Fate/Grand Order~農民は人理修復を成し得るのか?~   作:汰華盧顧

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難しい………
サーヴァントの口調、特にジルが難しい………

あ、もし『これ違う』と思ったらじゃんじゃん教えてください。



3/2 加筆修正しました


ボクの仕事はオルタの護衛です

「ね……ねぇジル……何かしらコレ……」

 

 

ボクの姿を見て困惑した様子のジャンヌ・ダルク・オルタはいつもの見下すような笑みをひきつらせて、後ろに立つ青髭こと、ジル・ド・レェに助けを求める。

 

困惑するのも無理はない。ボクも困惑してる。

 

第一に、ボクの格好だ。

ボクの今の格好は上下作業服に安全靴の現代風スタイルだ。英霊召喚でこんなのが出たらやっちまったと思うのは普通だろう。

 

第二に、今のボクには“狂化”が付与されていない(さっきちらっと確認した)。つまり、バーサーク・サーヴァントになっていないということだ。

 

───もしかして、召喚の時のアレが“狂化”か?やっべぇな、振り払っちゃったよ。

 

 

「ふむふむ………」

 

 

ジャンヌ・ダルク・オルタ………長いな、短くオルタと呼ぼう。オルタの前に出てこちらをあの魚眼でギョロギョロと見てくる、キャスタージル・ド・レェ。

 

じろじろと見られ居心地悪くしていると、ジル・ド・レェの姿が一瞬で消える。

 

呆然とするオルタとボク。どこに行ったのか探そうと首を動かし────肩にあの爪の長い手がそっと置かれた。

 

 

「っ───────────」

 

 

悲鳴を上げなかったボクを誉めてほしい。

冗談抜きで心臓が止まるかと思った。

 

 

「………清楚さ、可憐さ、清らかさはあるが、いささか慎ましさが足りませんなあ………」

 

「………あ、あの」

 

「おお!これは失敬。ワタクシはジル・ド・レェと申すもの。どうかお見知りおきを。……ところで、拷問や生贄に興味はおありかな?」

 

「い、いや、ボクそういう黒魔術的なのはちょっと……」

 

 

肩に置かれた手をそっと外して距離をとる。

 

………Zeroの時の所業が頭をよぎった。職業柄、引っこ抜く作業が多いけど首を引っこ抜かれるのは絶対ごめんだ。

刺激を与えないよう、慎重に深呼吸をしてバクバクの心臓を静めていく。

オルタに召喚されたときは、正直嬉しかった。だけどなんだろう、座に帰りたい。

 

そしてなぜジル・ド・レェはプルプルしてるんだろう。

時限爆弾を前にしたような、嫌な予感がする。

 

 

「おぉ…………おお…………!今“ボク”と………貴女は今“ボク”と言いましたか…………!?」

 

「ジル?どうし…………」

 

 

───っあ。

 

 

耳に手を当て、防御体制。

 

───そういえばジルドレェって、ボーイッシュな子が好みだったっけ。

 

 

「COOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOL!!!じぃつぅにCOOLですぞおぉぉおおお!!!」

 

「わぁっ!?」

 

「きゃっ!」

 

 

部屋にジル・ド・レェの歓声……いや咆哮が響き渡る。

その威力は部屋中の窓が砕け散り、ジャンヌ・オルタが可愛い悲鳴を上げ、ボクの防御体制を貫通。何事かと扉を開けたシュバリエ・デオンが、何も言わずに扉を閉める位だ。

 

って、おいコラ逃げんなデオンくんちゃん。

戻ってきてこの事態を静めてくれ!

 

 

「COOL!COOL!クゥゥゥゥル!!!」

 

「っひ!ジ、ジル!落ち着いて!落ち着いてってばぁ!?」

 

 

腕を振りかざしCOOLを連呼するジル・ド・レェ。

それをへっぴり腰になりながらも必死に宥めようとするオルタだったが、その目には涙が浮かんでいた。

 

どうしよう。めちゃくちゃ可愛いなおい。

 

かなり胸にグッと来る光景だが、このまま放置すると話が進まない。

もう少しあのかわいい姿を見ていたいけど、とりあえずボクも宥めるのに協力するとしよう。

 

 

 

 

 

~~~~一時間後~~~~

 

 

 

 

 

「いやはや、これはこれはみっともない姿を晒してしまいました。貴女がワタクシにとってドストライクでしたゆえ、つい羽目を外してしまいました」

 

 

あれが羽目を外すというなら、発狂だって羽目を外すに入るだろう。

頭に大きなたん瘤を作ったジル・ド・レェは申し訳なさそうに頭を下げる。

 

始めはボクとオルタの二人で宥めようとしたのだが、鎮まる所かどんどんヒートアップする始末。最後の手段としてオルタの旗を借りてぶん殴り(ガチでカチ割ろうかと考えた)そこでようやく正気を取り戻せたのだ。

 

ちなみにオルタは今、ボクの背中に隠れている。ボクの身長は大体170cm位だから、オルタが隠れるにはちょうどいいサイズだ。背中に当たる双丘の感触がたまんない。

というかこの子、さっきのが怖すぎて若干幼児化してる。できれば今後の事を話したいんだが、これじゃあ無理そうだ。

 

………今のジル・ド・レェは一応正気を取り戻している……よね?そもそもキャスターの地点で正気もくそもないだろうけど。オルタがポンコツになってて話せそうにない今、出来ればしたくないがジル・ド・レェと話すとしよう。やだなぁ。

 

 

「……えっと、ジル・ド・レェさん?できればこれからの事を話したいんですが………」

 

「ええそうですな!ではまずは我々の目的から話すとしましょう…………」

 

 

ジル・ド・レェの語った目的はFGOの時と同じ、祖国フランスに対する復讐だった。

そしてボクを召喚を召喚した理由は、オルタを守るための護衛が欲しかったからだとか。反抗的なら令呪で自我を無くして傀儡にするつもりだったらしい。

 

……少なくとも、それは笑いながら言うことじゃない。

オルタがいなかったら座に帰ってるとこだった。

 

それはともかくボクの仕事はオルタの護衛ということだ。

冷静に考えたら敵サイドの味方をするのはアレだけど、まぁ仕方ない。ボクも身の安全のため、それと原作が壊れないように頑張ろう。

 

 

─────ところでオルタよ、いつまでボクの後ろに隠れてるんだ?

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

場所は変わってカルデアへ。

 

現在の時刻は11時を少々過ぎた辺り。

電灯が切り替えられて薄暗い通路を、マシュがフォウを抱えて歩いていた。

 

 

「フォウ!フォウ!」

 

「しーっですよフォウさん、皆さんもう寝てるんですから、起こさないようにしないと」

 

 

マシュがなぜこんな時間に歩いているのか、その理由はフォウに起こされたからではなく、明日に迫った二度目の聖杯探索が原因だ。

 

用は緊張して眠れなかったのである。

 

 

「(うぅ……緊張して目が冴えてしまいます……ホットミルクでも飲んで気を静めなくては……)…………あれ?明かりがついてる……」

 

 

食堂にはすでに先客がいた。

 

つい最近召喚された青いドレス甲冑を着込んだ騎士王、アルトリア・ペンドラゴンだ。

アルトリアは席に座り、手に持つ物を、懐かしむような、悲しむような、そんな複雑な目で眺めていた。

 

 

「………アルトリアさん?こんな時間にどうしたんですか?」

 

「ッ!……ああ、マシュですか。いえ、少々考え事を………。貴女は?」

 

「私はホットミルクでも飲もうかと思いまして。アルトリアさんもどうです?」

 

「……そうですね、お願いします」

 

 

厨房に立ち、鍋に牛乳を入れて火に掛ける。

 

暖まったところでマグカップと皿に移して、スプーン一杯ぶんの蜂蜜を加えて完成だ。

 

 

「どうぞ」

 

「いただきます」

 

「熱いから、気を付けてください」

 

「フォウ!」

 

 

食堂にホットミルクを啜る音が響く。暫くすると、沈黙に堪えかねたマシュが口を開いた。

 

 

「そういえば、アルトリアさんはさっき何を見てたんです?」

 

「………いえ、昔の貰い物を眺めてただけです」

 

 

そう言ったアルトリアは先程懐にしまった物を再び取り出す。それは、古ぼけた一冊の本だった。

 

 

「そ、それはまさか……『農業のススメ』ですか!」

 

 

『農業のススメ』。それはブリテンの繁栄に大きく貢献した女性の遺した本。全部で5冊あり、その中には農業に関するありとあらゆる知識が記されているとされている。

 

現存が確認されているのは2冊だけ。残る3冊は行方知れずだ。

 

 

「ええ。ですがあの5冊とは違うものです。これは私が彼女に無理を言って造ってもらった物なんですよ」

 

 

ほらここ。と、アルトリアが指し示した背表紙には、アルトリアの横顔が描かれていた。

 

 

「これを書いたのは……豊穣のエフィーナ、ですか?」

 

「ええ、そうです!」

 

 

豊穣のエフィーナ……アーサー王伝説の中に出てくる一人の農民だ。

 

彼女はブリテンで起きた食糧難を、彼女が持つ独自の力と知識をもって救い、さらなる発展に貢献したとされる人物だ。

本によっては、アーサー王の愛人とされるときもある。

 

マシュはこの話を思い出して、何故アルトリアが悲しんでいたのかを察した。

 

エフィーナは食糧を生み出す力を持っていた。

その力は有用性が極めて高く、それ故に他国から狙われた。

彼女の最後は、故郷を襲撃してきた敵軍を村の人間達を逃がすために常駐の騎士達と共に残って時間を稼ぎ、その結果、騎士達は全員死亡、エフィーナは最後の敵兵と相討ちとなり、この世を去ったとされている。

 

 

「………彼女は、とても優しい女性でした。いつも私を心配してくれて………美味しい食事でもてなしてくれて………」

 

「アルトリアさん………」

 

 

本を握る手に力がこもる。

 

 

「私は……彼女に謝らねばなりません……助けが遅れて彼女を…死なせてしまったことを………」

 

 

そう呟くアルトリアの目は、悲しみに染まっていた。

 

 


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