クレヨンしんちゃん〜嵐を呼ぶ人類お助け大作戦!〜 作:ちりめん山椒
その後管制室に着き、しんのすけと立香は一番前の席に座り、オルガマリーの説明が始まった。しかし、立香は先の後遺症からか説明の途中に居眠りをしてしまい、しんのすけもつられて立香の太ももを枕に寝てしまった。これを見たオルガマリーはキレた。立香としんのすけを管制室からつまみ出し他のマスター候補者達に先ほどのことはなかったかのように説明を再開する。ドアの向こうから「あぁ〜んひどぅ〜い♥︎」という声が聞こえて来たが全力で無視した。
マシュは追い出された立香達の後を追った管制室を後にした。
「先輩、しんちゃん、大丈夫ですか?」
「あ、マシュ。……私達もしかして」
「ええ先輩、しんちゃん共々ぐっすり眠ってましたよ」
「あちゃ〜やっちゃった。これは所長さんに目をつけられたかなぁ…」
「大丈夫だゾ。お姉さんはオラがお守りするゾ!」
「ふふ、ありがとね、しんちゃん」
「エヘヘ〜、オラにドーンとまっかせなさい!」
しんのすけは照れながらも立香を守ると宣言。そんな姿を微笑ましげに見る立香とマシュ。そしてマシュが立香をあてがわれた部屋へ連れて行くというのでしんのすけもついて行くことに。
○●○●○
「着きました。ここが先輩のマイルームです!」
しばらく談笑しながら歩いているとマシュが1つの扉の前で立ち止まった。どうやらこの扉の先が、立香にあてがわれた部屋のようだ。
「では、私はこれから作戦に参加するチームに戻りますので、ここで一旦お別れです。それでは」
マシュはそう言って来た道を戻って行く。その後ろから立香としんのすけは声をかけ、マシュは振り返る。
「マシュお姉さん!色々ありがと〜」
「マシュ、ありがとね色々と。…それと、頑張ってね」
しんのすけと立香は色々お世話になった事に対してお礼を言う。それを聞いたマシュは少し恥ずかしそうにはにかみながら会釈をしてまた歩き出した。
「それじゃ、お姉さん。オラも父ちゃんと母ちゃんやひまが心配してるだろうから行くゾ。お達者で〜」
そしてしんちゃんも背負ってるリュックを落ちないようにしっかり背負い直し、立香に挨拶しながらマシュと同じ道を戻って行く。
「しんちゃんもまたね!」
立香もしんのすけのキャラに慣れて来たのか幼稚園児がいいそうにない別れの挨拶を言ったしんのすけの事はスルーして別れの挨拶を返し、自分も部屋に入っていった。
▼藤丸 立香 の スルースキル が 上がった :D+
○●○●○
立香と別れたしんのすけはマシュからひろし達のいる部屋を聞くのを忘れていたことを思い出した。仕方がないので前にいた管制室に戻ることに決め、マシュと同じ方向へ歩き出した。
そして、管制室にまた入ると中は何かの準備をしているのか職員達が慌ただしく動き回っている。その中心で見覚えのある銀髪の少女を見つけ、しんのすけはその場所まで近づき、背中をよじ登る。銀髪の少女は急に背中を登ってくる重さに驚くが怖くて体が硬直してしまい、振り向くことができなくなっていた。しんのすけは肩まで登ると、少女の耳に息を吹きかけた。
「フゥ〜♥︎」
「ひゃんっ⁉︎」
突然耳に息を吹きかけられた銀髪の少女、オルガマリーはらしくもない可愛い悲鳴をあげた。今の事で体の硬直が解けたオルガマリーはすぐさま後ろを振り返る。しかし、後ろには誰もいない。
「ほっほーい!お姉さんこっちこっち〜」
今度は後ろから声が聞こえてくる。なんとも聞き覚えのある声だ。もしかしてと思い、首だけ後ろ振り返ると……しんのすけが唇をこちらに近づけていた。
「??!?!!!?!!?!」
それを間近で見たオルガマリーは声にならない悲鳴をあげしんのすけを振り解いた。しんのすけは身軽に空中で一回転して着地。それを見た職員達はみんな手を止めて唖然としていた。それはそうだろう、オルガマリーの「ひゃんっ⁉︎」なんて声を聞いたのは職員達やマスター候補共々聞いたことがないのだから。
「あ、貴方!なんでここにいるのよ⁉︎それにわ、私の背中に登るなんて⁉︎」
『『『『怒るとこそっちなんだ…』』』』
この場にいる職員の気持ちが1つになった瞬間である。
「いや〜お姉さん緊張してるようだったのでオラがほぐしてあげようと思って〜♥︎」
「余計なお世話よ!…それで、何故ここにいるのかしら?」
オルガマリーは再度しんのすけに問う。
「そうそう、オラ父ちゃん達の部屋知らないから戻って来たんだゾ」
しんのすけはここに来た理由を正直に述べる。
「ああ、そういえば言ってなかったわね。貴方達の部屋は貴方と一緒に居眠りしてたバカの隣よ」
「えぇ〜!立香お姉さんの隣〜?オラここまで来たの家買い損のくたびれスーモだぞ…」
「それを言うなら骨折り損のくたびれ儲けよ!…はぁ、胃が痛い」
オルガマリーはしんのすけの相手をしていると胃が痛くなって来た。
しんのすけはオルガマリーから部屋を聞き、また来た道を戻ろうとする。
「それじゃあオラは父ちゃん達のところに戻るゾ」
「はいはい、もう行きなさい。貴方は今のところ作戦参加はないわ。部屋でおとなしくしてることね」
「ほいほーい、…お?」
しんのすけはそう言うオルガマリーに何故か嫌な予感がした。そう、これはかつて映画の中に行った時、1人の少女と交わした約束が叶えられないことだとわかった時のような、形容しがたい嫌な予感が。
「どうしたのよ?急に立ち止まって」
急に動かなくなったしんのすけに対しオルガマリーま怪訝な表情でしんのすけに問う。
しんのすけは質問されたことに気付き、とっさに背負っているリュックからあるトランプを取り出す。
「オルガマリーお姉さん、このトランプを一枚あげるゾ。ピンチに陥った時にこのカードにお願い事を頭で考えながら『スゲーナスゴイデス』って唱えるんだゾ!絶対だゾ!」
しんのすけはそう言って、オルガマリーにトランプを押し付ける。それはかつて異世界からの侵略者に対抗するため使った、スゲーナスゴイデスのトランプだ。それは戦いの末使い切ったのだが、メモリ・ミモリ姫がしんのすけに新たにお礼として与えたものであった。いつもなら何をバカなことを言っているのかと、取りあわなかっただろう。しかし、雰囲気の変わったしんのすけの鬼気迫る表情に何かを感じたのか、オルガマリーは素直に受け取った。
「このトランプを持って願い事を考えながら『スゲーナスゴイデス』って唱えればいいのね?よく分からないけど頭の片隅には留めておくわ」
「絶対、絶対だゾ!」
しんのすけは何度も釘をさす。
「わかったから早く行きなさい。これから忙しくなるのよ」
オルガマリーもわかったと返事を返しながらしんのすけに部屋に行くように言う。しんのすけはオルガマリーが了承してくれたことが分かると安堵の息を戻し、いつもの雰囲気に戻る。
「よかったゾ。それじゃ、そゆことで〜」
しんのすけ別れのセリフを言いながら管制室から出て行く。それでも先ほどの不安は少しだけ残っているままだった。
○●○●○
所変わってひろし達はカルデアの登録が終わった後、黒服の男に案内された部屋でしんのすけが来るのを待っていた。
「それにしてもしんのすけの奴おそいな〜。黒服の人の話ならもう来ててもおかしくないのに」
「オルガマリーさんと一緒に居るんだし大丈夫じゃない?あの人ここの所長だって言ってたし。でも確かに遅いわね」
ひろし達がここの部屋に来てからすでに1時間は経っていた。黒服の人からは計測は10分もあれば終わり、その後の説明会も20分ほどで終わると聞いていたひろし達は30分もオーバーしていることに対して、しんのすけに何かあったんじゃないかと不安になる。実際は部屋の前まで来ていたのだが、素通りして管制室に行ったりして遅れているなど、部屋にずっといるひろし達には知る由もない。
そんな話をしていると、噂をすればなんとやら、ドアの開く音が聞こえて振り返るとしんのすけが部屋に入って来たところだった。
「「しんのすけ(しんちゃん)!」」
「ほっほーい!おかえり〜」
「それを言うならただいまだろ…。たく、心配したんだぞ?どこほっつき歩いてたんだよ」
「んーとねぇ、説明会の後に立香お姉さんとこの部屋の隣まで来たんだけど、部屋どこか聞いてなかったから管制室まで戻ってたんだゾ!」
「ほんとお前はおっちょこちょいだなぁ。まあ何もなくてよかったよ」
ひろし達はしんのすけが無事でよかったと安堵する。
するとシロがしんのすけのそばまでやって来て顔をペロペロと舐める。シロもしんのすけの事が心配だったようだ。
「アン!アン!」
「おお〜シロ〜。よしよしいい子いい子。お、そういえばシロ、お前と仲良くなれそうな動物がいたゾ。あとで会いに行こう!」
「アン!」
しんのすけはフォウのことを思い出し、シロに紹介しようと考える。
「たいやい!」
そんなしんのすけとシロの元にひまわりがやって来た。
「お〜ひまわりも元気ですな。お兄ちゃんが居なくて寂しかったかひま〜?」
「たいあう〜。うう〜」
「そうかそうか心配だったか。ひまもいい子いい子〜」
「エヘヘェ」
しんのすけとひまわりの一連の流れを見て居たひろしとみさえは微笑ましそうに笑っている。これで野原一家再集結である。
「それじゃあもうこの後俺たちは何もする事がないみたいだし、今日はもう寝るか。俺時差ぼけとか登山したりして眠いんだよ」
「ひまわりももう眠たそうな顔してるし、寝ましょうか」
カルデアに行くために標高6.000mの山を登山して来たひろし達は結構疲れていた。しんのすけを待ってる間に寝れば良かっただろうと思うかもしれないが、しんのすけが心配だったため、寝る事は出来なかった。
しんのすけが帰って来た今、疲れがどっと押し寄せて来て同時に睡魔もやって来たというわけだ。
「それじゃあ電気消すぞ。おやすみ」
「おやすみなさいあなた」
「たたちゅなたい」
「おやすみ〜」
「アン」
こうして野原一家のカルデアでの初日は終わりを告げ____________________________
ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアン
__________________________なかった。
急に大きな爆発音が聞こえ、ひろし達は飛び起きた。
「なんだなんだ⁉︎今の爆音は⁉︎」
「あなた!とりあえず廊下に出ましょ!誰かいるかもしれないわ!」
「そ、そうだな!みさえ、ひまわり、しんのすけ、シロ!俺から離れるなよ!」
みさえはひまわりを抱き、ひろしがそう言って廊下に出た後を追う。
廊下に出ると、隣の部屋から立香と薄い桜色の髪を後ろで束ねてポニーテールのようにしている男が出て来た。
「あっ!立香お姉さん!」
「しんちゃん!すごい爆発音が聞こえたけど大丈夫⁉︎」
「オラ達は何ともないゾ!それよりさっきの音は何なの?」
「私達にも分からない。けれど管制室の方から聞こえて来たわ。向こうに行けば何かわかるかも!」
しんのすけと立香だけで話しているのでポニーテール男とヒロシ達は置いてけぼりである。
「なあしんのすけ。この人がさっき言ってた立花お姉さんか?」
「そうだゾ。このお姉さんが立香お姉さんだゾ」
「これはどうも。しんのすけの父の野原ひろしです。こっちは妻のみさえと娘のひまわり、でペットのシロです。しんのすけがお世話になっております」
「い、いえ、こちらこそ。藤丸立香ですよろしく」
「そんなことしてる場合じゃないでしょうが!」
げ ん
こ つ
「いてて、そうだった!早く管制室に行こう!」
みさえにげんこつを落とされ当初の目的を思い出したひ、ここにいる人共に急いで管制室に向かう。そしてさりげなくポニーテール男とも自己紹介しあい、ロマニ・アーキマンという名前だとわかった。本人はロマンと呼んでくれと言っていた。
そしてロマンの先導の元、管制室の前に到着した。すぐに扉を開け中に入ると………管制室は瓦礫と肉の破片と炎の空間へと豹変していた。
今回の話を見てわかった方もいると思いますが…はい、スゲーナスゴイデスのトランプがチート化します。これしか所長救う方法思いつかなかったんです!許してください何でもしますから。ほらそこ、「これじゃ聖杯じゃん」とか「トランプで所長にマスター適性持たせればいいじゃん」とか言わない!
ただし、トランプのチート化は今回だけにしたいと思っています。