超超高校級の78期生 作:天星
想定外のハプニングを受け、全人類絶望計画テイク2が始まった。
……が、ここでもまた彼女の誤算が発生する。
「……あれ? さっき鉄板に穴が……あれ?」
機械の誤作動か、記憶消去が正常に機能していない人物が居たのだ。
そう、記憶消去を免れたのは『超超高校級の幸運』の持ち主である。
宝くじを毎回当てられるのは当然で、ロシアンルーレットに弾丸を6発込めても生き残るような人外だ。
ちなみに装填数が7つとか8つとかそういう話ではない。装填数6発の拳銃にきちんとフルに詰めている。
彼の機械のみが誤作動を起こす確率は極めて低いが……まぁ、彼なら平然とやってのけるだろう。
……なんてのんびり解説してみたが、このまま放置しておくと面倒な事になる。
故に江ノ島は行動を起こす。
『壁に穴なんて開かなかった。イイネ?』
「え? えっと」
『イイネ?』
「え? でも壁にダンボールみたいなので補修した跡が……」
『イイネ?』
「……まあいいか」
彼が細かいことにこだわらない主義で本当に助かった。
騒ぎ立てるような人だったら今頃計画は頓挫していた。既に頓挫している気がしないでもないが、そこは目を瞑ろう。
あと、壁の補修に使ったのはダンボールなどという安っぽい素材ではなく『超高校級の壁職人』と『超高校級のダンボールマニア』が協力して作ったと言われるダンボールの見た目を持ちながらもチタン合金板よりも硬いという特性を持つ最新素材である。その辺を勘違いするのは失礼だ。
『それじゃあコロシアイ学園生活を以下略!!』
こうして、ようやくコロシアイ学園生活は始まった……
……始めた……のだが、
当然ながら『はいそうですか』といきなり誰かを殺しにかかるような生徒は居ない。
数少ない例外の一人が江ノ島盾子だが、あいにくと彼女は黒幕だ。
よって、2~3日ほど待ってから次の手を打つ。
『え~、皆さんにはそれぞれDVDを用意しました!』
「え~? ブルーレイじゃないの?」
『そこ、うるさい』
江ノ島が用意したのは彼らの家族等の大事な人が凄惨な目に遭う事を連想させるような映像だ。
それを見せる事で不安を煽り、人を殺してでも外へと出たいと思わせるのだ。
なお、その家族はある街で監禁してある。
つまりかなり安全な状態であり、現状では危ない事は全く無いのだが……
……人というものは、恐怖だけでも絶望するのだ。江ノ島はそれをよく理解していた。
『それじゃ、視聴覚室にレッツラゴー』
視聴覚室にはDVDを見れる機材が置いてある。
一応他にもいくつかあるのだが……現在、生徒達に開放しているのは1階のみ。それ以外の階を開放するのは望ましくない。
だから視聴覚室への誘導は当然の選択だ。
……しかし、彼女は彼女自身の安直な行動を後悔する事となる。
「えっと、ここが視聴覚し……うわわっ!!」
超超高校級の幸運の少年が真っ先に部屋に入ろうとするとうっかり転んでしまう。
そしてそのままモニターに頭から突っ込む。
当然、モニターは破壊される。少年も無事では済まないだろう。
……ここまでは、まだ江ノ島も理解できた。
しかしその直後、どっかの回線がショートしたのかバチバチと音を立てる。
その音は何故か部屋全体に広がり、モニターというモニター、その他機材が一斉に爆発する。
「わわっ、な、何ですか!?」
「おい、どうなっている、説明しろ苗木!!」
『幸運』の少年の後をついてきた他の生徒が当惑するが、それをモノクマのカメラ越しに眺めていた江ノ島は焦っていた。
(ヤバい、コロシアイ以外で死んだ!?)
あくまで『コロシアイをしてもらい絶望してもらう事』が目的なのだ、事故死なんて勘弁してほしい。
……しかし、それは杞憂に終わった。
「おっとっと、転んじゃったよ。
あれ? 皆どうかしたの?」
『幸運』の少年は何事もなかったかのように起き上がると室内の機械を調べ始めた。
その顔には傷一つ無い。
『実はロボットで鋼鉄製の顔だったから怪我しなかった』とか言われても信じられる気がするが、単に一切怪我しなかっただけである。
「あ~……どれもこれも壊れちゃったみたいだね。ごめん」
『ちょ、ちょちょっ、全部壊れたの!?』
「え? う~ん……多分?」
ここに来て江ノ島は更に焦る。
モノクマで喋ってるのに素の口調が出ちゃうくらい焦る。
いや、焦りというより恐怖だろうか? まあどっちでもいい。
『と、とりあえず違う部屋に案内するね。
DVDプレイヤーがある部屋』
これくらいのアクシデントでへこたれてはいけない。
計画を、計画を完遂するのだ。
超超高校級の幸運
『運命の選定者』と謳われた人外級の幸運の持ち主。
『宝くじの独占は当たり前』『6面ダイスで7以上の目を平然と出す』『ロシアンルーレットでフル装填して連射しても生還する』等のエピソードを持つ。
彼の強運にかかればたとえナイフで刺されたり毒を盛られたりしても死ぬ事はまず無いだろう。
彼の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』