Fate/Grand Order~農民は人理修復を成し得るのか?~ 作:汰華盧顧
これから先も投稿が空くことがあるかもしれませんが、そのときはゆっくりまっていてください。
サンドウィッチを食べ終えた所でリヨンの町に到着したボク達。そのときには既に足止め役のファントムがやられていたが、そんなに時間がたっていないことからまだ町にいると考え、ランスロット達を使って探させることに。
町の端の方に向かったランスロット達とは反対の方に行くと、ジークフリートが潜伏していたと思われる城から出てきたジャンヌ、マシュ、アルトリア、ぐだ男の四人とばったり遭遇。
そして今、その四人と命懸けの鬼ごっこをしているのだが…………。
(どー考えても罠だよな、これ)
アルトリア達は積極的な攻撃はせず、こちらの攻撃の迎撃と回避に努めながら、建物の密集している方へと逃げていく。それに対してオルタはファヴニールを歩かせ、障害物をなぎ倒して追い詰めてから仕留める気なのだろう。
オルタの嗜虐的な表情が何よりも物語っていた。
一応注意はしてみたけど──────
「あっはははははははははははは!無様!ほんっとに無様ね!まるで地を這う虫けらのよう!生きてて恥ずかしくないのかしら?ねえファーマー?」
「あ──……それについてはノーコメントで。
それよりマスター、彼らはボク達を誘い込むつもりみたいですよ?一応警戒して上昇した方が………」
「何ビビってるのよ。奴等はどうせ何もできやしないわ。………ふふふ、愚かな私は焼き殺して、アホ毛王はあのアホ毛を引き抜いてからバーベキューにしてやる……!」
──────このとおり、まったく聞く耳を持ってくれない。頭の中には雪辱を果たすことで一杯みたいだ。
「っ!──野菜真拳奥義──『ラウンド椎茸』!」
飛来した矢を椎茸でできた円盾で叩き落とす。『ラウンド椎茸』が破られることは滅多にないが、相手はエミヤだ。『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』を使われたらたまったもんじゃない。
「そらぁ!」
今度は少し間を置いて飛んできた赤黒い剣を弾き飛ばす。だがその剣は落ちること無く、軌跡を描きながら再度飛んでくる。
これはたしか──『赤原猟犬 (フルンディング)』だったか。射手が無事なら対象をどこまでも追いかけ続けるというめちゃくちゃ厄介な代物だったはず。
しかもこいつ、どうやらボクを狙っているらしい。くそっ、なんて面倒な。
こうなったらボクも、それ相応の仕返しをするとしよう。
「マスター!耳塞いどいてくださいよ!」
「ははは───ん?何か言っ「──野菜真拳奥義──!」え、ちょ」
「『ラディッシュランチャー』ぁぁ!!」
どこからか引っ張り出した四連装ロケットランチャーを肩に担いで標的を見据え、腰に力を入れて衝撃に備える。そして引き金をひいた。
轟音と供に射出された4発のロケット弾───ではなくラディッシュは、1発はフルンディングに直撃して勢いを殺し、次の2発目はフルンディングの横から当たって爆発し破壊。
残る二発はエミヤを目指して飛んでいき、空中で射ぬかれ、爆発するのだった。
『マスター、こっちはいつでもいけるぜ』
「わかった! みんな、ポイントまで走るぞ!」
「了解です!」
「殿は私が務めます!」
エフィーナの読み通り、カルデア組は町に罠を張っていた。
リヨンの町。この町に竜殺しがいると聞いたカルデア組の面々は、戦力として加えるためにこの町に訪れた。
途中、ファントム・ジ・オペラと遭遇、妨害を受けるが、アルトリア、マシュ、ジャンヌ、立香の四人と残りの四人で双手に別れ、迅速に動くことで、原作よりも早く竜殺しであるジークフリートを仲間に加えることに成功。
治療を施して、仮契約をしている最中に超極大の生体反応を感知したと知らせを受けた一行は、最初は撤退しようとするも、接近してくるものがドラゴンとわかった所でキャスター・クー・フーリンがある案を思いつく。
それは、リヨンの町を使った大規模なトラップだ。
内容はいたってシンプル。
まず、オルタが降りてきたところで囮がわざと見つかる。
次にオルタから逃げつつ、身動きが取れにくく、なおかつルーンを仕込みやすい住宅の密集地帯に誘導。
そしてクー・フーリンがルーンで創った偽の袋小路に逃げ込み、オルタが油断したところで仕込みを発動させドラゴンの動きを止める。
最後は令呪によってブーストされたジークフリートの宝具で仕留める、という作戦だ。
始めは聞いた誰もが『いくらなんでも引っ掛からないだろ』と考えていた。これに引っ掛かるのはどこぞの慢心しまくった金ぴかぐらいだと。
………オルタには効果は抜群だった。
しかも邪魔になると懸念していた二騎のサーヴァントをわざわざ遠くにやってくれて。もしこの二騎がいた場合はアルトリアとエミヤが相手をする予定だったが、その必要がなくなり、お陰で作戦に全力を注ぐことができるようになったのだった。
「ここだ!」
目的地へと滑り込む立香達。ルーンで作られたダミーの壁を背に体制を整える。そこに地響きをたてながらファヴニールが迫る。その頭の上では、何故か涙目のオルタを慰めるファーマーの姿が。
どうやらファーマーが、フルンディングを迎撃した際の轟音でオルタを驚かせてしまい、その事を謝っているらしい。それを見たアルトリアは、静かに歯を噛み締めた。
「………マスター、今すぐジークフリートと役を変わりたいのですが」
「え」
『なに言ってんだセイバー。ダメに決まってんだろ』
アルトリアの提案をクー・フーリンがにべもなく切り捨てる。アルトリアが渋々引き下がった所で、何かを話し終えた(なお、聞いていたのはジャンヌだけだった模様)オルタがファヴニールに指示を下した。
「ファヴニールっ!あの人の話を聞かない連中を燃やしてやりなさい‼」
「ガアアアアァ!!!」
口を大きく開き、こみ上げる業火を吐こうとするファヴニール。だがそれは、突如表れた木の根によって邪魔された。
ファヴニールの丁度顎の下辺りから生えた根が顎をかち上げ、強引に閉じると同時に口を縛り上げる。
慌てふためくファヴニールに、更なる根が迫る。
「やっぱこうなるよね……」
「上昇なさい、ファヴニール!」
「おっと!そうはさせねえよぉ!」
翼を広げて一気に飛び立とうとするファヴニールの上空に表れたルーン文字。そこから重圧が放たれ、一時的だがファヴニールに腹を付かせた。
そこに殺到する木の根達。ファヴニールはあっという間に四肢と翼、尻尾を縛り上げられるのだった。
「グゥゥゥゥ……」
「くそっ!こんなもの、直ぐに焼き払って──」
焦るオルタに、更に追い討ちをかける声が響き渡る。
それは、ファヴニールにとっての死刑宣告だった。
「令呪をもって命ずる───
───ジークフリートよ!宝具を使え!」
「了解した、マスター。────久しぶりだな、ファヴニール。再びこの世に帰ってきたのなら、今度もまた、俺がお前をあの世に送ろう………!」
ダミーの壁が消え去ると、そこには剣を構えるジークフリートの姿が。とたんに怯え出すファヴニールに、オルタはこの剣士の正体に気付く。
「まずい……!逃げ──」
「『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』!」
無慈悲にも、放たれる半円状の黄昏の波。ここにいる誰もが決まったと思った。
──────だが……
「──野菜真拳進化系奥義──‼」
それは、イレギュラーによって防がれた。
「『熾天覆う七枚の椎茸(ロー・シイタケ)』!!!」
ファヴニールの鼻先に、オルタを庇うように立つエフィーナは、腕につけた『ラウンド椎茸』を掲げる。
そして現れる、飾り切りされた光り輝く七枚の椎茸。
そこにぶつかる『幻想大剣・天魔失墜』。当たった瞬間に三枚の椎茸が砕け散る。
だがそこから先は、罅は入っても、砕けること無く受け止め続ける。
やがて『幻想大剣・天魔失墜』が消え、砂埃が晴れると、そこには残り四枚となった『熾天覆う七つの椎茸』を構えるエフィーナと、無傷のファヴニールとオルタが。
大英雄の剣を、農民は防ぎきったのだった。