこい」

 

 ここで一人の人物が手を上げる。

 この事件の犯人である、超超高校級の野球選手である。

 

野球「……犯人は、俺だ。

   済まなかったっ!!」

アイ「……確かに彼が犯人です。

   ……しかし、彼に犯罪を犯させてしまった原因は私にあります」

 

 アイドルの少女は説明した。

 何としてもここから抜け出したかった事。

 幸運の少年の部屋を借り、そこで殺人を犯す事で濡れ衣を着せようとした事。

 野球選手の少年を呼び出したが返り討ちにあった事。

 

アイ「……これで全てです。

   苗木くん、桑田くん、本当にすみませんでした!!」

野球「ちなみに、俺を選んだ理由は何だったんだ?」

アイ「一番引っかかってくれそうかな~って」

野球「たしかに、そうだけどよぉ……泣いて良いか、俺?」

 

探偵「……舞園さん、一つだけ質問良いかしら?」

アイ「何でしょうか?」

探偵「あなた、桑田くんに対して殺意は無かったんじゃないの?」

眼鏡「おいどういう事だ、説明しろ霧切!」

幸運「その台詞、僕以外のバリエーションもあったんだね……」

探偵「あなたたちは黙ってなさい。

   で、どうなの?」

 

 探偵の少女の言葉を受けてアイドルの少女は俯いて少し考え込んだ後、顔を上げてこう言った。

 

アイ「よく気付きましたね。

   その通りです。私は『殺したフリ』をしようとしました。

   ここの脱出のルールが曖昧だったので、誰かを殺した事をモノクマに言えばその場さえ切り抜ければ脱出できるかもしれないと思いまして」

野球「なっ!? そうだったのか!?」

アイ「私は超超高校級のアイドルですよ? 殺人者の演技も余裕です。あの時桑田くんが無抵抗で刺されていても48時間後に蘇生できるように仕込んでありました」

野球「すげぇなオイ……」

 

幸運「……ところで、わざわざ僕の部屋で殺そうとしたのは何で?」

アイ「自分が犯人だと思われない=他人に濡れ衣を着せるまでが卒業の条件かもしれないと思いましたので。

   苗木くんは一時的に殺人者だと疑われてしまう事になりますし、下手すると私刑にされてたかもしれませんが……

   苗木くんの幸運があればそのくらいは何とかなると信じてました」

幸運「えっと……信頼されて喜ぶべきなのかな?」

 

クマ『はいはい、お話はそこまで。そろそろ投票タイムに移ります!』

 

アイ「っ! 待ってください! この事件の犯人を……桑田くんを処刑するんですか!?」

クマ『そーいうルールだからね~』

アイ「悪いのは私です! 誰かを処刑するなら私を……」

野球「……良いんだよ、舞園さん。

   俺は確かに殺意をもって舞園さんを刺した。

   報いは受けるさ」

アイ「ですが……」

野球「安心しろ。俺は超超高校級の野球選手だ。

   オシオキとやらでどんな事されんのかはわかんねーけど、素直に死んでやる気は無い」

アイ「桑田くん……」

野球「……そうだ、約束しようぜ。もし俺が帰ってこれたら……

   ……俺と付き合ってくれ!!」

アイ「え? 無理です。私、好きな人が居るので」

野球「うぉぉぉぉおいいい!! 今のって完全に笑顔で送り出す場面だったよな!?」

アイ「空気に流されるな。自分で空気を作れと監督さんによく言われるので」

野球「チクショー、人生最後の会話が告白してフラれたなんて断じてゴメンだ!!

   ぜってー生きのびてやる!!」

 

クマ『それじゃあ投票タイムスタート!!』

 

 この場に居る15人が投票を行う。

 本人も含めた全員の票が野球選手の少年へと集まった。

 

幸運「……ところで、好きな人って誰?」

アイ「さぁ、誰でしょう♪」

野球「お前らイチャコラすんじゃねぇ!! もうちょい俺に気を遣ってくれても良いじゃねぇかよぉおおお!!!」

 

軍人(学級裁判ってこんな雰囲気で良いのかなぁ……?)

 

 多分良くない。







  超超高校級のアイドル 追記
 あらゆる役を演じる事が可能なので『超高校級の殺人鬼』とか『超高校級の暗殺者』とかを演じる事も可能。イメージトレーニングとか小道具の準備とかのある程度の準備は必要だが。
 よって準備時間さえあればあらゆる『超高校級』を演じる事が可能になる。流石に『超超高校級』は無理なようだが。
 但し、あくまで演技なので外傷は一切発生しない。
 彼女の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』

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