お前のような踏み台がいるか!(白目) 作:ジャック・ザ・リッパー
俺の名前は、伊織朱音!
踏み台転生者をめざし、毎日を頑張っている。
俺はあの後、幽霊を部屋に残し食卓に向かった。怖かった、まさかリニスの幽霊が出てくるなんて。でも、まだ部屋にいるんだろうな。寝るとき、どうしよう?
「アカちゃん、騒がしかったけど大丈夫?」
「大丈夫だよ母さん、でも何で俺だけ醤油ないの?」
「ごめんね、醤油切らしちゃって。買ってきてくれない?」
「わかった。でも母さん、アカちゃんはやめて。」
仕方がないので、醤油を買ってくることにする。別に俺はつけなくても良いのだが、母さんが買ってこいという目をしていたのだ。俺は急いで近くにあるスーパーに向かって走った。
やばい、どうしよう?
金髪の女の子拾ってしまった。黒のワンピースを着た女の子が、公園の水呑場で倒れていた。お腹からぐーという音とチャポチャポと水の音が鳴っている。一応、声をかけてみる。
「どうかしたのか?」
「お腹が空いて......お水を飲んだけど、一杯にならなくて......」
「人間の体は、水じゃ空腹を和らげることはできないぞ。早く家に帰って飯食えよ。」
「......お腹が空いた。家に帰れないし、動けない。」
行倒れの金髪少女は、何かしらの事情があるのか帰れないらしい。仕方がない、助けてやるか。
「うちに来るか?親に頼めば少し位なら、飯食わしてやれるぞ。」
「いく!ご飯食べに行く!」
金髪少女はそう言うと、這って俺に近づいてくる。ちゃんと立てよ、ゾンビじゃないんだから。俺は金髪少女を立たせようと腕を掴むと、その腕はとても細かった。まるで、本当に何も食べてないんじゃないのかと錯覚するくらいに。
「おい、お前最後に飯を食べたのは何時だ?」
「えっと、半年くらい前に私の先生がいなくなってからは、栄養剤とかで済ませてる。」
おいまて、こいつもしかして病院から抜け出してきたとかじゃないよな?病気持ってなければ良いけど。仕方がないので、俺は金髪少女を抱き抱えた。いわゆるお姫様だっこである。
「ほら、連れていってやるから捕まってろ。」
「ごはん!ごはん!ごはん!」
「こいつ、話聞いてるのか?」
俺は、犬や猫を拾うように、金髪少女を連れて帰った。
家に帰ると、金髪少女は人目も気にせず一心不乱に手巻き寿司(巻かずに口に入れる)を食べた。母さんには、親に怒られて夕飯抜かれて泣きべそかいてた友達を連れてきたと言い訳をしておいた。
夕飯を食べ終わったので、金髪少女を部屋に連れていく。何時までも母さんの側にいると俺の嘘がバレそうだからだ。
部屋の扉を開けると、猫耳と尻尾がついた女性が見えた。あっ、リニスの幽霊がいるのを忘れてた。俺は、扉を閉めようとすると、金髪少女は部屋に飛び込みリニスの幽霊に向かって飛び付いた。
「リニスー!」
「フェ、フェイト!?何故フェイトがここに!?」
「ずっと探してたんだよ!お母さんがリニスをこの辺りに飛ばしたって言ってるのを聞いたから、うわあぁぁぁん!」
金髪少女......お前がフェイトそんなんかい。(白目)
フェイトそんに話を聞くと、リニスが母親に飛ばされたらしく、必死になって探していたらしい。いろいろな場所に転移し、探し回ったが力尽きてあの場で倒れたようだ。
「リニス、一緒に帰ろう!」
「ごめんなさい、フェイト。今の私には、プレシアではなく別のマスターがいるんです。一緒に帰ることができません。」
「そんな......」
フェイトそんは、悲しい顔をしてリニスを見ていた。まさしく、絶望を絵に書いたような表情だった。
「なら、誰がご飯作ってくれるの!?」
「私はご飯の為だけに連れ戻されようとしてたのですか!?」
駄目だ、このフェイトそんは、唯の食いしん坊キャラだ。きっとフェイトちゃんは別にいて、この子はそっくりさんか何かなのだろう。
なら、モブキャラだし優しくしても問題ないよね。
「なら、ここに来れば良い。ここに来れば、飯くらいご馳走してやる。リニスにもたまに会えるぞ。」
「わかった!毎日来るね!」
「ホントに遠慮を知らない子だな。」
「すいません。どこで育て方を間違えたのでしょう?」
このフェイトそんに呆れる俺に、リニスが何度も頭を下げて謝るという謎の空間が出現した。