平和な幻想郷へ二度目の幻想入り   作:疾風迅雷の如く

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プロローグ

 やあ、俺の名前は尾田(おだ)清朝(きよとも)。21歳でありながら未だに14歳と間違われる男の娘だ。非常に認めたくないが。

 

 

 

 そんな俺が幻想入りしたのは5年前の夏休みのことだった。

 

「幻想入りしてえな」

 

 そうすればハーレム築いてやれるのに……などと思いながら自室で妄想していた。それが間違いとも知らずに。

 

「それじゃ、一名様ご案内〜」

 

 この時俺はテンプレktkrなどとはしゃいでいた。だが今思えばあの時、ああ呟いてなければ幻想入りすることなく平和に暮らしていたんだろうな……などと何度後悔したことか。

 

 

 

 とにかく俺は紫によって幻想入りを果たしたがそこで待っていたのはハーレムもチートもありゃしない、原作よりも恐ろしい幻想郷だ。

 

 何が恐ろしいかって? そりゃ原作でもドジ属性のある妖怪の小傘が、ただ驚かす存在でなく平気で人間を殺すような奴だったということだ。

 

 小傘でそれだぞ? あの弄られキャラ代表の小傘でだ。小傘が特別なんじゃない。そこに所属している命蓮寺は死人を処理するとか言っておきながら人肉を畑にばら撒いて肥料にしている等外の世界のヤクザですらもドン引きするほどのことを平気でやる。

 

 

 

 え? それじゃ命蓮寺が過激なんじゃないのかって? 甘い甘い。永遠亭は大怪我を負った俺を治療という名目で俺の顔と声及び見た目──なんとかタマタマは無事だったが髪や眉、まつげ以外ツルピカだった──を女みたいにさせただけでなく、金が足りなくなったからという理由で大麻を取り扱ったりしている。あのマッドや我がまま姫様ならやりかねないって? じゃあこの幻想郷の守矢神社を聞いて驚くなよ? 

 

 

 

 この幻想郷の守矢神社は祭りの度に人妖問わず祟り殺しているわな。その祟りのおかげか邪悪なる病魔を吸い取っている為作物に病気とかにはかからなくなるらしいが、もっと別にやることがあるだろうが! なんで貴重な信仰の元になる人を殺すんだよ!? 人一人よりも大きな信仰が大切なのか!? 

 

 

 

 一番過激なところだと人間達を人里から出た瞬間、攫って紅魔館で木乃伊にさせた紅魔館当主レミリア・スカーレット主犯のミイラ事件。その振る舞いに怒り狂った慧音が紅魔館を爆破させて起こしたテロ事件が有名だな。

 

流石に紫達もこれには動いて『人間が人里から出た瞬間攫ってはいけない』という新たなルールが加わってだいぶマシになったが……今度は人里から出た瞬間殺して人間ではなく死体だからという理由で持ち帰ったことに対して「グレーゾーンギリギリのところを探すんじゃねえ!」と流石にツッコミを入れておいた。

 

 

 

 博麗神社やその他の勢力のことが知りたい? ……百歩譲って博麗神社の事を説明してもこれ以上他の勢力の事は話さないぞ? 

 

 博麗神社は紫やその代の巫女または御子が幾つかその候補を見つけ、次代巫女や御子を育てている。それだけならまだいいが次代に引き継がせる時はその巫女や御子同士で殺させ、最後にはその代の巫女や御子と戦い、博麗の巫女または博麗の御子の称号を引き継がせる。

 

その代の巫女達がいなかったらどうなるって? その例に当たった霊夢によると「次代の巫女や御子がその戦いで死んだ者達の肉を食べ、霊力を増加させる」とのことだ。ここまでいくとキチガイじみており、狂気に慣れた人里の人間ですらも「よほどのことがない限り博麗神社にいかない」とまで明言しているくらいだ。

 

 

 

 そんな死と殺し合いが日常となっている幻想郷(ところ)で俺は5年も生きているんだ。いつ発狂してもおかしくない。出来ることならあの頃に戻りたい。戻れなかったとしても……

 

「せめて、平和な幻想郷に行きたかった」

 

 声優みたいな凛々しく可愛らしい声が周りに響くが誰もいない。俺は人里の人間であり、仲間もいるが何故か幻想郷の妖怪達に好かれている為基本的には一線引かれている。

 

 ハーレムなんじゃないか? と思った奴出てこい。この女みたいな見かけの俺は弄られキャラとしか見られていない。よしんばモテたとしてもこの殺伐とした幻想郷に普通の性格の妖怪がいると思うか? ヤンデレしかいないに決まっているだろうが。もし俺と仲良くなったらそんな奴の目に止まり、確実に殺されるので俺は人里の人間達からやや疎まれている。

 

 

 

「ああぁぁぁぁぁ!」

 

 ついに発狂した。もうどうでもよくなるような虚脱感等が俺の頭の中に襲ってくるが叫ばずにはいられない。身体を永琳とにとりに改造されただけでも発狂してよかったと思う。

 

俺、よく我慢出来たよな? こんな狂気だらけの幻想郷で5年も過ごしたのに癒せるものは何もない。自分が女みたいな見かけだから女と話しても恋愛感情までには届かない。能力でチートしようにも『銃とその弾丸を創造する程度の能力』という普通すぎる能力。毎日が辛すぎて涙が溢れてしまう……

 

 

 

「……そんなに辛い?」

 

 どこからともなく声が聞こえ、俺はそれに答える。

 

「あ゛だり前だ!」

 

 涙声で答えると目の前にスキマが現れ、紫がそこに来た。

 

「それじゃあ私の幻想郷に来ない?」

 

 こいつは別の世界の紫なのか? だけどそれ以上に気になるのは……

 

「平和な゛どごろ、なのが?」

 

「ええ、とっても平和よ」

 

「行ぐ!」

 

「それじゃあ決まりね。レッツゴーよ!」

 

 そうして俺は二度目の幻想入りを果たすと泣き疲れてしまい眠りについた。




今回はあれだが次回はコメディー一色の話だから許してくれ…なるはやで作る

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