お前のような踏み台がいるか!(白目) 作:ジャック・ザ・リッパー
目を覚ますと、知らない場所、知らないベッド、知らない天井だった。
可笑しい、俺は誘拐犯の銃撃に合い頭を撃ち抜かれた筈だ。右腕で頭を確認しようとすると、ギブスがつけられ動かない。
回りを確認する。高そうなものが並べられた部屋、いい香りのするお香まで炊いてある。俺はもう少し休むことにする。
しばらくすると、恭也さんとすずかに似た美人さんが部屋に入ってきた。美人さんが話しかけてくる。
「あら、起きたみたいね。早速だけど貴方について話させてもらうわね。」
話を聞くと、俺はあれから半日しか寝ていないらしい。俺は身体のあちこちに弾丸の掠り傷をおい、右腕はボロボロになって頭を撃ち抜かれたらしい。身体は、右腕以外は問題ない。撃ち抜かれた頭は、弾丸は俺の右脳と左脳の隙間を通り、毛細血管を傷つけることなく頭から弾丸が貫通したらしい。(闇)医者?は、奇跡としか言いようがないと言っていたらしい。
「さて、貴方は私とすずかの秘密を知ったみたいね?」
「......夜の一族?」
「ええ、それで決めてほしいことがあるんだけど。」
真剣な目をした美人さんが、俺に向かってとんでもない発言をして来た。
「すずかに関しての記憶を全て消すか、すずかと結婚するか選びなさい。」
はあ?何だよそれ、すずかと結婚する?
バカを言うな。すずかと結婚するのは、少なくとも俺ではない。それに折角ここまで時間をかけてすずかを可愛いなぁと言いながら好感度を下げてきたんだ。こんなところで踏み台を諦めてたまるか!
「ごめんなさい。どちらもお断りします。」
「...ほう。」
ひいぃぃぃ!恭也さんが、真剣もってこっち睨んでる!ここは当たり障りのないこと言って回避しよう!
「お、俺は、すずかの友達をやめるつもりもないし、すずかと結婚するつもりなんてない!大切な仲間なんだよ、すずかは。夜の一族だろうが関係ない!俺は、すずかが好きだ!それにすずかにこんなことで結婚する相手を決めるのは間違ってますよ。
何時かすずかには好きな人が出来る。俺は、そうなったすずかを邪魔したくない。お願いです、夜の一族の事は絶対にしゃべりません!だからどうか俺をすずかの友達として認めてください!」
良し!これでいい。何時かすずかはオリ主君がきっと好きになるし、間違ったことは言ってない。俺の言葉を聞いて、部屋に入ってから難しい顔をしていた美人さんは、笑顔になって答えた。
「合格よ、あなたを信じてみるわ。でも、貴方はどうしてあんな風に立ち向かうの?相手は銃を持った大人相手なのに。」
「簡単ですよ。ただ、守りたかったんです。好きな人を、すずかやアリサ、イリヤを。」
これは本当だ。俺は皆が好きだ、友達として。みんな可愛いし、基本的には優しいし、なのははごく稀に絞め殺しに来てるけど。
俺の答えに満足したのか、美人さんは話す。
「今の貴方、格好いいわよ。でも、そういうときは大人たちを頼りなさい。今回は奇跡的にうまく行ったけど、運が悪かったら死んでいたわよ。」
「わかってます。でも、俺は死ぬとわかってたとしても同じ行動をしていると思います。俺は、馬鹿だから真っ直ぐにしか進めないんです。」
「そう、ならこの話は終わりよ。まだ、名乗ってなかったわね。私の名前は、月村忍よ。まだ疲れているでしょ、隣の部屋に皆居るから後で呼んでおくわ。」
そう言って美人さん、月村忍さんは部屋を出ていった。後の部屋には、俺と恭也さんが取り残された。ちょっと忍さん?出来れば怖いから恭也さんも持って帰って欲しいんですけど。
恭也さんは、俺を見ながら小さくボソボソ言っている。
「お前は何時もそうだな。俺の時も、今回の誘拐事件も、相手が自分よりも格上だとしても迷いなく飛び込んでくる。だが、お前のような馬鹿だから、俺は本当に守るものを見つけることができたのかもな。」
俺には全く聞こえなかったが、恭也さんはスッキリした顔になり部屋を出ていった。俺は、疲れからそのまま意識を手放した。