アキバ神拳伝承者の異世界譚(ハイスクールDxD+A)   作:グリムリッパー02

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俺何もしてねぇ

「もう教会には近づいちゃダメよ」

 

 

その日ちょっと遅れて部室に行くとイッセーが部長さんからめちゃくちゃ怒られていた。

なにを言っているか分からねぇ(ry ……なんてことはなく、大方今日会ったシスターさんの事だろう。

よく考えなくても悪魔が教会に行くのは不味いよな。

まぁ俺もあとから思ったわけだけども。俺も怒られちゃったりとかするんだろうか。やだなー。

 

 

「やぁ、ナナシくん。こんばんわ」

 

「よ、木場。まだアレかかりそうか?」

 

「あーまぁね。下手したら戦争とかにもなってたかもしれないから」

 

 

マジかよ。そんなに物騒なの教会って。

 

 

「まぁ早々そうなりはしないんだろうけど。…そうなれば僕としても好都合なんだけどね」

 

「ん?悪い最後の方なんて言ってるか聞こえなかった」

 

「いや、なんでもないよ」

 

 

なにやら木場から不穏な空気を感じた気がしたんだが、気の所為だったらしい。

いつもの爽やかイケメンな木場だ。

ってかさっきの俺なんか難聴系主人公ぽくなかった?

 

 

「ところでこのあと一勝負どうだい?やっぱり速さで負けるって言うのは悔しくてね。

あれから僕も少し練習したんだ」

 

「お、いいねぇ。かかってこ 「部長」 どわっ」

 

 

木場からの勝負を受けようとしたところで突然後ろから突き飛ばされる。

いや、ドアの前にたってた俺も悪いけどさ、そんなに勢い良く開けなくてもいいじゃない。

 

開けたのはどうやら姫島先輩のようだ。

あらあらごめんなさいとこちらに微笑むが、その顔はすぐにキリッと真面目な顔に変わる。

何かあったのだろうか。

部長さんも説教をやめてこちらを見つめていた。

てかまだ続いてたのか。

 

 

「どうしたの?何か問題?」

 

「はい。実は、大公さまからはぐれ悪魔の討伐任務が届きました」

 

 

はぐれ悪魔??はぐれメタルの親戚??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐれ悪魔。

 

もちろんはぐれメタルの親戚なんかじゃなく、読んで字の通り、はぐれた悪魔の総称らしい。

曰く、主を裏切り、または殺し『主なし』の状況に置かれ逃亡した悪魔のことを指すそうだ。

この状態の悪魔は非常に危険で、己の欲のため一般人を襲うこともあるらしい。

そのため、見つけ次第報告と消滅ってのが鉄則となっているそうだ。

 

 

「「血の匂い…」」

 

 

件のはぐれ悪魔の根城に向かう途中、あまりの匂いに俺と小猫が鼻を抑える。

鉄錆のような、それよりももっと生物じみた嫌な匂いが漂っている。

うぇ、吐きそ。

 

 

「夜咬は嗅覚もいいの?」

 

「まぁな。五感は普通の人間よりいい。にしてもこれは……うぇ」

 

「…何日も置かれた腐った匂いがします」

 

「そう。みんな、各自警戒態勢でいくわよ」

 

「「「了解」」」

 

 

そうして根城にしてるという館にはいる。

そこにいたのは、

 

 

「不味そうな臭いがするぞ?でも美味そうな臭いもするぞ?あまいのかな?苦いのかな?」

 

 

出てきたのは上半身女性、下半身四足歩行の化け物だった。両手には槍らしき獲物を持っている。

しかし、驚くべきはそこではなかった。

 

 

「は、裸だと…ゴクリ」

 

 

そう、相手が裸なのだ。

いや、イッセー。流石にあの化物まで守備範囲に入るのはどうかと………いや。しかしよく見れば案外そんなことはなんか行けそうな気がしてきた。まって、なんか開きそう。

 

まぁそんなことは置いといて。相手が裸なら俺が出る場がない。

今回は大人しく見学しよう。

 

 

「はぐれ悪魔バイサー。主の元を逃げ、己の欲を満たすためだけに暴れ回るのは万死に値するわ。グレモリー公爵の名において、あなたを消し飛ばしてあげる!」

 

「こざかしぃぃぃぃ!小娘ごときがぁぁぁ!その紅の髪のように、鮮血に染めてやるるわぁぁあ!」

 

 

部長さんの言葉に化け物ーーーバイサーは激昂する。

こういってはなんだがどっちもどっちで王道なセリフである。

 

バイサーはその巨体の割には素早く、手に持つや槍で部長さんを穿とうと振りかぶる。

が、当の部長さんは意に求めず、こちらに振り返る。

イッセーはアワアワしているが、俺は視界の端に移った影を見落とさなかった。

 

 

「祐斗!」

 

「はい!」

 

 

短い返事と共に木場の身体は更にスピードを上げ、バイサーの片腕を一息で切り落とした。

 

 

「さて、イッセーとナナシはいい機会だか悪魔の戦い方をレクチャーしようかしら。

悪魔にはそれぞれ与えられた駒の特性があるのよ」

 

 

部長さんが話している間も、木場は着地と加速を繰り返し、等々もう片方の腕も切り落として見せた。

見事な手際である。

 

 

「悪魔の駒の特性と祐斗の役割は、騎士(ナイト)、特性はスピードそして祐斗最大の武器は剣」

 

 

血を吹き出しながら悲鳴を上げるバイサーの足元に小柄な人影…小猫だ。

 

 

「次は小猫。あの子は戦車(ルーク)。戦車の特性は…」

 

 

と、化け物はそのまま小猫を踏み潰す。

その振動と地響きに息を呑むが、その巨体は徐々に浮きはじめ、否。持ち上がり始めた。

 

 

「戦車の特性はシンプル。バカげた力。そして、屈強な防御力。あんな悪魔の踏みつけで小猫は沈まない。それに、」

 

 

小猫はそのまま化け物を持ち上げる。

 

 

「……先輩が見てる……吹っ飛べ!」

 

「今日は気合が入ってるわ」

 

 

そのまま化け物は投げられ吹っ飛ぶ。

吹き飛んで落ちた先には、待ってましたと姫島先輩が浮かんでいる。

 

 

「最後に朱乃ね」

 

「はい、部長。あらあら、どうしようかしら」

 

 

姫島先輩はそのまま笑いながら倒れている化け物へと歩みだす。

気の所為か、その顔がどこかのセカンドさんのように恍惚な表情に見えた。

 

 

「朱乃は女王(クイーン)。王の次に強い最強の者。すべての力を兼ね備えた無敵の副部長よ」

 

 

女王。何故だろうものすごい似合うと思ってしまった俺がいる。

バイサーは戦力差を自覚したのか、その場から逃げようとするが、その先に姫島先輩が降り立った。

 

 

「あらあら。まだ元気みたいですね?それなら、これはどうでしょうか?」

 

 

そうして天に向かって、手をかざす。

刹那、空気を震わせる程の轟音と、目の前を覆い尽くす光が落ちる。

い、今のは雷か…?

 

 

「あらあら。まだ元気そうね?まだまだいけそうですわね」

 

 

バイサーはプスプスと煙をあげているが、それでもまだ動いていた。

手を切り落とされ投げ飛ばされ雷落とされ、それでも動くそのタフさは正直敵ながら賞賛に値するが、

無常にも姫島先輩の手は更にかざされる。

 

二度、

 

三度、

 

雷で照らされるその表情はまさに感無量。

今まで見たことのない笑顔がそこにはあった。

 

 

「朱乃は魔力による攻撃が得意なの。そして何より究極のSよ」

 

 

我々の業界でも拷問です。

イッセーなんて小鹿みたいに怯えてやがる。

姫島先輩は怒らせないようにしよう。命がない。

 

 

「大丈夫よ、朱乃は味方にはとても優しいから。問題無いわ」

 

「あら、まだ死んではダメですよ?トドメは私の主なのですから。オホホホホッ!」

 

 

それなら安心だ。

そう言えないのが人の恐怖心だ。

だってめっちゃ怖いもん。

そんな間にも姫島先輩の雷攻撃は続いた。

もうどっちが悪役か分からないもの。是非もないね。

 

 

 

「最後に言い残すことはあるかしら?」

 

「殺せ」

 

「そう、なら消し飛びなさい」

 

冷徹な一言と共に、部長は手のひらにドス黒いオーラの様な塊を出現させ、それをバイサーにぶつける。

部長の言葉通り、バイサーの身体は跡形もなく消し飛んだ。

 

 

「さて、帰りましょうか」

 

 

ぽんと手を叩き微笑む部長。

戦闘の時は怖くとも、この人も基本仲間思いなんだろうな。

 

なんにしても、悪魔というのは色々と便利そうだ。特に魔法とかは憧れるな。

俺もやってみたい。なんというかロマンがあるよね。「我は放つ光の白刃」とか。

 

案外やってみたら出来ないだろうか?

 

 

「あのー、ところで部長」

 

 

姫島先輩あたりにダメもとで習いに行こうか、いやスパルタそうだからやめとこうとか思っていると、イッセーがおずおずと手を挙げた。

 

 

「あら、どうしたのイッセー」

 

「俺の駒って、結局なんなんですか?」

 

 

イッセーは顔に汗を浮かべる。聞いていながらなんとなく分かってしまった。みたいな表情だ。

 

 

「あなたの駒は兵士よ。イッセーは兵士なの」

 

 

その言葉にイッセーは泣き崩れた。

いやいや、兵士って強いからね。

そんなこと言っても今は慰めにもならなそうだし、面倒臭いのでやめた。

 

 

 

 

あ、俺なんもしてねぇ


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