転生してダクネスの姉になりました   作:フル・フロンタル

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第12話

 

 

 

翌朝。なんか奇妙な夢を見ていた気がするが、その夢の内容を思い出そうとしながら仕込みをしてると、店の扉が開いた。

 

「レイ!来てあげ」

 

「ごめんね、まだ準備中だから」

 

「違うわよ!客じゃないわよ!台詞を遮らないでよ!」

 

「……アクア。どしたの?」

 

「どしたの?じゃないわよ!昨日の夜に話したでしょ⁉︎今日からここで働くって!」

 

「…………え、そうだっけ」

 

「そうよ!」

 

「……………だめだ、思い出せない。何時頃の話?」

 

「夜中よ!あなたが寝てる時に起こして話したでしょ⁉︎」

 

「……………………………?」

 

え、マジでそんな話あったか。………確か昨日の夜はゲームしてそのまま寝落ちして……で、変な夢で……寝てるあたしを青い髪の女神が起こしてバイトさせてくれとかなんとか………、

 

「ああ!あれ夢じゃなかったんだ!」

 

「何、本当に忘れてたの⁉︎」

 

「じゃ、まずは手洗ってきて」

 

「なんでよ!私が汚れてるっての⁉︎」

 

「飲食店なら衛生面を管理するの当然じゃん」

 

「だから私は汚れてないから!衛生面なんて気にする必要ないのよ!」

 

「あんた本当ヌっ殺すよ。大気中に触れてる間は物に触れなくても汚れや菌は付着すんだよ」

 

「なんですって⁉︎そのタイキって奴を呼んで来なさい!私が浄化してやるわ!」

 

「むしろなんかもうお前に待機して欲しいよね。大気は悪魔の種類じゃねーから。石鹸水の入ったバケツを頭からダンクされたくなかったら、さっさと手と頭の中を洗い流して来てくんない」

 

「ちょっと!頭の中ってそれどういう意」

 

頭からバケツをダンクした。

あたしは自分より目下の立ち位置のくせに言うこと聞かない奴には容赦しない。それが例え女神でもだ。

 

「うぐっ……ひぐっ……」

 

頭から綺麗さっぱり洗い流されたアクアに、号泣しながらも店の机を拭かせていた。あー、なんかこいつと話してると腹立つ。そんなことを思いながら、スープを作っていた。

 

「アクア、机拭くの終わったら床、掃き掃除ね」

 

開店まで30分。余裕だな。やっぱバイトがいると楽でいいわ。焼き豚の解凍を解いた。あとは、餃子、炒飯、野菜炒め、などなどのサブメニューの準備もして行く。

 

「よし、準備OK」

 

厨房はこれで大丈夫だろう。後は表だ。

 

「アクア、終わったら店の前を簡単でいいから……」

 

「あっ」

 

バケツをぶちかました挙句、その水たまりの上を机で隠そうとしているアクアの姿が見えた。

 

「……な、なーんちゃって……」

 

「よし、クビ」

 

「うわあああ!ごめんなさい!真面目にやるからクビだけはやめて!」

 

とりあえず、開店前にトイレだけ行っとこう。

 

 

 

 

開店して、五分後くらい。早速お客様が五人お見えになった。

 

「いらっしゃいませー」

 

アクアが営業スマイルで接客する。服装はもちろん、メイド服なんだけど、全く気にした様子なく接客してるので、伊達に何年も生きてるわけじゃないんだなと思いました。

 

「レイー!ラーメン五つ、餃子三皿!」

 

「あいよ」

 

ラーメン屋っぽい返事と共に、あたしはラーメンを作り始める。

まぁ、宴会芸の神様だったり、過去に何度もバイトしてたりするので、接客はほぼほぼ完璧だ。採用した記憶は寝ボケてたからあんまないけど、あながち間違った人選ではなかったかもしれない。

 

「はい、まず餃子ね」

 

「はーい」

 

「それと、ラーメン五つ」

 

アクアはまず餃子を運んでから、「あちっ」と呟きながら、ラーメンを運んだ。

あー、確かにラーメンは熱いものだし、オボンとか用意したほうがいいかな。そんなことを考えていた直後、

 

「何だこりゃ⁉︎」

 

「完全にお湯じゃねぇか⁉︎」

 

「まっず‼︎」

 

…………は?あいつら今何つった。喧嘩売ってんの?喧嘩を買う度胸ないけど。

 

「おい、なんだよこれ!」

 

「前より明らかに味薄くなってんぞ⁉︎」

 

「店長呼べ店長!」

 

えー、クレームとか面倒だから嫌なんだけど。けど、アクアにはそんなの関係ないんだろうな。

 

「レーイー!呼んでるわよー!」

 

ほら見たことかあのアホ。一度、あたしは寸胴の中のスープを注いで飲んでみた。が、普通に味がする。つまり、クレーマーか。よし、ブッ殺そう。

あたしは強盗用に用意しておいたホルスターを腰に装着して、客の方に出た。

 

「なんすか?」

 

「何だよ、このラーメン‼︎お湯の味しかしね……‼︎」

 

そう言った直後、あたしは眉間に銃口を突きつけた。

 

「ああ?余りにもうちが売れ過ぎて、自分の店が売れ無さすぎて八つ当たりに来たクレーマーか?悪いがあたしは冒険者も兼業している。それ以上、くだらない事をやってっと、この銃口が火を吹いてあんたらの眉間ブチ抜いて、クレームも何もかも神の元へお持ち帰りテイクアウトだ」

 

「う、うわああああ‼︎」

 

「お前の店の悪評を広めてやるからなぁ‼︎」

 

客は逃げ出した。金ら払ってもらえなかったが、クレーマーは追い払えたので良しとしよう。金は後でギルドにチクって没収してもらおう。

 

「まったく、とんだクレーマーだったわね」

 

「ホントだよ。大体、お湯の味がするラーメンとかそれもうラーメンじゃなくて茹でてる最中の麺じゃん」

 

言いながらあたしは机の上のラーメンを見た。直後、唖然とした。スープの色が無い。

 

「……………は?」

 

無色透明、化学室に用意されてそうな純水と化していた。おかしい、蛙骨ラーメンはどういうわけか、薄緑のスープなはずだ。

なんでだ?向こうの寸胴の中のスープは薄緑だし、ちゃんとこってりしていて、それでいてしつこくなく、口の中にベッタリと残らない神様レベルのスープがあった。それをそのまま注いで、アクアに渡したときも緑色だったはず………、

 

「ねぇ、アクア?」

 

「何?あいつらを訴えて来ればいいの?やるわよ?」

 

「さっき、『あちっ』って言ったよね。………ラーメンに何したの」

 

「何もしてないわよ、ただスープに指が入っただけ。まぁ、私は名前の通り水の女神だからね。手が液体に触れれば問答無用で綺麗な純水へと生まれ変わるわよ!だから、ラーメンに害はないわ!」

 

「…………」

 

問答無用であたしはアクアの肩を拳銃でブチ抜いた。

 

「いった⁉︎ちょっ、痛いんですけど⁉︎何すんのよ‼︎」

 

「何が『害はないわ!』よ!明らかにあんたの所為じゃない‼︎」

 

「何よ!だからって撃つ事ないでしょ⁉︎」

 

自分の肩を涙目で治しながら、文句言ってきた。

 

「どうすんのよ⁉︎あたし、あの人達に思いっきり喧嘩売っちゃったんですけど⁉︎あの人達、悪評を広めるとか言ってたんですけど⁉︎」

 

「知らないわよ!あんたがやったことでしょ⁉︎」

 

「あんたが無味無臭のお湯ラーメンにしたからあんなことになったんだよ‼︎」

 

あたしの店は、Open一週間ちょいで潰れました。

 

 


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