アキバ神拳伝承者の異世界譚(ハイスクールDxD+A) 作:グリムリッパー02
徐々にではありますが連載再開します。
ダンガンロンパV3やりたい(1.2リロードやりながら)
契約、もとい熱い討論会から数日がたったある日の朝。俺は珍しく一人で登校していた。
というのも小猫は今日日直らしいのだ。真面目だねぇ。
そういうわけで、朝早くに出ていってしまったため今日は久しぶりの一人登校というわけだ。
はいそこ、ボッチとか言っちゃったキミ。後で職員室に来なさい。
と、そこで見覚えのある後ろ姿を見つける。
「よぉ、イッセー。おはよう」
「あぁ……ナナシか…おはよう」
「…随分やつれてんな。なにかあったのか?」
「昨日、また指名が入ってな」
「……あぁ、例の」
イッセーも色々あった。
初契約の日に気合い入れて行ったはいいものの、まさかの転送魔法陣が使えないというトラブルが発生。
なんでも魔力が足りないらしい。
結局、自転車で契約先まで行ったらしい。
わかるぞイッセー。俺も自転車で契約しに来る悪魔ってどうなのってずっと思ってたからな。
更にはその契約先がまずかった。
遥々自転車を漕いで行った先で待っていたのは、なんと2mを超えんとする世紀末覇者。
その身に纏うのは別に肩ギザギザのピッチりスーツとかではなく、なんと魔法少女のコスプレ。(しかしピッチピチ)
契約は取れなかったらしいが、アンケートでは「また来て欲しい」など前代未聞の成果を収めたらしく、部長も頭を痛めていた。
アキバにもいろんなレイヤーさんがいたが、写真だけで殺しに来てるようなレイヤーを見たのは初めてだった。俺のオタク道もまだまだってことか。
そういえば木場が
「兵藤君にはそういう感じの人に選ばれる魔力があるんだろうね」
と爽やかスマイルで言っていたが…うん。類は友を呼ぶって奴だな。
「はわう!」
後方からのソプラノボイスに振り返る。
そこには大の字で顔を倒れている少女の姿が。
が、大事なのはそこではない。
その少女の出で立ち。
圧倒的な清楚感。
穢を知らず、欲を抱かず、渾身的であり慈愛を振りまく、ある種の理想の極言。
「あうぅ。何故転んでしまうんでしょうか…」
シスターさんがそこにはいた。
いや、いたじゃない。早く助けないと。
とりあえず、見惚れていた俺とは逆に先に動いていたイッセーに少女を任せ、俺は倒れた荷物の方を拾っていく。
お、結構重い。
「大丈夫ッスか?」
「ふぇ?あ、ありがとうございます」
イッセーが手を取ってシスターが起き上がる。
シスターさんが起き上がった瞬間、風でヴェールが飛んでいく。
ヴェールで隠されていた髪は風で靡き、美しい金髪がキラキラと光る。そして翠色の瞳と相まって、彼女の持つ清楚感を何倍にも跳ね上がらせていた。
なんていうんだろう、the シスター。
彼女はシスターになるべく生まれてきた様な、そんな気がした。
と、ヴェール返さないとな。
「ほらこれ。飛んで行っただろ」
「はぅ、ありがとうございますぅ」
「あ、えっと、その」
イッセーはというと、完全に見惚れて動揺していた。分かる。わかるぞイッセー。
思えば宗教関連の人を見たのなんて闘技場にいたアントワネットさん以来な気がする。
…いや、あれは宗教ってわけでもないか。
なんにしろ、あの擬態完璧オカマさんしかそれぽいものを見てなかった俺があぁなったのだ。
最近は世紀末覇者漢ノ娘しか見てなかったイッセーにとってはそれこそ砂漠の中のオアシスにも等しいだろう。
「あの、お連れの方はなんで涙を流しているんでしょう?どこか怪我でもなされているんですか?」
「あーある意味心の方に深い重症を負っててな。大丈夫。君を見てたら多分そのうち治るから」
「そ、そんな病気があるんですか?!
わ、私でお役に立てるなら」
信じちゃったよこの子。純粋だなぁ。
そんなに純粋だと、お兄さんいけない気持ちに……まぁなりませんけどね。
えぇ。妹に誓ってなりませんとも。
「ハッ!俺はなにを?」
「おぉ、帰ってきたか」
どうやらイッセーも無事に冥府の底から帰還したらしい。
ところでシスターさんは何故こんなところに?
旅行、ってのは考えにくいよな。修道服だし。
ってことは普通にお仕事とか?
「はい!そうなんです。実はこの町の教会に今日赴任することになりまして……あなた方はこの町の方なんですね。これからよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。
彼女からはレイヤーさんとは違う、本物の熱を感じる。
レイヤーさんはレイヤーさんで独特の熱というか雰囲気を感じるんだけどね。
でも彼女は本物のシスターだとはっきりわかった。レイヤーさんじゃない本物の婦警さんに何度も追いかけ回された俺が言うんだから間違いない。
「この街に来てから困っていたんです。その…私って、日本語うまく喋れないので…道に迷ってたんですけど、道ゆくみなさん言葉が通じなくて…」
イッセーが言葉を理解出来てるのは悪魔の力の一つらしい。
なんでも悪魔に転生するのは人間に限ったことではないらしく、音声言語だけならどんな国の言葉でも話せるし、どんな国の言葉でも聞き取れるようになっているんだとか。便利だねぇ。
俺?米版ゲームをするために鍛えた俺の英語スキルを舐めちゃいけないよ。ストプリ海外版だって聞き流しして理解できるレベル。
と、そんなことを考えていると話はどんどん進み、どうやらシスターさんを教会まで案内することになったようだ。
どうでもいいけど、ドジっ子シスターって王道でいいよね。
「それじゃ行こうか。」
「ほ、本当ですか!あ、ありがとうとございますぅぅ!これも主のお導きですね!」
と天に祈りを捧げてた。
それだけで神々しいオーラが幻視できるほど、彼女は本当に神様を信じているんだろう。
「うわぁぁん」
教会に向かう途中の公園で子供の泣き声が聞こえてきた。
お母さんらしき人があやしているが泣き止まない。どうやら転んだようだ。
俺はその場から一歩飛び出し少年に駆け寄る。
が、それより先にシスターさんが駆け寄って行った。
シスターさんは少年の元で膝をつき目線を合わせニコリと微笑んだ。
「だいじょうぶ。男の子ならこのぐらいのケガで泣いてはダメですよ」
言葉は通じていないだろうが表情は優しさに満ち溢れていた。
シスターさんが自身の手を子供の怪我にあてると、淡い光がみるみるうちに怪我を治していく。
数秒もしない内に怪我は元通り治ってしまった。
あまりに現実離れした現象に俺もイッセーも面食らってしまう。
俺も怪我の治りはめちゃくちゃ早いけど、人の怪我を治すことは出来ない。
出来るとすれば多分……
「…その力……」
「はい。治癒の力です。神様から頂いた素敵なものなんですよ」
神器。ってやつなんだろう。
イッセーを見るとどうやら向こうもそれに感ずいているようだった。
ただ、素敵だという割にはどこか寂しげな表情を浮かべているのが少し気になった。
キーーンコーーンカーーンコーーン
「あ」
「やっべ」
チャイムが鳴る。どうやら遅刻してしまったらしい。
とは言え、まだ一時限目までは時間がある。
今から全速力で行けば間に合う。
「俺は今から学校に行く。先生に話も付けとくよ」
「任せたぜナナシ!!うまい言い訳考えといてくれ!」
「任された!お前はちゃんと送り届けろよ!」
そう言い、脚に力を込め思いっきり跳ぶ。
身体は宙に浮き、屋根の上へ。
そのまま屋根を伝って更に跳ぶ。
こういう時、身体能力が高いのはいいよね。振り切るぜ!!
あ、太陽近くて気持ち悪い。
「お連れの方は本当に人間なんでしょうか?」
「あ、あははは……どうだろうね」
そんな会話が聞こえた気がした。