アキバ神拳伝承者の異世界譚(ハイスクールDxD+A) 作:グリムリッパー02
気づけばお気に入りが99…ある意味100より凄いんじゃなかろうか
「あー、暇だなぁ」
堕天使騒動から数日が過ぎた今日。
俺はやることもなく学校をプラプラと歩いていた。
部活は?と言う奴もいるかもしれないが、今日は休みである。
というのも、話は数時間前に遡る。
〜・〜・〜・〜・〜・〜
「使い魔、ですか?」
イッセーの疑問の声が聞こえた。
放課後、いつものようにみんなで俺の持ってきたゲームをしたり、俺の持ってきたお菓子を食べたり、俺の持ってきた漫画を見たりと、思い思いの部活動に励んでいた。
え?ここ何部だって?オカルト研究部に決まってるじゃん。
アーシアも、ここ最近では部活どうにも慣れ、漫画の知識から日本語を勉強している。
『ナナシさん!ここの俺の右手が疼くってどういう時に使うんですか?』
『右手がかゆい時に使うんだ』
『アーシアに変なこと教えんな!!違うからなアーシア!』
うん。人が頑張る姿は立派だね。
まぁそれでもとの話にもどるのだが、
「そう、使い魔。あなたとアーシアはまだ持っていなかったわよね」
そう言って部長達は自分の使い魔を見せる。部長はコウモリ、姫島先輩は小鬼、小猫は白猫、木場は小鳥だ。
「小猫は猫なんだな」
「……シロです」
「可愛いなぁ」
頭を撫でてやると目を細めて喉を鳴らす。
俺は犬派か猫派、どっちかっていうと猫派だ。
「…よかったねシロ」
「にゃう」
返事をするように鳴く白猫。
なるほどこれが使い魔か。
「使い魔は悪魔にとって基本的なものよ。主の手伝いから、情報伝達、追跡にも使えるわ。臨機応変に扱えるから、二人とも手に入れないといけないわね」
「使い魔さんですかぁ……」
「使い魔かぁ………」
イッセーもアーシアもまだ見ぬ自分の使い魔に思いを馳せているよだ。
イッセーの場合、アダルティなゲームでよく見る触手だったり服だけ溶かすスライムだったりを使い魔にしそうな気もする。
もはや魔王間違いなしの所業だな。って、悪魔だからむしろそれがいいのか。
なんて思考を巡らせていると、視界の端が赤色に光った。
前に見た魔法陣だ。確か転送用とか言ってたけど、どこかに行くのだろうか。
「部長、準備整いましたわ」
姫島先輩が部長へ報告する。準備ってことはやっぱりどっかいくっぽいな。何も聞いてないけど、どこいくってんだ?
イッセーとアーシアも小首をかしげている。どうやら向こうも聞いてないらしい。
「というわけで、さっそくあなたたちの使い魔をゲットしにいきましょうか」
笑顔出そう告げる部長さん。
有言実行が我らがオカ研部長なのだ。…なんてな。
とはいえ、行くことに決まってるなら準備しないといけない。
使い魔ってどんなところにいるんだろうか。モンスターの王者になってバトルロードとか出ちゃったらどうしよう。
逸る気持ちを抑え俺も準備に取り掛かる。つっても、大して持っていくもんもないけどね。
こういう時四次元ポケットって便利だよね。
神様万歳!
「あら、ナナシは何をしてるのかしら?」
「何って、行く準備に決まってるだろ?」
「……………あっ」
おい、なんだそのたっぷり間を置いた『あっ』てのは。
体育祭とか終わってクラス会やろうって流れになったけど、別に呼んでなかった奴が来ちゃったみたいな。おいやめろ俺!なんで自分から死のうとしてんだよ。辛い。
部長さんはポリポリと頬を掻きつつ、どうしたものかと呟いた。
おい聞こえてんぞ。独り言はもっと相手に聞こえないようにして傷つくんだから。
「ごめんなさい。この魔法陣眷属用なの」
「お、おう。つまり?」
「えっと、その〜」
珍しく視線を泳がせる部長さん。
……なんとなく察してしまった。
「ナナシはお留守番ね」
そう言ってウインクした。
(´・ω・`)そんなー。
〜・〜〜・〜・〜・〜・〜・〜
というわけで、絶賛お留守番中なのだ。
クソッ、部長なんてオークにでもあって「くっ殺」してればいいんだい!!
いや、べつに部長さん悪いわけじゃないけど。
とはいえそういうことなら初めから言ってくれれば俺も期待せずに済んだのにという気はある。
「あー、何しようかなぁ」
誰もいない部室で静かにゲームってのもなんだかつまらなかったので、こうして学校を体験しているのだが……そうそう楽しいことなんてないよなぁ。あ、今のがフラグになったりしないかな。
つーかこの学校ってどんだけ広いんだよ。森まで学校の一部とか……。
いくら小中高大で一貫の学校だったとしても広すぎるだろ。
……やっぱりこれも部長さんのマネーパワーのなせる技なんだろうか。
あの人貴族らしいし、実際あの旧校舎使ってるのってオカ研だけだしな。
学校側に悪魔であることがバレてても可笑しくない。
つか、むしろ実権握ってるのが悪魔だったりして。
『きゃっ!』
歩くこと数分。
突然どこからか女の子の悲鳴が聞こてきた。
短い悲鳴だったし、学校だしでそんなに心配はいらないかもしれないが、困ってるのなら助けに行きたい。
ちょっと遠くだが、気になる。
「探しに行くか」
気になった俺はとりあえず声の主を探すことにした。
べつにフラグが立ったことに期待したわけでも、暇だから何が起こってほしいとも思ったわけじゃない。
違うよ?違うからね?違うったら違うんだからね!
とにかく、俺はその場から駆け出した。
…………………。
「確かここら辺だったと思うんだけど」
校舎の中をキョロキョロと見渡す。
ここら辺は理科室等の特別教室があるところだ。
にしても、マジで広い。ここに来るまでにもう迷ったんだけど…。
まぁとりあえずそれは置いといて、今は声の主を探そう。
なにか危険なことに巻き込まれた可能性も少しはあるしな。
そうして耳を澄ます。
あたりの音を少しでも拾いやすくするために目を瞑り、呼吸を整える。
そうして夜咬の五感をフル活用させる。
そうして意識を集中させていた。その時だった
ドカーン!!
「!? ば、爆発!?」
僅かだが空気を震わせる爆発音が響いた。
ここから結構近い。
もう1度耳を澄ませると、今度は女性の声。
なんと言ってるかは聞き取りずらいが、とりあえず生きてはいるらしい。
(もしかしたら、虫の息とか…)
嫌な予感に冷水をかけたような冷や汗が背中を滑り落ちる。
だが、今ならまだ間に合うかもしれない。
その場から駆け出し、音の方向へと向かう。
「ここだ…」
ついた先は家庭科室だった。
額を垂れる冷たい汗を拭い、勢いよくドアに手をかける。
ガラッと音を立てて開かれるドア。
そこにいたのは……
「え?」
身体中が白濁とした液だらけになっていた眼鏡姿の少女だった。
〜〇✕△□〜
「見苦しい所をお見せしました」
「あ、いや。こっちこそ急にドアを開けて、悪かったな」
深々と頭を下げる少女。見たところ怪我はなさそうだ。
とはいえどうしてあんな姿でこんなところにいたのだろうか。
というか、この人はいったい??
「私は支取蒼那と言います。この学校の生徒会長をしているものです」
「あ、ご丁寧にどうも。俺は七瀬七志です。って、生徒会長さんだったんですか?!俺そうとは知らず……」
慌てて頭を下げる。
まさか年上で、しかもこの学校の生徒会長さんだったとは…。そうとは知らずにタメ口で話しちゃったよ。
「あ、いえ。お気になさらず。貴方は見たところ2年生ですよね?あまり顔は見かけたことありませんが…」
「あぁ、俺ここ最近ここに転入してきたばかりなんですよ」
「そうなのですか?…あぁ、最近噂になってる転入生とは七瀬君のことだったのですね」
う、噂?俺なんか変なことしたかな?
いや、割とでかい学校だし俺以外の人かも…
「なんでも転入早々クラス全体を巻き込んで討論会を開いたり、道行く困ってる人を助けて回ったり、夜中にネギを背負って街を徘徊したりしている凄い転入生がいるとか」
「色々とすいませんでしたァァァァア!!」
それ俺しかいないやん!!ネギとか俺ぐらいだろ!アキバにはめっちゃいたけど!!
つかなんでそんな有名になってるのん?
クラスのことはさておいて、他のことは別に見られてる気配もなかったのに……人の噂ってこええ。
「いえ、べつに謝らなくてもいいんですよ。討論会やネギ?のことはともかく人助けのことに関しては住民からも感謝の言葉が学園宛に寄せられているくらいなのですから。
今度生徒会室に来てください。貴方宛の手紙やメールが沢山来ているんです」
そう言って生徒会長さんは穏やかに微笑む。
まるで自分のことを褒められた様に嬉しそうに。
多分、この人はこの学校が大好きなんだろうな。だからこそ、この学校の生徒が褒められると自分が褒められた様に嬉しいんだろう。
今度生徒会室に行かないとな。
しかし、それはそれとして、だ。
「あの、つかぬことをお聞きしますが生徒会長さんはどうしてこんなところに?しかもエプロン姿で」
そう、問題はそこだ。
さっきの爆発音といいその前の悲鳴といい、何かやっていたことは間違いないんだが、どうしてもそれが今の状況と当てはまらない。
いったい何をやっていたというんだろうか。
それを聞くと生徒会長さんはすこし気恥しそうに顔を染め、明後日の方向を向く。
ちょっと可愛いと思ってしまった。
しかし、何がそんなに恥ずかしいのだろう?
「実は、ケーキを作ろうと思ったのですが、失敗してしまって」
「ケーキですか?そりゃまたなんで」
「実は生徒会に新しいメンバーが入ったのでその歓迎会をしようと思ったのです。それで私がケーキを焼いてお祝いしようと思ったのですが」
「失敗してしまったと」
「えぇ。まさか爆発するとは」
「爆発!?」
ケーキで爆発って何入れたらそうなるんだ?ベーキングパウダーでもそうはならないだろ。
「空気を入れすぎたのかしら…」
「さ、さぁどうでしょうかね」
流石にあなたの作り方が間違っているのでは?とは言えなかった。
とはいえケーキか。そういえばアーシアの歓迎会をした時も部長さんがケーキを作ってきたな。
この学校の部長は歓迎会にケーキを作る習わしでもあるのだろうか。
「……やはりやめた方がいいのかもしれませんね」
「え?」
生徒会長さんはどこか寂しそうに、ため息とともにそう漏らす。
「素人の作ったケーキなんて、あの子達が食べても喜ばないでしょう。それよりも買ってきたケーキの方がきっと美味しく食べてもらえる」
言葉の割に表情は暗い。
きっとこの人も自分で作ったものを食べてもらいたいに決まってる。
それにこの表情には見覚えがあった。
「…………。」
あたりを見渡す。
材料は多めに買ってきていたのかまだ割と残っている。
少なくともあと1回のケーキを作るには十分な量だ。
………よし。
「………なにをしているのですか?」
俺は袖をまくりボウルなどの道具を念入りに洗っていく。
拭く際も水っけが残らないよう綺麗に拭き取った。
他にも使う材料や道具をわかりやすく綺麗に並べた。
「何ってケーキを作るんですよ」
「貴方がですか?」
「これでも割と料理は得意なんです。でも今回作るのは生徒会長さんです。俺はその手伝い」
「私がですか?」
驚いたように目を見開く。
貴方が作らないんじゃ誰が作るっていうんだ。
一通り道具を揃え終えた俺は近くにあった予備のエプロンを着る。よし、これで準備万端だ。
「誰かに食べてもらいたいって気持ちは俺もよく知ってますから。だから生徒会長さんも諦めず頑張りましょう。
大丈夫です!サントアンヌ号に乗ったつもりで任しといてください!
ちゃんとフォローしますから」
そう言って笑いかける。
誰かに美味しいものを食べてもらいたいって気持ちは俺だってよく知ってる。
ナナの喜ぶ顔が見たくて、それでも最初の頃は何回も失敗した。
でも諦めずに挑戦していけばきっと成し遂げられるんだ。
「だから生徒会長さんも頑張りましょう」
「………フフ、そうですね。私としたことがこの程度で弱音を吐くとは」
お、割と負けず嫌いなんだなこの人。ノリノリじゃないか。
「それじゃよろしくお願いします。七瀬くん」
「任されました!」
そうして、俺達のケーキ作りが始まった。
「「できた………」」
そうして、出来上がったケーキを見て呟いた。
え?過程?んなモン全カットだよ。わざわざケーキ作りも小説で見るくらいならクックパッド先生で事足りるだろ。
「にしても、割と見栄えよくできましたね。飾り付けとか完璧じゃないですか」
「そ、そうですか?ありがとうございます」
出来上がったケーキは形も悪くなく、どこからどう見ても美味いケーキと言った風だった。
特に最後の飾り付けは生徒会長さんが頑張ったお陰か、プロ顔負けの出来になっている。
流石だ。
「とりあえずはこれで完成ですね」
「えぇそうですね。ありがとうございました」
「べつに俺は大したことしてないですよ」
「いえ、七瀬くんがいてくれなければここまで綺麗に出来なかったでしょう。それに、多分あそこで諦めていました。なのでこれは七瀬くんのお陰です」
……。そこまで真っ直ぐに褒められると、中々恥ずかしいものがあるのだが、まぁそこはありがたく貰っておくとしよう。
「あの、七瀬くん?」
「はい?なんですか生徒会長さん」
「その、ずっと聞きたかったことなのですが、何故生徒会長さんなのでしょうか?」
「??? だって生徒会長なんでしょう?」
「それは、そうですけど……はぁ」
何故かため息を吐く生徒会長さん。俺何が悪いことしただろうか。
もしかして実は生徒会長ではなかったとか…?
は、ないか。流石に。
「まぁいいです。今度からはソーナと呼んでください。それから敬語もいりません」
「へ?なんで?」
「なんででもです!いいですか?」
「えー。わ、分かった。これでいいか?」
「はい。それでいいです」
そうしてニコリと微笑んだ。
うーん、気を許してくれたってことでいいんだろうか。
キーンコーンカーンコーン
と、そんなことをしていると完全下校のチャイムが流れる。
もうこんな時間か。結構作るのに集中していたんだな。
「いけませんね。もうこんな時間ですか」
「だな。片付け手伝うよ」
「いえ、それくらいは私一人で大丈夫です」
「そうか?」
「はい。今日はありがとうございました。また今度生徒会に遊びに来てください」
「おう、絶対いくよ。ソーナもお疲れ様。ケーキ喜んでもらえるといいな」
「はい!」
最後に花のような笑顔を咲かせて、彼女は片付けへと戻っていった。
ずっとここにいると気を使わせそうだし、俺はそろそろ帰るか。
夕飯の支度もあるしな。
そうだ。今日は試しにケーキでも作ってみよう。
小猫は甘いもの好きだし、多分使い魔探しで疲れてるだろうからな。
ここに来た時とは違って晴れやかな気分で俺は家庭科室を後にした。
今日のご飯は何にしようかなぁ。
今回のオチ。
ソーナside
現在、私は使った食器や道具を片付けています。
今日は色々ありました。
まさかリアスが言っていた『ナナシ』くんとこういう形で出会うことになるとは。
夜咬。聞いた話だと東洋の吸血鬼のような存在。
太陽の光にめっぽう弱いのと繁殖能力が低いこと以外はまさに人外そのもの。
この前の堕天使との一件でも、彼は堕天使三人を相手に立ち回ったという。
正直、どんな化け物なのかと思っていましたが、実際はただのお人好しな青年で少々肩透かしを喰らった気分です。
お陰で眷属への勧誘をするタイミングを逃してしまいました。
まぁ今回は偶然会っただけですし、それに…………。
私は出来上がったケーキに視線を落とす。
「借りが出来てしまいましたね」
誰もいない家庭科室でそう呟く。
と、こんなことをしてられませんね。そろそろ生徒会室に戻らないと準備を任せている椿姫達に申し訳ないですね。
そうしてボウルを持ち上げようとした時、そこにつ映っていた自分の顔に驚いた。
笑っていた。私が?
これでもいつでも凛と構えていようと心がけているつもりなのですが、どういうわけか顔が緩んでいました。
何故?考えても分かりません。
しかし、悪いことだとは感じません。
この理由がいつかわかる時が来るのでしょうか。
「〜♪ 〜〜♪」
私は片付けを再開させました。
すこし鼻歌交じりですが、誰も見ていませんしたまにはいいですよね?
夕日が差し込む教室で、私と彼が作ったケーキは輝いて見えました。
この日行われた歓迎会でとあるケーキを食べたある生徒会書記の男子生徒が笑顔のまま倒れたという事件が発生したのだが……それはまた別のお話。
ナナシくん。
伝説のフラグメーカー。主人公とはフラグを建てる戦士である(某グラップラー風)
ソーナちゃん。
見た目が良くなったせいでショック作用が強くなり凶悪性が増した。
原作では元々形は悪くなかったと思いますが、そこはそれ二次創作のご都合設定ということで。
匙くん。
未登場。死亡(気絶)
小猫ちゃん。
今回の勝ち組。
ケーキはぺろりと平らげました。