クレヨンしんちゃん〜嵐を呼ぶ人類お助け大作戦!〜 作:ちりめん山椒
敵サーヴァントを倒し、キャスターの言う大聖杯へ向かう最中、しんのすけがマシュの変化に気がついた。オルガマリーも気付いていたようで、隣にいる立香にどうにかする様に言っていた。
「ね〜ね〜マシュお姉さん。何でそんな黒い顔してるの?」
「それを言うなら暗い顔だよ。ねえマシュ、しんちゃんの言う通りなんだか落ち込んでる様に見えるけど、どうかしたの?」
立香たちに言われたマシュは少し躊躇した後にポツリポツリと語りだしだ。
「私は先輩の指示のもと、試運転には十分な経験を積みました。なのに……未だに宝具が使えません。使い方すら分からない。欠陥サーヴァントの様なのです……」
「フォウ……」
どうやら、自分に力を譲渡してくれたサーヴァントの宝具が使えないことを気にしていた様だ。
「宝具ってな〜に?お味噌汁に入ってる……」
「それは豆腐だろう」
「じゃあ人が便利になるための……」
「それは道具だよしんのすけ君」
「じゃあじゃあ『これから一年頑張ります!』って意気込むやつ……」
「それは抱負、いい加減にしなさい!」
しんのすけは色々と出して惚けたが、最後はオルガマリーに叱られた。
「ふふっ」
すると後ろから笑う声が聞こえてきた。みんなが振り返ると、マシュが可笑しそうに笑っていた。どうやらしんのすけ達のコントが面白かった様だ。
「マシュお姉さん元気出た?」
「! はい、ありがとうございます。しんちゃん」
「いや〜それほどでも〜」
しんのすけはマシュの元気が出たことを喜んだ。狙ってやっていたのだろう。すると、ロマンからもフォローが入る。
『マシュは責任感強いから気にしてたんだね。でもそこは一朝一夕でいく話じゃないと思うよ? だって宝具だし。英霊の奥の手を1日2日で使えちゃったら、それこそサーヴァントたちの面目が立たないと言うか」
ロマンはそう言うが、その言葉にキャスターが反論する。
「あ? そんなのすぐに使えるに決まってんじゃねぇか。英霊と宝具は同じもんなんだから。お嬢ちゃんがサーヴァントとして戦えるのなら、もうその時点で宝具は使えるんだよ。なのに使えないってコトぁ、単に魔力が詰まってるだけだ。なんつーの、やる気? いや弾け具合? とにかく、大声をあげる練習をしてないだけだぞ?」
「ほうほう、つまりオラの母ちゃんみたいにマシュお姉さんはお便秘中ってこと?」
「便秘って……、私はなった事ないからどんな感じかわからないなぁ」
「おっ! いい例えだなしんのすけ! つまり、そういうこった。腹のなかで溜まってるのを出す方法を知ればすぐに使える様になるってことだ」
そうしてキャスターがマシュの状況を説明している時、しんのすけはアクション仮面にの所に行き、結局説明のなかった宝具について聞いた。
「ね〜ね〜、アクション仮面。結局宝具ってなに?」
「ん? そうだね……、宝具っていうのは簡単に言えば物質化した奇跡かな。英霊の伝承をもとにしてできた物だよ。私の場合は、ちょっと違うけどアクションビームかな」
「ほうほーう。オラも欲しいオラも欲しい!」
「普通の人間は持てないけれど、しんのすけ君はたくさんの伝説を作ったからもしかしたらサーヴァントになって宝具を持つかもしれないね」
「おお〜! オラの宝具どんなのかな〜」
「しんのすけならば面白いものかもしれないな」
又兵衛がしんのすけの宝具は面白いだろうと予測する。
そうしてしんのすけが宝具について考えている間、マシュ達の方で特訓が始まったらしく、オルガマリーの周りに龍牙兵が集まり出した。
「今回はわし達に出来ることは見守るだけだ。だから離れた所で見学しておこうか」
又兵衛はそういって少し離れた所に移動し、しんのすけと共に馬を降りて、瓦礫の上に腰を下ろす。シロはしんのすけの膝の上に座った。アクション仮面も又兵衛の横に腰を下ろし、マシュ達を見守る事にした様だ。
☆★☆★☆
一方マシュはキャスターがオルガマリーに施した厄寄せのルーンによって集められた龍牙兵から立香達を守るために必死になっていた。
「宝具は英霊の本能だからよ。理性があると出にくいんだよ。なーんで、お嬢ちゃんにはまず精も棍も使い果たしてもらうって寸法さ! 冴えてるな、オレ!」
「もうこれ治療って言わないよ! 荒療治って言うんだよ!」
「こんなにいっぱい来るなんて……! 本当に精も棍も尽きますよ!」
「そんなことよりわたしのほうに敵がきてるわよ⁉︎ 早くなんとかして!」
マシュ達がそれぞれ言っている間に、マシュが攻撃を仕掛けてどんどん敵を減らしていく。そして、襲ってきた敵を全て倒しきると、マシュは息も絶え絶えだ。
「限界、です______これ以上の連続戦闘、は______すみません、キャスター、さん」
マシュはこれ以上無理だとキャスターに言う。遠くで見ていたしんのすけはマシュが敵をアクション仮面の様に倒していく姿に興奮していた。
「おお〜! マシュお姉さんすごいゾ! いっぱいいた敵をガキーン! バゴーン! ってやっつけたのはかっこよかったゾ〜!」
「えへへ、ありがとう______ございます、しんちゃん。でも、もう限界、です。こういった根性論ではなく、きちんと理屈にそった教授、を______」
「______分かってねえなあ。こいつは見込み違いかねぇ。まあいいか、そん時はそん時だ。んじゃ、次の相手はオレだ。味方だからって遠慮しなくていいぞ。俺も遠慮なく立香を殺すから」
「っ……⁉︎」
キャスターはマシュ達にとんでもないことをのたまう。マシュが守らなければ立香を殺すと。それに対して反発したのはオルガマリーと離れた所で聞いてたしんのすけだ。
「何言ってるの貴方、正気⁉︎ この訓練に立香は関係ないでしょう⁉︎」
「兄貴! 殺すなんて言っちゃダメだゾ! 人を殺したら犯罪なんだゾ!」
オルガマリーとしんのすけの言葉に、キャスターは何を言ってるんだといった風に言葉を返す。
「サーヴァントの問題はマスターの問題だ。運命共同体って言っただろ? オレ。あとしんのすけ、それはお前の生きていた場所でのルールであってこんな世界じゃ通用しない。よく覚えとけ。その考えを持ち続けてるといつか死ぬぞ? お前もそうだぞ、立香。お嬢ちゃんが立たなくなった時が
キャスターの言葉を聞いて、何も言えなくなるオルガマリー。その言葉を聞いて、マシュは限界のきた体に鞭を打って立香の前に出る。
「マスター……、下がって、ください……! わたしは______先輩の足手まといには、なりませんから……!」
「そうこなくっちゃな。んじゃまあ、マトモなサーヴァント戦といきますか!」
マシュは決意を示すように、そう言い切り、それを見たキャスターは満足したように頷き、戦闘の開始を宣言した。
☆★☆★☆
一方しんのすけはキャスターの言い分に言い返そうとしたが、共感するところがあったのか、又兵衛が止める。
「おじさん! なんで止めるの⁉︎」
「しんのすけ。わしも侍だからな、たくさんの人を殺めてきた。だからあの者の言うことも分かるところがある。初めてしんのすけに未来のことを聞いた時は、殺し合いのない世界と聞き、いい世界だと思ったが、ここは違う。ここは戦国時代と一緒だ。相手を殺さなければ自分が殺される。ここはそういう所なんだ」
「でも……でも……」
しんのすけは言葉を出そうとしたが、言葉が思いつかなかった。だが、又兵衛の言葉はまだ終わっていなかった。
「だがなしんのすけ。お前には人を惹きつける才能がある。わしの時だって大蔵井高虎の首を取ろうとした時に殺すなと説得したではないか。わしはしんのすけの言葉で首を取ることを諦めたんだぞ? 最後に言ったように、この形見の刀を人殺しに使わなくてよかったと今でも思っている。そしてしんのすけには悪に打ち勝つ力がある。誰かが悪のせいで死にそうな時に助けてやれる力だ。優しい心を持っているしんのすけが、その心を大事にする限りその力はどんどん強くなる。だから絶対にその心をなくすな。わしも協力する」
「もちろんわたしも協力するよしんのすけ君。君は正義の心をしっかり持っている良い子だ。わたしのピンチを何度もお助けしてくれたしね」
「オマタのおじさん……アクション仮面……。……よ〜し! オラおじさんとアクション仮面の言ったこと絶対忘れない! 困ってる人がいたらお助けするものだって父ちゃんと母ちゃんも言ってた!」
しんのすけがまた新たな決意をしている時、後ろから強い光が放たれた。しんのすけが振り返るとマシュの前に巨大な光の盾が出現してその前にいる炎の巨人の攻撃を防いでいた。大盾から発する光はとても優しく、全てから守ってくれるような錯覚を覚える。
しばらくすると、炎の巨人光の盾に負けて、消滅した。
「どうやらマシュも宝具が使えるようになったようだな。さて、向こうに向かうか」
又兵衛はしんのすけとともに馬に乗り、アクション仮面とシロと共に宝具が使えたことを喜んでいるマシュ達の元へ向かって行った。
○●○●○
しんのすけがマシュ達のところへ戻ってくると、マシュと立花が興奮したようにしんのすけ達に宝具のことを教えてくれた。
「しんちゃん! マシュが宝具解放できたよ!」
「所長がロード・カルデアスっていう名前をつけてくださいました!」
「うっほほーい! マシュお姉さんも立香お姉さんも嬉しそうでオラまで嬉しくなっちゃうゾ〜!」
しんのすけもマシュ達につられて嬉しくなったようでみんなで笑いあっている。
それを見たキャスターや又兵衛達は微笑ましそうにみている。
「それじゃ、先輩として宝具のイロハをもっと教えてやるよ。準備はいいか? マシュ、立香」
「「はい!」」
「2人とも頑張って〜」
マシュと立香が決意をキャスターの特訓を終える頃には、すっかり自信を持っているのがうかがえた。途中でしんのすけが乱入しようとしたが、又兵衛やアクション仮面がその度に止めた。
そして、特訓を終え、しんのすけ一行は大聖杯のある洞窟へと歩みを進める。
○●○●○
大聖杯のある洞窟にたどり着くと、キャスターが注意を促してくる。
「大聖杯はこの奥だ。ちぃとばかり入り組んでるんで、はぐれないようにな」
「天然の洞窟……のように見えますが、これも元から冬木にあったものですか?」
「でしょうね。これは半分天然、半分人口よ。魔術師が長い年月をかけて拡げた地下工房です。それより、キャスターのサーヴァント。大事なことを確認していなかったのだけど。セイバーのサーヴァントの真名は知っているの? 何度か戦っているような口ぶりだったけど」
オルガマリーの疑問にキャスターは肯定した。
「ああ、知っている。ヤツの宝具を食らえば誰だって真名……その状態に突き当たるからな。他のサーヴァントが倒されたのも、ヤツの宝具があまりにも強力だったからだ」
「強力な宝具ってどんなの〜? 金金みたいなやつ?」
「金金が何かはしらねぇが、そのセイバーの宝具は王を選定する岩の剣のふた振り目。お前さん達の時代において最も有名な聖剣」
「その名は、」
キャスターがセイバーの宝具を言おうとすると、別の声が説明の続きを言い出した。
「
「っ⁉︎」
急に聞き覚えのない声が聞こえて来て驚き、声のする方へ視線を向けると、そこには弓を片手に持つサーヴァントらしき黒い人影が存在していた。
「アーチャーのサーヴァント……!」
「おう、言ってるそばから信奉者の登場だ。相変わらず聖剣使い守ってんのか、テメェは」
「……ふん。信奉者になった覚えはないがね。つまらん来客を追い返す程度の仕事はするさ」
「お兄さんだれ?」
「私はアーチャーのサーヴァントだ。今は名乗ることもない」
「そのあっちゃんのお兄さんは何してるの? いきなり出て来て仲間になりたかったの? 仲間になりたそうな目でこちらを見ているってやつ?」
「アーチャーだ。私は邪魔者を排除しに来たのだよ」
「警部! 怪しい奴はあっちに行きやした! 今ならまだ間に合いますぜ」
しんのすけはドラマによくいそうな部下口調で洞窟の入り口を指差してそう言う。
「何? それでは向かうとしようか協力感謝する」
そう言って入り口の方に行こうとしたところで、ふざけている事に気付いてアーチャーは赤面した。
「ブハハハハ! お前っ、5歳児にっ、手玉に取られてやんの!」
「うるさい! つい昔のあいつとのやりとりのせいでくせになっているだけだ!」
アーチャーはあいつとのやりとりと言った後に、ハッとなってしんのすけの方を見た。急に見られたしんのすけは
「なぁにぃオラの魅力に惚れちゃった〜? でもオラは美人なおねいさんのものだからお兄さんのものにはなれないゾ!」
とボケ全開の絶好調だった。しかしそれを聞いたアーチャーは納得したような顔をして、こう言った。
「君はもしかして、野原しんのすけか?」
と。
と言うわけで、アーチャー登場でした。
さて、しんのすけとの関係はなんでしょうか(棒読み)
まあ、もう皆さんだいたい想像つきますよねぇ……皆さんが思った事でだいたいあってると思います。私は絶対2人は将来面識あると思ってますし。
作中に出て来た又兵衛の考えは全て捏造です。原作と違ってもお許しください。
次話も早く出せたらいいなぁ。とりあえずキャラの空気化をなんとかしなきゃ。しんちゃんのボキャブラリーも補充しないと……。
やる事がいっぱいだゾ!
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