アキバ神拳伝承者の異世界譚(ハイスクールDxD+A) 作:グリムリッパー02
ピコピコと、電子音が鳴り響く。
その音はどこか懐かしく、俺の耳に安らぎを与えてくれる。
あぁ、そういえば婆ちゃん家の近くの駄菓子屋にこんな感じの筐体があって、よくナナと一緒に日が暮れるまでタケノコ掘りとかして遊んだっけかなぁ。
「って、ゼビ〇スじゃねぇか!!」
なにがピコピコだよこんちくしょう。
どこだ!?どこだゼビウ〇!!
めっちゃやりたい!!
「んぉ!?びっくりしたぁ。さっすがアキバの救世主。BGMなしでも気づくとは」
と、そこにいたのは腰まであるロングヘアー、野暮ったいメガネ。そして
いや、なにこれ。お兄ちゃんなんでロリの女の子部屋で寝てたの?
しかもよく見たら俺の布団と彼女の布団隣同士じゃないですかやだー。
え?いや、マジで、これってあれですかね?朝チュンですかね?いや朝なのかどうかすら怪しいけども。
どうしよナナちゃんお兄ちゃん汚されちゃった。
「いやいや、流石に私もそこまではしてないって。っていうか助けてあげた命の恩人に対して失礼じゃないかねキミ!」
「あ、その節は大変お世話になりました」
「うむ!!わかればよろしいのだよっ!」
なぜか少女相手に土下座している高校生と、高校生に土下座させて満足げに腕を組む少女の図がそこにはあったとさ。
いや、でも此処は何処なんだろうか。
さっきはゲームに夢中で気づかなかったけど、此処は異常だ。
なぜならここにはさっき言ったもの以外何も無いから。
壁も、天井も、明かりも、何も無い。
ただあるものだけがまるで光を当てているかのようにはっきりと見える。
これじゃ、まるで…
「さて…と。どっから話すっかなぁ」
そう言いつつ少女は位置こそ動かず片手を伸ばしポテチをとる。
その間もゲームからは目を離さいあたりかなりの手練、熟練の自宅警備員のようだ。
バリバリとポテチを食べる彼女、俺はそこで、初めてそのモニターを見た。
「よっし!くりあー!やったーー!!」
その画面にはclearの文字。それが全部で6個。
そして彼女の手には6個のコントローラ。
それを彼女は、片手で全てこなしていたのだ。
「お前は…いったい」
「ん?あたし?んー、そうだねぇ。とりあえず自己紹介から始めようか」
そう言い、彼女は指先をぺろりと舐めとる。
そんなどこか妖艶な唇から、彼女は言葉を発する。
「私はアキバ神。君の住んでいた、君が守ったアキバの神様だよ」
そう、言い放った。
~〇✕△□〜
アキバ神様が言うには、俺の身体は既に滅んでしまったらしい。
俺は最後、決死の覚悟で魔街発生装置に突貫し、その爆発を全て自分の身で押さえ込んだ。
そうして、アキバの街は守られた。
しかし、それは俺の身体を犠牲とするもので、しかも夜咬の眷属になっていた俺の魂は簡単にあの世へ行くことも無く、燻っているところをアキバ神様に拾われたらしい。
「ま、マジかよ…」
全てを聞いた俺は愕然としていた。
まさか、あの時の決断がこうなるとは…
「まぁ、確かに魂云々の話しは信じられないかもしれないけど」
「あ、いや。そこは完全に理解した。大丈夫だ」
「アッハイ」
オタクの理解力を舐めないでほしい。時として、それはアカシック・レコードにすら匹敵する。
「俺が愕然としたのは、まぁなんだ。
死ぬ覚悟は確かにあったけど、まさかこういう形になるとは思わなくてな。死んだ後の世界とか、そこそこロマンがあったんだけど、まさか死んでも死にきれないとは」
「それはキミとその夜咬の相性な余程あってたんだろうね。運命論とかはあんまし好きじゃないけど、キミはある意味なるべくして夜咬の、刻風 雫の眷属になったんだよ」
「…そうか、」
これは彼女なりの慰めなのかどうなのかはわからないが、それでも今の俺には十分すぎるほどだった。
最初は騙されたとはいえ自分の不始末で、そこを助けられ、死にそうなところも助けられ、ずっと恩を返したいと思っていた。それが、ちゃんと果たされてよかった。
ゲームにもアニメにも漫画にも、最終回があるように、ここが俺の最終回だということだ。
ならば、大人しく成仏できる。
「まぁ、どうあれこうあれキミは生き返らせるんだけどねぇ」
「あっれぇ??おっかしいぞぉ??」
さっきまでの俺のシリアスはなんだったのか。
10年に1度くらいのシリアスくらいちゃんとやらせてほしい。
いや、なんとなく展開的には察しがついてたけども!!
「キミにはアキバを救ってくれた恩があるし、つかぶっちゃけアレはバグみたいなものでさ。元々はあのダンディなおっさん倒したら装置も止まるはずだった。
でも装置は止まらず、映像バグみたいに残ったもんだから普通死ぬはずじゃないキミまで死んじゃった。それは神として許されないからねぇ」
一人云々言っているがつまり生き返れるということでよろしいんでせうか?
「あー、ただしキミが生き返るのは別の世界ね。同じ世界に既に滅んだはずのキミの身体があると色々めんどくさくて、パラドックス的な色々が」
「まぁ、色々あるんですね。分かりました」
別の世界というのは、少し残念だが、まぁそこはそれで頑張るしかないのだろう。
さっきの口ぶりからすると、どうやら生き返れるのではなく、生き返らなければならないって感じだし、拒否権はない。
「んで、まぁ生き返るにあたって色々とキミには恩やら迷惑をかけちゃった部分があるので特典なんかをあげちゃおうってことなんだけども、なにがいいかな?
人間に戻るとかでも可能だよ?太陽の光浴びれないのは辛いでしょ?」
「いや、身体は出来ればこのままがいい。俺はこの身体に後悔はないし、繋がりの証明みたいなものだから。だから別ので頼みます」
「なるほど、おっけー。
じゃあどんなのがいいかな?キミだと…元々のスペックはいい感じだし…それを生かすって意味で……よし、こんなかんじでとうかね?」
そう言って彼女はなにか古めかしい紙、(たしか羊皮紙)を渡す。
そこには以下のようにかかれていた。
・以前の世界の武器、服をそのまま移転
・好きな時、好きな場所で開ける4次元ポーチ
・身体能力強化
・完全な夜咬化
「身体能力強化っていっても、急にチートになる訳じゃないよ?ただある程度の限界値をとっぱらっただけで、生活中に力出しすぎて困ることは無いと思うよ」
「この完全な夜咬化っていうのは?」
「キミは今のところ眷属って扱いだからね。それをモノホンの夜咬にしてあげるんだよ。まぁ自分が眷属作れる以外特に変わったことはないけどね。強いて言うなら人間じゃない分老いるスピードがめちゃくちゃ長いくらいだよ」
なるほど、まぁその分未来のゲームやらアニメやらを楽しめるとおもえば、それはそれでいいか。
「さて!めんどくさい手続きはここまでにしておいて、そろそろキミを送り出さないとね」
そう言ってアキバ神様は手を振りかざす。
すると何も無かったはずの空間にはいつの間にか仰々しい扉が出来上がっていた。
「ホントはゲームとかしたいところなんだけど、まぁそんな時間もおしい。さぁ行きたまえ!」
そう言って彼女はニコリと微笑む。
その顔はよく見た、アキバの人達の笑顔とそっくりだった。
「…いつも、アキバを見守ってくれてありがとうございます」
俺は一言そう呟いて扉に向かう。
まだ見ぬ世界。まるで自分が主人公になったかのようだ。
前の世界でも色々あったけど、新しい世界でも色々あるんだろう。そんな気がする。
でも、こわくはない。むしろワクワクしているのだ。
「さぁいくぜ!」
高鳴る胸を押さえ、扉を開いた。
主人公。
未だに名前が無い。次も出ない。
アキバ神。
アキバの守護神。アキバの人間の願いや想いから生まれたため神様業界ではかなりの強さを誇る。
ただしアキバの人間から生まれたため基本ゲームなどにしか興味が無い。
因みに「ゼビ〇ス六画面クリアは俺もできる」とどこかの名無しさんが言っていたらしい。
CVイメージは悠〇碧さん。だってかわいいやん