今日もいい天気だ。
外を見れば、鳥はさえずり、艦娘達が和気あいあいとしながら切磋琢磨し、海も煌びやかに見える。
耳を澄ませば、波の音が心地よく、鼻歌を奏でたくなる。
電「どこを見ているのですか?」
さて…状況を整理しよう。どうしてこうなった?面談してメンタルケアするつもりが悪化したんだが?むしろ俺のケアが必要じゃない?目と心のケア必須間違いない。
八幡「…腹減ったな。」
電「そろそろお昼なのです。」
八幡「もうそんな時間か。お前この後演習とかなかったっけ?」
電「はいなのです。司令は見に来ないのですか?」
八幡「あ〜、他の奴らとも面談しないとだからな。難しいかもしれん。」
電「来ないのですか?」
八幡「えーっと…。面談がアレだから…。」
電「コナイノデスカ?」
ひー!!怖い!怖いよ!!何この子!豹変しすぎじゃない!?ここに来てこのタイミングでこんな怖い思いするなんて予想外なんですけど!
八幡「わ、分かった分かった!少しだけな?結構マジでスケジュールパンパンだから勘弁してくれ。」
電「嘘なのです。忙しいのは分かってるので、来れたらでいいのです。」
八幡「お、おぉ。」
もうヤダ帰りたい。なんでこうなってしまったんだろうか。
そう思っていたらスタスタと出ていった電。ボソッと大淀さんに…とか聞こえたけど気にしない。気にしないったら気にしない。
八幡「あぁ…疲れた。」
天龍「辛気臭せぇ顔すんな。飯が不味くなんだろ。」
今ならコイツが天使に見えてきた。
天龍「な、なんだよ。」
じーっと見ていたら不審がられてしまった。悲しい。
八幡「いや…なんでもない。」
龍田「変ね〜。普段は目も合わせないのに。今日は雨かしら〜?」
八幡「そうだな。いっその事ハリケーンでも来て無かったことになんねーかな…。」
天龍「お、おい。ホント平気か?」
いつも以上に目を腐らさながら現実逃避をし始める八幡を見て、思わず心配してしまう天龍。
八幡「ちょっと色々な…。」
龍田「そういえば面談があるとか言ってけど…何かありました〜?」
朝は普通だったのに、急にこうなった理由などそれくらいしか思いつかないよな。
天龍「お前まさか…!」
八幡「あぁ…とんでもない化け物を生み出してしまったのかもしれない。」
天龍「えっ、はぁ?何言ってんだ?」
龍田「誰と面談をしてたのかしら?」
八幡「電だ。」
その言葉を聞いて空気が凍った。それを見て八幡はやっぱり知ってたかくらいの感覚だ。
天龍「き、聞いたのか?」
龍田もいつもの雰囲気から考えられないほど顔を歪めてる。
八幡「あぁ、聞いた。まあ何となく分かってはいたけどな?」
天龍「それでどうするつもりなんだ?」
八幡「どうするか…。ほんとにどうしたもんか。」
龍田「普通なら解体処分。黙認していた私達も同罪になるかしら。」
八幡「あぁそっち?」
天龍「いや、そっちって…。滅茶苦茶重罪なんだぜ?もう少し真剣に考えろよ。」
確かに重罪だし、滅茶苦茶ヤバいってのは分かってる。でもそれが薄れるくらいもっとヤバいんだって。
八幡「バレてないならいいだろ、多分。というか分かってて放置してるぞ?だから気にするは何一つ無い。」
天龍「えっ、そうだったのか。でもなんでだ?流石に人をヤっちまった艦娘を放置するなんで有り得ねぇだろ。」
龍田「そうね〜。前任にも悪人ではあるけれど、ここのトップ。しかも守るべき人間だったのだから、何か罰がないとおかしいわ〜?」
八幡「これは推測だから鵜呑みにすんなよ?多分情報漏洩を恐れた結果と少なからずメリットがあったからだ。提督が悪事を働きそれを殺した艦娘。大本営と艦娘の信用失墜には十分。深海戦艦以外にも人類に危害を加えるものがあるってな。人類からの信用と、1人の悪人の尊厳。どちらを守るかと言われたら前者だろ。むしろ葉風さんとかの派閥からしたら、相手派閥の動きを鈍らせられるメリットもある。不本意ではあるんだろうが、黙認することにしたんだろうよ。ある意味いい様に利用されたんだろうな。」
穏健派にも何種類かタイプがいる。純粋に全ての艦娘を好いているヤツ。自分の艦娘を好いているヤツ。周りの目を気にするヤツ。その中でも最後者が1番多い。そいつらの判断だろうな。
龍田「じゃあなんでそんなに酷い顔をしているのかしら〜?」
八幡「それは「司令?」」
噂をすればとやらだな。
電「何してるのですか?」
八幡「何って、昼飯食べようと思ってたんだよ。」
電「もうすぐ面談のお時間なのです。」
八幡「え、マジか。結構話し込んじまった。ありがとな。」
電「はい!お仕事頑張ってなのです!」
そう言ってスタコラ走っていく電。
八幡「とまぁ…あんな感じだ。」
天龍「こ、こえぇ…。」
龍田「あらあら〜…。」
何より怖いのが、俺のスケジュール知ってる事だよ。教えた覚えないんだけど?どこで知ったの?情報漏洩じゃん。ガバガバ過ぎてウケる〜。いやウケねぇよ。
天龍「お、俺あの電と遠征行くのか…。」
八幡「怖いのか?」
天龍「ばっ!!怖くねぇよ!!余裕だし!」
八幡「そうか。なら任せる。」
涙ぐみながら龍田に助けを求めるが、うふふ〜といなされる。哀れなり天龍。
龍田「貴方が1番怖がるべき立場じゃいのかしら〜?」
八幡「滅茶苦茶怖いっての。あの目見ただろ?俺が言うのもなんだけど、腐り果てたからね?2人きりで話してた時死を覚悟したまである。」
龍田「その割には普通に接してたけど〜?」
八幡「まあそれが俺の仕事だからな。やらなきゃいけないからやってるだけだ。そんじゃ俺は行くからな。あんまりサボんなよ。」
天龍「サボってねぇよ!!」
龍田は捻デレという言葉の意味がようやくわかった気がした。きっと彼は仕事でなくても電を見捨てなかっただろう。何となくそんな気がした。怖いと言いつつも本心から話しかけてくれた電と会話している時の彼の顔は、満足気な表情をしていた。
八幡「怖い…か。」
間違っているのだろうか?いや間違っているんだろう。でもこの選択肢を取ってしまった。後悔は少ししている。もう少し上手く出来たのではないか…と。
だがそれは我儘だ。きっとどんなやり方をしても、俺にはこの選択肢しか選ばなかっただろう。雰囲気は違えど、初期の頃にあった我慢している様子が見えないのだ。ありのままで居て、それがあの電なのであればそれでいい。
認めよう。俺は我儘で強欲だ。その選択肢でアイツらが幸せに過ごしてくれるのであればそれでいい。もし責任が及ぶのであればいくらでも背負う。
その選択肢がたとえ間違っていたとしても…だ。
八幡「でもあの目は夢に出てきそうだなぁ…。メガネでもかけさせるか。」
この選択肢も実は間違っていた。その話はまた後日。
八幡「重いヤツだけは勘弁して欲しいんだが…。そうはいかないんだろうなぁ、あぁ嫌だ、憂鬱、帰りたい。」
コンコン…
八幡「はぁ…。どうぞ。」
赤城「失礼します。顔色悪いですが大丈夫ですか?」
八幡「大丈夫か大丈夫でないかで言えば、大丈夫では無い。面談というワードにトラウマを覚えるレベルで大丈夫じゃない。」
赤城「は、はぁ…。MAXコーヒー飲みますか?」
八幡「あぁ、悪い。ありが…いや待て。何勝手に飲んでるの?」
赤城「すいません。つい飲みたくなってしまって。」
まあいいんだけね?寧ろ同士という意味で大歓迎。でも飲みすぎには注意して欲しい。体調面でも俺の懐面でも。
八幡「って、なんで俺の分も飲んでんの?何、嫌がせ?」
赤城「はっ!失礼しました。あまりの美味しさに手が勝手に動きました。」
コイツ…。まあいい。大淀が選んだってことは何かしらまたあるって事だよな。しかし全く思いつかん。
八幡「考えても仕方ないか…。とりあえず始めるぞ。」
赤城「よろしくお願いします。」
八幡「最近何か困ってることは?」
赤城「ご飯が少ない…とかでしょうか?」
八幡「……今後鎮守府でどうしていきたい?」
赤城「ご飯を食べたいです。」
こりゃ前途多難だな…。
中途半端ですがここで区切ります!
後日談下に載せておきます。
「電にプレゼントなのですか?」
「そんな大それたものじゃないぞ?」
「一生大事にするのです!」
「いやだから…」
「常に肌身離さず持ってるのです!」
「普通に着けろよ」
「汚れてしまうのです」
「使って汚れる分には仕方ないだろ…」
「汚れたり壊れたら自害するのです!!」
「重いわ!!」