ゴトランドとか岸波はすぐ出たので掘りに出てますが、ビスマルクは2隻出ても海風と福江出ないです。
第三艦隊の項目に入り、司会の防衛部の中沢課長が第三艦隊解体の経緯を読み上げた。
「第三艦隊は艦娘が登場してすぐ、第103護衛隊群として自衛艦隊麾下に発足してから、東、南支那海の開放に尽力しました。しかし、開放地域は広がり、同海域の危険性は減少しております。そのため、敵勢力を駆逐する積極的な体制である第三艦隊は解体し、あくまで通商を守る受動的な体制である護衛隊群や第七艦隊に役目を譲る事となりました。その関係で第三艦隊の艦娘は基本的に第七艦隊へ移る予定です」
第三艦隊の解体にはきちんとした理由があったのか…。というか正式な理由なんて初めて聞いたぞ。
水面下の調整だけでなく、正式な打診があっても良かったのでは無いか。
俺は高橋長官の方を見たが、彼は前を向いていた。
「第三艦隊の艦娘ですが、
第十六戦隊 足柄
球磨、長良、五十鈴、由良、鬼怒
第五水雷戦隊 名取
第ニニ駆逐隊 皐月、文月、長月
以上、重巡1、軽巡6、駆逐3となっております」
第十六戦隊は重巡と軽巡が同じ戦隊にいる珍しい戦隊だ。軽巡も5隻いるため、戦力となるだろう。逆に、第五水雷戦隊は水雷戦隊と名乗ってはいるが駆逐隊は1つだけである。
その駆逐隊は三日月の姉妹達である睦月型で構成されている。三日月との約束のため、巡洋艦を手放してでも確保したい所である。
「第七艦隊についてお聞きしたいのですが」
説明が終わるとすぐに第二艦隊の近堂提督が発言を求めた。
「どうぞ」
「では。えー、今回の移管は内洋の戦略目標転換による物と認識しております。その上で、同じ戦力をそのまま後継部隊へ移管するのであれば、結局はこれまでと何ら変わらないと言う事ではないですか」
鋭い質問だ。答えに詰まる軍令部部員の代わりに手を上げ、返答した。
「第三艦隊が護衛部隊として東、南支那海以外の船団に加わる事で、通商船団の往還率向上が見込まれます」
「艦娘の貸与では無く、移管する必要性はあるのでしょうか」
「護衛計画が作戦に左右されなくなるため、安定して任務遂行する事が可能となります。また、本土からマリアナ諸島までの新たな航路も担当しますので、これまでより多くの艦娘が必要です」
「巡洋艦が6隻で構成される戦隊は護衛戦力として過剰ではないかと思いますが」
「敵も巡洋艦クラスをよく差し向けます。駆逐艦だけでは力不足です」
「それならば尚更前線部隊へ配備して近づく前に撃破出来れば良いのでは良い話です」
「それは……」
思わず反論しそうになったが、寸前で抑える。
前線で敵を防げるのであれば問題ないが、現実は後方で被害が発生しているのだ。
しかし、このメンバーの前で撃ち漏らしによって多くの船団が襲撃されているとは言いにくい。それは彼らが無能であると発言するのと同じだからだ。
ここで全員を敵に回せば、今借りている駆逐隊が借りれなくなってしまう可能性すらある。
鶏と卵の論争では無いが、派遣艦娘では無く、プロパー艦娘が欲しいのはそのような心配を防ぐためでもある。
「直接的な護衛が必要かという論点でしたら本題から外れますので回答は控えます。巡洋艦を用いるメリットとしましては航続距離もあります。駆逐隊より長い距離を護衛出来るため、内地から一息に目的地まで護衛出来ます」
この質問は返答出来たようだが、近堂提督はさらに質問を飛ばした。
「海上自衛軍がシーレーン確保のために重視していたのは対空、対潜だ。その原則は変わっておらんだろう?」
「ええ…その通りです」
「であれば旧式の巡洋艦では無く、両用砲を装備した駆逐艦を増やすべきではないか」
一理ある。輸送船が受ける直接的な被害は空と海中からのものが多いからだ。
球磨型、長良型などの5500トン軽巡は旧式のため、水平射撃しか出来ない三年式14cm砲しか積んでいない。対空火器は専ら機銃である。それならば限定的とは言え、大きな仰角を取れる三式12.7mm連装砲を積んだ駆逐艦の方が有利なのは間違いない。搭載している機銃の数は同じでも、駆逐艦は数で勝る。また、対潜面でも小回りの効く駆逐艦の方が有利だ。この点はとっさには反論出来ない。
「では両用砲を積んだ駆逐艦を彼に与えてやるべきですな」
俺が返答を考えていると、第三艦隊の高橋提督が代わりに言い返した。だが近堂提督は解せなかったようだ。
「というと?」
「
「いや、そんなつもりは」
旧式と言われた三日月と、返答に困る近堂が顔をしかめた。
「いいではないか。貸してやっても」
今度は第一艦隊の吉賀が口を挟む。
「駆逐艦が減っても同数の巡洋艦が増えれば前線部隊にとっては戦力が増えた事になる」
両者が睨み合っていると、軍令部側が仲介し始めた。
「両者の意見は分かりました。話を整理致しますと、第十六戦隊はともかく、第五水雷戦隊については第七艦隊に移管する事で問題ありませんか」
「それは構わん」
「いいでしょう」
「分かりました。では問題の第十六戦隊です。解体して、両者に配備するという選択肢があります。事前の調査によりますと…」
巡洋艦を所望する艦隊として名乗りを上げたのは第一、第二、第五艦隊、第一、第ニ機動部隊だった。
それぞれ五十鈴鬼怒、足柄、球磨、長良、由良を所望している。
我が艦隊は全部の名前を上げたが、本当に全部貰えるとは思っていない。一隻でも貰えれば良しとしよう。
5sd 名取 →7F
22dg →7F
16S 足柄 →7F、2F
五十鈴→7F、1F
鬼怒 →7F、1F
球磨 →7F、5F
長良 →7F、1kd
由良 →7F、2kd
希望した艦隊はその理由を述べた。
「希望の理由としては、水雷戦隊の旗艦は敵艦に突撃するため被害が集中し、損傷する可能性が高い。そのため、第二艦隊ではニ水戦や四水戦は阿賀野型と川内型の2隻体制を取っている。我が第一艦隊の一水戦と三水戦も阿武隈、川内に加えて五十鈴と鬼怒を加え、2隻体制を実現したい」
「第五戦隊は妙高、那智、羽黒の3隻で、足柄が欠けている。姉妹艦を揃えるという点では第二艦隊への編入が望ましい」
「第五艦隊では多摩、木曾を運用しております。第二艦隊と同様の理由で球磨は第五艦隊へ譲って頂きたく」
「空母直掩の第七水雷戦隊は部隊が2つに分かれた際に片方は防空指揮を駆逐艦に任せる状態になる場合がある。それを防ぐため、2隻体制としたい」
「第八水雷戦隊も同様です」
各艦隊があれこれ発言しているが、要は水雷戦隊の旗艦2隻体制を実現したいようだ。他は重巡を軒並み揃える第二艦隊と、規模が小さい北方の第五艦隊は戦力の充実を図る形だ。
しかし全て実現すると、第十六戦隊は全く手元に残らなくなってしまう。
提督達は艦娘を獲得しようと息巻いていたが、そこで軍令部員が恐る恐る発言をした。
「事前に希望の艦をヒアリング致しましたが、引き継ぎのため装備計画部艦船・武器課が各艦を調査した所、全艦がすぐに配備出来ない状態である事が分かりました」
軍令部の発表に皆の頭に疑問が浮ぶ。急に何を言い出すのか。
「まず軽巡五十鈴ですが、先日の海戦によって損傷し、横須賀の海軍工廠で修理中です。その際に大規模改装を実施しているため、戦列に復帰するのは数カ月後になる模様です。
また、第五水雷戦隊旗艦の名取ですが、ソフト面にダメージを受けているため海軍佐世保病院で療養しております」
五十鈴の大規模改装は納得出来た。球磨型軽巡の2隻は改装され、雷装を大幅に増強した軍艦に生まれ変わった。
ロシア海軍のスラヴァ級を彷彿とさせるアーセナルシップである。余りにも攻撃一辺倒な軍艦であるため、改造された2隻で第9戦隊を編成し、決戦部隊である第一艦隊に配属されている。
「五十鈴も雷巡に改装されるのですか」
「軍事機密かつ試験的要素が強いので言えませんが、どちらかと言えば防御重視ですかね。改装後もデータを取る予定です」
試験艦になるのだろうか。
試験艦ならば、海軍は"あすか"を保有している。艦娘用兵装を試す艦娘はないが、代わりに軽巡夕張がよくテストをしていると聞く。その夕張も現在は第六水雷戦隊の旗艦だ。五十鈴はその代わりとなるのかも知れない。
改装後の五十鈴がどうなるかはともかく、問題は名取だ。
艦娘は人型とは言え、兵器である。自らの手で何隻も敵を沈めている艦娘が突然精神的ダメージを受けて戦闘不能になることがあるのか。直る不具合なのか、検討もつかない。皆も困惑しているようだ。
「軍艦が入院…」
「ソフトウエア…バグか何かですか?」
「いえ、強いて言うならばPTSDです」
「…」
予想外の話に自然とこちらに視線が集まった。
「予定では第七艦隊に移譲する予定ですが、どうしますか」
「構いません。引き受けます」
少し迷ったが俺は言い切った。
精神的なことは詳しくないが、除隊されないと言うことは治る見込みがあるはずだ。
元々ゼロだったものが1になっていないだけ。何か損害を被ることではないだろう。
しかし、すぐに1が欲しいのも確か。俺は条件を出した。
「ただ、すぐに水雷戦隊旗艦の任務に就けないのならば、代わりの軽巡が欲しいですね」
「分かりました。前向きに検討致します」
手ごたえの薄い回答だ。少なくとも、ここ数日で決まるものでは無いだろう。
日本型組織ではよくあることだ。
正式な配備は軍令部が決定するため、待つしかない。
その後も多少の調整があったが、会議は無事終了した。
時計を見ると、予定時間を2時間も過ぎている。
議論が白熱したため仕方ないが、時間は守ってもらいたいものだ。
「あの、司令官」
資料を片付けていると、傍らの三日月に話しかけられた。
「三日後の出撃ですが…」
「うん。早速第五水雷戦隊を投入する」
「旗艦は名取さんですか?」
「う~ん。本人の状態を見ないと何とも」
「では駆逐艦だけで出るかも知れないのですか」
「その時は三日月に旗艦を任せよう」
「私がですか?」
「駆逐隊に属してないし、いつも航空隊の監督をしているから大丈夫でしょ」
「それとは違う気が」
「サポートはするよ。大丈夫」
「…分かりました」
三日月は渋々ながらも了承してくれた。
司令部へ戻るか直帰するか考えていると、後ろから話しかけられた。
「あの…」
後ろを振り向くと、白い髪の女性が立っていた。
背が高く、男と並んでも遜色ない。
「私、|第二機動部隊≪2kd≫の翔鶴と申します」
「はい。先ほど出席されていましたから知ってますよ」
「第七艦隊の長官である貴方にお渡ししたい物がございまして」
翔鶴はそう言うと、封筒を俺に手渡した。
俺は何気なく周りを確認すると、中を開ける。
(海軍航空隊の空軍化について、意見交換を行いたい
2kd 大澤)
手書きの手紙と共に、1枚の資料が入っていた。
軍機印が押された資料のコピーだろうか。
タイトルには「第十一艦隊の設立に関する調査」とある。
本文に第七艦隊の文字を見つけると資料を封筒にしまった。
「詳細は話せませんが、非公式に検討されているとの事です。第七艦隊に関係があるものですからお伝えしました」
「分かった。日程を調整しよう」
「ありがとうございます。では私はこれで」
翔鶴はくるりと後ろを向くと、会議室へ戻って行った。
「何の話ですか」
「後で話すよ」
今の話も気になるが、問題は目前の出撃だ。
調整が忙しくなるだろう。
俺が顔をしかめていると、三日月が食事を申し出た。
「司令官。何か食べに行きませんか」
「そうだな」
仕事の前にとりあえず食事だな。間違いない。
自衛隊の護衛艦の配備ってどういう基準で決めてるんでしょうか。
どちらにしろ、艦隊司令官は練度上げのみ行い、運用は連合艦隊(自衛艦隊)や鎮守府(地方総監)が行うので、各司令官が好きに決める事は無いんですけどね。
会議話が続いたので、次はドーンと海戦にしましょうか。