ダンジョンに天パ侍がいるのは間違っているのだろうか   作:TouA(とーあ)

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ダンまちにハマりました。

投稿速度は遅いです。


第一章 その男、侍につき
プロローグ


《迷宮都市 オラリオ》

 

 この世界で唯一の『ダンジョン』と通称される地下迷宮を保有する、否、迷宮の上に築き上げられたこの街に、夢を持って足を踏み入れる人間は多い。

 

 地位や名誉の獲得を夢見る者、一攫千金を夢見る者、運命の出会いを夢見る者、その姿は人によって様々だ。

 それぞれがそれぞれの大望をもって神の家族(ファミリア)となり、冒険者となる。

 彼等に共通するのは()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 然し────何事にも例外は有るものである。

 

 

 

 

「ふぁ〜〜〜今何時?」

 

 

 或る一室で一人の男が目覚め、ゆっくり体を起こした。

 其の部屋は所謂、『和』というスタイルで作られており、机、椅子に加え、服が入っているであろうタンスは全部木で出来ていた。敷き詰められた畳は香りで部屋を優しく包み込んでいた。

 

 

「10時か。何か忘れてる気がすんなぁ・・・・・・」

 

 

 水色がかった銀髪の天然パーマに死んだ魚のような目。

 黒の上下服の上に雲をイメージさせる波模様が入った白い着物を片方だけ羽織り、黒ブーツを履いている。

 外見からして無気力、脱力感が感じられる男は何も無い宙に向かって呟いた。

 

 

「ガレスのおっさんと飲んでた記憶があるが・・・・・・取り敢えず食堂に行くか」

 

 

 男は腰に“洞爺湖”の銘が入った木刀を差し、部屋を出た。

 部屋の外、“黄昏の館”と呼ばれる其の建物は閑散としており、物音一つしない。

 男はそれを異常自体だと捉える事はなかった。寧ろ腹の虫が鳴いている自身の方が異常事態だと捉えている程だ。

 

 

「うーす・・・あ、あれ?」

 

 

 男が事態に気付いたのは大食堂に入った時だった。

 多少遅れたとは言え、広大な食堂で()()()()()()()居ないのは不自然であり、不気味でもあった。

 

 

「おはよう銀時。朝ごはん、ここにあるで」

 

「うーす。ロキ、ありがとよ」

 

 

 男────銀時は呼ばれた声に釣られるように机の間をぬって歩いた。

 銀時を呼んだ女性────ロキは、糸目に緋色の髪と端麗な顔立ちだが、出るとこは全く出ていないと云う残念極まりない容貌だった。

 だが其の正体は下界に降臨した神である。神力を封印して零能へと身をやつしているが纏う雰囲気と迫力は人とは別種の神威を帯びている。

 

 

「おーこれこれ。やっぱ朝は“宇治銀時丼”じゃなきゃなぁ」

 

「ほんとよく食べるなぁ・・・見てるこっちが胸焼けするわ」

 

 

 銀時の目の前に有るのは“小豆(あずき)”と呼ばれる小豆を茹で、砂糖を加え、甘く味付けした物をホカホカのご飯の上に山盛りに盛った物だ。銀時はこれを“宇治銀時丼”と名付けている。

 ロキは“宇治銀時丼”を食べる銀時に温かい眼差しをそそいでいる。それは子の食事風景を優しく見守る、親のそれだ。

 

 

「ふぅー食った食った。御馳走さん」

 

「銀時、フィンから手紙預かっとるで」

 

「フィンから?・・・嫌な予感が────」

 

 

 銀時はロキから手紙を預かり、その場で開いた。手紙には随分な達筆でこう記されていた。

 

 

 + + + +

 

 銀時、先にダンジョンへ向かうよ。

 

 僕らが18階層(セーフティポイント)に着くまでに合流しなければ遠征後の宴のお代と損失した武器やポーションの代金は全部君持ちだ。

 

 明日は遠征だと言うのに潰れるまで飲む君には良い薬だろう。

 

 ではまたダンジョンで。

 

 

 ロキ・ファミリア団長 フィン・ディムナ

 

 + + + +

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 銀時の背に嫌な汗がつたう。何度読み返そうが手紙の内容は変わる事はなく、銀時に現実を叩きつけていた。驚愕に頬を引きつらせる銀時とは打って変わり、目の前にいるロキ(主神)は銀時の表情を見てニタニタしている。

 

 

「やっちまったァァァァァ!!!!」

 

 

 自業自得による慟哭に誰も答える者はいない。

 銀時は頭を抱え、体をくねらせるが、ロキはやれやれ顔で笑みを浮かべるだけだ。

 苦悶に身を悶えていた銀時はピタッと動きを止めて呟いた。

 

 

「いっそのことサボるか・・・」

 

 

 清々しいほどダメ人間である。

 ロキはそんな銀時を見ても苦笑を漏らすだけだ。仕方ないなぁこの子は、の一言に尽きている。

 だがロキ・ファミリアにとって銀時が居るのと居ないのとでは天と地ほど差があるのも事実であった。

 

 

「銀時」

 

「んぁ?」

 

「他の団員はそうでも無かったけど、()()は結構トサカに来とったで」

 

「なん・・・・・・だと・・・・・・」

 

 

 ロキの言うママとはこのファミリアの副団長である。

 銀時にとって逆らい難い人物であり、女性でありながら、男性にも女性にも尊敬され、神でさえもその美貌を羨ましがる程の人物である。

 

 

「あーもう判りました。行くよ、行きますよ、行けばいいんだろもう」

 

「気を付けてな~子供たちのこと頼んだで、銀時」

 

 

 銀時はやおらに立ち上がり、大食堂の扉に向かって歩き出した。

 銀時はロキの言葉を返すことは無かった。ただ、片手を上げて、応えた。ロキはそれだけで十分だった。

 

 

 オラリオの街を一人の侍が疾走した。

 

 

 




どうも初めまして。

銀さん大好き。ダンまち大好き。リューさん大好き。

補足として、酔いつぶれたため、銀さんは何時もの服装で布団の中に入りました。ダンジョンに行く前にきちんと着替えてます。はい。

もしよければ感想と評価ください。モチベーションが上がります。

次回はロキファミリアの皆との関係性だったり、危機だったり。

ちなみに、Lv.6です。ステータスは次回。

※編集して字下げを行いました。

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