転生してダクネスの姉になりました   作:フル・フロンタル

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第6話〜ダクネスの苦悩〜

 

 

 

私はレイの家を出ると、冒険者ギルドに向かった。やる事は決まった。仲間を増やすことだ。今回のことは120%レイの自業自得だが、事こうなった以上は仕方ない。

仲間を増やせば、ある程度は危険も減るし、アークプリーストがいれば回復もできる。レイと一緒に遠距離攻撃をするアークウィザードなどがいると最高だ。いや、上級職ばかりだと、人見知りのレイの肩身が狭くなるかもしれないし、冒険者などがいても良いかもしれない。

とにかく、そんなパーティを探そう。そう思いながら、歩いてると、粘液まみれのアークプリーストとアークウィザードが、肩を落としてトボトボと銭湯に入って行くのが見えた。

よし、あのパーティに入れてもらおう。

 

 

 

 

ギルドに入ると、パーティメンバー募集の張り紙と、先程の粘液二人の仲間と思われる男がいたので、声をかけてみた。

 

「………すまない、ちょっといいだろうか……?」

 

「なんで……しょう、か………」

 

途切れ途切れの返事が返って来た。しばらくジロジロと私のことを見た後、男はまた口を開いた。

 

「あ、えーと、なんでしょうか?」

 

「うむ……。この募集はあなたのパーティだろう?もう人は募集してないのだろうか」

 

「……あ、ああ。あー、まだパーティメンバーは募集してますよ。……とは言っても、あまりオススメはしな」

 

「ぜひ私を!私達をパーティーに!」

 

私はノータイムで男の手を掴んで言った。

 

「い、いやいや、ちょっ、待って待って!色々と問題があるパーティなんですよ、仲間二人はポンコツだし、俺なんて最弱職で、さっきだって仲間二人が粘液塗れ……」

 

「私の姉も最弱職だから問題ない!それよりも、やはり、先ほどの粘液にまみれた二人はあなたの仲間だったのか!一体何があったらあんな目に……!わ、私も……!私もあんな風に……!」

 

「えっ⁉︎」

 

はっ、しまった。ついうっかり本音が。どう言い訳をしようか考えていたのだが、男は別の部分に食いついた。

 

「お姉さんがいるんですか?」

 

「ああ。実は、冒険者兼、アイテム屋の姉がいるんだが、腕は確かだぞ。ジュウとかいう良くわからない武器で煎餅を食べながらでも狙撃できる。それに、何もない空間からポーションも産み出せるんだ」

 

我ながら詐欺に近い紹介をしたものだと思ったが、嘘は言ってないから問題ないだろう。

 

「銃⁉︎銃があるんですか?」

 

「え?あ、ああ……」

 

なんだ、確かに珍しい武器だが……いや、というかジュウを知ってるのか?

って、いかんいかんいかん。とにかく、仲間にならないと。

 

「と、とにかく!あんな粘液まみれになる機会があるのなら、是非私をパーティに‼︎」

 

「あ、今なんて?」

 

「パーティに‼︎」

 

パーティに入った。

 

 

 

 

翌日、私はレイの部屋に来た。

 

「おい、レイ」

 

「………ララティーナ」

 

やけに重い声で声をかけて来た。目には何故か涙が溜まっている。

 

「ど、どうした?何を泣いている?」

 

「あたし、女の子と結婚したい……」

 

「…………は?」

 

「ギャルゲー意外とすっごい面白かった……こんな女の子が現実にいたらどんなにいいか!」

 

「…………」

 

「ああ……伝説の樹の下で女の子に告白されたい……」

 

ああ……私の姉がどんどんダメになっていく………。

 

「ね、ララティーナ」

 

「なんだ」

 

「俺と、付き合ってください!」

 

「殴り飛ばすぞ」

 

何を言い出すんだこのクズ。

 

「それより、クエストに出ないか?」

 

「や」

 

「1文字で断るな。安心しろ、前よりは安全なはずだ」

 

「前よりは、って……あれ安全度0だからね。1足せば前よりは安全になるに決まってんじゃん」

 

「…………」

 

イラっとするな私。殴りたいとか思うな私。我慢しろ私。

 

「いいから来い。今日はその人達を待たせているんだ。………来ないとそのぴーえすぴーとやらを壊」

 

「行く」

 

自分でこんな手使っといてあれだけど、本当この人ダメだな。

 

 

 

 

冒険者ギルド。レイは準備してから来る、とのことで私とクリスが先に行った。昨日出会ったカズマにスキルを教えたり、カズマに挨拶したり、クリスがパンツを取られたりしていた。

が、ここで問題が一つ。

 

「…………遅い」

 

………レイが来ない。何をしてるんだあいつは。相手を待たせているのだぞ。

少しイラつきながら待ってると、カズマが聞いてきた。

 

「そういえば、お姉さんは来ないのか?」

 

「あ、ああ……後から来ると聞いていたんだが……何をしているんだ」

 

「アイテム屋兼業してるんだろ?忙しいなら仕方ないさ」

 

「そ、それは……!」

 

半分ニートです、とは言いづらかった。まだ、パーティに入って間もないし、レイに至っては会ってすらない。今、実態を言うと私はともかく、レイは入れてもらえない可能性がある。

 

「何何、お姉さん。アイテム屋兼業してるの?」

 

アクアが横から会話に参加して来た。

 

「あ、ああ。まぁ、な」

 

「そうなのですか。なんてお店なんですか?」

 

めぐみんも興味あるのか、会話に参加して質問して来る。

 

「何だったかな……ホウリュウジ、だったか?」

 

その直後、ブッと3人は吹き出した。

 

「お、おい!法隆寺って言っ」

 

「ほ、法隆寺って……あの激安アイテム屋ですか⁉︎」

 

カズマの台詞を遮って、めぐみんが目をキラキラ輝かせて言った。

 

「あ、ああ。まぁ、しばらくは値上げするらしいが……」

 

「私、あそこに何度もお世話になってるんです!ポーションも激安いですし、他のアイテムも激安いですし!」

 

違うんだ、原価ゼロだから激安にしてるんだ。

 

「お金なくて素寒貧の時でも、あそこの店主さんは優しく無料でご飯食べさせてくれたりもしました!」

 

違うんだ、多分それは金銭のやり取りが面倒になって来てた時だと思うんだ。その時はポストなかったから。

 

「綺麗な白い髪、クールな視線、細い腕と脚、私の憧れの方の一人なんです!」

 

違うんだ、若白髪、常に眠くて半開き、動かな過ぎてやせ細る身体なだけなんだ。

私は心の中で段々と申し訳なくなっていた。これはまるで詐欺なんじゃないか、と。何とか話をそらそうと、カズマの方を見ると、「法隆寺……まさか奈良のことか?……いや、まさか……」とかブツブツ呟いている。アクアは途中で飽きたのか、花鳥風月をしてる。

……ああ、どうしよう。こんな事では、エリス様に見捨てられてしまう………。いや、でもレイのためにはこのパーティに入れるべきな気もするし……しかし、このまま落胆させるのは気が引けるぞ。

ウンウンと頭を抱えて唸っていたその時………、

 

『緊急クエスト!緊急クエスト!街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!繰り返します。街の中にいる冒険者は、至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

大音量のアナウンスが流れた。

 

 

 


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