それでも「良いよ良いよガンガンいこうぜ」と言って頂けるのなら、どうぞお進み下さい。
※修正しました。
―――もし、自分が漫画やアニメの世界に行けたなら、どうする?
私はどうもしない、が正解だと思ってる。
だって、それが危険に満ち溢れた世界だったらどうする?都合良く力をくれる神なんて存在しないし、都合良く特殊能力が目覚めるなんて、キャラクターじゃないんだから有り得ない。
犬死にするなんて真っ平ごめんだ、怪我することも論外だね。例え、誰かを見殺しすることになろうとも、自分が危険に晒されるくらいなら助けない方が良い。
だってそうだろう?何の力も無い、後ろ楯も無い一般人が、どうやって助けるのさ。現実的に考えてみてくれ、運良く逃げられても、顔を見られれば一発でアウトさ。助けた奴諸とも殺されて終わりだ。
だから私はどうもしない。手を差し伸べられても、叩き払うだけだ。
―――冷たい人間だ、人でなしだ。
いや、現実を見ていると言ってくれ。というか、精神がよっぽど幼くない限りは、多くの人が同じ意見だと思うよ?……いや、考えなしの馬鹿なら、そう考えるのも無理は無い、か。自分の力がどんなに非力か、分かっていないんだから。そんな馬鹿は嫌いじゃないが、もっと良く考えて行動すべきだと思うな。そういう奴に限って直ぐに死ぬんだ。自業自得だが。
ああ、多分平和な世界でも私は同じ選択をするよ。だって展開が変わって、人間関係が拗れたりしたら嫌じゃないか。
―――嗚呼、嗚呼。君という人間はそういう意見なのか。良く分かった。
……うん?何を言って……。
―――さようなら。次に会う時はそのネジ曲がった性格が直っているよう、祈っているよ。
……―――は?
△▽△▽
そうして私は、「家庭教師ヒットマンリボーン」の世界に飛ばされましたとさ。
いや、私も意味が分からない。何で道端で偶々話し掛けて来やがったあいつは、私をこんな世界に転生させたのか。生まれた町も、慣れ親しんだ街や聞き慣れた地名とかじゃなくて並盛だ。ある意味見慣れているし聞き慣れてはいるが。ちくしょう。とことんキャラクターに関わらせたいんだな、あいつは。
というか、あいつは何者なんだ。私をこんな世界に転生させるわ、私の性別を男にするわ。性別はまぁどうでもいいので良しとするが。
……はっ!もしかして奴は……!!
―――悪魔だったのか!?
何か否定の声が聞こえた気がするが、間違いない!!だってそうじゃないか!紙面では楽しく読めたが、こんな危険な世界に行かせるなんて!!ぶっちゃけこの漫画の作者のファンだったが、絶対にキャラクターに関わるなんてしたくはない!!だって、大体マフィア関係者だぞ!?物騒だし死にそうだし嫌だ!!私は痛いことと面倒事が本気で嫌いなんだ!!
「あら、どうしたの?」
「なんでもないよ、ママ」
うんうんと一人考え事をしている私を、この若々しくて美人な母さんは心配してくれた。
実は、今の私は漸く自我が目覚めた三歳児なのだ。前世の記憶とやらもじっくりと思い出した。まぁ、いきなり記憶を全てぶち込むとか、頭がショートするに決まっているので、一種の防衛本能だとは思うが。
口調は意識的に変えている。子供がこのように饒舌に喋るなど、私が気持ち悪いからな。前回の人生のように、全力で良い子を演じるのだ。社会に弾かれる性格なのは自覚しているからな。
「ケイ君は良い子ねぇ」
「いきなりどうしたの?」
「良い子だけれど……、ママね、少し心配なの」
ほほう。親だからこその心配か。何だ、言ってみろ。
「心配って?」
「さっきみたいに、悩んでることとか溜め込んじゃうでしょ?ケイ君が小さい内から潰れてしまわないか、心配なの」
……真っ当だ。真っ当な親だ。てっきり、私のような子供らしからぬ子供など、不気味がると思っていたのだが。
少しの感動を覚えていたが、次の言葉に絶望することとなる。
「だから、並盛幼稚園に通って欲しいの」
―――いや、どうしてそうなる。
うん?何処の文脈が繋がっていたんだ??どうして其処で無鉄砲で考えなしだらけの悪魔の巣窟に放り込もうと思った??
「ケイ君が、心を許せるようなお友達を作って欲しいの」
マジかー!!要らん世話だ!!私は昔から悩み事は溜めまくるタイプなんだ!!それでも何とかやっていけたのだから放っておけ!!
それに、奴等は親戚連中の餓鬼の世話で懲りたんだ!!最低でも小学生からにしてくれ!!鬼、という文字を使っているが、その通りだとハッキリ分かったんだぞ!!
「ママの知り合いのママ……沢田奈々って言うんだけどね、その人の子もいるから、仲良くね」
……おい。おいおいおい!!貴様ァ!!サラッと何て言った!!
「お返事は?」
「……ふぁい」
「ふふっ、良く出来ました」
く、クソォ!絶対!!絶対に!!仲良くなんてするものかー!!
△▽△▽
―――あ、神様。今日の地上はどうでした?
―――どうもこうも無い。あの人間、漫画好きだからと気紛れに話し掛けた私が馬鹿だった。
―――お、おう。お怒りですね。どんだけひねくれてたんすか、その人
―――しかも、転生先で私が悪魔等と……!
―――まぁ、人からすれば、神なんて悪魔にも天使にも変わりますから。試練だと称して、苛めてるだけにも見えますしね。
―――だから、紙面であった筈の世界を作って、そいつを落としてやった。
―――お、おっふ。いくらやりたい放題出来る身でもそれは……。
――――――さて。どのくらい矯正出来るのか、楽しみだな。
主人公のフルネームは影宮 桂馬。好きなものは牛肉。嫌いなものは悪餓鬼。親戚の集まりで散々な目にあった。