陽乃さんと美容師の彼   作:メイ(^ ^)

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喫茶店での騒動

 

 

 

 

 

カタカタカタと、キーボードを叩く無機質な音が部屋に響いている。

 

 

部屋には私ひとり。

 

 

この前家から持ち帰ったノートパソコンを片手に、私は今日記を書いてる。

 

 

書いている内容は、主に比企谷くんとの思い出。

 

 

今まで日記なんてほとんど書いてこなかったのに、何故か彼との思い出は文字に綴り、残したくなってしまう。

 

 

忘れたくないように。

 

 

 

『今日は比企谷くんと一緒に料理をして楽しかった』

 

『比企谷くんと手を繋いで恥ずかしかった』

 

 

 

とか、小学生が書くような日記。

 

 

我ながら少し呆れもするけど、この時間も一日の楽しみになっている。

 

 

自分が満足するまで文字を打ち、区切りがいいところで手を休め、パソコンを閉じる。

 

 

時計は既に夜の12時をすぎており、窓から見える星はキラキラと輝いている。

 

 

お月様は半月で、満月にならないのは恥ずかしがり屋さんなのかな、なんて、突拍子もないことを思ったりしてる。

 

 

ひとりで星を見るのは少し怖い。夜空の暗い闇に引き込まれそうに思ってしまうから。

 

 

少し前まではひとりなんて当たり前だったのに。

 

 

私の中で彼の存在がどんどん大きくなってる。

 

 

彼と見る星はどういうふうに見えるのかな。

 

 

彼と見る月はまんまるかな。

 

 

そんなことを考えながら、布団にもぐって目をつぶり、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「働いてください」

 

「…………え?」

 

 

比企谷くんの作った美味しいシチューに舌つづみをうっている夕食時のこと。突然投げかけられた言葉。

 

彼の表情はいつもの柔らかい表情とは違い、少し真剣味が伺える。

 

 

働けって言われても……。

 

 

「………。髪切っていいの?」

「違います……そもそも免許持ってないでしょ。……それより、陽乃さんこの頃だらけすぎです」

 

「そ、そうかなぁ……」

 

 

と言われ、スプーンでシチューを混ぜつつ、昨日の出来事を振り返ってみる。

 

 

……。

 

確か、昨日は朝起きて、ご飯食べて、比企谷くんの部屋にある漫画読んで、髪切ってもらって、お昼ご飯食べて、構ってもらって、眠くなったら寝てーーーーー、食っちゃあ寝るって生活だったかな……。

 

 

「………」

 

「ん。ほら、だらけすぎです」

 

「で、でも、羽を伸ばせって言ったじゃん!」

 

「限度ってものがあるでしょ。それと俺の部屋荒らしすぎです」

 

「へ、部屋はその……」

 

 

比企谷くんのベッドであれこれしてたなんて言えない……。

 

 

「とりあえず、知り合いの店にアルバイトとってくれるようになったんで、明日挨拶に行きますよ」

 

「え?そ、そんな勝手に……」

 

「ダメです。拒否権はありません」

 

「お、怒らないでよ」

 

「怒ってませんけど」

 

「顔!顔!!」

 

「ひどくない?」

 

 

 

·

……

…………

 

 

 

そんなこんなで翌日。

 

今日は美容室の定休日。どうやら、毎週水曜日が美容室の休みらしい。

比企谷くんに連れてこられたのは、美容室から5分ちょいのところにある喫茶店。

 

 

喫茶店の名前は『color』

 

 

比企谷くんは迷わず喫茶店のドアを開け、カランという音が私たちの入店を知らせる。

私も中に入ると、カウンター席だけ設けられた店内はモダンな家具で彩られ、ペンダントライトの光が店内を暖かく照らしている。

耳心地よく流れるクラシックメロディーが店の雰囲気によくあっており、居心地がいいと、すぐ思わせるような空間。

 

 

カウンターの奥にいるのは一人の女性。

 

 

彼女は彼を見るなり、パァっと目を輝かせ、亜麻色の髪をふわりと揺らしながら彼を出迎える。

 

 

……。

 

 

あれ………、どこかで……。

 

 

そんな彼女が元気に彼に話しかける。

 

 

「せんぱい!いらっしゃいませ!」

 

「うん、久しぶりだな」

 

「えへへ、寂しかったでしょ」

 

「いや、全然まったく」

 

「ツンデレですね、わかります」

 

「捉え方おかしいでしょ……」

 

 

終始笑顔な彼女とは反対に少しげんなりとした彼との流れるような会話。

 

 

確か……、一色ちゃんだったっけ。

 

 

なんて声をかけようか迷っている時に、一色ちゃんが私に気づき、目をまん丸にする。

 

ぱぱ!っと比企谷くんと私を交互に見て、オロオロしだす。

 

そんな一色ちゃんをよそに彼は普通に語り出す。

 

 

「昨日電話で話したろ、ほら、アルバイトとってってやつ」

 

「た、確かに聞きましたけど!で、でも!は、陽乃さんとは聞いてませんけど!?どういうことですか!」

 

「うん、落ち着け」

 

 

混乱した一色ちゃんが恨めしそうに私を睨む。

 

「どういうことですか、説明してください」と目が語ってる。

 

ど、どうしよ……。

 

対応に困り、ちらりと比企谷くんに視線を向け、助けを求める。

 

 

「……ほら、陽乃さん。ここで働かせてください!って言うんですよ」

 

「千尋ちゃんじゃないんだから……」

 

「だ、だから、どういう関係なんですか……」

 

「うちに住み着いた」

 

「住んじゃった」

 

「!?」

 

 

 

 

………

……

·

 

 

 

「………まあ、だいたいの事情はわかりましたけど」

 

 

大体の事情を説明し、なんとか把握した一色ちゃん。それでもどこか納得してないのか、表情が浮かず、怪訝な視線を向けてくる。

 

説得に成功して役目を終えたのか、比企谷くんが帰ると言い出す。

 

 

「ん、俺はこのあと用事あるから」

 

「え、もう帰るんですか?コーヒー1杯だけでも……」

 

「また来るからそん時頼む。……マッ缶な」

 

「そんなのありません」

 

「あらら」

 

 

彼はそう言うとカランとドアを開け、帰ってしまった。

 

ぽつんと喫茶店には一色ちゃんと二人ぼっち。

 

何を話せばいいのかわからず、沈黙が生まれてしまう。

 

黙っていると一色ちゃんが沈黙を破り、静かに語りかける。

 

 

「…とりあえず、話、しましょうか」

 

「…そだね」

 

 

一色ちゃんが店の奥の方に歩いていく。

 

 

喫茶店の窓から外を見やると、ふわふわの雪が降り始めてる。

 

 

寒そうな外とは反対に喫茶店の中はぽかぽかと暖かい。

 

 

帰る頃にはまた一段と積もってそうだな。

 

 

そんなことを頭の隅で考えつつ、彼女のあとを追った。

 

 

 

 

 




ダクソ3楽しい笑。

PS4の面白いカセット何かあるかな。


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