とあるひねくれ者は悲嘆に暮れる。   作:ねむたい人

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入院回。長くなってしまったので分ける。
影宮の前世の好みの異性は、黒髪で真面目系の男。誠実な奴は割と好き。


ひねくれ者はお見舞いをする(前編)。

 ―――夢だ。

 

 

 夢を、見ている。しかも見覚えのある夢だ。

 

 相変わらず宙に浮いている身体に、拘束具と鎖が絡み付いている。……悪趣味な夢だ。

 気怠い頭を何とか周囲に向ければ、一度来た時と全く同じ世界。

 薄暗い、灰色の空、荒れた大地、本当に悪い所を上げればキリが無い場所だな。

 

「……おや」

「……お前、は……」

 

 

 ―――特徴的な髪型の人物が、何も無い場所から、ふと現れた。

 

 

 うわぁ、六道骸だ。登場人物まで同じとはな―――……んん?……何か、違和感が……。

 

「やはり、思っていた通り醜い空間だ。あいつが後継者として選んだだけのことはある」

「こう、けいしゃ……?」

 

 何だそれ。

 余裕たっぷりに笑う六道骸?にイラッとするが、次の言葉を促すように、気になった単語を復唱した。オラ吐けや貴様。

 

「醜悪な影の後継者。貴方は大勢の為に、誰かを犠牲に出来ますか?」

「…………」

 

 だから何だよそれ。中二病か?まぁ出来るが、それがどうした。

 それにしても、後継者。私、後を継ぐような物は何も無い筈なのだが。誰かと間違えてるんじゃないのか、こいつ。恥ずかしい奴だな。

 

「ヌフフ。何れ、この質問の意味が分かる日が来ますよ、こんなに醜い世界を持つ貴方なら、ね。では、その時まで―――」

 

 

 ……ああ!六道骸とは少し違う変な笑い方で思い出したぞ!この茄子頭―――初代霧の守護者だ!!

 

 

 

 

 

 

 ▽△▽△

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 ああ、最悪な目覚めだ。

 

「……何だ、あの夢」

 

 寝起きで掠れた声が、喉を震わせた。何だか喉が痛い。

 のそのそとベッドから上半身だけ起こし、暫くぼーっとする。

 それにしても、おかしな夢だった。またあの世界に来ていて、六道骸が来ていると思ったら、まさかの初代霧の守護者という。訳が分からない。本当に何で私の夢に現れたんだ。人のことを醜いだの何だの言いやがって、一応人並みくらいにはルックスは良い方だぞ。

 というか、後継者、後継者……。しかも影とか言ってたよな?思い当たる節なんて……、……あっ。

 

 

 ―――心当たりあるじゃないか。あの自称占い師兼預言者の白髪頭!

 

 

「…………」

 

 何だかイライラしてきたぞ。

 矢鱈と夢の中にひょっこり出てきてドヤ顔しながら預言するあの馬鹿、ボンゴレ関係者だったよな?一世(プリーモ)に仕えていたらしいし。

 実はあいつ、重要なポジションに居たんじゃないか?そして、私に何かを押し付けようとしている。私の夢に現れる理由も、それなら辻褄合うな。……しかし、影とか醜悪とか、何だか悪役っぽいぞ。どういう意味なのだろう。

 霧の守護者は意味深なことばかり言う癖に、直球に物事を伝えて来ないからなぁ。今度あの白髪頭野郎に呼ばれたら、ぶん殴って全部吐かせてやろうそうしよう。

 

「そんなに最悪な夢だったのか?」

「!!」

 

 

 突然の聞き覚えのある声に、ビクゥ!!と身体を揺らした。

 

 

 声の方向に顔を向ければ、二頭身の赤ん坊―――リボーンが、私の背後に居た。何時の間に。

 

「り、リボーン君。驚いたじゃないか」

「すまねぇな。本当は心臓が止まるくらい驚かせてやろうかと思ったんだが」

「謝る方向が違うぞ!」

 

 大きく溜め息を吐きながら、私は胸を撫で下ろす。いや、本当に驚いた。……素、バレてないだろうな?

 

「それより、リボーン君。勝手に人の部屋に上がるのは失礼だと思うのだが、間違っているか?」

「何も間違ってねぇぞ。ただ、俺が常識に捉われねぇ男なだけだ」

「ハードボイルドに言うのは構わんが、次はノックか何かしてから部屋に入ってくれ……それで、私に用事があるのか?」

 

 何で私がツッコミしないといかんのだ。その内俺に常識は通用しねぇ、とか言い出さないだろうな。

 聞けば、リボーンは何処か楽しげに笑った。

 

「お前、ポニーテールの女が好きなんだってな」

「……、……!?!?」

 

 え、何故、それを……!?

 

「お前の購入履歴を見れば、直ぐに分かることだ」

「ちょっと待て。……まさか、君、私の趣味を……」

「ああ、知ってるぞ」

 

 不味い不味い不味い!!!!

 

 そうだ、こいつは殺し屋だ!!独自の情報網なんて大量に持ってるに違いない!!

 ああ、クソッ!!折角優等生で真面目、しかし良い奴な印象を、築き上げてきたのに!!絶対にからかわれる!!人間は偏見の塊みたいな奴が多いからな!!それに、並中はやたらと噂が広まるのが早いし!!

 くっ、こいつに頼むのは癪に障るが―――!

 

「……その、周囲には黙っててくれないか?」

「良いぞ」

 

 よしっっ!!

 

 言質は取ったぞ!!良かった、本当に良かった!こいつは約束は守る男だろうからな!!雲雀恭弥に知られたりなんかしたら、秘蔵のギャルゲーや乙ゲー台無しになっていた所だ。あいつ、ああいうの嫌いそうだし。偏見?何のことだ??

 

「お前がポニーテールの女のエロ漫画を、そわそわしながら買っていたのも黙っててやる。思春期だからな、そういう物に手を出す年頃だろう」

「うぉおお!?な、何故、そこまで知っている!?」

 

 クソォッ!!生温い視線を向けやがって!!

 周囲をめちゃくちゃ警戒していたからな!!同級生にバレたらたまったもんじゃない!!

 因みに、母さんにも怪しまれないよう、ノートや、一般的に真面目と呼ばれる小説、文房具を買う時に、そういった物を紛れさせていた。店員の生温い視線が腹立ったが。

 

「そんなことより、下に女を待たせてるんだ。さっさと着替えやがれ」

「女……?」

 

 というか、こいつサラッと私の死活問題を、そんなことって言いやがったぞ。殴りたい。返り討ちだろうが。

 パジャマから着替えてリビングに下りれば、母さんと複数の誰かが話しているのが伺えた。

 誰だ、一体。私の安息の日……休日を脅かす輩は。時々雲雀恭弥がぶち壊すが。

 

「あ、漸く起きたようね、ケイちゃん。女の子を待たせちゃ駄目よ?」

「い、いえ!私達がいきなりお邪魔していたので、会長は悪くないです!」

「そうです!ハル達が悪いんです!!」

 

 ……待て。何故、何故此処に―――

 

「……ふむ。初めまして―――笹川京子に、緑中のお嬢さん」

 

 

 ―――笹川京子と三浦ハルがいるんだ!?

 

 

 うちの学校のマドンナだとか言われてる笹川京子は、まだ分かる。同じ学校だからな。だが、沢田綱吉が良くメールで愚痴ってくる三浦ハルは分からない。何故だ。

 しっかし、良いポニーテールをしている。それに、可愛らしい顔立ちの中に、鋭い美しさも混ざっている。見た目だけならぶっちゃけ好みだ。だが、中身は残念なんだよなぁ……。勿体ねぇ……。

 

「お、お嬢さん!?」

「フッ。女の扱い、分かってんじゃねぇか」

 

 私の呼び方に、驚愕の表情を浮かべる三浦ハル。リボーンは何処か楽しげだ。

 いや、ただ単純に言い方がそれ以外思いつかなかっただけなんだが……。緑中って知能が高い奴等が多いんだろ?まぁ、好印象のようだし、良いか。印象は良ければ良い程良いからな。

 

「……嫌だったか?」

「あ、いや、別に嫌な訳じゃないんですけど……」

 

 すまなそうに問い掛ければ、しおらしくますます頬を赤く染める三浦ハル。……うむ、見た目だけなら好みなんだがなぁ……喋ると残念だからなぁ、こいつ……。

 

「そ、それより!ハルの名前は三浦ハルです!お嬢さんじゃなくてハルって呼んでください!!」

「私は影宮桂馬だ、よろしく頼む。……では、三浦ハルと呼ばせていただこう」

「はひっ!?心の壁全開ですか!?」

 

 そうだよ。

 

「ハルちゃん、会長は誰にでもフルネーム呼びなの」

「は、はひ、そうなんですか……」

 

 ショックを受ける三浦ハルに、フォローを入れる笹川京子。笹川京子は噂通りの可愛らしい顔立ちだな。沢田綱吉がメールでしつこく報告してくるのが分かる。が、私の好みではない。

 

「すまんな、これは癖のようなものなんだ」

「いえ!気にしてないから大丈夫ですよ!!」

 

 元気良く返答する三浦ハル。煩い女だ。

 

「私のことは知ってるようだけど、私は笹川京子です。よろしくね」

「ああ、知っている。だが、礼儀として私も名乗ろう。……影宮桂馬だ。よろしく」

「あらあら、ケイちゃんにこんな可愛い女の子達の知り合いが出来るなんて……ママ、嬉しいわぁ」

「……母さん。恥ずかしいから、茶化すのは止めてくれ」

 

 柔らかく笑う笹川京子。背景に花が舞っているような雰囲気に、母親と同じ空気を感じた。能天気な女なのだろうことが伺える。……面倒な知り合いが増えた。

 

「それと、用事があるようだが……」

「あっ、そうです!」

「会長、ツナ君のお友達なんだよね?」

「あ、ああ」

 

 何だか真剣な顔になった二人に、ごくりと唾を飲む。

 ……何をする気だ、こいつら。面倒なことじゃ無いだろうな?頼むから巻き込まないでくれ。

 

「実は、ツナ君大怪我で入院していて…」

「今日はその報告も兼ねて来たんですけど……」

 

 

 私は、彼女達が紙袋から取り出した物に、目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 




原作読んでる人は分かると思うけど、アレです。主人公も巻き込みます。
因みに、ツナの携帯電話は例の亀にバッキバキに折られました。

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