転生してダクネスの姉になりました   作:フル・フロンタル

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第13話〜ダクネスの苦悩2〜

 

 

翌日、私が姉上の部屋に行くと、レイは一人で部屋で寝転がっていた。気まずげに一応、聞いてみた。

 

「お、おい。レイ……仕事は」

 

「働かないよ。だって潰れたもん」

 

レイの答えに、思わずガッカリと肩を落としてしまった。その私に、ゲームをしながらレイは語り出した。

 

「なんかね、あたし分かっちゃったんだよね」

 

「? 何がだ?」

 

「世の中には、働くべき人間と働かざるべき人間がいる、と」

 

こいつは何を言ってるんだ。

 

「前者と後者の割合は99:1、つまりほとんどの人間は働くべき人間であるわけだが、ごく稀に働くべきではない人間が存在する。………それが、私だ」

 

こいつ本当に何言ってるんだ。

 

「働くべきではない人間は、働こうとすると必ず何かしら天罰が下る。働こうとしても、労働の心地よさに目覚めても、あまりにも大切な人に心配されたため、改心しようと思っても、神によって物理現象の許す限りの範囲内、全力を持って阻止される。世の中の理として、そうなっているんだよ。例えば、アイテム屋の生命線である能力を封じられたり、冒険に出ても身体を全力で痛めたり、ラーメン屋を始めてもスープを純水に変えられたり、ね。………あれ?これほとんど物理現象じゃないや」

 

た、確かに見えない何かの力に阻止されているようにも見えるが……いや待て、二つ目は自業自得だろう。

 

「そして、私は気付いてしまったんだよ……。私は、働いてはならない人間だ、と」

 

「そ、そんなの分からないだろう。偶然かもしれないし……」

 

「偶然を装った必然かもしれない」

 

「で、でもだな……!」

 

「とにかく、私はもう働かない。ここで餓死するならもうそれでいい。働いたら負ける」

 

「………ッ」

 

ダメだ、過去一番に腐ってるこいつ……!これならまだアイテム屋の時の方がマシだった……!

 

「そ、そうか……」

 

私はレイの家を出ると、ギルドへ走った。

 

 

 

 

カズマ、アクア、めぐみんといつも集まるギルドの席。そこに来るなり、私は机を思いっきり叩いて三人に言った。

 

「と、いうわけで!今からエリス様に祈りを捧げたい、手伝ってくれ‼︎」

 

「「「……………」」」

 

3人ともビックリしたのか、押し黙った。顔を見合わせ、「誰が聞く?」みたいなやり取りの後、めぐみんが言った。

 

「お、落ち着いて下さいダクネス。何が、『と、いうわけ』なんですか?」

 

「実はな、私の姉の事なんだが……」

 

「ああ。ラーメン屋潰れたんだってな、気の毒に。でも、アクアから聞いた感じだと自業自得なんじゃないか?なんか、急に客に逆ギレしたんだろ?」

 

カズマがそう言った直後、私はアクアを睨んだ。目を逸らして口笛を始めた。そのアクアの頭を私は掴み、ギリギリと力を入れた。

 

「何が自業自得だ!お前はどういう伝え方をしたんだ⁉︎」

 

「いだだだだ!だ、だって!私の所為だって怒られたくなかったの!もう借金を増やしたくなかったの‼︎」

 

「お前がラーメンの中に親指を浸したのが悪いんだろうが‼︎液体を綺麗にする代わりに人の姉を汚くしおって‼︎」

 

「ごめんなさい!謝るから、ちゃんと謝るから離してよ‼︎」

 

「お、おい。落ち着けって……」

 

カズマが止めに入り、私は本当の事情を説明した。直後、カズマがアクアを睨んだ。そして、アクアの両頬を抓って引っ張り回し始めた。

 

「お前はぁ‼︎人様に迷惑かけるなっていつも言ってんだろ‼︎」

 

「だから謝ったでしょ⁉︎ちゃんと今、謝ったでしょ⁉︎何で私が責められるのよ、レイにだって問題はあったでしょ⁉︎」

 

涙目になるアクアとカズマのじゃれ合いをスルーして、めぐみんが言った。

 

「そ、それでダクネスは私達に何をして欲しいんですか?」

 

「ああ。色々考えたんだが、最初に言った通り、エリス様に祈ろうと思う。レイに私の言葉は届かない。家に引きこもったまま、ゲームをする手を止めず、あのまま朽ち果てて餓死する覚悟だ」

 

「それで、祈りですか……」

 

「ふん。引きこもりのニートなんてこのアクア様が1発殴ってやれば1発で更生するわよ!」

 

「「お前の所為で引きこもりのニートになったんだろうが‼︎」」

 

「お、怒らないでよー!」

 

私とカズマにデュエットで怒鳴られ、アクアは泣き出した。

 

「大体、エリスに祈りですって⁉︎私を誰だと思ってんの⁉︎エリスの先輩の女神、アクアよ⁉︎」

 

「そういう夢の話はいい‼︎いいから教会に来い!」

 

「信じてよー!無理なんですけど、流石に後輩に祈りを捧げるのは無理なんですけど!」

 

「ダダをこねないで下さい。元々、今回の元凶はアクアの所為でしょう」

 

「そうだけど、そうだけど……!」

 

めぐみんに言われても納得していないのか、うーっと唸るアクア。

すると、カズマが立ち上がった。そして、アクアに手を向ける。

 

「『スティール』」

 

直後、カズマの手が輝き、アクアの羽衣を奪い取った。

 

「んなっ……⁉︎」

 

「これ、売り飛ばされたくなかったら行くぞ」

 

「分かった!分かりましたから返して下さいカズマさん!」

 

 

 

 

エリス教の教会。そこで、私達は片膝をついて手を組んだ。

 

「いいな、祈るのはレイの就職祈願とその成功だ。細かい指摘はしないが、頼む」

 

私の指示に「おう」「はい」「分かったわ」と3人は答えた。

そして、目を閉じて私から祈りを捧げた。

 

「エリス様、我が姉君であるダスティネス・レイをまともな安定した職に就かせて下さい。………多少厳しくてもいいから」

 

続いて、カズマの番。

 

「えーっと、エリス様?レイがー、そうだな。まともな人間になって俺たちのパーティのまともな戦力になりますように」

 

随分と含みのある言い方だが、冒険者になるというのは悪くないのでスルーしておいた。

続いて、めぐみん。

 

「エリス様、レイが冒険者になり、私と一緒に爆裂道を極めますように」

 

う、うん。前半だけでいいよなそれ?まぁ、冒険者というならそれはそれで。

最後にアクアの番、

 

「空からお金が降ってきますように」

 

「おい待てお前。終いには怒るぞ」

 

「なんでよ!別にお金があればレイだって困らないでしょ⁉︎」

 

「ニートになるのが困るんだ!ちゃんと祈らないと……カズマ、その羽衣」

 

「分かったわよ!ちゃんとやるから!」

 

 


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