艦これ海上護衛戦   作:INtention

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睦月型改二は三日月かと意気込んでいましたが、文月でしたね。
かわいいので良いですが。この調子で行くと、睦月型は全員大発を積めるようになるのでしょうか。
イベントの輸送作戦で活躍しそうです。
艦これイベントは秋冬かけてレイテをやるみたいですね。
西村艦隊はただただ不運としか言えませんが、イベントで克服出来たようで何よりです。
(敵上陸部隊の撃破ではなく、海峡を突破するのが目的になってるのは気のせいですかね?第一次ソロモン海戦からまるで成長していない…)


第十二話 スカウト

呉鎮守府を出て、海沿いを歩く。

前回来た時は艦隊の出撃があったため賑やかだったが、今日は静かな海だ。

内地は戦争などしていないかのように穏やかである。電気の不足は戦争前からよくあったことだし、開戦後数年の物資があまり入って来ない状態も脱したためか。

唯一戦争中だと思い出させるのは空を飛ぶ戦闘機の爆音くらい。

ジェット機によくある高音ではなく、レシプロ機特有の低く響く音。

空を見上げれば、3機のプロペラ機が三角形になって飛んでいる。

航空自衛軍には練習用のプロペラ機があるようだが、それとは違う。

恐らくあの飛行機は、

 

「加賀さんの搭載機ですね」

 

近くで声がした。

辺りを見渡すと、近くに女の子がいた。黒い髪に黒い制服。

 

「また会ったな」

「そうですね」

「あの飛行機が誰のか分かるのか?」

「識別帯があります。操縦席の後ろに赤い帯があるでしょう?」

 

申し訳無いがそこまでは見えない。

艦娘は目も良いのだろうか。

 

「航戦ごとに色分けされてます。あれは赤が二本なので加賀機です」

「詳しいね」

「これでも三航戦所属ですから」

 

女の子は金色の目を輝かせて言った。

 

 

第三航空戦隊。

小型空母が集められた戦隊であり、

第一小隊

 祥鳳、瑞鳳、龍鳳

第二小隊

 鳳翔、三日月

と、小型空母4隻と駆逐艦1隻からなっている。

 

一隻ごとの搭載機は少ないが、まとまれば大型空母並の戦力となる。

第三航空戦隊は第一機動部隊所属だが、二つに分かれている。

第一小隊は瑞鳳級と呼ばれる小型改装空母が集められており、第一艦隊の戦艦達の傘として活躍する事も多い。

逆に第二小隊は連合艦隊付属として呉にいる事が多いようだ。

小型低速の空母と駆逐艦が内地でする事は搭乗員の訓練。発着艦の訓練と、トンボ釣りの組み合わせだ。

 

目の前にいる少女こそ駆逐艦三日月であり、航空機に詳しいのはそのためだろう。

 

「君の所の飛行機は何色の帯なんだい?」

「赤です。でも他と違って前から後ろまで横に線が引かれてます」

「ふうん、面白いね」

「今日はどうされたのですか」

 

ここへは何度か来ているため、顔なじみにはなっている。

 

「連合艦隊に用があってね」

「そうですか。7Fは横須賀の艦隊でしたっけ」

「よく知ってるね」

「よく話が出るので覚えました」

「それは光栄だな」

「大抵は、また駆逐艦を引き抜かれたと嘆いていますけど」

「……」

 

二人で歩いていると、目的の店に着いた。

わざわざ呉まで出向いた理由の一つはこれだ。

 

「今日は寄って行かれますか?」

「もちろん」

 

まだ明るいのに暖簾が掛かっている。

三日月が扉を開けると、中から女将さんが出迎えてくれた。

 

「いらっしゃいませ。久し振りですね」

「今日は呉に用がありまして」

 

この店は鳳翔がやっている提督御用達の小料理店だ。

初回は軍の敷地内にある異様な店と思っていたため、身構えてしまったが、今日は別の意味で緊張する。

 

「お仕事は終わりですか?」

「そう…いや、まだ残っている」

「ではお酒は付けない方が良いですか」

「すまないね」

 

本当は景気づけに一杯やりたい所だが、我慢する。

とりあえず、最近の第三航空戦隊(3Sf)の動きを探る事にした。

 

「最近は忙しいですか」

「お陰様で」

 

鳳翔は柔らかな笑みを浮かべる。

提督達から人気が高いのはこういう仕草だろうか。

 

「では第十一号作戦にも出られたのですか?」

「いいえ。搭乗員の訓練で内地におりました」

「新人はどんな具合ですか」

「今期は筋が良い方が多いですね」

「それは期待出来ますね」

 

三日月が料理を運んでくれた。

独り身だと中々作ることのない、しっかりした味付けの料理だった。

 

「三日月はどんな訓練をしているんだい?」

「三日月ですか?鳳翔さんに付いて行って、落ちた飛行機を拾い集める仕事です」

 

トンボ釣りか。

 

「今日は2機を拾いました!」

 

三日月は自慢げに言った。1日2機の墜落は多いのか少ないのかよく分からない。

 

「今年は筋が良いんですよね?」

「そうですね。格闘戦は上手いですよ」

「格闘戦は?」

「ええ。ちょっと着艦が荒いかも知れないですね」

「なるほど」

 

戦闘機乗りとしては優秀だが、空母乗りとなると話は別なのかも知れない。

あまり触れて欲しく無さそうな雰囲気を感じた。

大規模作戦もあり、補填するパイロットの育成は急務だろう。ここ最近ずっと瀬戸内海で訓練しているのではないだろうか。そう思い、三日月に思い切って聞いてみた。

 

「三日月はずっと瀬戸内海にいるの?」

「そうですね。最近はほとんど外海に出てません」

「出たいと思う?」

「え…」

 

三日月はすぐには答えられず、鳳翔の方を見る。

鳳翔は微笑んだまま何も言わない。

三日月は恐る恐る答えた。

 

「…はい。たまには外に出てみたいと思います」

 

俺は何気ない様子を装って話を進めた。

 

「そうか。実は我が艦隊で働いてくれる艦娘を探していてね」

「え…」

「第七艦隊で戦ってみないか?」

 

ひと思いに言うと、三日月は目を見開いた。

 

「それって、この三日月をスカウトしたいと言うことですか?」

「そうだ。最前線って訳じゃないし、護衛任務だけど、大事な…」

「どうして私なんですか」

 

三日月はアピールを遮り、聞いてきた。

こんなに強い口調で尋ねられるとは思っていなかったが、そう質問して来ることは予想していた。俺は言葉を探す。

 

「君が思っているような、駆逐隊に属してないからという理由は確かにある。でも誰でも良いという訳じゃないよ」

「……」

 

三日月は信用していない眼を向けて来た。鳳翔は黙って見守っている。

 

「そうだな…。まず前提として、俺は君たち艦娘を護衛艦と同じ"兵器"として考え、使う。でもそれと同時に君達に人間らしさも感じている」

「……」

「その上で、第七艦隊として船団護衛をするために、色々な駆逐隊をローテーションしていく予定だ。でも戦力との兼ね合いで、その中心となるのは睦月型になると思っている。個性豊かな睦月型を纏める役目を任せるには三日月が一番適任だと考えた」

「私が?睦月ちゃんじゃなくて?」

「睦月は周りに気配りが出来るけど、主観的な言動が多いように感じる。他人の意見に流されずに纏めるのは三日月の方が上手いと思うな」

「でも他の子は既に駆逐隊でまとまっています」

「部隊どうしの文化があって、意外と連携が取れない事がよくあるんだ。君ならそれが無さそうだし」

「…どうして連合艦隊に来たばかりの司令官が睦月型に詳しいんですか?」

 

他の人から見ればそう思うかも知れない。睦月型をこっそり調査している訳ではないので俺は経歴について話すことにした。

 

「三日月は俺が第七艦隊の提督になる前の事を知っているか?」

「護衛艦隊の地方隊の司令ですよね」

 

以前来た時に俺が店で話題になったと聞いていたため、お手伝いの三日月も知っていたのだろう。

 

「俺は長い間、艦に乗っている。この戦争も最前線で戦って来た。後方で指揮する提督は多いが、俺は常に前線で戦って来た。だから護衛艦隊時代から、ヤツらから国を守るためには君たちの力が必要だと実感していた。

多くの護衛作戦を行う中で、こちらに回されることが一番多かったのが睦月型でね。航続距離は短いが、小型で早い。動きが鈍い貨物船の周りを迅速に動き回るには適していると思っているよ」

「でも他の駆逐艦より火力は劣っています。輸送船を守るのにも火力が必要ではないですか?」

「確かに君の言う通りだ。しかし開戦後すぐみたいに商船が最前線に行く機会は減っている。各方面艦隊が前線を守っているから強力な艦隊と戦うことは少ないと思う」

「でも遭遇した場合は…」

「61cm魚雷があるじゃないか」

「でも…」

 

三日月は考え込んでいる。今の暮らしでも不自由はないだろうし、鳳翔の事もある。

彼女にとって鳳翔は大切な存在だろう。二人を引き離すなら、その事により鳳翔の仕事に出る影響を最低限にしなければならない。

 

「鳳翔さん」

「何ですか?」

 

黙って俺と三日月の話を聞いていた鳳翔は静かに答えた。

 

「トンボ釣りの役目ですが、呉地方隊から船艇を引っ張って来ます。それで仕事は出来ませんか」

「出来ますけど…」

「定期的に()()させますから、三日月を貰えないでしょうか」

 

鳳翔の目をじっと見る。取引について考えているようだが、互いに目を離さなかった。

三日月は両者の顔を伺っている。

数分も見つめ合った頃、鳳翔が折れた。

 

「…提督がそこまで言うのなら。後は本人次第ね」

「三日月。今の条件でどうかな」

 

鳳翔の許可が降りた事で三日月は決心が付いたようだ。

 

「分かりました。よろしくお願いします」

「本当かい?」

「その代わり、条件があります」

 

三日月は金色の目でこちらを見つめる。

 

「条件?」

「第七艦隊に睦月型全員を集めて下さい」

 

睦月型全員か。

確か三日月を含めて10隻だったか。

連合艦隊(GF)長官との話では第三艦隊の第五水雷戦隊は吸収出来そうだが、睦月型を集めるなら第四艦隊の第六水雷戦隊も引き抜く必要がある。井上提督なら粘り強く交渉すればどうにか話を付けられるかも知れない。

 

「分かった。善処しよう」

「水無月と夕月もです!」

「えっ、まだ建造されてなかったはずじゃ」

「お願いです」

 

有無を言わせない態度だ。ここで折れたら三日月も断って来るだろう。

 

「艦政本部に連絡してみます…」

 

新艦建造のため、軍令部に掛け合う必要もありそうだ。

 

「ありがとうございます。では改めまして、司令官。駆逐艦三日月です。どうぞお手柔らかにお願いします」

「こちらこそよろしく」

 

どうにか交渉は成立した。

顔こそ微笑んでいるが、背中は暑くもないのに汗でびっしょりだ。

 

三日月の移籍は鳳翔の訓練に使う艦艇を手配してからと決まった。

第一航空艦隊の長官にも話を付けなければならない。実はまだ正式に言っていないのだ。以前、一航艦の戦務参謀に何気なく話した所、彼は本人次第だと言った。冗談だと思ったのだろう。

 

駆逐艦一隻ではあるが、大きな成果を掴んだ。この調子で自前の艦隊を整備して行きたい所だ。

そのためには三日月で艦娘の運用について経験を積む必要があるだろう。

秘書艦として貸与された隊の管理を任せても良いし、護衛戦力として出撃させても良い。艦隊の運営が楽に…いや楽しくなりそうだ。

俺は食事代を経費で出し、横須賀へと帰投した。




瑞鳳級とは、同じような大きさの軍艦を総称する呼び方です。
クラスとも言いますね。

例えば、
古鷹型は「古鷹」「加古」ですが、
古鷹級は「古鷹」「加古」「青葉」「衣笠」となります。

瑞鳳級は「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」「千歳」「千代田」の5隻で、海軍の書類上は4隻共(祥鳳は戦没)瑞鳳型として登録されているらしいです。搭載機が30機程の1万トン級高速改装空母という括りですかね?

祥鳳瑞鳳は潜水母艦としては剣崎(祥鳳)型、龍鳳は準同型という複雑な姉妹関係。
春日丸の鷹クラスも複雑ですけど。

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