また投稿が遅れてしまった・・・。
今回で、UA20000突破!!記念のリクエスト小説は最後となります。
次回からはまた自分が温めておいたネタで書きますが、・・・・・・うーん。次こそは遅れないようにしたいですね。
気長にお待ち下さいm(_ _)m
「・・・はぁ」
「・・・・・・はぁ」
「・・・・・・・・・はぁ」
一定の間
「え、えーっと。・・・・・・どうかした?」
問うてみる。
リビングのテーブルに突っ伏したままの姿勢で、姉ちゃんはこう返してきた。
「何でもない」
嘘付け。
そう思ったが、口には出せない。面倒な事になるからだ。
ここで「そうなんだ」と引き下がるのは正解ではない事を僕は
どうやらその選択肢で正解だったようで、姉ちゃんは「聞いてよ
閑話休題。
僕の姉は、高校三年生だ。
友達多し、信頼厚し、能力高しのエリートだ。
そんな姉ちゃん。
高校受験を乗り切って三年目。姉ちゃんの前に大学受験が立ちはだかっている。
受験生。・・・まだ受験を経験した事がない僕としては、その辛さは計り知れない。
だから、時折苛々した表情を見せるのも、仕方が無い事だと思う。
ストレス発散代わりにイジられるのも、仕方が無い事だと思う。
僕は、中学二年生だ。
夏から受験への準備が始まると先生から言われているが、そんな事は構わずに遊び呆ける中学二年生だ。
友達多め、信頼厚め、能力高めのエリートだ。
※ただし、姉よりは劣る。
という注意書きが付くけど。
・・・受験等知らずに毎日能天気に生きているから、姉ちゃんが苛付いているのかも知れない。
来年は受験生となる訳だけど、まだ実感は湧かず。
しかし姉ちゃんを見ていると、受験というのは大変なモノなのだなぁと他人事のように感じる。
昔から姉ちゃんには様々な
スポーツや何かにハマってくれれば僕としても楽なのだけど、受験生なのでそれも叶わず。
姉ちゃんには逆らえないのだ。
学校。
姉ちゃんにイジられない、数少ない空間。
僕のプライドを保っていられる貴重な空間。
友達と他愛の無い会話で盛り上がり、女の子と話す時は緊張する——そんな空間。
姉ちゃんといる時でこそ情けない僕だが、学校ではしっかりとしている自信がある。勉強も出来るし、スポーツだって人並み以上に出来るのだ。
以前友達に「お前には欠点という物が無いのか」と言われた事があるけれど、違うんだよ。欠点はあるんだよ。ただ、それを姉ちゃん以外には見られていないだけで・・・。
欠点をひた隠しにしていれば、周りからの評価も高くなる。一年生の頃に生徒会に入って生徒会副会長に就任し、二年生である現在では、なんと生徒会長の座に就く事が出来たのだ。
それを姉ちゃんに軽い気持ちで話したら「まぁ、私は一年生の頃から二年連続で生徒会長だけどね」と返り討ちに遭ったのはここだけの話。
勉強もスポーツも出来て、生徒会にも入っている。
自分で言うのは果てしなくアレだけど・・・モテない訳がないのだ。
まぁ、僕はそれを
僕だって、恋愛はしてみたい。
・・・だけど、ねぇ。
姉ちゃんが怖過ぎる。
そんな、数ある女の子からの告白を断り続けた僕の二つ名は
同年代の異性との恋愛よりも姉ちゃんを優先してしまうあたり、僕はシスコンなのかも知れない。
そんな僕に——女の子に告白されても迷わず首を横に振ってしまうような僕に、転機が訪れた。
変化への切っ掛け。
革命への
「
「行かない訳にはいかないよ」
放課後の体育館裏。
多くを語らずとも、この一文で大体の展開は読めるだろう。
不良からの呼び出しか、異性からの呼び出しだ。
僕が泣くか(暴力を振るわれる的な意味で)、相手が泣くか(僕が告白を断る的な意味で)。
生憎、僕には不良生徒との関係は無ければ、誰かに恨まれるような行いをしているつもりもない。
トドメに、差出人はクラスメイトの良く知る女の子。
実は女の子はレディースの総長でしたというオチが無い限りは、後者である。
『どうしても伝えたい事があるので、放課後一人で体育館裏に来て下さい』
女の子らしい便箋に女の子らしい丸文字で書かれた、簡潔に完結している文章。
ラブレター。
自分の机の中からそれを発見した時点で、既にどうやって断ろうか考えていた。だけど、結局言葉が纏まらないまま放課後を迎えてしまい、重たい足取りで体育館裏に着いた次第だ。
曲がり角から顔を覗かせれば、顔を俯かせた女の子が僕がやってくるのをジッと待っていた。
意を決して女の子に歩み寄れば、こちらの存在に気付いた女の子がパッと笑顔で走って来た。
そして、前の台詞に戻る。
「祐輔君!来てくれたんだ」
「行かない訳にはいかないよ」
勇気を出して僕なんかに告白してくれるのだ。ならば僕にも、その場に行かなければならない義務がある。
面と向かって断る、義務がある。
「それで、伝えたい事っていうのは・・・」
「僕に告白するんだよね?」とストレートに聞ける程僕は無神経ではない。あくまで何も知らない振りをして、本題を引き出す。
僕の言葉を聞いた女の子はスカートの裾をモジモジと弄り、深呼吸を三度してから
「わ、私と、お、おおお付き合いして下さい!」
と。
予想通りの言葉を言い放ってみせた。
「ゴメン、君とは付き合えない」
最後の最後まで言葉が浮かばなかった僕は、結局一言で済ませる事にした。
頭を下げる。
二秒経ってから頭を上げると、そこには顔面蒼白の女の子がいた。
「や、やっぱり男好きだっていう噂は本当だったんだ・・・」
「ちょっと待って」
断られた理由を何やら勘違いしているようなので、訂正を求める。
「僕は男好きじゃないよ?普通に女子の方が好きだし」
「え、でも。じゃないと考えられないって。この前の
柳井さんというのは、学校内で一、二を争う程の美少女の事。ちなみに同じクラス。
数週間前に告白されたのだけど、姉ちゃん怖さに断っ(てしまっ)たのだ。
今思えば、僕はなんて勿体無い事をしてしまったのだろうか。
遅過ぎる後悔。
唯一の救いは、告白という今までの関係を破壊してしまうようなイベントが発生した後も、
登下校も一緒に帰っているし、班決めの際もわざわざ声を掛けてくれる優しさ。この前なんか手作りのお弁当を作ってもらった程だ。いやはや、見た目だけじゃなく中身まで美しいとは。
・・・というか、柳井さんとの一件を何故この子が知っているのか。女子間の情報網でバレているのか。
「何故君がその事を知っているのかはこの際さておき・・・アレには事情があったんだ」
「事情?」
「そう、事情。美少女からの告白も断らなければならないような事情が・・・ね」
女の子を傷付けてしまうような事情が。
「誰かに脅されてるとか?」
「脅されてるっていうか、僕が勝手に怯えているだけなんだけどね」
「誰に?」
「流石にそこまでは言わないよ」
姉ちゃんが怖いからとか、口が裂けても言えない。
「えー?教えてよ〜」
「やだよ。教えたら、女子間の情報網で瞬く間に学校内全生徒共有案件になっちゃうし」
ぶっちゃけ怯えてる云々の事も言わなくても良かったのだけど、恐らく女の子はこの事を皆に拡散するので、それが僕に告白する事への抑止力になればと思ったのだ。
嫌いでもないのに断り続けるのは、辛いのだ。
「誰にも言わないから」
「そんな大前提をわざわざ口にするような人を、僕は信用しないんだよ」
「・・・・・・」
女の子がこちらをジロリと睨んでいるが、僕は悪くない。
何やら告白している最中とは思えない程脱力してきたこの場の空気。女の子が「教えてくれるまでここから動かないから」と言い出した事によって、更なる混迷を見せた。
のだけど。
突如として現れた闖入者によって、その混迷は掻き消された。
「祐輔君?何してるのこんな所で」
つい先程まで話題に上がっていた柳井さんが、角の向こうから現れたのだ。その際驚いて「ぴゃっ!?」と女の子が僕から距離を取るものだから、不覚にもときめいてしまった。
「それを言うなら柳井さんだって。どうして体育館裏なんかに?」
「一緒に帰る約束をしていたと言うのに、その言い草は無いでしょう」
「あれ?そうだっけ」
今日は特に約束はしてなかったような。
全くと言っていい程身に覚えが無いのだけど、柳井さんがそんな嘘を吐く筈がない。恐らくは、告白への断り方云々に気を取られて忘れてしまっていたのだろう。「ごめんね」と謝っておく。
「良いの。用事があったんでしょう?」
あったと言うか、現在進行形で用事の最中なのだけど。
柳井さんにアイコンタクトで女の子へ視線を誘導させる。
「・・・あら、
告白ガールこと高木さんは、柳井さんからの問い掛けに「え、えっと」と迷いを見せた。大方、断られた告白のバレたくなさにどうにかして誤魔化せないか考えているのだろう。
「ご、ゴミ拾いをしてたの!」
「「・・・・・・」」
あんまりにもあんまりな誤魔化しに、僕と柳井さんは二人して閉口。この時点で嘘だとバレてしまっているのだが、そんな事には気付かずに誤魔化しが上手くいったと勘違いしている高木さん。
「・・・そう。なら、祐輔君と一緒にいる必要はないわよね。帰りましょう、祐輔君」
「う、うん」
柳井さんに手を引かれ、歩き始める。後ろから「えっ」という切なげな声が聞こえたような気がしたが、今更振り返る事は出来まい。きっちりと誠心誠意振る事が出来た事だし、高木さんとこれ以上会話を続ける必要性も無し。
帰るが吉だろう。
「・・・・・・そう、そんな事があったの」
帰り道。
あそこで二人仲良くゴミ拾いをしていた訳ではないでしょう?と問われたので、特に躊躇いも無く話した真実。
ゴメンね高木さん。僕の二つ名が校内中に知られている事への腹いせとか、そんなんじゃないから。
会話終了。
追及があるのかと思っていたけど、柳井さんの視線は前に向けられている事から、どうやら本当にこの話はお仕舞いらしい。
「あの子の事、好きなの?」
訂正。
終わっていなかった。
「好きだったら断らないさ」
「・・・・・・そう、私の事も嫌いなのね」
「わー!冗談!冗談だよ!」
それっぽい事を言ってはぐらかそうとしたが、失念していた。
柳井さんも僕に告白して断られた一人だという事を。
僕の今の発言は、暗に柳井さんを好んでいないと言っているようなモノ。
気が付き、「よよよ」と泣き真似をし始めた柳井さんに慌てて謝罪。
「なら、どうして断ったの?」
十秒も経たずに態度をころりと変え、問い直してきた柳井さん。今の状況で隠し通すのも無理そうだと、柔らかくなってきた自分の口を開く。
説明。
聞き終えた柳井さんは、「そうだったのね」と一言。怒ったり驚いたりはしないらしい。
「ごめんね、こんな理由で断っちゃって」
「良いわ。嫌われてないのだと分かったのだし——それで、私から提案があるのだけれど」
「提案?」
「私と付き合ってくれないかしら」
「いやいや。つい先程にも言った通り、僕は姉ちゃんがいるから付き合えないんだって」
「バレなきゃ良いじゃない」
「え?」
姉ちゃんの影にビクビクと怯えている僕を鼻で笑うかの如く、柳井さんはとても豪胆な提案をしてきた。
「で、でも」
「祐輔君のお義姉さんは、四六時中祐輔君の事を監視しているの?」
「む」
「今までだって、友達と遊んでいる最中にお義姉さんに出くわしたりだとか、そんな事は無かったんでしょう?祐輔君がお義姉さんといる時間は、精々家の中——夕方から長くても翌日の朝まで。それ以外ならお義姉さんの目を気にせず付き合えるんじゃない?」
「むむ」
理路整然と僕が思っていた懸念点を取り除いてみせた柳井さん。そこまで言われると、別に大丈夫なんじゃないかと思えてくる。
姉ちゃんにバレないんじゃないかと思えてくる。
悩む。
そんな僕に、柳井さんからのトドメの一撃。
「もしも悩んでくれているのなら、試しに一週間程付き合ってみない?万が一にもその間にバレてしまったら、『私に脅されていた』とか適当な理由で言い逃れてくれて構わないから」
充実のアフターフォロー。と言うのは少し違う気もするが、そこまで言われてしまっては断る理由は無い。
「・・・・・・うん、こんな僕で良ければ。よろしくお願いします」
それから、一ヶ月程経過した。
付き合って一週間はいつバレるものかとビクビクしていたのだが、そんな事は杞憂だったようで。柳井さんの思惑通り、僕達の関係が姉ちゃんにバレる事はなかった。
スマホで恋人らしいやり取りをし。
デートに出掛け。
放課後の誰もいない教室でイチャついたり。
柳井さんの家に遊びに行ったり。
それはもう、充実した恋人ライフを送っている。
「『じゃあ、次のデートは木曜日の放課後って事で良いかな?』・・・っと」
自室にて。
柳井さんとメールで会話中。他愛無い会話から始まり、次のデートの約束まで決まった頃。会話に一段落ついたので、一度リビングに降りようとベッドから起き上がって。
「ねぇ」
声を掛けられた。
声の方向からして、ドアの方。
向く。
「ね、姉ちゃん。どうしたの?」
入口にはいつの間にかドアを開けていた姉ちゃんがこちらを見ていた。その瞳はどこか恐ろしく、知らず識らずの内に声が上擦るのをなんとか抑え、平静を装い、笑顔を取り繕い、問う。
「・・・私にさぁ、何か隠してる事無い?」
ドキッ。
心当たりが有り過ぎて、鼓動が一回だけ爆発したように大きな音を立てた。
——バレているのだろうか?
——いや、そんなまさか。
頭の中で自問を重ねるが、どう考えてもバレるタイミングが無い。デート等の予定も、姉ちゃんとは絶対に出くわさない場所や時間帯を考えたのだ。
だから、ない。
バレて、ない。
「ないけど。どうかした——」
笑顔で答えた直後。
姉ちゃんの手のひらが眼前に迫っていた。
起き上がっていた上体を力任せに倒され、気付いた頃には姉ちゃんの手が僕の首に伸びていた。
マウントポジション。
抵抗の術、無し。
「嘘吐き」
「う、嘘じゃな」
「バレてるんだよ!」
怒声と共に、気道が少し
「あのさぁ、・・・私が気付かないとでも思ってたの?」
首を絞める力が少し弱まったのは、『話せ』という意で間違いないだろう。
だけど、僕は話せなかった。
恐怖のあまり、鋭い眼光でこちらを睨む姉ちゃんに竦み、僕は声を発する事が出来なかったのだ。
「祐さぁ、女と付き合ってるでしょ」
「ッ」
バレてる。
バレている。
バレてしまっている。
「何で知っているの?って顔してるわね」
そうだ。
何故知られているのか。バレる筈がない僕の恋愛事情を。
前にも言ったように、姉ちゃんは高校生。姉弟どちらも帰宅部とはいえ、帰る時間帯は中学生の僕と然程変わりは無い。高校三年生ではあれど、自由登校期間はまだまだ先。授業は六時限目まである。週に二度くらい午前授業の日はあるけど、そんな事を僕が懸念していない筈がない。そういう日には柳井さんと会わないっていうルールを作り、守っていたのに。
何故、知られているのか。
「顔よ」
「か、顔・・・?」
「何で私が祐をイジるのか知ってる?」
知らない。
「祐の困った顔や泣きそうな顔が大好きだからよ」
その為に——その為だけに僕にちょっかいを掛けてきたというのか?
怒りを覚えるが、やはり抵抗は出来ない。睨みを利かせると首を絞められるので、下手な真似は出来ない。
怒りを買わないように心を落ち着かせていると、姉ちゃんが僕の頬を張った。
「なのに、なのに最近の祐は!毎日楽しそうに!毎日が幸せみたいな顔で過ごして!今までの表情は見せてくれなくなっちゃったじゃない!!」
「い、良いじゃん僕が楽しく過ごしたって!姉ちゃんには関係無いでしょ!?」
「関係あるわよ!弟っていうのは姉の所有物なの!私の為に笑って、私の為に怒って、私の為に泣いて、私の為に楽しまなきゃ駄目なの!!」
そう言った姉ちゃんは、片手は僕の首元に添えたまま、僕のスマホを手に取った。
「パスワードは」
「え」
「パスワードは!?早く教えなさい!!」
「い、1152!」
恐喝。
ロック画面を突破され、開くはメールの送信画面。
宛先を見て、僕は驚愕した。
「ちょ、ちょっと!柳井さんに何を送る気!?」
「お姉ちゃんに逆らうとどうなるか教えてあげる」
僕を
打ち終わったのか、画面を見せられる。
完成された文面。送られる直前の画面には、こう書いてあった。
『やっぱり、姉ちゃんの事が好きです。僕と別れて下さい』
と。
「送信っ、と」
躊躇いも無く。
僕からの言葉を聞く間も無く。
姉ちゃんは、メールを送信してしまった。
「な、な、何で」
「良い?祐は私のモノなの。勝手に彼女を作るなんて許さないから」
「酷いよ・・・!」
押し潰したような、僕の抗議の声。しかし姉ちゃんはそんな僕に何をする訳でもなくスッと立ち上がり、帰っていく。まるで、用事はもう済んだと言わんばかりのその行動。
解かれるマウントポジション。
反撃は出来ない。
「これに懲りたら、私に内緒で何かを企てたりしない事ね」
去り際の一言。
誤送信だと言い訳する事も出来ない、送信済みという文字が映るスマホの画面。
ドアが閉まる音。
先程の怒声が嘘のような静寂に包まれた僕の部屋。
その室内。
取り残された僕は実感し、身体を震わせるのであった。
革命なんて出来なかった。
やはり姉ちゃんには、逆らえなかった。
まずは、リクエストを下さった麻木猫さんに感謝を。ありがとうございました!
リクエストは、『気弱な弟と強い姉のヤンデレが見たい』でした。
本当、ヤンデレ成分薄くて申し訳無いです。
姉と弟という関係性も、初めて書きました。リクエストだと、自分では思い付かないような様々な新鮮なネタが貰えて嬉しい限りです.°(ಗдಗ。)°.
次のお話。
-
TS
-
近眼
-
タイムマシン
-
既にあるお話の続編