オウガテイルになったんだが 作:腹ペコ
時系列はエミールを運ぶ前になります。
もしかしたらあとで前の話と入れ替えるかもしれません
会社勤めの時部下に聞かれた。
どうしてそこまで働くのか、働けるのか。自分の仕事も多いのに部下の仕事も請け負うし間違いなく社で一番働いているのは貴方だ。
その部下は自分とは2、3年違いでこの職場にでは自分についで古参だった。飲みにいくという時間はなかったが僅かな休憩時間にコーヒーを奢りあったり、愚痴をこぼしあったり、仲は一番よかったように思った。昇進した時も一番に喜んでくれたのは彼だった。仕事量が変わらない事を知ると励ましてもくれた。
そんな彼が問う。
家で待つ家族も恋人すらいない、貴方を支えているのは一体なんだ、と。
いや、いやいや。
確かに辛いが自分を支えているものなんてない。ただそうしなければならないから、仕事だからしているだけだ。
いや....違う、貴方は
時間だ!さっさと仕事に戻れ!
怒鳴られ自分は仕事に戻る。アラガミになる直前の会社での出来事だ。
彼はあの時何を言おうとしたんだろう。
「・・・ス!ボス!」
「大丈夫っすか?」
「腹でも減ったのか?」
おっと前のことを思い出してぼうっとしていたようだ。仲間たちを不安にさせたようだ。悪い悪いと謝る。
それでえぇっと?どうしてそこまで人間を気にするかだったかな。
答えは決まってる。そりゃ同族を殺したくないからだ。前にも言ったはずであるが同族を見殺しには出来ないしな。
うーむ、思い切って言ってみようか。自分が元人間だったことを。
「ほーそうなのか」
「まぁ不思議じゃないっすよね」
「どおりで頭が良いわけです」
・・・思ったより反応が薄いがそれだけオウガテイルの中では自分がおかしかったということか。あまり意識してなかったが確かに群れを統率するなんてマルドゥークくらいしか自分は知らない。あれだって感応種の能力によるものだ。
だがしかしもっとこう
『なんだって!?』
『バカな.....ありえん!!』
『なん.....だと....』
ぐらいの反応が欲しかった。いや異端者扱いされて追い出されるよりはずっといいんだが。ふと思ったが今までコイツらが驚いたところ見たことがないぞ....?
「まぁそれはそれとして」
「確かにそれもあるんだろうが」
「何か違うっスね」
え
違うって何だ?自分は嘘をついたつもりはないんだが....
「さぁ?」
「知らん」
「よく分かんないっス」
おいおい....まぁ、いいか
とにかく今はエミールを運ぼう。エリックたちは教会のあるエリアにいるらしいからそこまで自分の背に乗せよう。もし2人と会えなかったら大変だ。食料も持たせておこう。幸い仲間が拾ってきたバックに幾つかレーションらしきものが入っていた。これとジャイアントトウモロコシも持たせれば数日は持つだろう。
さて、そろそろ出るか。あまり時間を掛けると2人がアナグラに帰ってしまう。仲間の手を借り(手というか頭と尻尾だが)落ちないよう上手くバランスを整えて乗せる。縄とそれを巻ける手があれば良かったんだが贅沢は言うまい。他の数匹はバックとジャイアントトウモロコシを咥えさせる。
・・・今にも噛み砕きかねないが鉄の如き精神で必死に耐えているのが伝わってきた。
よし行くぞ
「うぃっす」
「了解だ」
「・・・・ウーウー」
各々の返事を確認する。1名必死に食欲に耐えているが概ね問題ななさそうだ。
生きて帰れよ
伝わる筈もないがそんなことを思う。何年か後でゴッドイーターになり自分たちを狩る側になる。そうなることを知っている。だとしても自分は祈らずにはいられなかった。