転生してダクネスの姉になりました   作:フル・フロンタル

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第11話

 

それから約一週間ほど経過した。あたしはラーメン屋を続け、再びバカみたいに儲かってきた所だ。そんな中、店の中まで聞こえてくるほどの大音量が街のスピーカーから流れて来た。

 

『緊急!緊急!全冒険者のみなさんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!』

 

「……………」

 

うん、無視でいいな。今は幸い、ララティーナ達はギルドにいるし、何よりお昼の仕込みをしなければならない。

じゃ、冒険者の皆さん、緊急クエスト頑張って下さい、まる。

 

 

 

 

お昼。緊急クエストとやらの所為か、珍しく少ない客にラーメンを作ってると、店の中に見覚えのあるパーティーが入って来た。カズマとその愉快な仲間達だ。

 

「よう、レイ」

 

「いらっしゃい」

 

「珍しく暇そうだな」

 

「緊急クエストとやらでみんな忙しいんでしょ」

 

「いや、それは解決した」

 

「じゃ、そろそろみんな飽きて来たかな。まぁ、毎日同じものは食えないだろうし、あんな量の客を毎日捌いてたら過労死するし、あたし的には助かるわ」

 

「ああ。それと、これからめぐみんの爆裂魔法付き合う時はあの古城はやめとけよ」

 

「なんで」

 

「あそこ、魔王幹部が引っ越して来た新しい住居だったんだと。今回は厳重注意で済んだけど、これからはやめとけ」

 

「あーい。なんか食べてく?」

 

「ラーメン。みんなは?」

 

「ラーメン」

 

「ラーメン」

 

「ラーメンと野菜炒めセット」

 

「ほい、了解」

 

四人は席に着き、あたしは調理を開始した。さて、まずは炒め物から仕上げるか……。あ、作ってる間にスープ火にかけとこう。

 

「じゃないだろ‼︎」

 

ガタッと突然、ララティーナが立ち上がった。

 

「なんだよ急に。この際言うけどさ、いきなりそうやってキレるの正直あたし引くんですけど」

 

「喧しい‼︎緊急クエストなのになぜ来なかったレイ⁉︎」

 

「何故って。忙しくなる時間帯の前は仕込みしないといけないんから当然でしょ」

 

「仮にも冒険者なら緊急クエストのときくらいは顔を出せ‼︎なぁんで呑気にラーメン作ってんだ⁉︎」

 

「ちょっとダクネス、落ち着いて下さい」

 

めぐみんが隣から口を挟んだ。

 

「最近、レイはむしろラーメン屋がメインで冒険者が副業みたいになってますし、別に良いのでは?」

 

「そうよダクネス。あなたは別に冒険者になってほしいんじゃなくて、レイにニートになって欲しくないだけだったんでしょう?それなら別にラーメン屋でもいいじゃない」

 

「それに、今からラーメン屋副業になんてしたら、街の冒険者から暴動が起きるぞ」

 

めぐみんに続いてアクア、カズマと言われて、ララティーナは少し考え込んだ。その間にあたしはもやしと刻んだ野菜フライパンに蒔き、フライパンを動かした。

 

「………確かにそうかもしれんな」

 

納得してくれた。てか、アクアがなんで援護してんの?アクアさんは魔王を倒すためにあたしをこの世界に送り込んだんじゃないの?別に良いけど。

 

「………すまない、ちょっと言いすぎた」

 

「あ、いやいいよ。気にしてない」

 

フライパンを振りながら生返事して、あたしは調理を続けた。皿に野菜炒めを盛り付け、四人の机に運んだ。

 

「ほい、お先に野菜炒めね」

 

「ああ」

 

続いてラーメン。麺を茹でながらネギ、焼き豚、シナチク、ナルトなどのラーメンに入れる具材を刻んでいく。

お椀にスープを注ぎ、麺を入れ、具材を盛り付けた。それを四人分。

 

「お待たせ」

 

「おお、サンキュー」

 

「ほー!キタキター!」

 

カズマとアクアが嬉しそうに声をあげた。ふぅ……今日は久々に楽な仕事になりそうね。

 

「ま、どうしてもあたしの力が必要な時は言ってよ。協力してあげるから」

 

「「「「あ、それはいらない」」」」

 

「どういう意味よ⁉︎」

 

こ、こいつら……!無礼な奴らめ……!

歯ぎしりしてると、店の扉が開いた。別のお客だ。

 

「あ、いらっしゃいませ」

 

仕方ない。仕事だ。

 

 

 

 

その様子を見ながら、エリスはつぶやいた。

 

「………うーん。私が思った感じにはならなかったけど……まぁ、いいです。ちゃんと仕事するようになったなら」

 

 

 

 

夜中。

 

「……っと、ちょっと、レイ。起きてよ、レイ!」

 

揺さぶられて、あたしは目を覚ました。目をこすりながら大きく欠伸をしてから目を開いた。

 

「………何、誰……?」

 

「私よ、アクアよ!」

 

「……アクア………?ああ、三丁目の牧場のおじさんか。何、羊骨ラーメンなら作らないわよ………」

 

「ちっがうわよクソニート‼︎私よ、水の女神アクアよ!」

 

………ああ、アクアね。はいはいアクアアクア。

 

「何よこんな時間に……。ていうか不法侵入なんだけど。訴えられたいの?」

 

「お願いがあって来たのよ」

 

「お願い……?金なら一銭も貸さないけど」

 

「違うわよ!いやそれも考えたけど……今回はそれじゃないわ」

 

「考えるなよ仮にも女神が……。てか、今回はってことは今後もあるのか……?」

 

「いいから聞いて」

 

「はいはい。明日、店に来た時に聞いてやるから、今は寝かせて。明日も朝早いんだから……」

 

「いいから聞いてよ!みんながいる前じゃダメなのよ!」

 

何なんだよこいつうるせーな……。あたしになんか恨みでもあんのかよ……。もう聞いてやったほうが早いか。

起き上がって、あたしは電気をつけた。

 

「何?」

 

「お客が来たのにお茶も出ないの?」

 

「おやすみ」

 

「わー!嘘です冗談ですジョークです!だから寝ないでレイ様!」

 

こいつ本当に騒がしい。ご近所から苦情来たらどうしてくれんだよ。

 

「で、何?」

 

「その……バイトとして雇って欲しいなー……なーんて、」

 

「は?なんで」

 

「い、いいじゃない。どうせ、デュラハンが来て私達しばらくクエスト出れないし、あなたも一人じゃキツイでしょ?」

 

「いや、めぐみんとララティーナっていう人件費ゼロのバイトいるし」

 

「お願いよおおおお‼︎私を雇ってよ!借金があり過ぎてカズマに見捨てられそうなのよおおおおおお‼︎」

 

「うるさい!近所迷惑だ!」

 

「お願いよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼︎」

 

「分かったから黙ってお願いだから‼︎」

 

 


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