とあるひねくれ者は悲嘆に暮れる。   作:ねむたい人

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雪合戦回。でも生徒会の仕事中心。

前回の白髪頭もそうなんですけど、今回はオリキャラである書記と話すことが多いので、タグ付けました。


ひねくれ者は雪が苦手。

 前世に、一人だけ。一人だけ、私を親友と呼んでくる馬鹿女が居た。

 今思えば、あいつと出会ったのは雪の降る日だったと思う。

 

「……寒い」

「雪降ると君、本当に死にそうな顔になるよね」

 

 

 ―――まぁ、雪なんざ大嫌いだけどな!!

 

 

 やぁ、影宮桂馬だ。現在の状態?凍えて死にそうだぞ。炬燵に入っている引きこもり共を引き摺り出して、思いっきり殴りたいくらいに。

 寒いのは嫌いだが、割と耐えられる。しかし、雪が降るとなると駄目だ。寒すぎて死ぬぞこれ。マジであの雪全部燃やして溶かしてやりたい。某道民とか、良くもまぁ楽しげに雪遊びやらスキーやら出来るものだ。本気で尊敬する。

 そして、隣で薄着の癖に平気そうな顔をしているのは、雲雀恭弥。何でこいつ平気なの。化け物なの。

 

「はぁ……何だってこんな時に、学校に……」

「文句言いつつ行くよね、君。サボれば良いのに」

「そりゃそうだ、私の仕事だからな」

 

 そりゃそうだ、優等生だもの。けいま。

 

 今私達が向かっているのは、並盛中学校。私は、かったるいが教師に呼び出されて生徒会関係の仕事をするために、雲雀恭弥は風紀の仕事をするために向かっている。調度日にちが重なったらしく、学校に向かっている途中で遭遇したので、一緒に行くことに。

 何群れてんだこいつ。それと日曜日にする風紀の仕事って何なんだ。

 正直、こいつが近くに居ると何かが起きそうで怖いんだよなぁ。本編に関わったりしないだろうな。

 

 とか思っていたが、何事も無く学校に到着した。……身構えていた私が馬鹿みたいじゃないか。全部日頃の行いが悪いお前のせいだ、死ね。

 

「では、私はこれで」

 

 無言で手を振る雲雀恭弥に「この野郎……!!クールぶっているつもりか……!?」と罵倒したい気持ちを抑え、にこやかに見送った後、私は教師に指定された場所へと急いだ。

 

 

 ああ、クソッ!早く炬燵という名の人類の大発明の元に帰りたいぞ!

 

 

 

 

 

 

 △▽△▽

 

 

 

 

 

 

 日曜日なんかに呼び出しやがって、と思いつつ指定された体育倉庫前に行くと、書記と生徒会顧問の教師が其処で待っていた。おい、私は真面目なので待ち合わせ時刻より20分前に来た筈なのだが。お前達は何故私より早く来ているんだ。

 

「!会長!おはようございます!!」

「お、おはよう……。その、少し早くないか?」

「会長を待たせない為に、早起きして来たんです!!」

「あ、ありがとう?」

 

 馬鹿だ。馬鹿が居る。

 テンションの高い馬鹿を尻目に、お前は何故なんだと思いながら顧問の方へ目を向ければ、苦笑しながら口を開いた。

 

「君って、僕達教師よりも早く来るからさぁ。寒空の下で待たせる訳にはいかないと思って」

「す、すみません。癖なもので……」

「いや、謝らないで良いんだよ。君は寧ろ、真面目すぎるくらいなんだ。少しは肩の力を抜いても良いんじゃないか?」

 

 別の意味での馬鹿も居るな。お人好しという馬鹿が。生徒会なんて使い倒してなんぼだろうに。

 今回は何の仕事だと問えば、学校近辺の雪かきらしい。本当に教師達の雑用だなぁ、生徒会は。面倒だしとてつもなく寒い。昼頃には帰って良いらしいが、本当に怠いわ。

 

「体育倉庫に道具が入ってるから、生徒会は学校の雪かきをお願い。無理しなくて良いからね。それじゃ、僕や他の先生達は学校を出て、通学路を担当するから」

「分かりました」

「了解です!」

 

 私は至って冷静に、書記は何が楽しいのか嬉しげに笑いながら返事をした。こいつ本当に落ち着きねぇな。

 顧問が去っていくのを確認し、体育倉庫に入ろうとしていると、既に書記がガサゴソと体育倉庫を漁っていた。こいつ、何でこんなに張り切ってんだ。

 

「会長!スコップです!!」

「ああ、ありがとう。書記」

「い、いえ!此方こそ、勿体無きお言葉!!」

 

 そんで、何でこいつは私を崇めるようなことを言うんだろうなぁ……。クラスメイトにも言えることだが、崇拝レベルだぞこれ。怖い。

 スコップを受け取り、先ずは移動開始。積もりに積もっている体育館付近から、雪かきをすることにした。雪が硬くなると滑るし、動き辛くなるので、通路を作るのだ。

 ……そうだ。次いでに、私への異常な崇拝の件のこと……聞いてみるか。

 

「……そう言えば、聞いたことがなかったな」

 

 良く喋る書記の話を聞きながら、然り気無く、自然な感じを装って、私は口を開いた。

 

「はい?」

「君達は何故私に、何というか……その、好意的なんだ?はっきり言って、少し過剰ではないかと思うのだが」

 

 困ったように聞けば、書記はニカリと歯を見せながら笑った。馬鹿っぽい笑顔だな。

 

「過剰じゃないですよ!会長が優しいから、皆会長に優しくするんです」

「いや、だが……」

「会長」

 

 ふと、書記が大人びたような、悟ったような笑みを浮かべた。

 先程の年相応の笑い方とは違う顔に、私は戸惑う。いや、何こいつ急にシリアスになってんの?

 

「貴方のように、誰にでも優しく、誰にでも嫌そうな顔をせずに居られる人は、極僅かなんです。人助けが何の下心も無しに出来る人なんて、そうそういないんです」

「…………」

「僕もクラスメイトの奴等も、それを知ってるから敬意を払うし、好意を言動で表すんです。けれど貴方は、そんな貴方を見た人達の心を救っている自覚なんて、無いんでしょうね」

 

 嬉しげに、だが反面、寂しげに。

 書記は、語り、笑った。その声は、自分達の好意は当たり前の物なのだと、訴えかけているようで……。

 

 ……、これから空気の読めないことを言う。

 

 

 ―――私、めちゃくちゃ自覚あったわ……。

 

 

 しかも下心ありきだったわ。私が無償の善意で働くなど有りえない。

「こいつらはこうしたら好感度上がるだろ」って考えながら、半ば癖のように行動しているので、あちこちで人の手助けをしていたのは認めよう。友人関係などの様々な相談に乗っていたことも認めよう。それを見ている奴等の半分は私への憧れの感情を、何割かはひねくれた感情を私に向けてきたが、正直計画通り過ぎて有頂天になって、調子こいて聖人君子みたいなことを口走っていたことも認めよう。

 

 だからと言って、ヤバイカルト教団のように崇拝するようなことか!? 私ならそんな奴、何考えてるのか分からないから怖くて逃げるわ!!だって何の下心も無しに行動する奴なんて信頼出来ないし!!

 

 結論、あいつらが異常なだけ。過剰な持ち上げや重たい好意って、当事者からするとマジ怖いだけだわ。同じことをしていたのに、前世ではこんなこと起こらなかったからなぁ……、本当に誤算だ……。

 ……そういや、クラスメイトの奴等が良い行動をした私の情報を交換し合っているという噂を聞いたことがある。されたことをただ嬉しげに語るだけらしいが。前世と違うのは、その点かもしれない。原因が分かるかもしらないから、明日情報収集しよう。

 

「……納得はしていないが、理由は分かった」

「そうですか!僕の説明でご理解いただき、」

「いや、だからと言ってそのように敬うのは止めてくれ。……私は敬われるような、そんな人間ではないから、困るんだ」

 

 苦笑しながら言えば、書記は「会長は敬うべき人間なのですが……分かりました。会長が困るのなら、少し自重しますね」と、至極真面目な表情で言った。……これ本気で言ってるのか?だとしたら怖いわ。近寄りたくない怪しい宗教団体の人間というか……。

 

「さて。雪かき、頑張ろうな」

「―――ハイ!」

 

 

 ……ちくしょう、平和で平凡だった前世に帰りたい……。

 

 

 

 

 

 

 

 △▽△▽

 

 

 

 

 

 

 ―――体育館付近。

 

 

 二人だけでも中々いけるものだ。朝早くからやった甲斐があり、昼前なのに結構片付いたと思う。こんな仕事を寄越しやがった教師共はくたばれば良いと思うよ。

 

「……っふー……、体力使いますね、これ」

「ああ。次は校舎側だが……その辺りは先生達がやってくれるだろう。十分働いたと思うし、少し休んで帰るか」

「ふぁい……」

 

 スコップを小さな雪山に立て掛け、その場に座る。濡れるし汚れるので、尻は付けないが。

 ……それにしても、大体10時頃から校庭が騒がしい気がする。子供が雪遊びに来ているのだろうと、内心「(働いている私への当て付けか?だから餓鬼は嫌いなんだ)」と思いつつ書記と笑いあったが、これは度が過ぎているのでは?絶対何か起きていそうだし、大人しくなるまで待機するか。

 ―――そう思っていたら、フラグだったらしい。

 

「……群れてる」

「!雲雀恭弥か。仕事は終わったのか?」

 

 何やら不穏な言葉が聞こえたので、咄嗟に話を逸らす。顔を上げれば、やはり雲雀恭弥だった。

 書記は引き攣った顔で縮こまっているので、私に任せろという意味を込めて笑いかけてやった後、雲雀恭弥へと視線を移した。

 

「まだ終わってないけど、何やら校庭から騒音が聞こえてね。風紀を乱している馬鹿達なら咬み殺そうかと思うんだけど、君も一緒にどうだい?」

「咬み殺すのを、か?確かに音はするが、子供が学校で遊んでいるだけじゃ……」

「じゃ、僕は行くから」

 

 こいつ、伝えたいことだけ伝えて背中向けやがった……!!ドロップキックかましてぇ……!!

 

「か、会長!もし本当に子供達だったら……!!」

 

 焦ったように、書記が縋るような視線で見てくる。お人好しだなぁ、この馬鹿。そんなクソガキ放っておけとは思ったが、此処で断るのは優等生じゃない、か……。面倒だが、仕方ないな。

 

「……分かった、行ってくる」

「会長……!!」

 

 ええい!その崇拝するような曇りなき目をやめろ!!拝むな!!ゾワゾワする!!

 仕方なく、一応何かがあった時の為にスコップを片手に、校庭へとダッシュで向かったのだが―――

 

「……何だ、この惨状は」

 

 

 ―――地面に倒れて眠っている巨大亀。

 

 ―――大量の足跡と、荒らされまくった雪。

 

 ―――巨大な雪玉に顔だけ覗かせている見覚えのありすぎる二名。何処ぞの野球少年と金髪のボスだと思われる。

 

 

 ……いや、本当……何だ、これ……?

 

 

 もしや、本編での関係か?うーむ。確か、雪合戦回でやたらとバトルを繰り広げていたような……。

 ……まぁ、終わったのなら良い。寧ろ怪我しなくて助かった。雲雀恭弥を捜すとしよう。

 きょろきょろと辺りを見渡せば、雲雀恭弥が沢田綱吉に絡んでいる現場を目撃した。チンピラか、あいつ。チンピラより厄介過ぎる奴だが。

 

「何をやっている、雲雀恭弥」

「!こ、この声は……!!」

「やぁ、来たの」

 

 パァッ!とほっとしたように振り返るのは、沢田綱吉。貴様、私を盾にする気か。

 雲雀恭弥は付いてきた私を見て、面白そうに笑う。その手に持っているのは何だ。……ラジコンカー、か?

 

「な、何で日曜日なのにヒバリさんと影宮君が学校に?」

「私は生徒会の仕事で雪かきをしていた」

 

 お前は風紀の仕事だろ?と視線を向ければ、雲雀恭弥はフッ、と不敵に笑った。……嫌な予感。

 

「折角の雪だ、雪合戦でもと思ってね。……と言っても、群れる標的に一方的にぶつけるんだけど」

 

「(何でこの人捕まんないのー!!?)」とでも言いたげに、ドン引きした表情を見せる沢田綱吉。顔が煩い。

 だが、その気持ちは良く分かる。こいつ、危険人物だもの。私だけじゃなく、平穏を生きる人々にとっては天敵なのではないだろうか。井戸端会議のおばちゃん達も雲雀恭弥を見つけると解散するし。

 

「此処であったのも何かの縁だ。今日は君を標的にしようかな」

 

 手元のラジコンはリボーンの形状記録カメレオンだったらしく、怯えたように姿を変えて雪玉の形に変化する。どうやら、雲雀恭弥は沢田綱吉をロックオンしたようだ。

 ……あ"ぁあ~っ!!放っておきたい!!空気のフリしたい!!だが―――だが、此処で友人(仮)の沢田綱吉を放っておくような優等生の影宮クンなんか居るか!!クソォ!!何で雲雀恭弥の幼馴染みなんぞになったんだ、私はァ!!

 

 ―――少し考えた後、私は両手でスコップを構えた。結構重いから木刀のように上手くいかないだろうし、出来るだけ素早く動けるように、振り回せるようにするには、両手で持った方が良い。

 ……痛いが……!!とてつもなく、泣くほどあいつの攻撃は痛いが……!!これも周りからの落胆と軽蔑の眼差しを防ぐためだ……!!あの眼差しはまだ純粋だった前世の幼少期の頃に味わったが、めちゃくちゃ屈辱的だったからな……!!

 

「駄目だ。今まで問題のある生徒なら目を瞑って来たが、一般生徒に手を出すなんて」

「か、影宮君……!!」

 

 尊敬の眼差しは嬉しいが、お前も死ぬ気モードとやらで戦えや。

 

「へぇ、優しいね。流石、生徒の模範となる生徒会長。……?」

「ん?どうした?」

「ねぇ。其処の子供、額に変な模様が付いてるけど」

 

 なん、だと……!?

 内心作品が違うだろ、と自分にツッコミを入れながら雲雀恭弥の視線の先を見れば、沢田綱吉の足元に知り合いの餓鬼が居た。そして、その中華な少女、イーピンの広い額に模様が―――って、それは不味いだろう!!

 

「はっ!?い、イーピン!?そうだ、ヒバリさんに惚れてるから……!!ば、爆発するー!!」

「なっ……!?沢田綱吉、それは本当か?」

「えっ?う、うん」

「貸してくれ!―――すまない、イーピンちゃん!」

 

 動揺する沢田綱吉へと口早に知らないフリを装い、イーピンを手に取る。

 そして―――

 

 

 ドォオオオオオンッッ!!

 

 

 空へと、打ち上げた。

 

 

「くっ、う……っ!」

「うわぁっ!?」

「……!」

 

 とてつもない音に耳鳴りが、爆風の衝撃で吹き飛ばされそうになるが、スコップを地面に突き刺し、地にしっかりと足を付け、次いでに飛ばされそうな沢田綱吉の首根っこを掴んだ。

 雲雀恭弥は涼しそうな顔で体勢を低くし、片腕で頭を守る仕草をしている。何だこいつ。

 

「……無事か、君達」

「う、うん……」

「……フン」

 

 漸く衝撃が弱まり、念のため生存確認。雲雀恭弥は不満そうに球状のカメレオンを放り捨てた。

 辺りを見渡せば、一面真っ白だった地面が、爆風でそれはもう真っ茶色に。う、うわぁ、人間凶器こえぇ……。

 

「何だか冷めた。風紀の仕事も溜まってるし、またね」

 

 そして、この反応である。私の、雲雀恭弥と殺し合いをするという覚悟を、貴様は……!!

 ……いや、別に怪我しなくて良いなら良いか。どうせ週に何度かやり合う羽目になるんだし。逃げたい。実際校内で鬼ごっこはしたことがあるが。

 雲雀恭弥が去った後、続々と山本やディーノだけでなく、見掛けなかった奴等も出てきた。散れ。

 

「ツナー!!無事かー!?」

「おーい!!此方は動けるようになったぞー!!」

「俺はまだまだいけるぞ!!うおおお、極限だー!!」

「やれやれね」

「ランボさんおうちに帰りたいー!」

「あっ!並盛中学校で一番演技力が高い桂兄だ!!」

「テメェ!ちゃんと10代目を守れたんだろうな!!」

「獄寺君!目が覚めたんだ」

「え、ええ。爆音で起きちゃいまして」

 

 一気に騒がしくなった雰囲気に、やはり沢田綱吉の周りは騒々しい奴が多いと再確認する。煩い奴等だ。

 今日も疲れたなぁ、本編の奴等と関わると何時も疲れる。早く家に帰りたい。

 

 

 しかし、今回も怪我が無くて良かった。毎日そんな感じだと良いのだがなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 ▽△▽△

 

 

 

 

 

 

「時折怪しいが、……やはり仲間のことを信じ、その場に最も適したことが出来るお前は……」

 

 

 呪われた赤ん坊は、静かに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




昨日ランキングを見た時、上位に上がってて、「だからお気に入りこんなに増えてたのか」と納得しながら小説漁ったりミラクルニキやったりしてました。ツインテールも良いですな。
皆さんありがとうございます。

……正直こんなに伸びるとは思ってなかったんで、新規投稿ボタンを押す手が震えました……。上位クラスの人達って余裕そうだけど、どんな気分で書いてるんだ……。彼等彼女等は作家のサーヴァントか何かなのか……。

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