超超高校級の78期生   作:天星

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3つ目の動機発表

 五体満足でオシオキマシーンから出てきた超超高校級の暴走族を見てへこみそうになった江ノ島だったがすぐに気合を入れ直す。

 今回は失敗してしまったが、きっと絶望のチャンスは来るはずだ。今はルールに従って粛々と進めようじゃないか。

 ……そんな彼女の思考は現実逃避っぽいのだが……まぁ、気のせいという事にしておこう。

 

 では、裁判後恒例のイベント、フロア開放を行おう。

 江ノ島は再び体育館に生徒たちを集める。

 

「また呼び出しか? 俺の時間は高く付くぞ」

『え~、裁判も終わったので新たなフロアを開放します!

 そこには脱出口がある可能性が無きにしも非ずというわけではありません!

 出たかったらさっさとコロシアイ成功させてね~』

「『可能性が僅かでもある』というわけじゃないって事は無いって事かな?

 まあ暇つぶしにはなりそうだから行くけどさ」

 

 そもそもこの中に真面目に脱出口を探そうとしている人が居るのかは疑問ではあるが。

 半分くらいは脱出口なんて関係なく脱出できそうだし。

 

 

 

 

 

 皆で3階を捜索したが、特に面白い物は無かった。

 強いて言うなら超超高校級の暴走族がついうっかり巨大空気清浄機を壊してしまったというショボい事件があったが、何人かの超超高校級が集まってとりあえず直した。

 外の汚染された空気を綺麗にして学園中に流す大事な装置だったのだが……あの人外どもがたかが毒ガスでくたばるかは疑問だ。

 ちなみに江ノ島と軍人にとっては普通に毒だ。開発には自分が一枚噛んでいるのでその対策くらいは常備しているが、軍人はそんな物は持ち込めないし、江ノ島にも助ける気は全く無かったので一瞬の修理により一番救われたのは軍人だったりする。

 

 

 さて、新しいフロアを開放したは良いものの、これだけでコロシアイが起こるならとっくに起こっている。

 と言う訳で、次の動機を用意する。

 江ノ島は再び体育館に生徒たちを集める。

 

『ハ~イ! 今回はまたまた動機を発表するよ~!

 じゃ~ん、10兆円で~す!

 クロがもし無事に逃げきれたら、これをあげちゃうよ~!』

 

 ステージの上に札束の山をドサリと置く。

 実は最初は100億円の予定だったのだが……監視カメラから拾った生徒たちの雑談によればその程度の金なら数日で稼ぐバケモノが複数存在するようなので頑張って増量した。

 本当はもっと増量したかったが、急いで印刷機を修理してインクや紙などを用意するのに時間がかかったのだ。これでもかなり頑張ったのだ。

 一応、周辺の民家や民間人の死体から強奪する事も平行して行ったが雀の涙ほどしか回収できなかった。

 

『ふふ~ん、殺人の動機としてお金っていうのは使い古された手だよね~。

 と言う訳で、レッツコロシアイ!!』

 

 ……なお、今更お金なんていう紙クズを欲する人外など皆無だったのだが……可哀想だから黙っておこう。

 

 

 

 動機が発表された夜、ある人物が超超高校級の幸運の部屋を訪ねていた。

 早速コロシアイが起こるかもしれないと江ノ島は期待に胸を膨らませる。

 

 コンコンとドアがノックされ、幸運の少年が客を出迎える。

 

「ごきげんよう、少々お時間をいただけないでしょうか?」

 

 そこに居たのは超超高校級のギャンブラーである。

 原作では幸運の少年をカモにする場面もあったが、本作では運が絡むギャンブルにおいては絶対に勝てなかったりする。

 運が絡まないゲームで勝負をするなら勝てるのだが……まあその辺は置いておこう。

 

「あれ、セレスさん? こんな時間にどうしたの?」

「苗木くん、あなたに少々預かってほしい物があるのです」

 

 そう言ってギャンブラーの少女が差し出したのはモノクマが刻印されたコインだ。

 このコインは学園中に落ちており、一階の購買部にあるガチャガチャ、通称『モノモノマシーン』で使う事ができる。

 ちなみに、幸運の少年にとってコインは脱出スイッチの引換券になっており、彼の部屋にはこれまで出てきた脱出スイッチがうずたかく積まれている。

 実用用や保存用だけでなく鑑賞用贈答用売却用分解用改良用改悪用護身用投擲用防具用重石用重り用踏み台用自爆用……等などの用途に使われている。

 最近では接着剤で繋げて板材や棒材にしてそれで家具を作る等の使用法も検討しているようだ。正直いくらあっても足りない。

 まあそれはさておき……

 

「こんな物を預かれって言われても……何に使うの?」

「ちょっとしたゲームに使います。

 私が『BET』と言ったらそのコインを投げて表か裏か私に言ってください」

「……うん、分かった。けど、これってどっちが表?」

 

 コインの片面にはモノクマが、もう片面には希望ヶ峰学園の校章が刻印されている。

 ちなみに、これを作らせた江ノ島は特にどっちが表だとか考えてない。

 

「そうですね、ではモノクマを表としましょうか」

「了解」

「では折角だからやってみましょう。『BET』」

 

 その宣言を聞いて幸運の少年がコインを弾き、手の甲で受け止める。

 コインは裏を、希望の学園の校章を示していた。

 

「裏だね」

「ありがとうございました」

「うん。これくらいならいつでも。

 でも、どうしたの?」

「……それはですね……」

 

「おい君達! そこで何をしている!! 風紀が乱れているぞ!!」

 

 ギャンブラーの少女が説明をしようとした所で風紀委員の少年が乱入してきた。

 一応、ギャンブラーの少女はずっと廊下に立っていたので『部屋の中で男女が二人きり』という条件は満たしていなかったのだが、長々と話していたせいか引っかかってしまったようだ。

 

「……今は失礼させていただきますね」

「うん、また明日ね」

 

 ……それが、幸運の少年とギャンブラーの少女の最後の会話だった……

 なんて事は無いので安心してほしい。


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