超超高校級の78期生   作:天星

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4つ目の事件

 内通者の存在を明言する事で疑心暗鬼を促す策は見事に失敗した。え、知ってた? そんな残酷な現実はどうか彼女には言わないであげてほしい。

 別にあの後にもう一度だけ幸運の少年以外の内通者の存在を明言する事もできた。

 しかし、そうしなかった。江ノ島の中でも彼女が本当に内通者と言えるのか自信が無くなってきたからだ。

 何か急にやる気が無くなった江ノ島はその日はずっとふて寝していた。

 

 

 

 そして数時間が経過したころ、江ノ島はうっすらと目を開ける。

 体がだるくて眠いが、寝起きはこんなものだろう。

 江ノ島は二度寝しようとして……気付いた。

 モニターの中で、人が倒れている事に。

 

「っ!! 死体!?」

 

 江ノ島は飛び起きてモニターを食い入るように見つめる。

 しばらくじっと見てみるが、画面の中の少女……超超高校級の格闘家が動く気配は無い。

 ……ちなみに、彼女はかつて超超高校級の風紀委員に男と間違われていたほどの筋骨隆々の姿をしていて、少女と呼ぶには少々抵抗があるが、いちいち呼び方を変えていては非常に面倒なので便宜上『少女』と呼んでおく。

 まあそんな事は置いておいて……

 江ノ島は過去の録画を漁り何が起こったのかを確認する。

 どうやらほんの2~3分ほど前に化学室に置いてあった毒薬を自分から飲んだらしい。

 念のために言っておくと、飲み物などに紛れ込んでいたとかではなく、いかにも毒薬っぽいビンに入っていたものをゴクゴク飲んでいる。

 しかもあの毒は、『超高校級のコブラ』と呼ばれた男と『超高校級の魔女』が共同で開発したという超強力な致死毒だ。

 体重1kgあたりの致死量が1ngを下回る(フグ毒の10000倍くらい強力)という代物だ。いくら人外でもこれをあれだけ摂取すれば……

 ……いやいや、あの人外ならこれでも生き残りかねない。ここはきちんと確かめるべきだろう。

 そう判断して江ノ島はモノクマを起動させた。

 

 

 現場に到着するが、特に怪しい点は無い。被害者も微動だにしない。

 とりあえず、近くに置いてある小物をぶつけてみるが反応は無い。

 おそるおそる近づいて顔の辺りを猫パンチしてみるが、それでも反応は無い。

 胸の辺りに聴覚センサーを押し当てて確認しても心音は確認できず、呼吸も全くしていない。瞳孔散大と対光反射の停止も確認したかったが、モノクマでは対象に傷を付けずにまぶたを開けるのは少々難しいので諦めた。

 江ノ島の見立てでは、そしてそこらの医者の見立てでも格闘家の少女はきちんと死亡していた。

 

 何だか良く分からないが、ようやく自分にも運が回ってきたようだ。

 自殺というのはコロシアイという観点からは少々マイナスだが、今の状況を考えるとそう悪いものでもない。

 今までの事件では必ず被害者と加害者が居たが今回は自殺なのでその二者は同一だ。つまり当事者が1人しか居ない上にその当事者は死んでいる。

 という事はだ、唯一真相を知る黒幕である自分が自由に筋書きを立てる事が可能なのだ。

 勿論、直接の死因をごまかす等をすれば超超高校級の探偵などに勘付かれるが、流石にあの人外でも死亡の動機などは断定はできまい。

 そう考え、江ノ島は早速行動を開始した。

 

 

 

 

 そして数時間後、生徒たちに死体が発見された。

 それと同時に、遺書と思しき手紙が死体の近くから発見された……

 

 その手紙の内容をざっくりと意訳するとこうだ。

  『あの幸運の少年が内通者であった事に絶望した。

   我は一足先にこのコロシアイから脱出させてもらう』

 大体こんな感じである。

 

「そ、そんなっ! さくらちゃん……うぅっ」

 

 こうする事で自殺者が出たという絶望を味わってもらい、死の遠因を作った幸運の少年に恨みが集まるという寸法だ。

 ……そう言えば、本物の遺書はどこを探しても見つからなかったな。できれば先に回収しておきたかったのだが……

 

「くっ、僕のせい……なのか?」

 

 そんな幸運の少年の独り言に対して誰かが糾弾するというのが江ノ島の理想ではあったがそう都合良く事は進まなかった。

 

「そのような事は無いでしょう。安心して下さい」

「大丈夫ですよ! 苗木くんは悪くありません!」

 

 すかさずギャンブラーの少女とアイドルの少女がフォローに入る。

 そんな雰囲気の中で少年に詰め寄ろうとする人は居なかった。

 

「……確かに死んでいるわね。死因はそこの毒物ね。

 少し舐めてみたけど、致死量はおおよそ1ng/kg。彼女は大柄な方だけど、軽く舐めるだけであの世行きでしょうね」

 

 よし、探偵もキチンと死亡判定を出した。良かった良かっ……

 

『ってぇっ!! 何で舐めてるの!?』

「細かいことはどうでも良いでしょう? 調査開始よ」

 

 そういう事で、調査パートが始まった。







Q、格闘家って毒物耐性なかったっけ?

A、フグ毒(テトロドトキシン)が大丈夫であっても未知の猛毒をガブ飲みしたらそりゃ死にます。


Q、瞳孔散大と対光反射の停止って何?

A、死の3徴候のうちの一つ。瞳孔が開き、目に光を当てても瞳孔が縮まる反応を示さない状態の事。ちなみにほかの二つは心拍動の停止と呼吸停止。
  まぁ、最新の医学では3徴候よりも脳死してるか否かを以て生死の判定をしているのだが、専用の機材無しに判定するならこっちかなと。

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