超超高校級の78期生 作:天星
江ノ島が暴走族に対して用意したオシオキ装置は『超高校級のハムスター』の尊いぎせ……献身により作られた装置だ。その装置を一言で説明するとハムスターの回転車のようになっている。
違うのは、中に入るのはバイクに乗った人間であること、そして、回るのは装置ではなく中に入って爆走するバイクと人間であるということだ。
恐るべき速度のバイクは遠心力により壁に押しつけられ、乗る人間もまた遠心力の影響を受ける。
最初は少々気持ち悪いくらいで済むだろうが、段々と遠心力は強くなっていき、肉体はひしゃげ、最終的には遠心分離機のように綺麗に分けられる。
これを受けて無事で済む人間などまず居ないだろう。
江ノ島盾子は勝利を確信した。
モノ『それじゃあ、オシオキタイムスタートっ!!』
暴走族の少年がバイクに乗せられる。
そしてバイクは装置に一直線に向かい、入る。
装置の中でバイクと少年がぐるぐる回る。見てるだけでも目が回りそうだ。
バイクが速度を上げる。目が回りそうだが、ちゃんと見て速度を調整しないといけないので頑張って見る。
更に速度を上げる。暴走族の少年の顔は涼しげに見えたがきっと気のせいだろう。
更に更に速度を上げる。まだ普通の人間でも目で追える速さだろう。江ノ島の動体視力ならまだまだ余裕だ。
更に更に更に速度を上げる。一般人だと回っている物が見えないくらいの速さだが、江ノ島ならまだ大丈夫。
更に更に更に更に速度を上げる。暴走族の少年の顔は涼しげだった気がするがきっと気のせいに違いない。
更に更に更に更に更に速度を上げる。気分が少し悪くなってきたがまだ大丈夫だ。暴走族の少年の肉体はまだ無事のようだ。
更に(中略)更に速度を上げる。そろそろ江ノ島の動体視力の限界が近づいてきた。これ以上上げると中の様子は殆ど分からない。しかし暴走族の少年はまだ無事のようなので頑張る。
更に(中略)更に更に速度を上げる。江ノ島の動体視力をもってしても完全に分からなくなった。なお、超超高校級の格闘家とかはまだまだまだまだ余裕の模様。
(全略)。江ノ島の動体視力が限界を迎えてから100倍くらいの速度まで上げた。もうそろそろ止めても大丈夫だろうと思って装置を止めようとするが、これまでの失敗の苦い記憶が蘇る。まだまだ安心できない。更に加速する。
もう音速なんてとっくに越えてそろそろ周速度が光速に近くなってきた。流石にそろそろ大丈夫だろうと判断して装置を止める。
……そして、暴走族の少年が普通に装置から出てきた気がするけど気のせいであってほしい。
気のせいであってほしいんだけど、現実から逃げ続けるわけにもいかなかった。
『え~……あの、何で生きてるのカナ?』
「んぁ? あの程度の速度、俺のバイクの平均速度より低かったぜ?」
彼は超超高校級の暴走族である。
彼の持つ才能は基本的にバイクに関わるものが多い。
例えば、バイクを一瞬でトップスピードに上げる能力、
そしてそのトップスピードそのものを大幅に引き上げる能力、
あらゆる鋭角カーブで最短距離を駆け抜ける能力などである。
これらの現象は全て彼自身の能力により引き出される為、乗るバイクの種類は一切問わない。
そして彼はこれらの操作に耐える為の能力を持っている。
故に、あの程度の遠心力で死ぬ事など断じてない!
「これで終わりか? んじゃメシにするか」
「お、大和田くんちょっと待って、め、目が回って……」
「おいおい、中に居た俺より辛そうだな。
それじゃ、ゆっくり休んでから行くぞ」
「う、うん。ありがと」
勿論そこに、絶望などというものは一切無かった。
超超高校級の暴走族
『臨界の超越者』と謳われた人外級の暴走族。
慣性、摩擦係数、重力などを操作する事で身体への負荷を全て無効化し、一瞬でトップスピードに到達したり、鋭角カーブも物理法則を無視して最短ルートを駆け抜ける事が可能。
また、一応バイクに触れるだけで魔改造を施し、バケモノじみた性能の走りを見せる。本編中でも述べたように普通のバイクでも上記の能力だけでも十分に人外染みた走りを実現するが、本人的には自分が改造したバイクの方が使いやすいようだ。
本人の趣味の問題もあって魔改造の才能はバイクにしか使っていないが、実は乗り物なら何にでも使える。尤も、機体性能が凄すぎてよっぽど強靭な肉体を持っている人か本人しか使えない為あまり意味は無いが。
彼の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』
オシオキを受けた本人よりも回りの被害の方が微妙に大きい模様。
そしてむしろ超超高校級の暴走族の方が絶望的なオシオキマシーンを作れそう。