クレヨンしんちゃん〜嵐を呼ぶ人類お助け大作戦!〜   作:ちりめん山椒

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5年ぶりくらいかな。


オルガマリーお姉さん、だゾ

「いや、まさか君達がここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。48人目と49人目のマスター適正者。全く見込みのない子供、ましてや片方は未だ乳臭い餓鬼だからと、見逃してあげたのが私の失態だよ」

 

その言葉とともにしんのすけ達の前に現れたのは、モスグリーンのタキシードとシルクハットを身に纏う

 

「あっ! ばくはつもみあげ!」「レフ教授⁉︎」

 

レフ・ライノールだった。

 

『レフ___⁉︎ レフ教授だって⁉︎ 彼がそこにいるのか⁉︎」

 

ロマンはその場にいるはずのない人物の名前が出た事に驚いている。決してばくはつもみあげからレフを連想したわけではない。決してない。

 

「うん? その声はロマニ君かな? 君も生き残ってしまったのか。直ぐに管制室に来てほしいと言ったのに、私の指示を聞かなかったんだね」

 

レフ教授は穏やかな顔から一変、歪んだ表情を見せた。

 

「これだから劣等種は嫌いなんだ。言われたことを守ることもできないのかね?」

 

『なっ⁉︎』

 

「人間というものはどうしてこう、定められた運命からズレたがるんだい?」

 

「_____! マスター、下がって……下がってください! あの人は危険です……あれは、私たちの知っているレフ教授ではありません!」

 

マシュがレフから何かを感じ取ったのか、立香に下がるように促す。

しんのすけもアクション仮面に抱きかかえられて後方に下がった。しかし、下がるしんのすけたちとは逆に、前へ前へと歩いていく人影がある。カルデアの所長にしてレフへ1番の信頼を寄せていた人物……オルガマリーだ。

 

「レフ……ああ、レフ、レフ、生きていたのねレフ!」

 

彼女を視界に入れたレフは、笑顔を彼女に向ける。

 

「やぁオルガ。君も生き残ってしまったんだね。まったく……確実に殺せるように足元に爆弾を用意してやったと言うのに」

 

言い放つ表情は不愉快だと物語っていた。まるで踏み潰した虫が、足を上げるとピンピンして歩き回っていたのを見たときのように、期待はずれだと言いたげな貌。

 

「苦しまないように善意で足元に仕掛けてあげたのになぜ生きているんだい? いや、違うか。肉体を失いこんなところでも彷徨い続けているとは、哀れだな」

 

だがレフ教授は哀れみをその目に浮かべ、オルガマリーを見やる。

 

「え…? ねぇレフ、どういうこと…なの? こんなところから早く帰りましょう? どうしてそんな目を向けるの? ねぇ、レフ!」

 

オルガマリーはフラフラとレフの元へと歩を進める。レフ教授はニタニタと笑いながらその様子を眺めている。

 

「そんなに知りたいなら教えてあげよう。君は不思議に思わなかったのかね? マスター適性のない君がレイシフト先にいる事、コフィンにも入っていない君がなぜこの場にいるのか。答えは簡単だ」

 

告げるレフ教授は大仰に両手を広げる。その姿は罪を告発する宣告者か、はたまた己の成果を誇示する(つわもの)か。

 

「君はもう死んでいるのだよ。ご丁寧にもトリスメギストスは、君の残留思念をこの地に転移させてしまった。おめでとう、あんなに欲していたレイシフト適性を手に入れたんだ! 肉体がなくなる事によってね! 死んでからっていうのが皮肉だがね」

 

「だから君はもうカルデアにも戻れない。戻った時点で君のその意識は消滅してしまうのだからね。これほど面白いこともない!」

 

顔を盛大に歪め狂気の笑みを浮かべる様はもはや人ではない。

 

「さて、そろそろ終わりにしようか。君達がどのように足掻こうが意味はない。この先の筋書きは既に確定している」

 

レフが指を弾くと背後の空間が歪み別の景色が覗く穴が開く。そこに広がるのは真っ赤に染まったカルデアスだ。まるでプロミネンスが渦巻く小さな太陽の如き様相を見せるカルデアスには人類の積み上げてきた文明の光は見当たらない。

 

「どうだいオルガ。これが君の宝物の成れの果てだ。後のこの星に人類の軌跡はく、滅亡は確定している!醜きモノは全て消え去るのだ!」

 

「これも全て君が原因だよアニマスフィアの末裔。お前たちがこの結末を齎した。いや、君の至らなさがといった方がいいか」

 

目の前にもたらされた現実にオルガマリーは情報を処理しきれない。ただ呆然と放たれた言葉を反芻していく。

 

「う、嘘よ…。私は失敗してない、私の責任じゃない、私は悪くない! どういう事!? 貴方は一体私のカルデアスに何をしたのよ!?」

 

「君の、ではないよ。全く、最後の最後まで目障りな小娘だ。だがそれも今日で終わりだ。私の慈悲に感謝するがいい」

 

そう言うレフは心底煩わしそうだった表情に喜色を浮かべる。すると先程まで2人しかいなかった場所に動く影が見えた。

 

「やい! このばくはつもみあげ! お姉さんには優しくしなきゃダメだって父ちゃん母ちゃんから教わらなかったのか!」

 

しんのすけである。しんのすけはオルガマリーを庇うようにレフとの間に割り込んだ。

 

「なんだ小僧。下賤で醜い存在に誠意を向けるなど反吐が出る。今までの屈辱の日々が終わったのだ。もう取り繕う必要もない」

 

「靴食の日々? おじさんそんなの食べてないでちゃんとしたもの食べた方がいいゾ…? 特にとーちゃんの靴なんて食べたら腹壊すどころじゃ済まないゾ!」

 

「言葉が通じんのか下等生物め! ええぃお前の相手などしてられるか!」

 

しんのすけに調子を崩されたレフはオルガマリーを見据える。するとどういうわけかオルガマリーの体が浮かび上がる。

 

「え…!? 体が何かに引っ張られて______!?」

 

「お? マリーお姉さんお空飛んでどこ行くの〜? オラもとびたーい!」

 

しんのすけは宙に浮くオルガマリーに届こうとジャンプを繰り返す。しかしオルガマリーの表情がこの状況が予想外である事を物語っている事に気づき焦りを感じる。その側でレフは邪悪な笑みを浮かべる。

 

「邪魔が入ったがまぁいい。まずはオルガ、君からだ。君を殺すことなど容易い事だがそれでは芸がない。ならば最後の選別として望みを叶えてやろうとおもってな」

 

オルガマリーは吸い寄せられるようにカルデアの方へ、正確にはカルデアスへ向かっていく。

 

「______君の宝物とやらに触れるといい。私からの最後の贈り物だよ」

 

「______!? や、やめてよレフ…。カルデアスに触れる? 高密度の情報体よ? 次元の違う領域なのよ?」

 

「ああそうだ。ブラックホールと何も変わらない。この状態からすると太陽の方が正しいかな? どちらにせよ人間が触れれば分子レベルまで分解される地獄の具現さ。遠慮なく無限の死を味わい続けたまえ」

 

話している間にもオルガマリーの体…いや魂はカルデアスへと引き寄せられていく。レフの思惑を聞いたオルガマリーは必死に逃れようと体を捩るが状況は変わらない。

 

「いや、いやよ! わた、私はまだ死にたくない! だって______誰もまだ私を褒めてくれない! 認めてくれてない! 私はまだ何も成し遂げてない! 誰も評価してくれなかった! みんな私を嫌ってた!」

 

「やだやだやだやだ! 生まれてから一度も、誰にも認めて貰えたことなんて無かったのに______!」

 

オルガマリーの取り乱す様を眺めるレフの表情は語るまでもないだろう。立香やマシュ達が動き出そうとしているがとても間に合う距離ではない。そうしてオルガマリーがカルデアスに触れる瞬間、しんのすけの声が響く。

 

「ならオラが認めるゾ! マリーお姉さんは頑張ってるってオラが! スゲーナスゴイデス!!! お姉さんを助けて!」

 

しんのすけの声に呼応してスゲーナスゴイデスのトランプが光を放つ。するとオルガマリーの体が光の球体へと形を変えていく。そしてオルガマリーはカルデアスへと引っ張られる力とは別の引力を感じ、しんのすけの元へと引っ張られる感覚に襲われる。拮抗していた引力は徐々にしんのすけの方へと傾いていき、オルガマリーはしんのすけの元へと飛んでいく。そしてオルガマリーはしんのすけの______左手に持つシリマルダシに吸い込まれていった。

 

 




お久しぶりです。久しぶりに残ってたデータに加筆してみました。

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