転生してダクネスの姉になりました   作:フル・フロンタル

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第5話

あれから色々と試したが、食べ物、金、武器などといったものは作れなくなった。作れるものは、銃弾とポーション系しか作れなくなった。また、ポーション等の回復系アイテムにしても普通のポーションとハイポーションしか作れなくなり、それも1日10本のみになった。

 

「………誰かが意図的にやったとしか思えないんですけど」

 

「しかし、それなら仕方ないな。レイは働くしかないな」

 

くっ、癪だがその通りだ。これからは冒険者も兼業しないとやっていけない。

 

「まぁ、いいよ。お金はある。とりあえず、ポーションの値段を少し上げて、それと共にポーションの原料を購入しないと。あと、ボーションの瓶会社とも契約して……なるべく安い所とかな。これからは最低価格じゃやっていけないから、無料の10本含めてちゃんと利益が回るような価格設定を……」

 

ブツブツと呟いてるあたしを、ララティーナは別人を見るような目で見ていた。何?と、視線で問うと恐る恐る口を開いた。

 

「……いや、見慣れない光景に、思わずお前誰?と思ってしまって」

 

「あたしとインファイトしたいならハッキリ言ってくれる?」

 

まぁ、実際面倒臭いけどね。瓶の会社がこの世界にあるかどうかわかんないし、ポーションの原料も調べなきゃいけない。必要ならバイトを雇うことにもなりそうだし、その場合は給料も決めないといけないし、この世界の労働基準法の有無も調べ…………、

 

「面倒になってきた」

 

「お、おい!」

 

やってらんねー。なんでこんな面倒なんだよ。

 

「あ、そうだ。魔王軍に入ればいいんじゃないかな」

 

「お前はほんとに何を言い出すんだ!」

 

ダメか……我ながらナイス判断だと思ったんだが。

しかし、こうなると困ったことになるな。ホントに働かなきゃならなくなる。まぁ、金のためには仕方ない。生き物は食ってかなきゃ死んでしまう。

 

「仕方ない、か……。とりあえず、ご飯食べにギルド行こう」

 

「そうだな」

 

ああ……働きたくない………。

 

 

 

 

ギルドにて、クリスさんと合流し、あたしとララティーナで朝ご飯。テキトーな料理を注文して、食べながら今日の事を話した。

 

「へぇ、能力が……?」

 

「そうなんだよね。パパ……父さん優しいから追い出されたり勘当されはしないだろうけど」

 

「今、パパって言いかけた?」

 

「あまり迷惑は掛けたくないんだよね。養子にしてくれただけでもお世話になったし、今もなってるのに」

 

「ダクネス、今この子パパって言いかけなかった?」

 

「ああ、昔は意外と甘えん坊だったからな。今でもその名残りが抜けてないんだろう」

 

「へぇー!幼いのは外見だけじゃなかったんだね!」

 

直後、あたしは2人に拳銃を向けた。ガキリと音を立てて撃鉄を引いて、いつでも発砲可能にした。

 

「ごめんなさいは?」

 

「「ごめんなさい」」

 

「で、話を元に戻すけど、とにかくしばらくはあたしもクエスト受けるから。なるべく金になる奴ね」

 

「まぁ、動機はどうあれ、外に出る気になったのは良い事だ。では、早速行くか」

 

ララティーナはそんなことを陽気に言っている。そのとなりのクリスはニコニコしながらあたしとララティーナを見ていた。

………そういえばこの人、能力が無くなったことに「なんで?」とか「心当たりは?」とか聞かなかったな。そもそも、まるでララティーナを助けるためにあたしの能力は消えたし、ララティーナが苦労してる理由になる、あたしが働かない理由解説したのは一人しかいない。

もしかして、こいつが……いや、でも女神にもらった能力をたかが一盗賊が消せるとは思えない。

 

「おい、レイ」

 

ララティーナに声を掛けられ、あたしの思考は途切れた。

 

「さっさと食べて、クエスト受けるぞ」

 

「あ、うん」

 

とりあえず、さっさと朝飯をかっ込んだ。とにかく、クエストだ。金がない。

 

 

 

 

今日のクエストはゴブリン狩り。ララティーナとクリスさんが前衛で、あたしは後衛。この前のダンジョン攻略で、拳銃は敵に有効であることがわかった。なら、距離を保って慌てずに落ち着いて狙撃していれば、ゴブリン如きは相手にもならないだろう。

安全な冒険。うん、最高。ゴブリンの群れを相手に、あたし達は向かい合った。ゴブリン10体討伐。群れは7体しかいないが、別働隊を配置するような知恵がゴブリンにあるとは思えないので、おそらくその場にいないだけだろう。

クリスと戦ってるゴブリンの眉間をあたしは狙撃した。

 

「! ありがと。レイ!………って、レイ⁉︎」

 

座り込んで煎餅を齧りながら、撃ってるあたしの状態に驚愕したのか、クリスが驚いたような声を上げた。

 

「何」

 

「何、じゃないよ!戦闘中だよ⁉︎何やってんの⁉︎」

 

「おせんべ食べてる。余裕だし」

 

「余裕って……!戦闘中って何あるか分からないんだから……!」

 

「大丈夫大丈夫。二人とも頑張ってるし、こっちには遠距離攻撃において最強武器の銃があるから」

 

「いやそういう問題じゃ……って、」

 

「楽して戦闘できるってのは良いことだと思うんだよね。人間、誰でも楽したいわけだしね?むしろ、無理してあくせく働く事の方がおかしいと思うんだよね」

 

「ちょっ、レイ!ヤバイって!」

 

「そうだよねー。あくせく働くのってやばいよねー。世界の終わりだよねー。むしろそんな世界終われだよねー」

 

「いや、後ろ!レイ後ろ!」

 

「へ?後ろ?」

 

振り向くと、3匹ゴブリンが立っていた。

 

「…………………」

 

「…………………」

 

「ふおおおおおお⁉︎」

 

反射的に後ろに銃を向けたが、顔面を殴られて吹っ飛び、拳銃を落とした。

 

「! れ、レイー!」

 

さらに、そのまま3匹はあたしに襲いかかって来て、お腹、脚、顔、腕をまったく躊躇することなくボッコボコにした。

 

「ふ、ふおおおおおお‼︎」

 

慌てたクリスが目の前のゴブリンを倒し、突っ込んで来てあたしを袋叩きにしてるゴブリンをギッタギタにした。

そして、頬に汗を流しながら聞いて来た。

 

「あの、だ……大丈夫……?」

 

「………………」

 

「立てる?まだ戦える?」

 

「………………」

 

「も、もしもしー……?レイさーん……?」

 

「………………」

 

戦えるか、だって?その問いの答えは決まってる。

 

「…………引きこもる」

 

「………………」

 

家に帰って引きこもりました。

 

 

 

 

翌日。布団の中であたしはゲームをしていた。鏡を見たわけではないが、過去最高に目が腐ってる。もう嫌だ。あんな痛い思いするなら冒険なんかしない。朽ち果てるまでここにいてやる。

すると、ノックの音が聞こえた。

 

「誰」

 

「だ、ダクネスだ……」

 

「何」

 

「く、クエス……」

 

「行かない」

 

ララティーナが落胆してる様子が、扉越しにも分かった。っと、危なっ。メガバズーカランチャー食らうとこだった。

 

「は、入るぞ……」

 

ララティーナが部屋に入って来たが、あたしはおかまいなしにゲームを続けた。

 

「あの……クエスト……」

 

「行かない」

 

「………はぁ」

 

流石にあたしを可哀想に思ってるのか、強く言ってこないな。

 

「……で、でも、昨日のは自業自得だろう?」

 

「でも行かない怖い引きこもる」

 

「……………」

 

「そもそも、あたしが冒険者としてお金稼ごうなんてのが間違いだったんだよね。あたしはあたしらしく、自宅を警備しながら生きるのが正解なんだよ。やっぱ、自分は自分らしくしないとね」

 

「…………」

 

ララティーナは困ったように腕を組んで少し考え事をした後、ため息をついた。

 

「………わかったよ。私も悪かった。レイを守りきれなかったからな。けど、もう一度行ってみないか?」

 

「やだ。少なくともあたしの安全が絶対保証されないと嫌」

 

「……………」

 

少しララティーナは考えた後、ふと思いついたように言った。

 

「………これしかないか」

 

「トランザム‼︎」

 

「よし分かった。100%とはいかないが、限りなく100%に近い状態の安全なら頑張ってみよう」

 

「フハハハハ!トランザムソードダンス!」

 

「それなら良いか?」

 

「え?あ、うん。いいよ」

 

「なら、待ってろ」

 

ララティーナは出て行った。さて、続き続き、と。

 

 


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