超超高校級の78期生 作:天星
江ノ島盾子は混乱していた。
探偵が何か聞き覚えの無い名前の人物を告発したらギャンブラーが名乗り出てきた。
しばらく考えて、その聞き覚えの無い名前がギャンブラーの本名だった事を思い出した。
って言うか、何で探偵は知ってたんだろうか?
探偵「お約束だから訊いておくわ。どうしてこんな事を?」
博打「フフッ、実に簡単な事ですよ」
ギャンブラーの少女は、少しの間を置いた後に堂々と言い切った。
博打「あの10兆円が本物かどうか、気になったからです!!」
クマ『お金が欲しかったからじゃ無いんかい!!』
あまりに下らない理由に思わずツッコミを入れてしまったが、あの大金が動機になった事だけは確かだ。
思ってたのと何か違う気がするが、お金を必死にかき集めたあの努力は無駄では無かった、努力は報われたのだという事に気付き少しだけ目が潤む。
……後半の文章だけ抜き出したら借金に追われてた人みたいに聞こえるけど気にしない。
野球「オイオイ、そんな理由で人殺したのかよ!? バカじゃねぇのか!?」
幸運「いや、キミも大した理由無かったよね?」
野球「そ、そうだが……いや、理由無しの方がまだマシだろうが!」
幸運「う~ん、まあそうかもしれないけど」
水泳「今回のは流石に悪ふざけが過ぎるよ! どういう事なの!?」
何だか思ったより良い感じに絶望的になってる気がしてきた。
よく分からないが、今回は上手いこと行きそうだ。
江ノ島盾子は勝利を……確信しなかった。
何故かって?
だって、毎回確信する度に何か妙なアクシデントで結局絶望してくれない。
だから、決して確信してはいけないのだ!
江ノ島盾子は、そう確信した。
……アレ?
博打「フフッ、ところでモノクマ、一つだけお尋ねしたい事がございます」
モノ『う、うん? 何かね?』
博打「探偵さんが仰ったように、今回の事件の犯人には被害者が含まれております。
その山田くんはもうオシオキを受けない。それで合っていますね?」
モノ『え? うん。そうだけど?』
博打「それは安心しました。
それでは山田くん、出てきてください」
そう言ってギャンブラーの少女は何かの冊子を広げる。
すると、その中から殺されたはずの同人作家がポンッと飛び出てきた。
同人「ふぅ~、やっと出られましたか。少し窮屈でしたぞ」
モノ『ちょっっっ!? ええええええっっっっ!?!?』
突然出てきたピンピンしてる被害者に一時場は騒然となるが、一部の人は澄ました顔をしている。
眼鏡「おいどういう事だ! 説明しろ苗木!!」
幸運「いや、そこは本人に訊こうよ」
眼鏡「どういう事だ! 説明しろ山田!!」
同人「ふふっ、まあ実に簡単な事です」
では、お待ちかねの能力説明である。
彼は超超高校級の同人作家である。
故に最高級の同人誌が書ける、または描ける事は人外の基礎教養なので語るまでもなかろう。
彼の創作活動は2次元の同人誌のみならず3次元まで及ぶ。例を出すのであればフィギュア等だが、他にも様々な物を創作する事ができる。
そして彼が作る作品は例外なく魂が宿り、最早本物と区別が付かないレベルとなる。
同人「というわけで、我輩の死体は我輩による創作物であったというわけですな」
格闘「ふむ、生の残滓が感じられなかったのはそのせいであったか」
同人「おや? 看破されておりましたか? 次作る機会があればもう少し気をつけてみましょうか」
モノ『ちょっと待ったぁっ!! 検死してた探偵は気づかなかったの!?』
探偵「『死んでいる』とは言ったけど『生きていた』とは一言も言ってないわ」
クマ『ふざけんなー!!!!』
眼鏡「おいうるさいぞモノクマ。
山田、さっさと続けろ」
同人「分かりましたぞ」
クマ『え? ちょ、わt、ボクがおかしいの!? ねぇ!!!』
モノクマの絶叫は無視して解説が続けられる。
同人「では、我輩が同人誌から出てきた事についてですな。
これも実に簡単な事ですぞ」
超超高校級の同人作家は物語の創作の際にその紙の中に新たなる世界を生み出す。
故に、その世界に入り込む事は容易い。
同人「とまあこんな感じですな」
博打「つまり、私が犯した罪は器物破損のみですわね」
そんな話を聞いて江ノ島盾子は自分の部屋で白目を剥いて気絶した。
超超高校級の同人作家
『幻想の創造者』と謳われた人外級の同人作家
印刷物やフィギュアなど、様々な創作物を神がかったクオリティで実現することができる。
今回はトリックの為に極めてリアルな自身のフィギュアを作ったが、明らかに現実世界に居ないようなアニメや漫画っぽいフィギュアを作る事も勿論容易。むしろそっちが本職である。
印刷物の方は文字通りの意味で世界を創造し、その中に入り込む事もできる。
もちろん、中から物を取り出す事もできるので脱出スイッチも余裕で作れる。
彼の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』