アキバ神拳伝承者の異世界譚(ハイスクールDxD+A)   作:グリムリッパー02

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※亀甲縛りではありません

 

「…………うっし!これでいいな」

 

 

グッとロープを引っ張り固く結ぶ。

目の前では下着以外を綺麗にひん剥かれて気絶して、ロープでぐるぐる巻きにされ堕天使三人組の姿があった。

 

 

「本当はイッセーを虐めたこの子達にはそれ相応の報いを浴びせなきゃいけないんだけど…」

 

「流石にこの姿以上のことをするのは憚られますわ」

 

「おい、なんか俺が酷いことしちゃったみたいな言い方すんやめてくれまいか」

 

 

こっちとしては真面目に戦っただけなんですけど?

 

 

「まぁ、ね」

 

「正直、相手に同情すら覚えますもの」

 

 

………そんなにひどいことしたかな?アキバじゃ普通だったんだけど…。

 

まぁいいや。とにかく勝ったんだから。勝てば官軍負ければ賊軍ってな。

勝てばよかろうなのだァ。

 

 

パリーン。

 

 

「ん?」

 

 

何処かでガラスの割る音がする。

どうやら教会の裏手のようだ。

俺達はミッテルトちゃん達をとりあえず抱え、音の下方へ向かった。

 

 

「ん?小猫じゃないか」

 

「……ナナシ先輩?」

 

 

そこにいたのは小猫だった。なんか女の人を引きずってる。

まさか…

 

 

「食べるのか…」

 

「違います」

 

 

パシィンとハリセンで叩かれた。

割と痛いのはもしかして駒の力を使ったからだろうか。

でも、じゃあなんでこんなところに?

 

 

「これは、堕天使のレイナーレじゃない。どうしてこんなところに?」

 

「イッセー先輩がぶっ飛ばしました」

 

「ッ!?…そう、イッセーが」

 

 

感慨深く呟く部長さん。

確かによく見てみれば最初にこの世界に来た時に襲ってきたレイヤーさん。もとい堕天使だった。レイナーレとレイヤーって似てるよね。似てない?あ、そう。

 

しかしイッセーがなぁ…

アイツは自分の過去と立ち向かうことが出来たようだ。

 

 

「それじゃ、シスターさんも無事だったのか?」

 

「………それは…」

 

 

言いよどむ小猫。

……まさか。

 

 

「…とにかく、来てください」

 

 

小猫の言葉に俺達は黙って頷いた。

 

 

 

 

〜〇✕△□〜

 

 

教会の中は酷い有様だった。

元々ボロっちかったのだろうが、中にあるソファはボロボロに壊され、壁のいたるところに傷跡がついている。

祭壇の下には隠し通路っぽいものが見受けられた。

そしてフロアの中央、ステンドグラスからの月光が降り注ぐ中で、イッセーは泣いていた。

その腕に金髪の少女を抱いて。

横にいる木場も、なんと声をかけたらいいかわからないと言った表情だった。

 

 

「…よぉ、イッセー」

 

 

俺の声に振り返り、慌てて涙を袖で拭う。

 

 

「よぉナナシ。お前今までどこに…ってうぉい!なんだその下着姿の女の子とおっさん!?

お前まさか…!?」

 

「おいお前までそんな顔すんのかよ。つかお疲れ。ほれ、褒美にこのおっさんをやろう」

 

「要らねぇよ!!」

 

 

元気よく返すイッセーだが、無理してるのが丸わかりだった。

やがてその元気もなくなったのか、へたりと地面に膝をつく。

 

 

「………ごめん、ナナシ。俺、アーシアを守れなかった」

 

「…ま、その話は後だ。まずはコイツをどうにかしないとな」

 

 

ポロポロと悔し涙を流すイッセーの前に、レイナーレー置く。

イッセーの気持ちも、わからない訳では無い。

悔しいのだ。アーシアを奪っていった奴らが。そして何より、自分が守ってやれなかったことが。

これに、気にすんなと返すのはとても簡単だ。

だけどそうじゃない。

男にとって守れなかったって言うのは、一生の傷なのだ。

だから、そんな簡単なことで癒えたりしない。

 

 

「とりあえず、アレから話を聞きましょうか。朱乃」

 

「はい。部長」

 

 

姫島先輩が魔力で作り出した水をレイナーレにかける。

気絶していたところに水をかけられ、レイナーレは咳き込んだ。

 

 

「ご機嫌よう。レイナーレ」

 

「…グレモリー一族の娘か…」

 

「はじめまして私はリアス・グレモリーよ短い間だけど、お見知り置きを」

 

 

部長さんは和かにあいさつするが、レイナーレは部長さんを睨んだままだ。

 

 

「してやったりとおもってるんでしょうが私が危なくなった時に協力者たちが私をーー」

 

「無理だ」

 

 

レイナーレの前にミッテルトちゃんたちを置く。

レイナーレの顔は驚愕の表情に包まれた。

 

 

「そうね。三人の堕天使はナナシが倒してしまったもの」

 

「う、嘘だ!!たかが人間にそんなこと…」

 

「でも事実よ」

 

 

部長さんの言葉にレイナーレは口を紡ぐ。

その時だった。

 

 

「…う、うぅ…ここは…?」

 

 

ミッテルトちゃんが起きた。

まぁ一番最初にストリップさせたし、そろそろ時間だったんだろう。

 

 

「ミッテルト!!」

 

「ッ!?レイナーレ姉様!?」

 

 

ミッテルトちゃんはレイナーレに近づこうと前のめりになるが、ロープが引っ張ってそのまま倒れてしまった。

だが、レイナーレはそんなことはお構い無しと、ミッテルトに詰め寄った。

 

 

「ミッテルト!あなた早く私を助けなさい!!」

 

「……すいません、姉様。ウチもう力が出なくて…」

 

 

申し訳なさそうに声を落とすミッテルト。

だが、それはこのレイナーレの為に戦った結界だということを、俺達は知っている。

あの姿は、敵であるにもかかわらず俺を熱くさせた。

 

だが、レイナーレは違った。

 

 

「何言ってんだッ!!いったいなんのためにお前を拾ったと思ってる!!この役立たずの死に損ないがッ!!」

 

「………すい、ません…」

 

 

吼えるレイナーレに、ミッテルトはただ涙を流す。

見ればわかる。こいつの中には、ミッテルトのような想いは欠片もなかったのだ。

 

 

「…哀れね」

 

「なによ!言っておくけど今回は偶然負けただけよ!私が油断しただけ。そうでなければ…この傷を今すぐにでも癒してあの坊やもお前も殺してやる!」

 

「無駄よ。あなたじゃイッセーに適わないもの」

 

 

部長さんがイッセーの左手の籠手に視線を向ける。

 

「…赤い龍。レイナーレ。この子の神器はただの神器ではないわ」

 

 

部長の言葉にレイナーレが怪訝そうな顔になる。

 

 

「『赤龍帝の籠手』ブーステッド・ギア。神器の中でもレア中のレア。十三種確認されている神滅具の一つ。言い伝えでは10秒ごとに力を倍加させいずれは神や魔王すら屠る力を与えられる」

 

「赤龍帝の籠手…!?あの忌まわしい神器がこんな小僧に宿っていたというの!?」

 

 

レイナーレは目を見開かせ、恐怖で身体を震わせる。

神滅具、ってのは確か部長さんから聞いた話にもあった。

現在、十三種確認されていてその全てが神や魔王といった頂上的な存在に対抗出来るだけの力を備えているチート級アイテム。

それがイッセーの中に眠っていたってことか。

 

 

「それじゃ、最後のお務めをしようかしらね」

 

 

部長さんの目が鋭くなる。

 

「消えてもらうわ、堕天使さん」

 

 

部長さんはレイナーレに近づきそう言い放った。

冷たく、殺意のこもった一言だ。

 

 

「待ってくださいッス!」

 

 

それに待ったをかけるものがいた。

言わずもがなミッテルトだ。

ミッテルトは身体を震わせながらも、言葉を紡いでいく。

 

 

「こ、殺すなら、アタシにして欲しいッス」

 

「……さっきの彼女の言葉を聞かなかったわけじゃないと思うのだけれど?」

 

「聞いたッス。それでショックも受けたッス。それでも!」

 

 

ミッテルトは顔を上げ部長に向き直る。

ここからでも部長さんの殺気はビンビンかんじるのに、ミッテルトはそれに真正面から向き合った。

 

 

「それでも…大好きだった人には死んで欲しくないんッスよ」

 

 

その言葉に部長さんも手が止まる。

…ここは俺の出番かね。

俺は部長とレイナーレの間に割り込む。

 

 

「部長、俺からも頼む」

 

「ナナシ!?」

 

「正気かい?」

 

「…堕天使の肩を持つというの?」

 

 

底冷えするような部長の声。怖い。

が、ここで引いては男が廃る。

 

 

「何も堕天使の方を持つってわけじゃない。何も殺さなくてもいいって言ってるんだ。

それにこれがお前達の戦争の火種になるかもしれないだろ?そこら辺、部長さんはなんて報告するんだ?」

 

「一応、堕天使との小競り合いと報告するつもりよ。場所も捨てられた廃教会だし、特に問題は無いわ」

 

「それは悪魔側の事情だろ?小競り合いで戦争のなった例なんて歴史が幾らでも物語ってる。向こうがいちゃもんつけてくる場合もあるからな」

 

「それじゃ、この堕天使はどうするの?」

 

「こいつら含めて正当な施設で幽閉させるのが無難だろう。もしかしたら堕天使側の情報が引き出せるかもしれない。

殺すよりかは、そっちの方がメリットが高いはずだ」

 

 

勿論、これはただの建前に過ぎない。

本音はミッテルトの言葉に胸打たれただけだ。

けれど、こういう時は建前の方がよく効く。

 

 

「…はぁ、まるで私が悪者みたいじゃない。わかったわ。そうしましょう」

 

 

その言葉に顔を明るくさせる俺とミッテルト。

つか悪魔なんだから悪者は当たり前…って痛い!部長さん無言で頬をつねらないで!!めっちゃ痛い!!

 

 

「イッセーも、それでいいかしら?」

 

「あ、はい。俺は一発殴ったんでわりとスッキリしました。でも……」

 

 

そういうイッセーの視線の先には、先ほどと同じようにシスターさん、アーシアさんの姿があった。

 

 

「アーシアは、もう……」

 

「その件だけど…」

 

 

そう言って部長さんは一つの駒を取り出す。

 

 

「その子、生き返らせられるかもしれないわ」

 

 

そうしてウインクした。

なんだかんだ、部長さんも甘い性格だと思う。

 

 

 

 

〜〇✕△□〜

 

 

翌日。

俺と小猫は朝からオカ研へと向かうため登校していた。

 

その途中。

 

 

「あの、ナナシ先輩」

 

「ん?どうした?」

 

「先輩はどうしてあの時あの堕天使を助けたんですか?」

 

「あー、それな」

 

 

まぁ聞かれるよな。

どう言っても、俺がミッテルトを助けたことは明白だろうし、レイナーレを助けることになったのも事実だ。

あの場ではああいう事になってしまったが、本音は確かに助ける気満々だったし。

 

言うか言わまいか迷ったいたのだが、身長差から繰り出さられる小猫の上目遣いに負け、ついつい口を開いてしまった。

 

 

「べつに大した理由があるわけじゃない。ただ、かっこよかったからな」

 

「かっこよかった…ですか?」

 

「おう。アニメでもゲームでもよ、かっこいいキャラって敵であろうとなんだろうと応援したくなっちまうんだよ。

だからあの時はミッテルトのあの真摯な姿がかっこよく見えてついな」

 

 

…やばい。結構言ってて恥ずかしくなってきた。

何語ってんだ俺?

 

 

「………ぷっ」

 

「おい何も笑うことはないだろう」

 

 

笑われたことでさらに恥ずかしさが増す。

ちょっと小猫さん酷くないですか?

 

 

「いえ、すいません。余りにも理由がおかしかったので」

 

「………うるせぇよ」

 

「でも良かったです。先輩が………」

 

 

そこで小猫の言葉は切れた。

ん?先輩が?なに?

 

 

「…いえ、なんでもありません」

 

「んな、気になんだろ!先輩がなんなんだよ!」

 

「先輩がおかしいって話です」

 

「それはもういいって!」

 

 

小猫は教えるつもりは無いと頑なに躱していく。

こんな時間も、楽しいと思えてしまってるあたり、俺がこの世界に来たことは間違ってなかったのだろう。

 

そうやってじゃれ合いつつ部室を目指していると、木場と姫島先輩に出会った。

 

 

「あ、おはようナナシくん。小猫ちゃん」

 

「おはようございます、2人とも」

 

「おぉ、おはよう二人共」

 

「おはようございます」

 

 

俺たちは並んで部室へ行く。

何気ない会話していると、部室についた。

姫島先輩が手を伸ばしたところで、ピタリと止まる。

 

 

「どうかしたんですか?」

 

「シー。ですわよ」

 

そう言って手招きする姫島先輩にしたがってドアに耳を澄ます。

 

 

…あぁ、なるほど。

 

俺たちは皆で顔を見合わせた。

 

「もう少し外で待ってるか」

 

「……ですね」

 

そう言って皆で笑あった。

 

 

部室では、三人の楽しそうな声がひびいていた。




ナナシくん。
人を憎まず罪を憎む系主人公。

イッセーくん。
影ながら壮大なバトルを繰り広げていた本編主人公。

ミッテルトちゃん。
可愛いとかっこいいは正義系主人公

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