超超高校級の78期生   作:天星

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奇跡の精製者

 色々と、本当に色々と騒ぎがあったが、何とか全ての真相が明らかになり学級裁判がほぼ終わった。

 終わったという事実に江ノ島は息をつくが、そんな自分の様子に舌打ちをする。

 何をやっているのだ。これではまるで学級裁判を恐れているようではないか。

 そんなはずはない、何かの間違いだと自分に言い聞かせ裁判を再開する。

 

『え~、では大体真相が明らかになりましたね。

 お手元の投票ボタンをお願いします』

「念のため訊くけど、器物破損事件のだよね?

 殺人事件の方はオシオキ免除だよね?」

『…………』

 

 そう言えば、言ってしまった。

 『クロが被害者の場合はオシオキ免除』と。

 こんな事態は全く想定していなかった時の発言だが、一応は自分が決めたルールだ。従うしかあるまい。

 

『……しょーがないね。器物破損だけね』

「じゃあ私ですね。投票お願いします」

 

 今回の裁判でも15の票が集まる。

 今までの成果が0である事を見せつけられたような気がして泣きそうになるが、何とかこらえてオシオキの処理に進む。

 

『はーい、今回のクロはセレスさん、本名は安広多恵子さんでした~。

 それでは、オシオキを開始しま~す!』

 

 そうだ、オシオキさえ成功させられれば良いのだ!

 この人外どもに誰かを殺させる事さえできれば!!

 江ノ島は気合を入れ直した。

 

 

 さて、それでは今回のオシオキについて説明しよう。

 簡潔に説明してしまうと今回の処刑方法は火あぶりである。

 中世の魔女裁判よろしくクロを磔にして火であぶる。

 しかし、この人外どもがただの火で死んでくれるだろうか? 非常に怪しいと言わざるを得ない。

 そこで江ノ島は工夫を凝らした。

 かつて希望ヶ峰に在学していた超高校級たち。その中の『超高校級の放火魔』と『超高校級の中二病』、『超高校級の忍者』らが協力して開発したという通常の手段では決して消えない炎、通称『黒い炎』を用いて火あぶりを行うのだ。

 更に、万が一その炎で止めを刺せなかった場合に備えて『超高校級の消防車マニア』や『超高校級のドリル使い』等の手によって魔改造された消防車により跳ね飛ばす。

 これだけやって生還する人間はまず存在しないだろう。

 江ノ島盾子は勝利を確信した。

 

 ……あ、確信しちゃった。

 

 

 超超高校級のギャンブラーは磔にされ、下から例の黒い炎が這い上がっていく。

 その禍々しい炎は遠くから眺めているだけの他の生徒達にもはっきりとした熱を伝えていた。直上に居るギャンブラーの少女がどれだけの熱気を感じているかは言うまでも無いだろう。

 

「ふむ、こういう趣向で来ますか……

 構いません。苗木くん? 『BET』お願いします」

 

 少女は呟くように、そう告げた。

 その言葉が幸運の少年の耳に届くと同時に、少年はコインを投げた。

 弾いたコインを手の甲で受け止めた少年は高らかに告げる。

 

「裏」

 

 少年から裏が、希望の象徴たる希望ヶ峰学園の刻印が告げられる。

 そしてそれと同時に、あれだけの熱を伝えていた黒い炎が一瞬で消失した。

 

『……はいぃぃぃっっ!?』

「これでおしまいですね。ではもう一度、『BET』」

「裏だよ」

 

 続けて、少女を磔にしていた拘束が消失した。

 拘束が解かれた少女は当然のように舞台から降りようとする。

 

『ま、待った待った待った!! まだオシオキ終わってないよ!?』

「おや? そうでしたか。では少し待ちます」

 

 少女は余裕たっぷりに舞台の上に舞い戻った。

 何か凄く舐められている気がするが、江ノ島は気にせずオシオキを断行する。

 

『それでは消防車! GO!!』

 

 先ほど説明した魔改造消防車が少女に突っ込む。

 それに対して少女は慌てず騒がずにただ宣言する。

 

「苗木くん、『BET』」

 

 コインが弾かれ、受け止められる。

 そこに刻まれていたのは……

 

「……表」

「っ!!」

 

 モノクマ、絶望の象徴であった。

 

 その直後、消防車がスピードを全く落とさずに舞台に突っ込む。

 当然、ギャンブラーの少女は跳ね飛ばされる……だけでなく、車体の表面についたドリルやら何やらでミンチにされる。

 もはや原型を止めない肉塊となって、かつて少女だったものはボトリと床に落ちた。

 

「せ、セレスさぁぁぁん!!!!」

『や、やった!! 今度こそ仕留めた!!

 これが3度目の正直って奴だよ!!!』

「そうですか、ご苦労様です」

 

 そして、次の瞬間にはギャンブラーの少女は無傷で幸運の少年の後ろに立っていた。

 

『って、えええええっっっ!?』

「お、おいどういう事だ! 説明しろ苗木!!」

「い、いや、僕も知らないよ!?」

「うむ、ゴミになりそうだった肉塊も消えているな。復活時に環境に配慮しているとは、さすがはセレスくんだな!」

 

 さて、そろそろ彼女の能力を説明しておこうか。

 彼女は超超高校級のギャンブラーである。

 ギャンブルである以上は『何かを賭けて勝負し、勝てば何かを得られ、負ければ賭けたものは失う』というのが基本ルールだ。

 そして彼女は、賭けの対象に制限など存在しない。

 例えば、コイントスをしよう。彼女自身が投げても良いし、誰かに投げてもらっても良い。

 その時彼女は賭ける。『自分の周りの炎』を賭け、『確実な無傷での生還』を望み、『表』が出る事に賭けた。

 結果、裏が出る事により『確実な無傷での生還』は得られなかったが『自分の周りの炎』は没収されて消滅した。

 磔の拘束も同様の手順で消去、消防車も似たような方法で処理しようとして失敗したが『確実な無傷での生還』を得る事ができた。というわけだ。

 

「苗木くん、一応コインはそのまま預けておきます。

 何かあったらまた宜しくお願いしますね」

「う、うん……分かった」

 

 こうして、第3の学級裁判も犠牲者無しで終了したのだった。







  超超高校級のギャンブラー
 『奇跡の精製者』と謳われた人外級のギャンブラー。
 あらゆる概念を賭博の対象にする事が可能である。
 この能力は占いのように使う事もでき、例えば『今から24時間で完全なる死人が出る場合にそれが誰か察知する権利』を求め『今から24時間で完全なる別離が発生する確率』を賭け、『54枚のトランプからジョーカーが出る』事に賭ければ『ジョーカーが出なければ死人は絶対に出ない、出ても死者が出るかどうか察知できる』という事になる。
 他人のものを賭ける事は一応不可能だが、奪い取れば賭ける事が可能である。
 彼女の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』




 なお、このときの彼女の賭けの勝率は求めたものと賭けたものの価値の比(+彼女自身の運)のみで決まる。分かりやすく言うと、1円を賭けて10兆円を求めてコイントスすればコインの裏が延々と続く。

 ちなみに、『24時間、仲間の死体が発生しない』事を求める事は不可能です。個人で持てるものではないので。(そもそも死体が生き返るから意味ないですし)
 また、『24時間、完全なる別離が発生しないこと』のように『無い』事を求める事も不可能です。発生確率を賭けて消費する事で疑似的に得る事はできますが。

 自分で書いてて恐ろしくややこしい能力になってます。感想欄などで質問が出た場合はできるだけ真面目に答えたいと思いますが、あんまり深く突っ込むのは勘弁してください。

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