博麗霊夢の小間使い   作:喜怒哀LUCK

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ヒントは「れみりあ」でしたが、答え合わせの時間です

想像と一致していたかな?


あぁゆうかりんに見下されながらそのおみ足で踏んでもらいたいんじゃあ


重要

感想欄にありますが、一部の設定が実在する書籍の設定と一致していたため、ここに注意事項として書き置きます。作者としてはこのようになったこと深く反省しています。
もしかしたら、また違うところで実在する書籍のパクリになることもあるかも知れません。調べるにしてもそこはキリがないので、一応はオリジナルとして書き、投稿させていただきますが、問題があるようなら報告してください。タグなどの追加などで対処していきます。
不快に思われた方には申し訳ありませんが、ご了承ください。


眷属という名の下僕

「レミリアお嬢様って眷属を作らないのですか?」

 

 紅魔館の図書館に住むパチュリーが召喚した使い魔、小悪魔のこぁが、アフタヌーンティーを嗜むレミリアへと疑問を投げかけた。

 

「急にどうしたの」

「うちは妖精メイドに掃除とかの仕事をやらせてるじゃないですか。疲れたらすぐにサボるし、消滅しちゃうし、あれを雇うメリットってない気がするんですけど。それなら眷属でも数人作った方が良い気がするんですけど」

「まぁ一理ある話ね」

 

 紅魔館はそこまで大きな建物ではないが、咲夜の能力を用いて空間を広げている。そのため掃除などは手間がかかるため、そこらに湧いて出る妖精を雇用しているのだが、如何せん奴らは知能がない。覚えが悪いし、仕事も良くさぼる。エネルギーが切れると消滅するのだが、すぐに復活するため、半永久的に使えるため使っているのだが。

 

「でも無理な話ね。眷属なんてそう簡単に作れるもんじゃないの」

「そうなんですか? というか眷属ってどう作るんです。私とパチュリー様みたいに契約というわけではないんでしょう。あっ、あれですか。血を吸うと眷属にできるってやつですか?」

 

 多くの者が想像する、吸血鬼の眷属を作る方法に、レミリアは首を振った。

 

「そんな簡単にできるものじゃないわ」

「じゃあどうやって?」

「条件が少しあるけど、眷属にするには血を与える」

 

 もっとも「血というよりは魔力を、だけれどね」と言う。

 

「眷属にするということは、半吸血鬼化するということ。そのためには吸血鬼の魔力を身体に馴染ませなければならないわ。手っ取り早いのは血を与えることなんだけど、結構な量が必要ね」

「血を与えるって、飲ませるんですか」

「違うわ。互いの両の手の指先に傷をつけて、傷口を合わせ血を循環させるの。右手から血を流しこんだら、左手から血を奪う。何度か繰り返さなければならないけど、一番効率的で早い方法よ。ただ激痛が走るけどね」

 

 血を一度に全部変えることはできない。激痛に耐えることができないし、魔力の大半を失うから、襲われる危険もある。そのために何度か繰り返すのだが

 

「けど、そう何度もやるわけじゃないのよ」

「そうなんですか?」

「えぇ。そのまえに死んじゃうから」

 

 魔力を馴染ませる、つまりは身体に適応させなければならないのだが、それに拒絶反応を起こす。吸血鬼へと身体を変える、全身を入れ替えるような事をするのだから、その反応は計り知れない物。それに耐えきれる者が、そもそも少ない。

 

「条件の一つ、生命力の強い生き物でなくてはならない。妖精やそこらにいる妖怪なんかじゃ到底無理ね」

「じゃあ強い生き物を眷属にしたらいいんですか」

「それも無理。そこまで強いなら死ぬことはないけど、魔力に耐性がある奴ばかりよ。耐性があると魔力が馴染まなくて、血が無駄になるだけ。洗脳か自ら吸血鬼になりたいという奴でもないと、魔力を受け入れないの。けどそんな奴はいない、強い者であれば、自我があるものね」

「?? じゃあどうやって眷属作るんですか?」

「極僅かな量を、毎日流すのよ。それなら人間でも眷属にできる」

 

 ただ膨大な時間がかかる。ただでさえ人間は弱い生き物だ、少しの魔力でも拒絶反応が起こる。故にそうとう少ない血でないといけない。それを毎日、長い年月をかけて行わなければならないが、それがとてつもなく長い。

 

「六十年ほどかかるわね」

「それって眷属にする意味あります?」

「ないわ。だから作らないのよ」

 

 六十年。千年以上生きる吸血鬼からしたら短い時間だが、人間からすれば膨大な時間だ。吸血鬼になる前に老いて死ぬだろう。子供の内から試してもよいが、少しでも間違えれば、反応に耐え切れず死ぬ。

 

「なるほど」

「たとえ魔力が馴染んだとしても、もう一つやることがあるの──」

 

「──死ぬこと」

 

「馴染んだとはいえ、その身体は変わっていない、あくまで吸血鬼になるための前準備をしただけよ。その生命活動がなくなった時のみ、血が働いて、本格的に吸血鬼へと生まれ変わる」

「あの、因みに魔力が馴染んだかどうかって見分けつくんですか」

「付かないわよ? だから半分賭けね。そのまま死ぬか、吸血鬼になるか。それが二つ目にして最も重要な条件」

 

 吸血鬼になるのに、死ぬ覚悟はある?

 

 

 

 太陽の畑の主、風見幽香は大妖怪で、幻想郷最強の名を冠している。それはスペルカードルールの内ではなく外での話なのだが、むしろそっちの方が強い妖怪が多い。鬼に天狗に吸血鬼、どれも弾幕ごっこより肉弾戦を好む。幽香自身、それらの強敵たち全員と戦ったわけではないが、お互いがその強さを認めていた。少なくとも、絶対に勝てるかと言われたら、それはないと答えるくらいには。

 

 つまり絶対なる最強ではないのだが、そう名乗って言い程には強いということだ。

 

 そんな風見幽香の、幻想郷の人里の人間である稗田阿求が執筆した幻想郷縁起という書物に、危険度「極高」、友好度「最悪」と記されている。

 

 風見幽香は妖怪としての本能が非常に高い。より強くありたい、弱肉強食を地でいくスタンスは、八雲紫が掲げた人間と妖怪が手を取り合う世界とは真逆だった。目の前に立ちはだかる者は暴力を持って叩き潰す。傍若無人なその態度より、あらゆる生物から見た強さを鑑みて、危険度「極高」とされた。

 

 そして強さを除いた観点として、人との交流をする気があるのかというと、それは断じてない。彼女は人間などなんとも思っていない。群がるだけの脆弱なアリとでも考えているのだろう。だから恐ろしい。彼女は花の妖怪、四季のフラワーマスターとも呼ばれるほど、花に関しては愛情を注ぐ。だから花を身勝手に摘んだりする人間は、葉を食い荒らす害虫と同じ、駆逐すべき存在だ。人を見たら、とりあえず襲い掛かるだろう。

 

 そんな人を襲うような奴が、稗田阿求を襲わなかったかというと、その恐ろしさを記し、世間に広めることで彼女のテリトリーに入らなくなるだろうという、利益があったため、生かしておいただけのこと。それ以外で立ち入ろうものなら、即死が待っている。

 故に、その友好度は「最悪」。会わないことをお勧めされる。

 

「って書いてある筈だけど、理解できてないようね」

 

 と、前に向けていた日傘を、肩に担ぎなおし、呆れる。あれだけ関わるなと忠告しておいたのに、やってきたではないか。

 そんな愚かな生き物を殺したかどうかは、眼前に舞う土煙で確認できないが、周りにある花達が傷つかないよう手加減したとはいえ、生きてはいないだろう。

 もし生きているとしたら、それなりに強い妖怪か、博麗の巫女か、魔力を持った生き物だろう。

 強い妖怪なら普通に耐えられるし、再生力も高い。傷ついた傍から修復していく。博麗の巫女や魔力を持った生き物なら、霊力や魔力をもって障壁を張る。防ぎきれずともある程度衝撃を緩和するだろう。

 

 小間使いは、普通の人間だ。空を飛べるほどの魔力も有していないし、使い方も分からない。幽香が放出した攻撃によって、いとも簡単にその命は散っていった。

 

「……へぇ」

 

 土煙が晴れ、その亡骸を確認した幽香が、また獰猛な笑みを浮かべる。目の前の男は死んでいるのに、どこか生命力が漲っているようだ。

 少し待つと、焼け焦げ、欠損している身体が、少しづつ再生していく。人間にはありえない現象、妖怪でさえ再生するのには数日かかる。

 この現象は、以前何処かで見たことがある。

 

「確か、あの小さい吸血鬼がこんな感じだったわねぇ」

 

 四肢を捥ぎ、羽根を引きちぎったのに、次々と回復していく様は、まさに吸血鬼のそれだ。

 先ほどまでは確実に人間だった。魔力なんてかけらも感じなかったのだから、間違いないだろう。それがどうしたことか、吸血鬼になっていくではないか。

 

「ふふ」

 

 このまま放置しておいて、吸血鬼になってから日の光を浴びて苦しむ姿を見て笑うのも面白いが、下僕にして日に当たりながらも花の水やりをさせ、毎日苦しむ姿を見るのも一興。あの吸血鬼のようにプライドの高い奴を屈服させるのは、見ていて楽しい。

 そうと決まれば、ここに置いておくのも勿体ない。今だけは、殺さずに生かしてやろう。

 

 風見幽香には、小間使いが玩具のようにしか見えていなかった。

 


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