超超高校級の78期生 作:天星
江ノ島盾子はもう何が何だか分からなくなっていた。
オシオキを受ける為に
頭のイカれ具合では超高校級の絶望たる自分に敵う者など居るはずが無いと思っていたが、明らかにこっちの方がイカれてる。
こうなったらオシオキを実行しない方が正しい意味でのお仕置きになる気がするが、罪を犯した者はオシオキを受けるのがルールだ。そうコロコロ曲げるわけにもいかない。
大丈夫、オシオキで殺せれば良いのだ。まぁ、今までのように『誰か1人に投票して人柱を決める』と言うよりも『本人の希望を通した』だけなので殺す事に成功しても事故死っぽく扱われて大して絶望しなさそうだが……多少は絶望してくれるはずだ。きっと。
……え? 人外級の回復能力なんてものを持ってる相手を殺せるのかって? ははっ、そんなの訊くまでもないじゃないか。
『それじゃあ、オシオキ開始っ!』
では、オシオキの内容を説明しよう。
本来なら格闘家に相応しいオシオキ、例えば無双ゲームとでも言ってモノクマの大群でリンチにしてやろうとか考えていたのだが、本当にただの無双になりそうなので断念した。
しょうがないので全く別の機会に使うかもしれないと用意しておいたオシオキを流用、改良して実行する。
このオシオキの本来の予定はこうだ。
『超高校級の免許マニア』が愛用していたというパワーショベルを使ってクロを滅多打ちにして肉塊にした上でモノクマのマークの烙印を押す。
だが、これだけであの人外が大人しく死亡してくれるだろうか? 非常に疑わしいと言わざるを得ない。
というわけで追加だ。
せっかくだから建設機械で統一して、ブルドーザー、クレーン、掘削機、ロードローラー、発電機、圧砕機などなど。
これだけ様々な方法で殺せばきっと殺せるだろう。
江ノ島盾子は勝利を確信した。
え? また確信したのかって? 確かに失策だが、どうか彼女を責めないであげてほしい。
無理矢理にでも勝利を確信しないとやってられない状態なんだから。
というわけでスタートだ。
まずは最初の予定にもあったパワーショベル。
音ゲーを操作するようなノリで重機を操ってクロをバコバコ叩いていく。
グシャッとかバキッとか、明らかに人体から響いてはいけないような音を聞きながら操作して数分、変化は起こった。
ナマモノっぽい効果音からバリッ、ピキッといった金属が悲鳴を上げるような音へと変化していったのだ。
さらに続ける事数分、ショベルの先端はひしゃげひび割れ、本来の用途には使えないであろう事が一目で分かる状態になった。
それでも一心不乱に続けてみるが、気がついたらショベル部分がきれいさっぱり消失していたので諦めて次に行く。
続けてブルドーザーだ。
ちなみにブルドーザーとは土砂のかき起こしや盛土、整地に用いる重機の事で、土を押しのけるための大きな排土板がついている。
これでただ押すだけでは大したダメージは見込めないので、格闘家には床に寝そべってもらった上で排土板を叩きつける事にする。
グシャッとかバキッとか、明らかに人体から響いてはいけないような音を聞きながら操作して数分、変化は起こった。
ナマモノっぽい効果音からバリッ、ピキッといった金属が悲鳴を上げるような音へと変化していったのだ。
さらに続ける事数分、排土板の下端はひしゃげひび割れ、本来の用途には使えないであろう事が一目で分かる状態になった。
それでも一心不乱に続けてみるが、気がついたら排土板がきれいさっぱり消失していたので諦めて次に行く。
続けてクレーンだ。
説明するまでもなく、重い物を吊り上げて運ぶ重機だ。そんな機能をそのまま使ってもダメージは少ないので工夫を凝らす。
クレーンを凄い勢いで振り回して先端部を格闘家にブチ当てるのだ。前2つよりダメージが少ない気がしなくもないが気にせず実行する。
グシャッとかバキッとか、明らかに人体から響いてはいけないような音を聞きながら操作して数分、変化は起こった。
ナマモノっぽい効果音からバリッ、ピキッといった金属が悲鳴を上げるような音へと変化していったのだ。
さらに続ける事数分、クレーンの先端はひしゃげひび割れ、本来の用途には使えないであろう事が一目で分かる状態になった。
それでも一心不乱に続けてみるが、気がついたら先端部がきれいさっぱり消失していたので諦めて次に行く。
続けて掘削機だ。
その名の通り、土砂や岩石を掘削する装置だ。
これはこのまま使えばかなりのダメージが期待できるだろう。
前略、掘削機の先端が中略、先端部が後略。
続けてロードローラーだ。
ローラーを使って地面を押し固める重機。普通の使い方で以下略。
前略、ローラーの表面が中略、ローラー部が後略だ。
続けて発電機。
発電する重機だ。
前略、電極の先端が中略、電極が後略。
続けて圧砕機。
大型のペンチみたいな重機。
全略。
……以下略……
というわけで、格闘家は普通に生き残った。以前より強い肉体を得て。
江ノ島盾子を救う奇跡は、起こらなかった。