艦これ海上護衛戦   作:INtention

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1か月に2回投稿したいですね!
...とか言いながら2か月に一回になってます、ヤバイヤバイ...

あ、瑞雲ランド行ってきました。
一般参加ですけど、普通の遊園地で艦娘に会える良いイベントでした。
(佐世保は遠すぎます...)
なお雨男。


第十六話 現状確認

夏が終わりを迎え、暑さが収まって来た昼、デスクから少女は顔を上げた。

 

「報告書、仕上がりました。チェックをお願いします」

「ありがとう。そこに置いといてくれ」

 

少女は書類を机に置くと、再びPCへ向かった。

俺は書類に向けていた顔を上げ、その様子を見つめる。

向こうも視線に気が付いたようで、こちらを向いて訝しんだ。

 

「何かミスでもありましたか?」

「いや、そうじゃない。パソコンに慣れて来たなぁと」

「三日月だって今時の艦娘ですよ。鳳翔さんの所でもたまに使ってましたし」

「そうなのか」

 

今時の艦娘…逆に今時じゃない艦娘とはどんな艦娘だろうか。

大正生まれの戦艦か?いやそんな事を言ったら最新鋭の駆逐艦だって昭和初期だと思うが。

 

「もうそろそろお昼ですね」

「じゃあ食べに行こうか」

「はい」

 

俺は不毛な考えを止め、昼休みを取る事にした。

執務室を出て、食堂へ向かう。

部屋に持って来て貰う提督も多い様だが、なるべく士官食堂へ向かうようにしている。一般の隊士用と分かれているところが軍隊らしいが、メニューに大きな差がある訳ではない。

自衛軍は上下関係が厳しい。若い女性を連れて歩くのは風紀が乱れる気がしてならない。俺は威厳については気にしない方だが、周りからの視線がどうも気になってしまう。

もしかすると、他の提督が部屋に食事を持って来させるのはそれが理由かもしれない。

当の本人は何も気にする様子がなく、これから食べる昼食を想って楽しそうにしている。

 

「今日はカレーですので、金曜日ですね」

「そうだな」

 

海軍軍人ならだれもがカレーを見ると気分が上がる。それは艦娘も同じ。

配膳を受け取ると、俺の向かいに座ってカレーを食べ始めた。

 

「午後は新しい参謀をお迎えするんですよね」

「ああ。航空隊はもう稼動してるのにようやくだよ」

「ご存知の方なんですか」

「防衛大学校の後輩だな。今までは航空総隊にいたらしい」

「そうなんですね」

 

いつもの昼食でも秘書艦がいると楽しく感じる。周りからの目線が無ければもっと良いのだが。

 

他愛ない会話をしている内に食べ終わり、食器を片付ける。

いつもなら部屋でコーヒーでも飲む所だが、今日は止めておく事にした。

三日月も誘って司令部へ向かう。

 

司令部は比較的静かだった。隊員は交代で昼食を取っているため、部屋にいる人数は少なめである。

早めに食べ終わっていた参謀長の保科は俺の顔を見ると、席を立った。

こちらへ歩み寄り、敬礼をする。

 

「お疲れ様です」

「長官。もう戻られたのですか」

「今日は新しい幕僚…いや参謀が来るからな」

「そうでしたね」

「異常はないか?」

 

三人で部屋の壁に映し出された映像を見る。

西太平洋の地図にいくつかのマークが浮かんでいる。

 

「東支那海、南支那海に7つずつ船団がおりますが、異常ありません」

「出港が1日遅れたヒ80船団は?」

「遅れたままです」

 

ヒ80船団は20隻の高速タンカーに第ニ駆逐隊、第一四護衛隊群が付いた船団である。

第四水雷水雷戦隊の白露型4隻に"はつゆき""あさぎり""あぶくま"型の護衛艦の3隻だ。質量共に十分な護衛が付いており、予定が遅れているだけで問題はない。来週には門司へ到着するだろう。

しかし、折り返しで台湾〜シンガポール間の船団に駆逐艦2隻付ける予定だったはずだ。

 

「台湾からのタシ船団は遅延か」

「船団が台湾に到着次第、第二駆逐隊第一小隊を付けます」

 

補給してすぐに次の護衛に向かわせるのは酷かも知れない。

 

「第一小隊を増速させて半日早く台北に向かわせてくれ。船団の出発は一日遅れのままで構わない」

「はい。護衛艦隊(EF)第二艦隊(2F)に伝えます」

「うん」

「後は…当艦隊とは関係ないのですが、サイパン沖で貨物船が2隻やられました」

「ん?何だと」

「第六水雷戦隊が向かったそうですが、敵艦は認められず、救助のみで帰還したとの事です」

「護衛は無かったのか?」

「六航戦から戦闘機3機が出てます」

「戦闘機…零戦か?」

「恐らくは」

「爆装は…期待出来ないな」

 

東太平洋航路は第七艦隊ではなく、第四艦隊と第二機動艦隊が受け持っている。まだ管轄が移管していないため、歯がゆいが見ているしか無い。

 

「分かった。報告ありがとう」

「はっ」

「三日月、行こう」

「はい」

 

執務室へ戻ると、三日月はコーヒーを持って来てくれた。

俺の机に置くと、自分の席へ戻った。

俺が険しい顔をしているため、部屋には気まずい空気が流れる。

嫌な話だったが、引きずるのは良くない。気分を変えなければ。

 

「次の予定は何だっけ?」

 

俺が三日月に話しかけると、彼女ははっとして手帳を調べ、答えた。

 

「航空参謀との面会です」

「そうか、いよいよか」

 

数十分後、ドアがノックされた。

三日月と顔を見合わせてから声を掛けた。

 

「どうぞ」

「失礼致します!」

 

ドアが開き、律儀そうな男が現れた。

 

「松長貞一大佐。ただいま着任致しました」

 

松長大佐は一糸乱れぬ敬礼と共に名乗った。

第一印象は悪くない。

俺も名乗り、秘書艦を紹介する。

 

「第七艦隊の司令長官を務めている。こちらは秘書艦兼第七艦隊旗艦の駆逐艦三日月だ」

「三日月です。どうぞお手柔らかにお願いします」

 

三日月が名乗ると、松長の視線が揺れた。

まあ戸惑うよなぁ。

 

「君は今までどこの部隊だったか?」

「はっ、第五航空隊司令をしておりました」

「第五…」

「那覇です」

「沖縄か。最前線からご苦労だったな」

「いえ、最近は範囲が広がり、那覇は内地も同然です」

「いやそんな…そうかも知れんな」

「先月に連合艦隊の亀島大佐から引き抜かれまして、こちらへ来ました」

「亀島大佐?俺も数か月前に同じように引き抜かれた身だよ」

 

思わぬ共通点に二人して笑ってしまった。同じ艦隊に来たのは偶然か、亀島の策略か。

松長に椅子を勧め、自分もソファへ座った。

 

「では今まではずっと航空集団に?」「ずっとではありません」

「ん?市丸と長い付き合いと聞いたが」

「はい。実は市丸大佐とは同郷でして、高校も同じです。海上勤務を終えて陸に上がってからは市丸大佐に教わりました」

 

航空隊だけでなく、艦隊勤務もしていたのか。という事は既に艦娘を知っているかも知れない。

 

「艦隊勤務の時に艦娘を見た事はあるかい?」

「ええ。飛行科だったので、よく空母や巡洋艦と連絡を取りました」

「飛行科か。それなら艦娘側のパイロットと連絡を取った事は?」

「彼らの言葉は聞こえなかったので、艦娘経由で行いました。部署による管轄の問題だったかも知れませんが」

 

ほう。つまり妖精が見えると言う事か。市丸では無く松長が選ばれたのはその点もありそうだな。

 

「経験は申し分ない。むしろこちらの規模の小ささが恥ずかしいくらいだ。これから航空参謀としてよろしく頼む」

「はい」

「君の方から何かあるか」

「…ではいくつか。艦娘は事務仕事もするのですか」

 

松長は躊躇いながらも質問して来た。

三日月はムッとしている。

 

「そうだな。少なくともどの艦隊にも秘書艦は置いている」

「第七艦隊の艦娘は何隻いるのですか」

「1隻だ」

「…」

 

松長は戦力を温々と内地に遊ばせている事を言いたいのだろう。

 

「もちろん、事務仕事だけではない。航空隊の監督や、自ら艦隊を率いる事もあるだろう」

「…まだ無いですけど」

 

三日月のつぶやきは無視した。

 

「秘書艦とは事務の手伝いだけでは無いと私は思っている。君は在日米軍がいた頃、横須賀に"ブルーリッジ"という艦がいたのは覚えているか」

「はい」

「艦娘は自立しているから、私達と違う考えをする可能性事がある。彼女達の考えを一番理解出来るのは艦娘自身だ。それを踏まえて作戦指揮のために手元に1隻は置いておきたい」

「なるほど。そのお考え、分かりました」

「そんな所かな。そうだ、艦隊の状況説明も兼ねて、君には今日の月次会議に出てもらう。1時間あるから、隊員に挨拶をして来てくれ。三日月、参謀長の保科を呼び出してくれるかい」

「はい」

 

三日月は受話器を取り、内線を掛けた。

程なく保科がやってくる。

 

「済まないが松長を案内させてやってくれ」

「承知致しました」

 

松長は敬礼すると、保科と共に出て行った。

部屋には俺と三日月だけが残る。

三日月は席を立ち、新しいコーヒーを淹れてくれた。貰ったコーヒーをゆっくり飲んでいると、空気が柔らかくなった気がした。

 

「秘書艦ってそのためにいるんですね」

 

三日月がぽつりと言う。

 

「いや、俺の勝手な想像だよ」

「でも筋は通っています」

「女の子の考えが分からないのは確かだな」

 

三日月はふふっ、と微笑んで自分の席に戻った。

事務作業が捗るという、もうひとつの理由は言わないでおこう。

 

 

 

一時間後、横須賀鎮守府内の会議室に司令部の参謀達が集まった。

各自が文書やパソコンを前にこちらを向いている。

 

「皆が集まったようだから月次会議を始めよう」

 

松長の方を向くと、真剣そうな表情を見せる。緊張はしていなさそうだ。

 

「先程挨拶へ行ったと思うが、新しく航空参謀が加わっている。彼への現状報告を兼ねているから、順番に報告をしてくれ」

 

戦務を担当する参謀が肩まで手を上げ、報告を始める。

 

「では、先月の戦果です。先月本土からシンガポールまで航行した船団は…」

 

戦務参謀が報告を始めると、皆の視線は一斉に書類へ落ちる。

そこには右肩上がりのグラフと上下に揺れながらも下がっているグラフがあった。

船団を護衛する回数は徐々に増加している。良い事だが…

 

「タンカーと貨物船が20隻ずつ被害を受けています。先月から7隻減りました」

 

護衛を強化しても、まだ被害は無くならない。こちらの手駒が少なすぎるのだ。

 

「今月は大規模攻勢を行ったため、敵戦力はソロモン方面へ移った模様です。被害を受けたのも、マラッカ海峡とセレベス海ですから、インド洋を拠点とする勢力と思われます」

 

俺が市ヶ谷を駆け回る間、連合艦隊では大規模攻勢を実施した。

何でも、以前の作戦で壊滅した敵勢力が復活していた事が判明したそうだ。

これを再び攻撃し、島の航空戦力もろとも破壊するのが今作戦の要旨だった。

攻撃目標島はガダルカナル島。

日本にとっては因縁の場所である。

今回は艦娘含め、敵を過小評価したり、戦力の逐次投入する事はなく、作戦は無事に成功した。

連合艦隊のスタッフによれば、第八艦隊や第三戦隊だけでなく、大和型や無傷の機動部隊も投入したらしい。

攻撃が終わった島は何も残らない程平らになったそうだ。

 

「また、連合艦隊司令部より、護衛航路の拡大を依頼されております」

 

参謀長の言葉で我に帰り、書類をめくる。

 

「以前から話があったように、横浜からトラックまでの航路です」

「具体的には?」

「関東から小笠原諸島を下り、マリアナ諸島へ。その先はサイパン、トラック、マーシャル諸島へ繋がります」

 

頭に地図を浮かべるが、違和感を感じる。

 

「サイパンとマーシャル諸島は離れすぎではないですか?」

 

三日月の言葉で納得した。彼女が言う通り、マリアナ諸島から扇形にフィリピン、サイパン、トラック、マーシャル諸島と広がっている。

この全てを守れと言う事か。

 

「不可能だな」

「ええ」

 

俺の言葉に皆が頷く。

とは言え無理だと断る訳にはいかない。

 

「せめて航空隊の傘があれば…。今第二機動艦隊はどこにいる」

「正確な位置は明かされていませんが、大規模攻勢後の勢力維持のため、フィジー方面へ進出しているかと」

 

フィジーはガダルカナル島より遥か南の海域で、オーストラリアやニュージーランドに近い。

無論、トラックまで飛行機は飛ぶ事は出来ない。

 

「じゃあ誰が該当地域の空を守っているんだ?」

 

俺の疑問に通信参謀が答えた。

 

「現在、ウェーク周辺に第一機動艦隊の第四航空戦隊。ビスマルク海に同第三航空戦隊第一小隊がいるとの情報があります」

「やけに詳しいな」

 

詳細な情報に驚くと、通信参謀はニヤリと笑う。

 

「"ツテ"があるので、たまになら情報が入ります」

 

ツテか。こんなにも情報が入るならもっと横の繋がりを増やしておくべきだったかな。

通信参謀は仕入れた情報が書かれた紙を渡した。

極秘と書かれた書類の白黒コピー。

 

「極秘なんで、会議が終わったら破棄します」

 

軽く言うが、そう簡単に入手出来る内容では無い。こちらの情報でも売ったのだろうか。後でそれとなく聞いてみよう。

 

第一機動艦隊

 第三航空戦隊→トラックへ進出

  CVL祥鳳

  CVL瑞鳳

 第四航空戦隊→ウェーク沖

  CVL隼鷹

  CVL飛鷹

  CVL龍驤

 

書類に書かれているのは第一機動艦隊の軽空母ばかりだ。

しかし第四航空戦隊の隼鷹型は中型空母で蒼龍級と遜色ない。龍驤も小型な船体に無理して中型並の艦載機を積んでるとの事であり、十分な戦力だろう。

第三航空戦隊は俺からすれば馴染みの小型空母達である。鳳翔は呉にいるとして、もう一隻いたと思うのだが。

 

「あ、龍鳳さんは横須賀で整備を受けてるらしいですよ」

 

三日月は元同僚だけあって居場所を知っていた。彼女はこの近くにいるのか。

祥鳳型2隻では多少心許ないが、後方戦線だし、潜水艦狩りには丁度いいかも知れない。

 

「なるほどね。良く分かったが、みんな移動しているな。いざと言う時にいる確証はない」

「空軍のグアム基地はどうでしょう」

 

黙って聞いていた松長が具申した。

そうか、空軍も海外に出ていたのだった。

 

「グアムにはF35がいます」

「航続距離は」

「行動範囲は1200kmくらいだったかと」

 

地図で見ると、北は硫黄島に届かないが、南ならトラックまでが範囲に入る。

 

「中々良い位置にいるな」

「後は厚木基地の航空総隊や空軍の百里基地から出してカバーすれば傘になります」

「常時上を飛ばす訳にはいかんが、スクランブル待機くらいはできるだろう。松長、交渉を任せる」

「は。承知しました」

 

P-1を頼めば対潜哨戒も出来るかも知れないな。

管轄の違いで護衛艦隊の護衛艦を派遣出来ないため、ヘリによる哨戒は諦めていたが、希望が見えて来た。

 

「足りない部分はうちの航空隊を派遣しても良いかも知れない。硫黄島か父島くらいに水上機を配置したい所だ」

「トラック島に進出するのは如何でしょうか」

「いいね」

「前線に派遣出来るか掛け合ってみます」

 

不可能だと思っていたが、空からの傘は何とかなりそうだ。

後は直衛部隊だな。

 

「今は大規模攻勢の後処理を兼ねて第二艦隊が哨戒をしています」

 

展開しているとの報告を受けている部隊は以下の通りである。

 

第二艦隊

 第四戦隊

  CA高雄、愛宕、摩耶

 第五戦隊

  CA妙高、那智、羽黒

 第二水雷戦隊

  CL能代

  CL神通

  第十五駆逐隊

   DD黒潮、親潮

  第十六駆逐隊

   DD初風、雪風、天津風、時津風

  第十八駆逐隊

   DD霰、霞、陽炎、不知火

 第四水雷戦隊

  CL矢矧

  CL那珂

  第ニ駆逐隊

   DD村雨、夕立、春雨、五月雨

  第八駆逐隊

   DD朝潮、大潮、満潮、荒潮

  第九駆逐隊

   DD朝雲、山雲

  第ニ四駆逐隊

   DD海風、江風

 

「流石第二艦隊…」

「もうこのまま彼らが担当すればいいんじゃないですかね?」

 

重巡6、軽巡4、駆逐艦22の堂々たる艦隊である。隊員が嘆くのも分からなくはない。

しかし、こちらも多くの艦隊から駆逐艦を借りている。

 

第七艦隊

 DD三日月

第一艦隊

 第三水雷戦隊

  第十一駆逐隊

   DD吹雪、白雪、初雪、深雪

  第十九駆逐隊

   DD磯波、綾波、敷波

第二艦隊

 第四水雷戦隊

  第九駆逐隊

   DD朝雲、山雲

  第ニ四駆逐隊

   DD海風、江風

第三艦隊

 第五水雷戦隊

  CL名取

  第ニニ駆逐隊

   DD皐月、文月、長月

第四艦隊

 第六駆逐隊

  CL夕張

  第ニ三駆逐隊

   DD卯月、菊月

  第三十駆逐隊

   DD睦月、如月、弥生、望月

 

軽巡2、駆逐隊21。重巡はいないが、数に遜色はない。

 

「保科参謀長。どう思う」

「そうですね。数はいますが、旧式艦が多く火力が劣るかと。また、寄せ集めによる統制力の低下も見込まれます。その上、東西に二分する必要があるので投入出来るのは半分であり、厳しい状況は脱却出来ていないと思います」

「手厳しい事を言うね」

「事実を述べたまでです」

 

参謀長の冷静な分析は当勢力の特徴を言い表している。

その分析は正しいのだろうが、我が艦隊の旗艦は若干不機嫌そうである。

旧式とバッサリ切り捨てられた心境は如何に。

 

三日月は後でフォローしておくとして、保科参謀長の言うとおりだ。

交通量の多い門司ーシンガポール間の西航路を考えれば、護衛艦隊に協力を依頼しても東航路に投入出来るのは半数程になる。

休息や整備も考えればもっと減るだろう。

 

「やはり数不足は補えないか」

「大規模な護衛船団を組めば良いのでは?」

「速度も大きさもバラバラだから、いくつかに分けなければ難しいだろう」

 

解決案が出ず、いつものように会議は紛糾し始めたので、これまで通りで進める事にした。駆逐隊ごとに仕事を割り振り、ローテーションを決める。

 

 

 

会議が終わり、それぞれが席に戻る中で松長を呼び止めた。

 

「艦隊の現状はこんな感じだ」

「なかなか厳しいですね。連日戦果を上げる連合艦隊にこんな裏があったとは思いませんでした」

 

松長は窓の外を見てそう漏らした。

 

「護衛こそ海軍の要のはずなんだが…。最近は人類を救うヒーローになる事に熱心な人が多いみたいでね」

「自衛隊がこれまで歩んで来た歴史から外れて来ているという事ですか」

 

松長は語気を強めて言う。

俺は松長から視線を外し、三日月の方を見る。

 

「シーレーンの確保の事か?歴史から外れているかは判断出来ないな。ヤツらが出る数十年前から海自は対潜作戦でアメリカ海軍の肩代わりが出来る艦隊を作ったり、国土を弾道ミサイルから守ったりと、シーレーン一筋では無くなっている。いずも型がSTOLキャリアー(航空母艦)になったのもその前だ。年々変革して来ているよ。でもドクトリンがどう変わろうと敵勢力を駆逐すれば海は安全になる。その原則は変わらない。

今は海賊対策で直接商船にくっつくより積極的防衛に出た方がシーレーンは守れるという考えが主流なんだろう。最近はその考えが先走り、艦隊同士の海戦の方が優先されるべきと考える者もいるという事だ」

 

松長は数秒黙った後、自分の意見を述べた。

 

「上層部へ軍備を増やすよう働きかけるべきではないでしょうか」

「やったさ。でも断られた。海上自衛軍はアメリカ海軍じゃない。無いものねだりしても仕方ないさ」

「それはそうですが」

「限られた戦力で最大限の効果を上げるのが仕事だよ。君は那覇で十分な機材に恵まれたかい?」

「当初は。空自の戦闘機も最初はF-35が唸っていましたが、徐々にF-35飛行隊が減り、旧式のF15だけが残りました」

「F-15は今でも現役だろう?」

「ソフトウェア改修が出来ない初期型です」

「あぁ。そんなのあったな」

「その頃には前線はフィリピンより南だったので、主役は海自P-1でした」

「同じじゃないか」

「え?」

「今使えるのはP-1だけ。それで不十分なら他から借りるとか、出来るかは知らんがF-15にソナーをつけるとか。そういう努力をするしか無いさ」

「なるほど」

「連合艦隊の場合、出来てから日が浅いからまだ実施してない事も多いと思う。特に航空関係はこれから伸ばせる分野だと思う。それを君にやってもらいたいんだよ」

「そういう事ですか。ようやくここに呼ばれた理由が分かった気がします。グアムの件、お任せ下さい。約束を勝ち取って来ます」

 

松長は背筋を伸ばして歩くと部屋を出て行った。

 

「お疲れ様です。上手くゆきそうですね」

「ああ。一安心だ」

「私は那覇のF-15ですか」

 

気を緩めていたら三日月が変なことを言う。先程からの嫌味かな?

 

「そんな事言うなよ。F-15J戦闘機はそのままだが、君はF-15J改やP-1、E-767にもなれる」

「そう言われましても…」

 

我ながら励ましているのか、そうでないのかよく分からないアドバイスだ。

三日月も困惑している。

仕方ない。多少強引な手に出るか。

 

「そうだ。ケーキでも食べに行こう!横須賀駅前にいい店を見つけたんだ」

「そうなんですか?」

「ほら、行こう」

「えぇ、今からですか」

「もちろん」

「もう!知りませんよ」

 

口ではそう言いながらも笑顔になっている。

やっぱり人間の女の子と一緒なんだなぁ。

話を反らし、甘味で釣るという卑怯な手だが、これしか良い方法を思いつかなかった。

こういう時にどうすれば良いか相談出来る人が欲しい所だな。

 

そう思いながら部屋を出たのだった。




海苔とお茶、あと福江が出ないんですがどうすればいいんですかね。
2-4は逸れる、6-3は勝率がひどい。これは次イベまでお預けという暗示なのかも知れません。

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