博麗霊夢の小間使い   作:喜怒哀LUCK

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弁解はしない

遅れたことに弁解はしないし、短いのにも弁解はしない




いかづまこいなさお

 幻想郷を外界と切り離す結界、博麗大結界を維持する博麗の巫女が生活をする場所、博麗神社で、何の因果か博麗の巫女の霊夢と妖怪の鬼人正邪が揃って正座していた。本来敵同士である二人が、頭を垂れて必死で正座による足の痺れと戦う姿は、どこか哀愁が漂う。そしてその二人の前で腕を組み仁王立ちしているのが、小間使いである。

 しかしその姿はいつもの小間使いではなく、身長も縮み、顔立ちも幼いものとなっていた。

 なぜそうなったかを説明すれば少し長くなるのだが、小間使いの衝撃的な発言の後、正邪は敵の本拠地である博麗神社へと連れられたのだが、当然霊夢は敵を連れてきた小間使いにも正邪にも良い顔をしない。なのに小間使いは「正邪さんをうちで居候させられないかな」と言った。霊夢と正邪、二人ともそんな話は聞いていないと耳を疑ったが、小間使い曰く、正邪を合理的に助けるにはこの方法が一番だと。

 正邪は里人から嫌われている。人形劇の件は例外にしても、人里に入ろうものなら石を投げつけられ憲兵を呼ばれるほどだ。いくら何とかしようと考えを巡らせても実行できなければ意味はない。

 そこで博麗神社に居候させる。表向きは『妖怪を博麗の巫女が更生させる』ということで同居し、色々と作戦を考え、実行するために監視という目的を含めて正邪を人里へと入らせる。里人も良い顔はしないだろうが、そういうことならと腹ではよく思ってなくても納得せざるを得ないだろう。

 ということだったのだが、それを聞いた霊夢は猛烈に反対した。なんで妖怪なんかと一緒に住まなきゃならないのかと怒った。それとは別に、個人的に何か考えはあったようだが。

 

「正邪さんは信用できるよ」

 

 という小間使いの言葉に、さらに機嫌を悪くしたのか「ダメなものはダメ」とそっぽを向く。一応小間使いは雇われの身なので、霊夢がNOと言えば従うほかなく、申し訳なさそうに正邪に頭を下げた。正邪も元々無理だろうとは思っていたので、気にしていないと手を振った。

 せめて夕食くらいは、と誘い霊夢も今日だけということで正邪と夕食を共にしたのだが、それがまずかった。

 

「あっははははは! 成長を逆にしてやる! それっ」

「こら~! そんなことする悪い妖怪にはお仕置きが必要ね~!」

 

 酔った。

 酔った二人は手の付けようがなかった。

 久しぶりに誰かと飲食を共にした正邪は舞い上がってしまい、お酒を飲んで酔っ払った勢いもあってか、小間使いの成長を逆にし、数年を境にその成長を退化させた。およそ十年ほど体の成長が逆行した小間使いはまだまだ子供の姿。

 これだけなら酔いが醒めた時に元に戻してしまえば良いのだが、たまたま夕食があれ以来好物となった天麩羅だったことで機嫌を良くし、酒に酔った勢いで、”正邪の能力を封印した”。しかも”本人がまだ扱いきれていないほど強力なものを”正邪にかけてしまった。

 酔いが醒めて冷静になった二人は、事の重大さに気付いた。霊夢が封印を解けない=正邪が小間使いを元に戻せない。小間使いもまさか霊夢が封印を解けないとは思っていなかったらしく焦り、久しぶりに怒りを露わにした。まぁ所詮子供の容姿で怒られても怖くはないのだが、笑顔の威圧で黙らせた。

 

「二人とも正座」

「「……はい」」

 

 ということで現在今説教をされている真っ最中である。説教をしながら小間使いは頭を悩ませた。この姿でも霊夢の世話をすることに関しては問題なく動けるだろう。しかし人里に行くときはどうする。食材だって日用品だって足りなくなれば買い足しに行かなくてはならないが、この姿だと確実に何があったか問われるだろう。それでもし今回のことがばれたら、『博麗の巫女が妖怪と結託して人を襲った』なんて噂が立ちかねない。ここ最近ようやく地に落ちていた博麗の巫女の評判も上がってきて、徐々にではあるが参拝客が増えてきているのに、この不祥事でまた信用を失くすだろう。

 下手をしたら、小間使いという仕事がなくなってしまうことも考えられる。それは小間使いにとっても、生活力が皆無な霊夢にとっても避けたい事態だ。

 

「とりあえず霊夢はとうぶんの間お酒は禁止ね」

「……はい」

「正邪さんも浮かれていたとはいえ冷静じゃなくなるほど飲まない、君もお酒禁止」

「……はい」

 

 霊夢には正邪の封印を解いてもらわないといけないから、正邪には博麗神社へ住んでもらうことになる。結果としては居候させることにはなったのだが、素直に喜べない。そして同時に正邪を人里に認めさせる作戦も同時にやってもらう。簡単に言えば働いてもらうわけだが、正邪が博麗神社に住むことになった分、食費などが余計増えるし、せめてその分働いてもらわなければならない。

 しかし今の正邪にどうやって働けというのか。

 里人には嫌われていて、里に入ることすらかなわない。仮にどうにかして入ることができたとしても、誰が仕事を斡旋してくれるのか。本来なら小間使いが一緒に出向いて、知り合いに頼むところなのだが……。

 

「封印を解くのにどれくらい時間がかかるの?」

「……つい強力なのかけちゃったから、解析したり色々するし、わかりません」

「────全く、頭が痛いよ」

 

 それは最悪一生このままかもしれませんと言っているのと変わらない。

 

「(そんなに長くは待てないなぁ……いずれ誰かが不審に思って訪ねてくるだろうし。けどこの状況なんとかできる人なんて……。博麗の巫女の術に詳しい人、か)」

 

 博麗の巫女が使う術に詳しい人がいれば、そこからヒントを得て通常より早く封印を解くことができるかもしれない。しかしはたしてそんな人物はいるのだろうか。先代の巫女が生きていれば手っ取り早かったのだが、すでに死去している。同等かそれ以上の知識を持った人など、いないだろう。




時間がかかって申し訳ない

仕事しながらはきついっす

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