艦これ海上護衛戦   作:INtention

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いつの間にか9月が終わってました(汗)
実生活の忙しさにかまけて投稿が遅れました。
しかし、ただサボっていた訳では無く、長々と書いていたら切れ目が見つからなくなってしまった感じです。
なので、次の話も大方書き終えてます。次は早く投稿出来るかと。


第十八話 ヒアリング

横須賀鎮守府の車寄せに次々と黒塗りのセダンが乗り付けられる。数字だけのナンバーを付けたその車は民間では無い事を表していた。

 

「続々と集まって来ますね」

 

窓からその様子を眺めていた三日月が言った。

 

「そうだな。俺達も行くか」

「はい」

 

広々とした会議室に入り、指定された席に着く。上座とも下座とも言えない真ん中くらいの席だ。

入り口に近い下座には軍令部の職員が座っている。制服やスーツが入り混じっているので統一感はない。基本は白い半袖シャツだが、軍服は黒い肩章が付いているので見分けが付いた。

 

全員が席に着くと、部屋は満員になった。上座に提督と秘書艦、下座に軍令部員が座っている。立場としては逆のように思えるが、皆涼しい顔をしていた。

軍令部職員の中にも僅かに女性の姿が見られるが、基本は男ばかり。艦娘の人間離れした姿はやはり目立つ。

今回は全艦隊の司令長官と秘書艦が集まっているため、錚々(そうそう)たる顔ぶれになっている。

ちなみに今回参加した各艦隊の司令長官と艦娘は次のように並んでいる。

 

連合艦隊   旗艦 CL大淀

第一艦隊   旗艦 BB大和

第二艦隊   旗艦 CA高雄

第三艦隊   旗艦 CA足柄

第四艦隊   旗艦 CL鹿島

第五艦隊   旗艦 CL多摩

第六艦隊   旗艦 CL香取

第七艦隊   旗艦 DD三日月

第八艦隊   旗艦 CA鳥海

第一機動部隊 旗艦 CV赤城

第二機動部隊 旗艦 CV翔鶴(臨時)

 

第二機動部隊と第八艦隊は最前線で戦っているため、担当海域では今も小競り合いが続いている。この会議へは鳥海と翔鶴が損傷を本土で修復するタイミングと合わせたそうだ。そのためか、第二機動部隊旗艦は大鳳ではなく、臨時で翔鶴になっている。

現地のリーダーではなく提督に付き添う方を旗艦とするところから、この会議への意欲を感じさせられた。

 

皆強豪な艦隊だけあって秘書艦の存在感が強い。見た目なら十代後半から二十代に見えるが、モデルのように整った姿は日本人離れしている。その反面、我が第七艦隊だけが駆逐艦を旗艦としているため、俺だけ子供を連れているように思えて来た。

三日月も他の艦娘と自分を見比べて難しい顔をしていた。

挙げ句の果、今度はこちらを見上げて来た。

 

「三日月は場違いなのでは…」

「そんな事ないさ。艦娘である以上秘書艦になる権利がある。むしろ、巡洋艦のお姉さん方と並んでいるんだから自信を持ちなさい」

「分かりました」

 

いかんいかん。始まる前から戦いに負けているではないか。深海棲艦にハープーンとオートメラーラ艦砲で立ち向かった男はどこのどいつだ。

俺は反対側に座っている職員を睨みつけた。

突然睨まれた軍令部の背広組がたじろぐ。

 

「では軍令部連合艦隊間非定期戦略的方針に関する意見交換会を始めましょうか」

 

軍令部防衛部長である福富少将が宣言した。

会議名が長すぎる。流石お役所だ。

 

「では、アジェンダ通りに進めます。艦隊ごとの状況について、報告書に基づいて質問致します」

 

アジェンダを確認すると、

 

 1.現状確認

 2.国民からの要望

 3.新造艦の需要についてのヒアリング

 4.第三艦隊の解体について

 

とあった。その後は福富少将ではなく、頭の切れそうな士官が取り仕切り始めた。俺は中央の軍政や軍令にいる期間が短かったため、課長レベルの人事は分からない。

三日月にこっそり尋ねると、防衛部防衛課中沢佑課長らしい。防衛政策を考案する中枢にいる人物のようだ。

 

「第四、第ニ機動部隊からの報告書によると、マーシャル諸島での紛争が急増しているように見受けられます」

「はい。巡洋艦クラスではありますが、遭遇頻度が上がっております」

「第四艦隊はマジェロに進出して対処しておりますが、遭遇するまでには至っておりません」

 

中沢課長の言葉に第二機動部隊と第四艦隊長官が応じる。

 

「空襲で多少の被害を与えると、撤退して行きます」

「なるほど。牽制程度という事ですね」

「その模様です」

「通商への影響は?」

「はい。最近では駆逐隊、潜水艦、空襲による被害が出ておりますが、砲雷撃戦になった回数は減っております」

 

通商関係の話になると、中沢課長は話を俺に振って来た。

三日月から資料を貰い、説明した。

 

中沢課長は俺の話を聞き終えると福富部長と何か話す。互いに頷き合うと次の項目へ移った。

 

「次に、政府からの要望ですが…」

 

この項目になった途端、場の緊張が解けた。周りを見渡すと、資料を眺めていたり、秘書艦と談笑していたり。果ては寝ている者もいる。

その間、総務課長が政府や市民団体からの要望を淡々と読み上げる。

周りの軍令部員もよそ見をしている者が多く、誰も本気で聞いていなさそうだった。

隣では三日月が健気にノートを取っていたが、一生懸命書いているのでそのままにしておいた。

 

「お隣さんは真面目ですね」

 

三日月と反対側から声がしたため振り向くと、眼鏡の秘書艦が微笑んでいた。礼服をきちんと着こなしており、デキる女性オーラが醸し出されていた。いや、本当に出来る艦娘なのだろうが。

この女性は第六艦隊の旗艦だったか。

 

「練習巡洋艦香取です。妹の所と仲が良いと聞いております」

「どうも。妹…鹿島さんですか。ええ、第四艦隊の方々とは懇意にさせて頂いております」

「そちらは三日月さんですね」

「ご存知ですか」

「もちろん。呉で鳳翔さんのお手伝いをされておりました所を何度か見かけましたから」

「そうでしたね」

 

香取はしばらく三日月を見ていたが、ぽつりと言った。

 

「要望とは聞こえが良いですが、要は苦情です。しかも私達にはどうにも出来ないような」

 

確かに要望とやらに耳を傾けると、直接関係の無い話題ばかりだった。船舶の被害ゼロや、自由な漁業などの要望はまだ良い。しかし艦娘が女性ばかりなのはジェンダーに反するとか、深海棲艦とは話し合いで和解すべきだなどの意見を言われても、出来る事はほとんど無い。強いて言えば隊内で意識改革をするくらいだが、あまり成果が出るものではない事は普通の会社員だって分かるだろう。上層部だって分かっているはずだから、末端まで要望を伝えているというデモンストレーションなのかも知れない。

 

「愚痴を言ってすみません」

「いえ…」

「それと……あの、今読み上げている要望については後で配られるので、メモしなくても良いと伝えて頂けます?」

「え。そうなんですか」

 

香取からの情報に驚いていると、総務課長の読み上げが終わり、香取の言う通り、総務部員が要望書を配り始めた。

反対側の三日月を見ると、ポカンとした顔をしてる。かわいそうな三日月。要望書を受け取ると、困った顔で自分のノートと見比べていた。

気まずくて掛ける言葉が見当たらなかったので、頭を撫でる事にした。

学生時代に同じような経験があるので気持ちは分かるが、ノートを取るのは良い事だ。

 

「配布が終わったようですので、次に新造艦の割り振りについて伺います」

 

ざわめいていた会場が一気に静かになり、皆が中沢を注視する。

新造艦か。そういえば、以前新造艦を譲って貰えるように各艦隊に働きかけたが、この会議に間に合っていれば結果は変わっていたかも知れないな。

 

「今回、就役した艦娘は以下の通りです

 駆逐隊   風雲

 駆逐隊   照月

 水上機母艦 瑞穂

 給油艦   速吸 

の4隻です」

 

駆逐隊に特殊艦。今回は主力艦はいないようだ。駆逐艦は主力の甲型駆逐艦に対空重視の乙型駆逐艦。どれも使い勝手が良さそうである。

水上機母艦は千歳型より一回り小さいが、水上機や甲標的を運用出来る。速度が遅い事を踏まえても色々使えそうだ。

最後は給油艦。つまり補給艦だ。艦隊に混ざって補給を行う艦だが、速吸は攻撃機を搭載出来る。つまり補給艦とアメリカの護衛空母を兼ね備えた艦娘という訳か。

 

駆逐艦については、姉妹艦がすでに隊を組んでおり、十駆と六一駆に入る事は決定事項のようだ。

つまり、空母直掩の第八水雷戦隊に所属する事になる。

 

残りは瑞穂と速吸である。

瑞穂は多くの艦隊が要求している。使用方法別に補助空母として偵察、防空に使う派、水雷戦隊に随行して甲標的を運用する派、移動可能な水上機基地派の3タイプに分かれた。

どの使用方法が適しているか、議論が行われる。もちろん俺も加わった。

まず、水雷戦隊案は瑞穂が千歳型と違って低速である点、奇襲から離脱後に護衛駆逐艦を割く必要がある点などの理由で脱落。

補助空母にしても、開発中の水上戦闘機は艦上戦闘機より制空能力に劣る点や回収の間は艦を停止しなければならない点がネックとなった。自前の制空能力保有を目指していた第一艦隊も、これまで通り、申請に応じて第一機動部隊の第三航空戦隊を貸し出す事で落ち着いた。

第四艦隊と我が第七艦隊が提案した移動航空基地案については、艦隊に付随出来る速度が無駄になるとの事でもっと有効的な活用をするべきだと反論された。

三者共に決め手を欠き、議論は平行線に。その後、成り行きを見守っていた人事教育部長が、所属する航空隊の育成、運用も含まれると発言したため、ますます決まらない。予算は毎年不足しているため、新たに航空隊を抱え、育てるのは厳しいかも知れない。

 

長い話し合いの後、軍令部の持ち帰り事項となったが、水上機母艦時代の千歳型を運用していた連合艦隊の直率となりそうだ。

それにしても折角の新型艦なのに否定されてばかりだな。速度が遅いのか早いのか、よく分からなくなって来た。まあともかく、瑞穂がこの場にいなくて良かった事は確かだ。

 

速吸については、機動部隊の付属として最適であると言う意見が通った。艦娘の補給燃料を搭載し、航続距離の短い駆逐艦に給油する事で長期間の活動が可能になる上、消耗しやすい攻撃機の補充が出来るため、機動部隊での運用が最適だと言う理論だ。

なるほど筋が通っている。

速吸は瑞穂と反対に、すぐに運用方法が決定された。

但し、第一と第二のどちらの機動部隊に配属されるかで揉めており、最終決定はこれまた軍令部に一任された。

中沢が決定事項を読み上げている間、赤城と翔鶴が穏やかに微笑んでいたが、その裏では火花が散っている事だろう。東雲提督率いる第一機動部隊と大澤提督率いる第二機動部隊は仲が悪い。直接喧嘩する事は無いが、いつも競うように戦果を上げている。話によると、第一側が一方的にライバル視しているとの事だが、お互いに深海棲艦絶対殺すマンと化している。かつて護衛艦を率いていた頃、こちらの護衛を放置して敵を狩りに行ってしまった経験もあるので、加熱し過ぎないと良いが。

 

「以上で新型艦の配備についてのヒアリングを終わります。続いて、第三艦隊の解体についてです」

 

ついに来た。真顔を装いながら周りを見ると、第三艦隊の高橋提督と自分に視線が向いていた。

概要は知られているようだが、どう攻めて来るか。

今日の会議で最も重要な場面だ。三日月と共に背筋を伸ばし、中沢課長の話に耳を傾けた。




新規実装された駆逐艦として、江風、海風も考えていましたが、なぜか既に登場させておりました。山風以外は早くから実装されていると思っていたのですが、意外と最近でした。
(尚、ゲーム内では未だに海風だけ持っていません。なぜ出ないのか。それが分からない)

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