Fate/Grand Order~農民は人理修復を成し得るのか?~ 作:汰華盧顧
2/18 加筆修正しました
ボクの召喚から3日たった。
オルタの護衛として召喚されたボクは、オルタと共にフランスを蹂躙していた─────
─────何てことはなく。
城に残って日々オルタの世話をしていた。
「エフィーナ!出番です。行きますよ!」
今日も今日とてオルタが意気揚々と厨房の扉を蹴破り、乗り込んでくる。この足癖の悪さはモードレットにそっくりだ。あの子も扉を開けるときは大抵は脚で蹴破っていたな。毎回アグラヴェイン卿に怒られていたっけ。
今日も元気に生意気してるのを見るとホッとする。
幸い、あの日の出来事はトラウマにはならなかったらしい。すぐに対処したのが良かったのだろう。
あの後復活させるのにかなり時間を費やした。
抱き締めて頭を撫でながら『ジル・ド・レェは怖くないよ~』ってやり続けてようやくだ。
村で子供を宥める時やってた事だが、幼児化してたオルタには効果抜群だった。
……ジル・ド・レェが鼻血を流して『おぉぉ………』とか言ってたが、気にしたら負けだ。
「何をしてるのです!行きますよ!貴女は私の護衛なんだから」
服をつかんでボクを急かす。
オルタはジル・ド・レェに護衛無しで出歩くのを禁じられている。だからボクをつれに来たのだろう。
立場的には従う必要ないのに、ちゃんと守ろうとしてるのがとても可愛い。
ボクとしては今すぐ行ってもいいんだが、今はちょっとタイミングが悪い。調度クッキーを焼き始めたところだ。出来れば少し待ってほしいが、聞いてくれるだろうか。
「あれ?いいんですかマスター。もう少しでクッキーが焼けるんですけど」
「一時間待つわ」
ビックリするくらいチョロかった。
ボクのお手製かぼちゃクッキーを携えてご満悦な様子のオルタ。最初はかぼちゃと聞いて微妙そうな顔をしていたが、食べてみてかなり気に入ったらしい。
ふふっ、野菜はご飯にもスイーツにもなれるのだ。
オルタに連れられて来たのは城の中庭。現在はワイバーンの発着場になっている場所だ。
地面に降りて休むワイバーンの奥には、巨大なドラゴン。ファヴニールが控えていた。
「さあ行きますよ!」
「あ、はい。………何処に乗れば?」
ワイバーンの上で仁王立ちしながら不思議そうな顔をするオルタ。
いや君は普通にやってるけどそれ、わりと難しいからね。
オルタは普通にやってるが、昔から動物に乗ると一歩目で地面に叩きつけられるボクには些か酷な話だ。上空で振り落とされたらと思うと身の毛がよだつ。
ハンバーグは好きだがミンチにはなりたくない。
「サーヴァントなら出来るでしょうに………仕方ないわね、それなら私の後ろに乗りなさい」
「あ、じゃあ失礼します」
オルタの少し後ろに立ち、お腹の辺りに手を回す。
一瞬オルタがビクついたが、何事も無かったかのようにワイバーンを飛ばした。
その後に、他のワイバーンも続き編隊を組んでいく。
「エフィーナ、これからする事はわかっていますね?」
「ラ・シャリテの町に向かって、そこに来る敵のサーヴァントを迎え撃つんですよね」
「ええそうよ。そこでは貴女にも戦ってもらいますからね」
「んん………まぁ、微力を尽くさせていただきます。ですけど、あまり期待しないでくださいよ。ボクは普通の農民なんですから」
今の時間軸はオルレアンの第四章の辺りか。まぁボクという存在がいたりと、少しばかり違う点があるから、これはそこまで気にしなくていいだろう。
問題は相手方のサーヴァントだ。原作通りならマシュとジャンヌ・ダルクだけのハズだ。
だがもしかしたら他にもサーヴァントがいる可能性がある。そこだけは注意する必要があるだろう。
「サクッ……サクッ………ん」
「あ、ありがと」
肩ごしに渡されたクッキーを口で受けとる。
口の中で広がるかぼちゃの甘い風味。うん、我ながら良くできてる。
「ッ~~~~…!え、エフィーナ!貴女の事は敵の前ではファーマーと呼びます!良いですね!?」
「了解です、マスター」
オルタはそういうと、クッキーをまた一つ口の中に放り込む。そして眼下に見えてきたラ・シャリテの町に視線を向けた。
ラ・シャリテの町は荒れ放題になっていてそこら中から煙が上がっている。そして町の一角では、今も爆発が起きていた。
「どうやら既に始まっているようね。……煙のせいでよく見えないけど、取り敢えず、一発食らわせてやろうかしら」
「迂闊に食らわせるとこっちが反撃を食らいます。ここは慎重に────ッ!マスター!頭下げて‼」
突如ボクのアホ毛に走る嫌な予感。それに従いオルタを引っ張ってしゃがませる。
瞬間、さっきまで頭があった場所を何が突き抜けていった。
ええいっ!いきなりか!
「な、なにが─────」
「次来ます!ボクが前に出ますから、マスターはワイバーンに指示を!」
場所を交代すると同時に、再度放たれる攻撃。
3つ同時に飛来する攻撃を急上昇にて回避するも、後方ににいたために避け損ねたワイバーン達に直撃。撃墜され墜ちていく。
「(くそっ!アーチャーなのは分かるけど一体だれが)───やばっ!?野菜真拳奥義『ラウンド椎茸』!」
直撃コースの攻撃をとっさに出した椎茸の盾──ラウンド椎茸にて受け止める。衝撃をこらえ、盾に刺さったものを抜こうとして───血の気がひいた。
「くそったれ!!マスター!退避!」
「っ、ワイバーン!」
ラウンド椎茸をぶん投げ、ワイバーンが後ろに羽ばたく。
瞬間────爆発が起こった。
ラウンド椎茸には一本の矢が、いや、剣が刺さっていた。それも、ねじ曲げられたようなものが。
あの捻れた剣のような特徴的な矢、それにあの爆発──。
間違いない、向こうにはエミヤが居る!
「チッ!エフィーナ、狙撃はどこから来ました?」
「……すいません、わからないです。こうも煙がひどいと」
町の至るところから立ち込める煙のせいで、視界が大きく遮られている。この状況でエミヤをピンポイントで狙うのは不可能に近い。
逆に向こうからしたら、ボクたちはいい的だ。悠長にしていれば、エミヤを見つける前にこちらが仕留められるだろう。そうなったら最悪だ。
………しかたない。ちょっと荒っぽいが、やるか。
「…………マスター、町で戦闘中のサーヴァント達に攻撃に備えるよう連絡してください」
「は?貴女何を」
「全部ぶっ飛ばして炙り出します!野菜真拳奥義『ニンジン・デストロイヤー』!!!」
ボクの宝具『農民の食糧庫』からダンボール箱が呼び出される。それらがボクの腕や足に装着される。さながらミサイルポットのように。
「発射ぁ!」
号令と共に箱が開封され、中から人参がミサイルのごとく発射。手当たり次第に爆撃していく。
ダンボールが空になろうと、すぐに新しいダンボールが補充され、再度爆撃が行われる。
ボク自慢の絶え間ない弾幕。これにはブライトさんもニッコリだ。
そして弾幕が途切れる頃には、町はほぼ瓦礫の山と化していた。
「───────ハッ。よ、よくやったわ。さあ、降りて連中の顔を拝んでやりましょう。ま、生きてればの話ですけどね!」
口許をひきつらせるオルタがワイバーンに指示を下す。
平静を装っているが、その目はうっわマジかよとでも言いたげだった。
うん、今回は確かにやり過ぎた。反省しないと。
高度を下げるワイバーン。その際に発生した風が砂塵を吹き飛ばす。そして姿を晒したのは、煤にまみれたガメラのような甲羅。これ、ひょっとしてマルタのもうひとつの宝具『刃を通さぬ竜の盾よ』か?
その下にできた穴から、こちら側のサーヴァント達が姿を表す。
セイバー シュバリエ・デオン
ライダー マルタ
アサシン カーミラ
ランサー ヴラド三世
「────先の攻撃は貴様か?農民」
「………ごめんなさい」
「……………次はないと思え」
静かにぶちギレる皆様に、誠意を込めて謝罪する。
刺すような視線を向けるヴラド三世もおっかないが、一番ヤバイのはマルタだ。にこやかな笑みを浮かべているのに、目は欠片たりとも笑っていない。その手に握る杖から、ベキッと嫌な音が聞こえた。
「お遊びはそこまでにしなさい。………ふんっ」
こちらに渇を入れたオルタは、旗を一振りして砂埃を吹き飛ばす。
そして姿が露になるカルデアのサーヴァント達。
その中にはボクと面識のある顔もあった。
「───嘘でしょ」
キャスター クー・フーリン
アーチャー エミヤ
シールダー マシュ・キリエライト
ルーラー ジャンヌ・ダルク
そして…………
「久し振りだね─────アルトリア」
セイバー アルトリア・ペンドラゴン。
良かった………!やっと出せたよ野菜真拳!
これでタグ詐欺じゃなくなった!
ところでエフィーナのプロフィールって、あった方がいいですかね?出来れば意見を頂きたいです。